第7回 インピーダンス整合について(集中定数回路) 講義資料は http://amplet.tokyo/tdu からダウンロードできます. 初版 : 2016年11月20日 ユビキタス無線工学 担当 : 根日屋 英之 2017年5月25日 1 集中定数回路と分布定数回路 2017年5月25日 2 1 集中定数回路と分布定数回路 10MHzにおける30mm 電圧[V] 1GHzにおける30mm 15 +10V +9.9998V 10 +8.09V 5 0 起点 -5 電圧の変化 -10 -15 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 距離[ 10MHz では X 100m ,1GHz では X 1m] 2017年5月25日 3 集中定数回路 C2 入力 出力 C1 L1 R1 2017年5月25日 4 2 分布定数回路 マイクロストリップ線路 による伝送線路 C2 入力 出力 チップ・コンデンサ C1 L1 マイクロストリップ線路 によるコイル マイクロストリップ線路 によるコンデンサ R1 チップ抵抗 スルーホール処理 したグラウンド/パタ-ン 2017年5月25日 5 集中定数回路のインピーダンス整合回路 2017年5月25日 6 3 インピーダンスとは 全ての電子回路はR,L,Cの 直列回路の等価回路で表され, R L C ⎛ 1 ⎞ ⎟ Z = R + ⎜⎜ jωL + j C ⎟⎠ ω ⎝ ⎛ j ⎞ ⎟ Z = R + ⎜⎜ jωL + 2 j C ⎟⎠ ω ⎝ 1 ⎞ ⎛ Z = R + j⎜ ωL − ⎟ ωC ⎠ ⎝ = R + jX R X 抵抗成分 リアクタンス成分 で与えられる Z をインピーダン スという.ここで,ωは角速度 (各周波数)で,f を周波数とす ると,ω=2πf となる. 2017年5月25日 7 どんな電子回路もインピーダンスで表される TX +3V C506 C509 22u/6.3V 0.1u GND R502 10 C501 入 力 0.1u ● ● ● GND 7t 7t 7t L501 820nH C507 C510 100k 47 R503 10k 1k GND 0.01u 56p 0.01u C508 C505 160p 160p L500 270nH GND C502 L502 270nH Q502 2SK241 0.1u GND GND C511 GND 0.1u D502 1S1076 GND 2017年5月25日 出 力 出 力 R506 R505 10k 51 C513 R508 51 0.1u GND 抵抗成分 C515 R501 R500 抵抗成分 L504 5p C504 入 力 L505 GND R504 0.01u L503 Q501 2SK241 C503 Q500 2SK241 リアクタンス 成分 5.1 GND C512 0.1u リアクタンス 成分 R507 GND GND GND C514 GND 0.1u GND 等価回路 -1V リミッタ D503 1S1076 8 4 どんな電子回路もインピーダンスで表される リアクタンス 成分 入 力 入 力 アンテナ 2017年5月25日 抵抗成分 等価回路 9 アンテナの電気的特性 2017年5月25日 10 5 インピーダンス整合回路の考え方 リアクタンス成分 リアクタンス成分 jX1 抵抗成分 リアクタンス成分 リアクタンス成分 jX2 ? 抵抗成分 R1 抵抗成分 R2 回路 1 抵抗成分 回路 2 「回路1」と「回路2」をうまく接続して信号が効率よく伝送できるには ? 2017年5月25日 11 インピーダンス整合回路の設計 (考え方) ★ 抵抗成分 : エネルギーの伝送に関与する. ★ リアクタンス成分 : 損失を発生する. R X 抵抗成分 リアクタンス成分 インピーダンス整合回路の設計 Step 1 : リアクタンス成分を無くす.(ゼロにする.) Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する. 2017年5月25日 12 6 電気信号の流れは水の流れで考える 送り側の 電子回路 (信号源) 放水口 受水口 外径 φA 水 外径 φC 水 受け側の 電子回路 (負荷) 水 水タンク A 水タンク C 内径 φB ホース B (伝送線路) 水タンク A と水タンク C をホース B でつなぐとき,φA = φB = φC であれば,水は途中 で漏れることなく,水タンク A から水タンク C へ送ることができる. このφA,φB,φC の外径 や内径の概念を,電子回路ではインピーダンスと考える. 