【65】化膿性腱鞘滑膜炎の診断に超音波検査が有用であった1症例 岐阜

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化膿性腱鞘滑膜炎の診断に超音波検査が有用であった 1 症例
◎伊藤 亜子 1)、渡邉 恒夫 1)、篠田 貢一 1)、三原 美咲 1)、多田 早織 1)、野久 謙 1)、古田 伸行 1)
岐阜大学医学部附属病院 検査部 1)
【はじめに】
不均一.プローブの圧迫によって内部エコー
近年,高周波プローブの普及などによって
の可動性を認め,内部に血流シグナルを認め
運動器領域の画像診断に超音波検査(US)が
た.以上の所見より,膿瘍形成を伴う屈筋腱
用いられるようになり,MRI と同等もしくは
腱鞘滑膜炎が考えられた.
それ以上の高分解能の画像で軟部組織を観察
MRI 所見:腱鞘内に T1 強調画像で低信号,
出来ることからもこの領域において欠かせな
T2 強調画像では高信号で描出される病巣認め,
い診断法となってきている.運動器領域にお
周囲に液体貯留を認めた.
ける US に関しては,リウマチ診療における
X 線所見:DIP 関節および PIP 関節に変性を
power Doppler (PD)法による滑膜炎評価がその
認めるが,明らかな骨融解像なし.
代表的な検査である.腱鞘滑膜炎は腱を覆う
以上の結果より,主治医は化膿性腱鞘滑膜
滑膜が炎症を起こすことによって生じ,疼痛
炎を疑い,当院整形外科を紹介.その後,病
や腫張に加え運動機能低下などを引き起こす
巣を除去する外科的処置と抗生剤投与による
ため Quality of Life 維持のためにも早期発見・
治療が行われ,病巣の培養結果からは,黄色
治療が極めて重要である.今回我々は,化膿
ブドウ球菌が同定された.術後の経過は良好
性屈筋腱滑膜炎の診断に US が有用であった1
であり,現在リハビリ継続治療中である.
症例を経験したので報告する.
【症例】
【考察】
化膿性腱鞘滑膜炎は動物の咬傷や切り傷な
66 歳女性.
どにより生じることが多く,誘因なしに発症
既往歴:高血圧.20XX 年 X 月誘因なく,左
することは稀である.化膿性腱鞘滑膜炎は重
中指の違和感があり.左中指中手指節間
症化すると手指の運動に機能障害が生じ,ま
(MCP)関節を中心とした著明な腫脹を認め
た骨形成にも異常が生じてしまう為,早期に
ていた.症状の改善を認めない為,当院皮膚
治療を開始することが重要となる.本症例で
科受診.当初は虫咬傷を疑われ,抗アレルギ
は腫脹の原因が不明であり,抗アレルギー薬
ー薬やステロイド(プレドニゾロン 15
とステロイドの服用では改善を認めなかった.
mg/day)等の服用にて経過観察されるも症状
初期診断で施行された US によって腱鞘滑膜炎
の憎悪を認め,また CRP 1.17 mg/dl とやや高値
および膿瘍形成を指摘したことが治療方針の
であったため US を施行となった.
決定に有用な情報となった.
超音波所見:掌側走査より,左中指屈筋腱
腱鞘滑膜の著明な肥厚を認め,PD 法にて同部
【結語】
原因不明の左手腫脹に対して施行した US に
に中等度の血流シグナルを認めた.また,左
より化膿性腱鞘滑膜炎を認め,治療方針の決
中指屈筋腱周囲(左手掌中部~MCP 関節にか
定に有用であった症例を経験した.原因不明
けて)長径約 5.0 cm、短径約 1.5 cm にわたり
の関節腫脹などの症状が認められる場合,
低エコー領域が観察された.低エコー領域は
US は第一選択検査法であると考える.
形状不整で敷石状,境界不明瞭,内部エコー
(連絡先 058-230-7261)