イオンプレーティング法の成膜時における 過剰

日本金属学会誌 第 80 巻 第 12 号(2016)759
763
イオンプレーティング法の成膜時における
過剰エネルギーに及ぼす熱電子放射フィラメントの影響
1
酒 井 彰 崇1,
ニヨムワイタヤ チョンラウイット1,1
1
篠 岡 樹3,
松 村 義 人1
山本麟太郎2,2
1東海大学大学院工学研究科応用理学専攻
2東海大学工学部原子力工学科
3東海大学大学院工学研究科応用理化学専攻
J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 80, No. 12 (2016), pp. 759
763
 2016 The Japan Institute of Metals and Materials
Effects on Hot Electron Emitter for Excess Energy of Thin Films Formation
by Ion Plating Process
1, Chonlawich Niyomwaitaya1,
1, Rintaro Yamamoto2,
2,
Akitaka Sakai1,
3,
1
1
Miki Shinooka  and Yoshihito Matsumura
1,3Department
2Department
of Applied Science, Graduate School of Engineering, Tokai University, Hiratsuka 2591292
of Nuclear Engineering, School of Engineering, Tokai University, Hiratsuka 2591292
A procedure for the control of the excess energy of Ni thinfilm formation by the ionplating process has been studied. The
excess energy of metal vapor particles is dependent not only on the kinetic energy of metal vapor ions but also on the ionization
rate as the impinging rate of the ions on the substrate. A hotfilament electron emitter was used to increase the ionization rate. Ni
thin films were prepared using the ionplating process with a hotfilament electron emitter. The excess energy introduced during
the Ni thin film formation was determined by plasma diagnostics using the Langmuir probe, Faraday cup, and a multigrid analyzer (MGA) as an ion energy analyzer. The ionization rate of Ni particles (ZNi+/ZNi) increased with electrons emission. The hot
filament electron emitter is effective in increasing the excess energy. Internal stresses in the Ni thin film were tensile in all samples. Tensile stress decreased with increasing ionization rate. Ion bombardment resulted in the enhancement of the compressive
stress possibly because of the ionpinning effect. [doi:10.2320/jinstmet.JAW201602]
(Received May 6, 2016; Accepted September 5, 2016; Published November 25, 2016)
Keywords: ion plating, thin film, excess energy, hot electron emitter
の低い材料を成膜する際にイオン化率を上げるため,しばし
1.
緒
言
ば熱電子放射フィラメントが用いられてきた79) .本研究で
は,熱電子放射フィラメントを用いて成膜した際にプラズマ
イオンプレーティング(以下 IP )法は,蒸発粒子をイオン
診断を行い,過剰エネルギーを算出した.さらに熱電子放射
化させ堆積させることにより,付着強度の向上や,反応ガス
フィラメントを用いることで,薄膜形成時の過剰エネルギー
を導入することによる窒化物などの化合物の作製が容易であ
が薄膜の内部応力にどのような影響を及ぼすのかを検討した.
る13).IP
装置による薄膜作製時においては,蒸発粒子の持
つ高い運動エネルギーが過剰エネルギーとして働く.我々は
これまでに,合金薄膜作製時に IP 法の高い過剰エネルギー
を利用することにより,合金の固溶限の拡張が可能であるこ
実
2.