2017年5月25日 13 集中定数回路による インピーダンス整合回路 2017年5月25日 14 7 電気信号の流れは水の流れで考える 送り側の 電子回路 (信号源) 放水口 受水口 外径 φA 水 外径 φC 水 受け側の 電子回路 (負荷) 水 水タンク A 水タンク C 内径 φB ホース B (伝送線路) 水タンク A と水タンク C をホース B でつなぐとき,φA = φB = φC であれば,水は途中 で漏れることなく,水タンク A から水タンク C へ送ることができる. このφA,φB,φC の外径 や内径の概念を,電子回路ではインピーダンスと考える. 2017年5月25日 15 もし,ホースの内径が水タンクの 放水口や受水口の外径と異なるときは ・・・ 内径 φB 放水口 送り側の 電子回路 (信号源) 外径 φA 水 水タンク A 水漏れ 受水口 外径 φC 水 ホース B (伝送線路) 受け側の 電子回路 (負荷) 水タンク C 水漏れ 水タンク A と水タンク C をホース B でつなぐとき,φA ≠ φB, φB ≠ φC であると,水は タンクとホースのつなぎ目から水が漏れる.電子回路ではこの概念をインピーダンスの不整合 といい,インピーダンスの不整合が起こっている箇所では電気信号が一部,反射を起こす. 2017年5月25日 16 8 ホースの内径が水タンクの放水口や受水口の 外径と異なるときは,異径ジョイントを入れる. 放水口 送り側の 電子回路 (信号源) 受水口 外径 φA 水 水タンク A 外径 φC ホース B (伝送線路) 水 受け側の 電子回路 (負荷) 水タンク C 内径 φB 異径ジョイント 異径ジョイント ホースの内径が水タンクの放水口や受水口の外径と異なるときは,異径ジョイントを入れる. この異径ジョイントを入れることは,電子回路ではインピーダンス整合回路を入れることになる. 2017年5月25日 17 改めて,インピーダンスとは R L C 全ての電子回路はR,L,C の直列回路の等価回路で表 され, 1 ⎞ ⎛ Z = R + j ⎜ ωL − ⎟ ⎝ ωC ⎠ = R + jX R 抵抗成分 2017年5月25日 X リアクタンス成分 で与えられる Z をインピーダ ンスという.ここで,ωは角速 度(各周波数)で,f を周波数 とすると,ω = 2πf となる. 18 9 リアクタンス成分のキャンセル方法 アンテナ ・・・ 3.28MHz に共振させる リアクタンス成分のキャンセル ・・・ 共振させる アンテナ f = 3.276MHz インピーダンス整合回路 ・・・ 抵抗成分Rの変換も行う 送信機の出力インピーダンス : 50Ω アンテナの入力インピーダンス : 50Ωにしたい 2017年5月25日 19 単に「インピーダンスは*Ω」と書かれ ているときは,Z=R を示す. このとき,すでに,その回路(アンテナ) は目的周波数で共振(リアクタンス成分 はゼロ → jX=0)していて,Z=R(抵抗 成分のみ)のこと. 2017年5月25日 20 10 回路の設計 2017年5月25日 21 回路の設計 ① 電源の加え方. バイアス設計 ・・・ ② 真空管,トランジスタ, FETの動作点の設定 回路の設計 インピーダンス整合 ・・・ 回路と回路を接続する インターフェース設計 2017年5月25日 22 11 インピーダンス整合回路の設計手順 2017年5月25日 23 インピーダンス整合回路の設計 Step 1 : リアクタンス成分をゼロにする. Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する. Step 3 : 帯域補正をする. 2017年5月25日 24 12 インピーダンス整合回路の設計 (Step 1 : リアクタンス成分をゼロにする.) 2017年5月25日 25 Step 1 : リアクタンス成分をゼロにする. 