2016/ マーケット・フォーカス 11/21 投資情報部 五十嵐 聡 津賀田 真紀子 商品・為替 原料炭と鉄鉱石の高騰と豪ドルへの影響について 原料炭価格が300ドルを突破。中国の過剰生産能力の削減が裏目に。夏場の豪雨による供 給障害の影響と、電子取引の台頭も背景に 鉄鉱石価格は公共投資の増加による需要増と投機資金の流入が押し上げ要因 価格反動安の場合、主要輸出国である豪ドル相場への影響には一定の留意が必要 原料炭価格が300ドル 今年 8 月以降、鉄鋼原料のコークスの主原料となる原料炭(高品位強粘結炭)の価 を突破。中国の過剰生 格が急騰している。豪州産指標品のスポット(随時契約)価格は、今年 7 月時点では1 産能力の削減が裏目に トン=100 ドル以下であったが、9 月には 200 ドルを突破。11/18 終値時点では 308.80 ドルと前年同月比で約 4 倍強となっている。原料炭が 300 ドルの大台を上回るのは 5 年前に洪水の影響で豪州の生産量が抑制されて以来となる。 現在の原料炭価格高騰の理由としては大きく3つ考えられる。 まず1つ目は、中国政府が産業構造改革の一環として、過剰な国内生産能力の削減 に乗り出したことが挙げられる。今年2月には国務院が石炭産業の過剰生産能力解消 と業界発展に関する意見を通達。今後3~5年で低効率炭鉱の閉鎖等を行うことによ り、石炭生産能力(一般炭・原料炭・褐炭の合計)を10億トン削減することを発表した。 また、2016年から石炭生産者の鉱山稼働日数を276日以下に抑える等の規制策が導 入された。 原料炭スポット価格と豪ドル相場 (週次:2013/7/5~2016/11/18) (1トン=ドル) 350 原料炭スポット価格(左目盛) 300 世界原料炭生産量 (百万トン) 1,200 (1豪ドル= ドル) 1.6 その他 1,000 ウクライナ 1.4 豪ドル(右目盛) モンゴル 800 250 ポーランド 1.2 カザフスタン 600 200 カナダ インド 1.0 米国 400 150 ロシア 0.8 100 豪州 200 中国 50 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 0 0.6 (年/月) 2000 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 2013 2014 2015見込 (年) 出所:国際エネルギー機関(IEA)Coal Information 2016よりみずほ証券作成 は この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 1 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/11/21 マーケット・フォーカス 2014/19/18 豪雨による供給障害と 電子取引の台頭 2 つ目は生産障害による供給懸念だ。中国では今夏、エルニーニョ現象の影響によ り、原料炭の 4 割強を生産する山西省で豪雨が発生。炭鉱操業や鉄道輸送に影響が 出た。本来であれば、4 月から 8 月にかけては在庫積み増しの時期に当たるが、今年 に関しては右肩下がりに減少。今年の同時期の中国国内の月間の石炭生産量(一般 炭・原料炭・褐炭の合計)は前年同月比で▲9.9%~▲15.1%となった。 さらに、世界最大の原料炭輸出国である豪州のクイーンズランド州でも複数の有力炭 鉱が操業トラブルに見舞われるという事態が発生。供給不安からインドの中堅高炉 メーカー等が狼狽(ろうばい)買いに走り、価格上昇に拍車がかかった。 3 つ目は電子取引の台頭が挙げられる。原料炭はこれまで、鉱山会社と製鉄会社に よる長期契約が基本であったが、昨年 10 月からグローバルコールで電子取引が開始 された。しかし、依然として市場の規模が小さく、参加者も限られることから、少量の取 引でも価格が跳ね上がる傾向がある。 なお、電子取引が広がっている背景には、原料炭輸出最大手の豪英資源メジャー BHP ビリトンの存在があるといわれている。これまで長期契約交渉の中心的存在だっ た英鉱業・資源会社アングロ・アメリカンが経営難から炭鉱の売却を進める一方、BHP ビリトンが市場シェア拡大のため、影響力の強化を狙っているようだ。 問題は原料炭価格の高騰がいつまで続くのかという点である。今後、輸送障害が解 消し、季節需要が一服すれば、高騰前の水準にまで価格が調整されることが予想され る。また、一部報道によると、中国政府は 10/25 に石炭価格の高騰に対応するため、 大手 22 社に早急な増産を命じたうえ 11/17 には操業の安全性に関する規則を守って いる炭鉱に対して、年間の操業日数を暖房シーズンに限り 330 日の生産体制を認める 通達を出したと報じられており、徐々に供給不安が後退していくものと考えられる。 ただし、中国の石炭の産地は内モンゴル自治区や山西省等、寒さが厳しく積雪の影 響を受けやすい地域に集中している。これから冬が本格化することを考慮すると、生産 量が回復するには数ヵ月を要する可能性が高いだろう。 中国石炭在庫 世界原料炭消費量 (百万トン) 1,200 (月次:2011/1~2016/9) (万トン) 40,000 その他 1,000 35,000 ポーランド 2011年 ドイツ 800 2012年 30,000 ウクライナ カザフスタン 2013年 600 2014年 米国 韓国 2015年 25,000 日本 400 2016年 ロシア 20,000 200 15,000 0 インド 中国 1 2 3 4 5 6 7 8 9 2000 10 11 12 (月) 2013 2014 2015見込 (年) 出所:国際エネルギー機関(IEA)Coal Information 2016 よりみずほ証券作成 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 22 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/11/21 マーケット・フォーカス 2014/19/18 一方、原料炭価格に続いて、鉄鉱石価格も急騰している。指標である豪州産の中国 公共投資の増加によ 向けスポット(随時契約)価格は、11/17 時点で 1 トン=72 ドルと今年 1 月につけた年初 る需要増と投機資金 の流入に押し上げられ 来安値(40 ドル)から 80%も上昇。