2.1
験
方
法
成膜方法
とを報告してきた4,5).その際 IP 成膜時に投入される過剰エ
タングステンフィラメントを抵抗加熱することにより熱電
ネルギーはイオン化率に大きく依存することを明らかにし
子放射フィラメントとした.Fig. 1 に示すように熱電子放射
た6).しかし Bunshsh 活性化プローブを用いた三電極方式の
フィラメントを IP 装置内の蒸発源斜め上方に配置した.蒸
IP 装置では蒸発温度が低い(蒸気圧が高い)材料を成膜する
発源上に設置した放電電極に蒸発源に対して正の電圧を印加
際には,プラズマを生成するための蒸発源からの熱電子放出
することで,赤熱(溶融)した蒸発源材料および,熱電子放射
量が少ないためイオン化率が低く,成膜時に大きな過剰エネ
フィラメントから熱電子を引き出し,蒸発粒子と加速された
ルギーを投入することが困難である.これに対して蒸発温度
熱電子の衝突を発生させることで蒸発粒子をイオン化させ
1 東海大学大学院生(Graduate student, Tokai University)
2 東海大学学生(Undergraduate student, Tokai University)
た.蒸発物である Ni を電子銃を用いて加熱し,基板には n
型単結晶 Si(100)を用いて薄膜を作製した.基板のサイズは
760
第
日 本 金 属 学 会 誌(2016)
i=
2.4
ZNi+
ZNi
80
巻
(3)
過剰エネルギーの評価
本研究では基板に投入される過剰エネルギー Ee は以下の
式で表すことができる.
Ee=NA(EA+Eion+Evap-Esub)
(4)
NA はアボガドロ定数であり本研究では 6.02 × 1023 mol-1
を適用した.それぞれの詳しい算出方法は以下の式のように
なる.
EA=ei(Vs-Vsub)
Fig. 1 Schematic diagram for ion plating process with hot
filament electron emitter.
Table 1
Thin film preparation conditions.
Parameter
Applied values
Base pressure
Electron beam output
Discharge electrode voltage
Substrate bias voltage, Vsub
Substrate temperature, Tsub
Substrate
Source-substrate distance
Heating current of tungsten filament, I
Temperature of Ni melt
6.0×104 Pa
220 mA×10 kV
150 V
-150 V
400±10 K
Si(100)
150 mm
0~130 A
2500±100 K
(5)
Eion=
3
kiTion
2
(6)
Evap=
3
k(1-i)Tvap
2
(7)
Esub=3kTsub
(8)
Ni イオンに関してはプラズマ中の熱運動に基づくエネル
ギー Eion と基板に向かって加速されたことによって増加し
たことによるエネルギー EA の合計を持っている. Ni 粒子
の平均自由行程は蒸発源基板間の距離よりも十分に長いの
でイオン化していない粒子は蒸発した際のエネルギー Evap
を持っていると考えられる.式( 5 )の EA はプラズマ空間中
の電位と基板電位の電位差により加速されたイオンの運動エ
4.7 mm×24.7 mm の短冊型で,厚さは 0.28 mm のものを用
ネルギーを表している.e は素電荷 e=1.60×10-19 C,Vs は
いた.成膜速度は水晶振動子を用いて観測し,電子銃出力を
LP 法によって測定された電圧電流特性から求めたプラズ
変化させ制御した.熱電子放射フィラメントに流れる電流を
マ電位, Vsub は基板電位である.式( 6 )の Eion はイオンの
変化させることで熱電子放出量を制御した.製膜条件を
持つ熱エネルギー,式( 7 )の Evap は中性粒子の持つ熱エネ
Table 1 に示す.基板温度は 400±10 K で成膜を行った.作
ルギーであり,蒸発金属原子を単原子分子と仮定して気体分
製した薄膜の膜厚測定には触針法を用いた.
子運動論により求めた.k はボルツマン定数 k=1.38×10-23
2.2
J/K,Tion は MGA を用いて測定したエネルギー分布から求
プラズマ診断
めたイオン温度,Tvap は蒸発粒子の温度であり,溶融 Ni の
成膜中のプラズマ診断をラングミュアプローブ( LP ),フ
表面温度が蒸発粒子である Ni 蒸気の温度と同じであると仮
ァラデーカップ( FC),マルチグリット静電イオンアナライ
定した . 溶融 Ni の表面温度は光高温計で 2500±100 K と測
ザー(MGA)10)を用いて行った.イオン電流を測定する際に
定された.式( 8 )の Esub は基板に堆積し,基板温度で熱平
は,検出部に入射したイオンの電荷量が検出部に入射したイ
衡に達した Ni 薄膜の持つ熱エネルギーであり,基板温度
オンによる二次電子の放出などによって変化しないようにす
Tsub を用いて Dulong Petit の法則により求めた12) .よって
ることが必要である.このような変化を防ぐために二次電子
過剰エネルギーは以下のように表わされる.
