風 のかたち のかたち のかたち

風 のかたち
No.4
47
安田小学校長
新田 哲之
2016
6 年 11 月 24 日
ほめて育てているのですが・・・
小音楽会のために毎日楽器を持って登校する子どもがいました。今日も練習するのですかと
尋ねれば、「はい」と笑顔で答えました。頑張っているのだねと言えば、「うまくなりたいか
ら。」と答えました。小音楽会の当日に聞けなかったので、次の朝、小音楽会はどうでしたか?
と大まかな質問をしてみました。その子どもは、「担任の先生に上手だったねと言ってもらい
と大まかな質問をしてみました。その子どもは、「担任の先生に上手だったねと言ってもらい
ました。」とうれしくてたまらない様子で
ました。」とうれしくてたまらない様子でした。「うまく演奏できた。」や「ミスをして悔し
「うまく演奏できた。」や「ミスをして悔し
かった。」と答えるかと思えば、先生からほめられたことが一番に出てきました。
教育相談で、
教育相談で、お母さんから「ほめて育てているのですが、子どものやる気が出ません。」と
お母さんから「ほめて育てているのですが、子どものやる気が出ません。」と
困っておられることがあります
おられることがあります。教師も子どものやる気のなさを見て、叱るばかりではなくほ
おられることがあります 教師も子どものやる気のなさを見て、叱るばかりではなくほ
めなければと反省することがあります。
めなければと反省することがあります。「ほめて育てる」は、「ほめれば意欲がわく」という
「ほめて育てる」は、「ほめれば意欲がわく」という
ことでしょうか。「ほめればやる気が出る」、さらに、「ほめれば能力が上がる」のでしょう
か?
教育経済学の観点からみると、自尊心が高まれば学力が高まるのではなく、学力が高いとそ
教育経済学の観点からみると、自尊心が高まれば学力が高まるのではなく、学力が高いとそ
の結果自尊心が高まり意欲的になると言われています。
中室牧子氏の著書「学力の経済学」からほめること
中室牧子氏の著書「学力の経済学」からほめることと成績に関する内容
と成績に関する内容
と成績に関する内容の一部を書き出し
を書き出し
てみました。
ました。
●能力が高いことをほめると子どもは意欲を失い、成績は低下する。
●努力をほめると意欲が上がり、成績は上がる。
<実験> 能力をほめるグループと努力をほめるグループに 1 回目のテスト
回目のテストを行う。
を行う。
2 回目のテストではもっと難しいテストをそれぞれに行う。
さらに 3 回目のテストで 1 回目と同程度のテストを行う。
その結果、能力をほめられた子どもたちは、
その結果、能力をほめられた子どもたちは、3 回目のテストで 1 回目よりも成績が下がっ
た。一方、努力
た。一方、努力をほめられたグループは、
をほめられたグループは、
をほめられたグループは、1 回目よりも 3 回目の方が成績
回目の方が成績が上がった
が上がった。
つまり、ほめ方の違いは子どもの取り組み方に影響を与える。「頭が良い」と言われた子
どもは、テストで成績が良いと「頭が良いからできる」と考え、テストの成績が悪いと「才
能がないからだ」と考える傾向がある。一方、「よくがんばったね」と言われた子どもは、
能がないからだ」と考える傾向がある。一方、「よくがんばったね」と言われた子どもは、
難しいテストでも「能力がないからだ」ではなく、「努力が足りなかったからだ」と考え
る。
成績を上げていく子どもは難しいテストであろうが、簡単なテストであろうが、テスト結果
に左右されずに努力を続けています。楽器を演奏する子どもは上手になりたくて、練習
に左右されずに努力を続けています。楽器を演奏する子どもは上手になりたくて、練習してい
してい
るのと同じです
るのと同じです。毎日楽器を持って
。毎日楽器を持って登校していた
。毎日楽器を持って 登校していた子どもは親御さんから、「毎日よくやってい
子どもは親御さんから、「毎日よくやってい
るね」「きょうは1時間続けて練習できたね」
るね」「きょうは1時間続けて練習できたね」と言われているのかもしれません。担任の先生
と言われているのかもしれません。担任の先生
にも、「上手だったね」「よくやったね」と言われ、さらに才能を伸ばしていくのだと思いま
す。