また、鉄鉱石を輸送するバラ積み船の総合的な運賃 指数、バルチック海運指数(1985 年=1000)も上昇に転じており、11/18 時点で 1,257 と る鉄鉱石価格 今年 2 月の年初来最低値からおよそ 4 倍となっている。 公共投資の増加等により中国で鋼材価格が上昇し、現地の製鉄所が輸入を増やし ていることが背景にある。中国の鉄鉱石輸入量は増加傾向にあり、2014 年頃からは特 に豪州産の鉄鉱石輸入量が著しく伸びている。 これに加え、投機資金の流入も鉄鉱石価格に影響を与えている。中国では資本移動 規制が厳しく、海外資産への逃避が難しい。中国人民元安が進む中で、代替投資先 を探す投機マネーが一部、コモディティ市場に流れ込んでいるようだ。 ただ、すでに中国国内の鉄鉱石在庫の積み上がりは著しく、足元では 2014 年 12 月 以来の水準となっている。このまま鉄鉱石価格の上昇が続くとは考えにくく、公共投資 が一巡すれば、再び値を崩す可能性も考えられる。 豪州産中国向け鉄鉱石価格と バルチッ ク海運指数 豪州産中国向け鉄鉱石価格 (1トン=ドル) 160 (週次:2014/1/3~2016/11/18) (1豪ドル=ドル) 1.00 豪州産中国向け鉄鉱石(左目盛) 140 豪ドル(右目盛) (1トン=ドル) 180 0.95 (週次:2014/1/3~2016/11/18) 160 (1985年=1000) 2,200 豪州産中国向け鉄鉱石(左目盛) 2,000 バルチック海運指数(右目盛) 1,800 120 0.90 140 1,600 100 0.85 120 1,400 80 0.80 60 1,200 100 1,000 80 800 60 600 0.75 40 400 0.70 20 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 40 0.65 (年/月) 200 20 14/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 14/7 15/1 16/1 16/7 0 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 中国鉄鉱石輸入量 (2012/1=100) 15/7 中国鉄鉱石在庫 (月次:2012/1~2016/9) (万トン) 11,000 240 (週次:2013/1/4~2016/11/11) 豪州産 220 ブラジル産 200 10,000 南アフリカ産 180 その他 9,000 160 140 8,000 120 100 7,000 80 60 6,000 13/1 40 12/1 13/1 14/1 15/1 13/7 14/1 14/7 15/1 16/1 (年/月) 15/7 16/1 16/7 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 33 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/11/21 マーケット・フォーカス 2014/19/18 価格反動安の場合、 主要輸出国である豪ド ル相場への影響には 一定の留意が必要 これら鉄鉱石や石炭の主要な輸出国である豪州の経済にとって、資源価格の上昇は 輸出価格上昇による交易条件の改善や資源輸出の増加等といった観点から追い風と なり、豪ドル相場の強力な下支え要因となる。 しかし、前述の通り、価格が急上昇した背景にはいくつかの特殊要因や中国政府の 財政政策による需要拡大といった要因があり、需給が緩和に向かった場合の反動安 に留意する必要がある。また、需要面では、足元の鉄鋼需要の増加をもたらしているイ ンフラ・不動産関連投資の増加や住宅価格の上昇がどこまで続くのかを見極めること が重要となる。 もっとも、足元の豪ドル相場をみると、鉄鉱石や石炭価格の上昇に見合うほどの反応 を見せてはいない。むしろ、米大統領選挙での予想外のトランプ氏勝利により、米国 の財政拡張政策への思惑から米金利が上昇するにつれて、対ドルでは大きく反落し ており、両者の動きには大きなかい離が生じている。 そもそも、豪州政府や市場関係者の多くは足元の鉄鉱石や石炭の大幅な価格上昇 は想定していなかった。価格が反落したとしても一定の調整程度にとどまるならば、豪 州の大手サプライヤーの世界的にも低い生産コスト等からみても、豪州経済に対する 影響は限定的なものにとどまることが予想される。 今後、行き過ぎた動きが是正されて鉄鉱石価格が下落した場合でも、反動による米 金利低下、ドル安となれば、豪ドル相場はむしろ反発する可能性もあろう。その後は、 鉄鉱石の需要動向をはじめ、豪州経済やインフレ率、中銀の金融政策等を見極めて いく動きになると予想される。 (1トン=ドル) 80 鉄鉱石価格と豪ドル相場 (1豪ドル=ドル) (日次:2016/1/1~2016/11/18) 0.815 75 0.800 70 0.785 65 0.770 60 0.755 55 0.740 50 0.725 45 中国輸入鉄鉱石価格(左目盛) 0.710 40 豪ドル(右目盛) 0.695 35 16/1 16/2 16/3 16/4 16/5 16/6 16/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 0.680 16/8 16/9 16/10 16/11 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 44 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 2016/11/21 金融商品取引法に係る重要事項 マーケット・フォーカス 2014/19/18 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-161121-14 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 55 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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