阻止板を前面に配置したファラデーカップを用いることで,
Ee=NA(EA+Eion+Evap-Esub)
正確なイオン電流の測定を行った11).
2.3
{
= NA ei (Vs- Vsub )+
イオン化率の評価
3
3
kiTion+ k(1- i)Tvap - 3kTsub
2
2
}
(9)
堆積粒子の入射頻度 ZNi は,堆積膜の密度をバルク密度と
この式からもわかるように,イオン化率 i は EA, Eion, Evap
同等であると仮定し,Ni の密度 rNi,薄膜の堆積速度 rd,Ni
の項に入っているため,イオン化率は過剰エネルギーに大き
のモル質量 MNi を用いて次式から導出される.
く影響を及ぼす.
ZNi=
rd rNi
MNi
(1)
プラズマ中の Ni イオンは全て 1 価のイオンであると仮定す
ると,FC によって得られたイオン電流密度 js 用いてイオン
の入射頻度,ZNi+ は次式から導出される.
ZNi
j
+= s
e
イオン化率 i は次式から導出される.
2.5
内部応力評価
作製した Ni 薄膜の曲率半径は光てこ法を用いて測定し
た.内部応力 sT は以下に示す Stoney の式で求めた13).
sT =
(2)
Esub・t 2sub
6(1-nsub)・tf・R
(10)
ここで Esub は基板のヤング率, nsub は基板のポアソン比,
tsub と tf は,それぞれ基板と膜の厚さであり,R は光てこ法
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第
号
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イオンプレーティング法の成膜時における過剰エネルギーに及ぼす熱電子放射フィラメントの影響
を用いて求めた曲率半径である. sT が正のときは引張応
力,負のときは圧縮応力が膜に生じる.
3.2
過剰エネルギー
基板温度 Tsub で形成された膜が室温 TRT に冷却されたと
熱電子放射フィラメントを用いず, Ni 蒸発粒子のイオン
き,膜と基板の熱膨張率が異なるため両者の収縮の差が次式
化率が 0.1の時のプラズマ電位は 18 V,イオン温度 1.7×
で与えられる熱応力 st を発生させる14).
105 K であった.これらの結果と Table 1 の値を式( 9 )に代
s t=
(a f-a sub)・(Tsub-TRT)・Ef
( 1 - n f)
(11)
入して過剰エネルギーを算出すると 3.3× 101 kJ mol-1 であ
った.熱電子放出フィラメントを用いてイオン化率を 1.8
ここで a f と a sub は,それぞれ膜と基板の平均熱膨張係数,
まで増加させた場合,プラズマ電位は 17 V ,イオン温度は
Ef は膜のヤング率であり,nf は膜のポアソン比である.
1.9× 105 K となり,過剰エネルギーは 3.5× 102 kJ mol-1 と
膜に存在するひずみによって生じる真応力 si は測定され
約 1 桁増加した.熱電子放出フィラメントを用いてもプラ
た応力(残留応力)から熱応力を差し引いた値として求めた.
ズマ電位,イオン温度はほとんど変化しなかったが,過剰エ
s i = s T- s t
(12)
ネルギーは大きく増加した.プラズマ電位,イオン温度があ
まり変化しなかったことから,一つのイオンの持つエネル
結果および考察
3.