水タンク A 水タンク C 放水口 送り側の 電子回路 (信号源) 受水口 水 受け側の 電子回路 (負荷) 水 水 水漏れ 穴があいていたら 穴をふさぐ. 水漏れ ホース B (伝送線路) 穴があいていたら 穴をふさぐ. Z=R+j X のリアクタンス成分( j X )をゼロにするということは ・・・ もし,水タンク A,水タンク C に穴が開いていたら → 穴をふさぎ,水漏れを防ぐ. 2017年5月25日 26 13 リアクタンス成分 リアクタンス成分 リアクタンス成分 +jX1 -jX1 抵抗成分 抵抗成分 R1 リアクタンス成分 -jX2 リアクタンス成分をゼロにするた めの外付けリアクタンス部品. リアクタンス成分 リアクタンス成分 +jX2 抵抗成分 R2 回路 1 抵抗成分 回路 2 等価 リアクタンス成分 リアクタンス成分 抵抗成分 抵抗成分 R1 Step 1 リアクタンス成分 をゼロにした. リアクタンス成分がゼロになった回路 1 抵抗成分 R2 抵抗成分 リアクタンス成分がゼロになった回路 2 2017年5月25日 27 「-」と「+」のリアクタンス リアクタンス成分 リアクタンス成分 -jX 抵抗成分 リアクタンス成分 +jX 抵抗成分 R1 インダクタンス (コイル) 回路 「-」のリアクタンス -jX は,キャパシタンス(コンデンサ) を示す. +jX は,インダクタンス(コイル) を示す 「+」のリアクタンス 2017年5月25日 28 14 「+」と「-」のリアクタンス リアクタンス成分 リアクタンス成分 +jX 抵抗成分 リアクタンス成分 -jX 抵抗成分 R1 キャパシタンス (コンデンサ) 回路 +jX は,インダクタンス(コイル) を示す. 「+」のリアクタンス -jX は,キャパシタンス(コンデンサ) を示す. 「-」のリアクタンス 2017年5月25日 29 インピーダンス整合回路の設計 (Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する.) 2017年5月25日 30 15 Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する. 放水口 送り側の 電子回路 (信号源) 受水口 外径 φA 水 外径 φC 受け側の 電子回路 (負荷) 水 水 水タンク A 水タンク C 内径 φB ホース B (伝送線路) Z=R+j X の抵抗成分(R)は,図中の 外径φA,内径φB,外径φC に相当し, 抵抗成分をうまく接続するということは ・・・ もし,外径φA,内径φB,外径φC が等しければ → それらをただ接続すればよい. 2017年5月25日 31 Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する. 放水口 送り側の 電子回路 (信号源) 水 水タンク A 受水口 外径 φA 外径 φC ホース B (伝送線路) 水 受け側の 電子回路 (負荷) 水タンク C 内径 φB 異径ジョイント 異径ジョイント Z=R+j X の抵抗成分(R)は,図中の 外径φA,内径φB,外径φC に相当し, 抵抗成分をうまく接続するということは ・・・ もし,外径φA,内径φB,外径φC が異なれば → それらを異径ジョイントを介して接続する. 2017年5月25日 32 16 異径ジョイントと電子回路の関係 (D1 > D2 のとき) (D1 < D2 のとき) 異径ジョイント 異径ジョイント D2 D1 D1 D2 L L R1 R2 R1 C R2 C (R1 > R2 のとき) (R1 < R2 のとき) インピーダンス変換回路 インピーダンス変換回路 2017年5月25日 33 周波数 f におけるL型インピーダンス整合回路 L R1 R2 C 異径ジョイント 1 ⎧ ⎪ C = 2 π fR [F ] ⎪ 1 ⎨ R 2 ⎪L = [H ] 2π f ⎩⎪ (R1 > R2 のとき) L R1 異径ジョイント C R2 1 ⎧ ⎪ C = 2 π fR [F ] ⎪ 2 ⎨ ⎪ L = R1 [H ] 2π f ⎩⎪ (R1 < R2 のとき) 2017年5月25日 34 17 リアクタンス成分 抵抗成分 リアクタンス成分 抵抗成分 R1 R1 = R2 であれば 直結できる. 