【26】プロカルシトニンが異常高値を示した症例 富山県 瀬戸 志織,小林

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プロカルシトニンが異常高値を示した症例
◎瀬戸 志織 1)、小林 千尋 1)、田保 博子 1)、佐賀 瞳 1)、藤井 允大 1)、山室 吏絵 1)、南部 重一 1)
厚生連 高岡病院 1)
【はじめに】
プロカルシトニン(以下 PCT)は甲状腺の
C細胞において生成されるペプチドである。
細菌・真菌などの感染症においては TNF-α、
IL-6 などの炎症性サイトカインにより誘導、
【考察】
臨床経過より、敗血症の可能性は低かった。
proGRP、NSE の高値は、神経内分泌腫瘍
(機能性 NET)によるものと考えられる。
PCT は NET において異常高値を示すという
血中に分泌されるため敗血症マーカーの 1 つ
報告は文献等で見受けられないが、神経内分
として認識されている。
泌細胞が PCT の生成部位とする文献報告は散
今回、細菌性病巣がみられないにも関わら
ず PCT が異常高値を示した症例を経験した。
【症例】
見される。
異常高値を示した PCT が神経内分泌細胞の
生成した PCT であるのか、腫瘍随伴性の非特
93 歳男性。下痢を主訴として来院。心窩部
異反応であるのかは精査できなかったが、後
に腫瘤触知。CT 検査にて、肝臓に多血性腫瘍
者である場合、その多くは軽度上昇までに留
がみられ肝細胞がん疑いとなる。さらに肋骨
まるため、今回のように異常高値を認める可
はじめ多数の骨転移が認められた。
能性は低いように考える。
【臨床経過】
血液検査では PCT のみ 100ng/ml 以上と高値
を示した。AST 72 IU/L、ALT 49 IU/L など肝生
化学マーカーは著増なく、肝がんの腫瘍マー
カーである AFP も 2.8ng/ml と上昇が見られな
かった。その他腫瘍マーカーを測定したとこ
ろ、proGRP が 50000pg/ml 以上と著増を示し、
NSE も 140.9ng/ml と高値を示した。
2 週間後の病理所見で 神経内分泌腫瘍
Neuroendocrine tumor(以下、NET )G3と診
断され、サンドスタチン筋注開始、ケモ治療
開始するも効果乏しく、入院後約 6 週間後に
亡くなった。
【検査】
proGRP 異常高値に関して、アボット社に精
査依頼したところ、HAMA 抗体は認められず、
非特異的反応も否定的であった。追加検査と
して提出したガストリンは 798pg/ml と高値を
示した。
富山県厚生連高岡病院 臨床検査部
(内線 3401)