3.1
イオン化率
ギーは大きく変わらなかった.しかしながら,熱電子放射フ
ィラメントを用いて,イオン化率を増加させたことにより,
EA , Eion の項のエネルギーが大きく増加した.イオン化率
FC を用いて Ni 薄膜作製時に熱電子放射フィラメントに
が変化したときの各エネルギーの値を Table 2 に示す.イオ
流す電流値を変化させた際のイオン化率の変化を Fig. 2 に
ン化率が増加すると Evap の項のエネルギーは減少するが EA,
示す. Ni 蒸発粒子のイオン化率は熱電子放射フィラメント
Eion のエネルギーの増加が非常に大きいため,全体の過剰エ
に流す電流に依存し,100 A 付近から急増した.これは熱電
ネルギーは増加した.
子放出フィラメントが通電により,より高温になり,熱電子
これまでの研究により,放電電極電圧を増加させた際に
放出量が大きくなったためである. Ni 蒸発粒子イオン化率
は,イオン化率は増加し,イオン温度は高くなることで EA,
は熱電子放射フィラメントを用いることで,0.1から 1.2
Eion が増加することがわかっている15).同様に基板電位を負
まで上昇した.熱電子放射フィラメントを用いずに Ti の成
に深くした場合には,プラズマ電位との電位差が大きくなる
膜時のイオン化率を測定した結果,Ti のイオン化率は 1.5
ことで, EA が増加する15,16) .そのため放電電極電圧およ
であった.同じ温度では,Ni と比較して蒸気圧が Ti の方が
び,基板電位を大きくした際には,一つのイオンの持つエネ
低いことから,同程度の蒸気圧において溶融プール表面温度
ルギーは大きくなるが,イオン化率の小さい場合は大きな過
は Ni に比べ Ti がかなり高くなる. Ti においては表面温度
剰エネルギーが得られなかった.熱電子放出フィラメントを
が高いため,溶融プールの熱電子放出量が Ni に比べて大き
用いた場合,一つのイオンの持つエネルギーはほとんど変化
い.このため蒸発粒子と熱電子の衝突確率が高くなり Ti の
しないが,イオン化率が大きく増加するために,過剰エネル
方がイオン化率が高くなったと思われる.熱電子放出フィラ
ギーは大きく増加した.過剰エネルギーに対してイオン化率
メントを用いることで, Ni のように蒸気圧の高い元素にお
は大きな影響を及ぼしているため,熱電子放射フィラメント
いても低いプール表面温度で熱電子を十分に供給でき, Ti
を用いることで,効率的に過剰エネルギー増加させることが
のように蒸気圧の低い材料と同程度のイオン化率を得ること
可能であることがわかった.
が可能となる.このことからイオン化率は熱電子放射フィラ
メントの表面温度を変化させることで材料の蒸気圧に関わら
ず制御することが可能であり,過剰エネルギーの制御が可能
だと考えられる.
3.3
内部応力
本研究において熱電子放射フィラメント電流を変化させ作
製した薄膜の曲率半径を測定し,真応力を算出した.Fig. 3
に過剰エネルギーに対す真応力の関係を示した.真応力の値
は正の方向に大きくなるほど引張応力が強くなり,負の方向
に大きくなると圧縮応力が強くなる.作製した薄膜はすべて
引張応力であった.過剰エネルギーの増加に従い,引張応力
Table 2 Calculated value of i, EA, Eion, Evap and Esub with and
without electron emitter.
Electron emitter
Fig. 2 Ionization rate of Ni vapor particles as a function of
heating current for hotfilament electron emitter.
OFF
ON
i()
1.0×10
EA/J
2.7×10-20
4.8×10-19
Eion/J
3.5×10-21
7.1×10-20
Evap/J
5.2×10-20
5.1×10-20
Esub/J
1.7×10-20
1.7×10-20
-1
1.8
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日 本 金 属 学 会 誌(2016)
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巻
なく蒸発粒子の持つエネルギーのみが上昇したことになる.