抵抗成分 R2 回路 1 回路 2 R1 ≠ R2 のときは インピーダンス整合 回路を入れる. リアクタンス成分 抵抗成分 抵抗成分 R1 回路 1 抵抗成分 インピー ダンス 整合 回路 異径ジョイントに相当 リアクタンス成分 抵抗成分 R2 抵抗成分 回路 2 2017年5月25日 35 インピーダンス整合回路の設計 ( Step 3 : 帯域補正をする.) 2017年5月25日 36 18 共振回路のQとは インピーダンス整合回路の設計のとき |電圧| f0 →設計者はQ の値を適当に決めてよい. 3dB 2Δf Q= f0 2 Δf 周波数 2017年5月25日 37 帯域幅をもたせたL型インピーダンス整合回路 L R1 C R2 Q 1 ⎧ ⎪ C = 2 π fR × Q = 2 π fR [F ] ⎪ 1 1 ⎨ R R Q 2 ⎪L = × Q = 2 [H ] ⎪⎩ 2π f 2π f (R1 > R2 のとき) L R1 C R2 1 Q ⎧ ⎪ C = 2 π fR × Q = 2 π fR [F ] ⎪ 2 2 ⎨ ⎪ L = R1 × Q = R1 Q [H ] 2π f 2π f ⎩⎪ (R1 < R2 のとき) 2017年5月25日 38 19 インピーダンス整合回路の設計 (集中定数回路の総括) 2017年5月25日 39 公式1 型インピーンス整合回路 L RS 信号源 +jX RL インピーダンス整合回路 C L1 -jX L2 負荷:ZL=RL-jX C [条件] アンテナ側のRL成分< RS アンテナ側のX成分<0Ω 2017年5月25日 L Q = RS −1 RL C = Q (F) 2 π fR S L = L1 + L 2 ⎧R Q X ⎫ = ⎨ L + ⎬( H ) 2πf ⎭ ⎩ 2πf 40 20 公式2 型インピーンス整合回路 L RS 信号源 +jX -jX Q = RL −1 RS C = Q (F ) 2 π fR L L1 = RSQ (H ) 2πf L2 = X (H ) 2πf RL インピーダンス整合回路 負荷:ZL=RL-jX L2 L1 C [条件] アンテナ側のRL成分> RS アンテナ側のX成分<0Ω 2017年5月25日 41 公式3 型インピーンス整合回路 L RS 信号源 -jX L 負荷:ZL=RL+jX RS −1 RL C1 = Q (F) 2πfRS C2 = 1 (F) 2πfX C2 [条件] アンテナ側のRL成分< RS アンテナ側のX成分>0Ω 2017年5月25日 Q= RL インピーダンス整合回路 C1 +jX L= RL Q (H) 2πf 42 21 公式4 型インピーンス整合回路 L RS 信号源 -jX RL −1 RS Q = +jX RL インピーダンス整合回路 C1 = Q (F ) 2 π fR L C2 = 1 (F ) 2 π fX 負荷:ZL=RL+jX C2 L C 1 L = [条件] アンテナ側のRL成分>RS アンテナ側のX成分>0Ω RSQ (H ) 2πf 2017年5月25日 43 インピーダンス整合回路の設計事例 (Step 1 : リアクタンス成分をゼロにする.) リアクタンス成分 - jX1 リアクタンス成分 リアクタンス成分 +jX1 抵抗成分 抵抗成分 R1 回路1 リアクタンス成分 + jX2 (条件:R1>R2) C リアクタンス成分 リアクタンス成分 - jX2 L インピーダンス 整合回路 抵抗成分 R2 抵抗成分 回路 2 Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する. 2017年5月25日 44 22 帯域幅をもたせたインピーダンス整合回路 (Step 1 : リアクタンス成分をゼロにする.) リアクタンス成分 - jX1 リアクタンス成分 リアクタンス成分 +jX1 抵抗成分 抵抗成分 R1 回路1 Q= 2017年5月25日 f0 2 Δf リアクタンス成分 + jX2 (条件:R1>R2) QL QC 抵抗成分 R2 インピーダンス 整合回路 スライドページ 「37」を参照 リアクタンス成分 リアクタンス成分 - jX2 抵抗成分 回路 2 Step 2 : 抵抗成分をうまく接続する. 45 23
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