スパッタにおいては,スパッタ粒子の持つエネルギーはスパ
ッタガスとスパッタ粒子の衝突によって減少するため,スパ
ッタガス圧の増加に伴いスパッタ粒子の持つエネルギーは減
少する.本研究におけるイオンプレーティングでの成膜は,
ガス導入を行わないため,ガスとの衝突の影響がないこと
や,プラズマと基板の電位差によりイオンが加速するためス
パッタに比べ粒子の持つエネルギーが高くなり,本研究にお
ける粒子のエネルギーは Thornton model の B と O を結ぶ
境界を越えて A → O 方向になる.そのため,この境界の左
側はエネルギーが低く,右側は粒子のエネルギーが高いこと
Fig. 3 True stress of Ni thin films as a function of captured
excess energy.
を示す.本研究において,熱電子放射フィラメントの付加に
より,蒸発粒子のイオン化率が増加し,蒸発粒子全体のエネ
ルギーが増加した.このため,Thornton Model の A→O 方
向に全体が移動したのと同じ効果となり,低基板温度におい
てもより緻密な膜が作製されたと考えられる.
4.
結
言
イオンプレーティング法において,蒸発粒子のイオン化率
を高めるのに用いられる熱電子放射フィラメントに関しその
効果を蒸発粒子の持つ過剰エネルギーで評価した.Bunshah
活性化プローブを用いた 3 電極配置のイオンプレーティン
グ法に熱電子供給源としてタングステンフィラメントを用い
Fig. 4
Thornton model applied to ion plating process.
た装置構成とした.熱電子放射フィラメントより蒸着時に熱
電子を供給することにより, Ni のように蒸気圧が高く,そ
の表面温度を高くできない場合でも,イオン化率を増加させ
が減少した.蒸着薄膜の引張応力は堆積粒子の凝集および柱
ることが可能であった.熱電子放射フィラメントに流す電流
状組織同士の間隙が発生原因とされている14) .イオン化率
を制御することで, Ni 蒸発粒子のイオン化率を制御するこ
を増化させたことで,高いエネルギーを持つ粒子が多くなり
とができた.蒸発粒子のイオン化率を 0.1 から 1.8 まで
過剰エネルギーが増加した.そのため基板上での粒子の移動
増加させることにより,蒸発粒子の持つ過剰エネルギーは
度が増加し,薄膜の柱状組織間の隙間が埋まったため,薄膜
3.8×101 kJ mol-1 から 3.5×102 kJ mol-1 まで増加した.高
の真応力が圧縮方向に向かって減少したと考えられる17) .
いエネルギーを持つ粒子が多くなることにより,堆積した
スパッタリング法においては,イオン化したスパッタ粒子の
Ni 粒子の基板上での移動度の増加と Ni イオンによるピーニ
運動エネルギーと入射量およびスパッタガスイオンの運動エ
ング効果の増大により,薄膜の引張応力が減少した.
ネルギーがピーニング効果に影響を及ぼすとされてい
る18,19) .本研究において,イオンとしては蒸発物としての
Ni イオンのみであり,Ni イオンの運動エネルギーと入射量
本研究遂行にあたり,東海大学大学院研究指導教員研究教
育奨励金の援助を受けた.関係各位に謝意を表する.
の積である過剰エネルギー Ee の増加に伴い,Ni イオンによ
るピーニング効果が増大し,圧縮方向に応力が変化したと考
文
献
えられる20).
膜組織に対する基板のもつエネルギーと粒子のもつエネル
ギ ー の 薄 膜 組 織 へ の 影 響 を 見 る こ と が で き る Thornton
model をイオンプレーティング方に適用したものを Fig. 4
に示す21).過剰エネルギー Ee は, Fig. 4 における粒子の持
つエネルギーに相当する EA, Eion, Evap の総和と,基板の持
つエネルギーに相当する Esub の差であるため, Thornton
model において過剰エネルギーは B → O 方向に影響を及ぼ
す.前述のように過剰エネルギー Ee は Ni 粒子のもつエネ
ルギーと基板上に堆積し熱平衡状態になった Ni 薄膜のエネ
ルギーとの差として定義される.本研究においては,基板温
度一定で成膜を行ったため,基板の持つエネルギーの変化は
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