撤 退 時 に 気 を つ け た い リ ス ク と そ の 対 応

特集 最近の傾向と事例に学ぶ
別
場面
Part
業 活 動 実 態 調 査 報 告 書 」に よ る と、
みならず各種インフラコストも毎年
す影響は大きい。進出時のFSでは、
上昇しており、進出後の業績に及ぼ
「現地における人件費等コストの上
当該項目に関連する項目についての
株式売却・清算を円滑に進める
4
撤 退 理 由( 複 数 回 答 可 )に つ い て は、
昇」
と回答した企業が最も多く、「日
ま た、 海 外 拠 点 撤 退 時の課 題( 複
撤退時に気をつけたい
リスクとその対応
海外事業撤退の
傾向
人材確保の困難さ」、「現地における
数回答可)
で最も多い回答として、「現
入念な事前調査が重要である。
品質管理の困難さ」が続いている(図
地従業員の雇用関係の整理」、「撤退
本本社の戦略変更」、「現地における
)
。新興国においては人件費の
表
13
海外進出を果たした企業は、現地
で事業活動を行うなかでさまざまな
年度中小企業海外事
課題に直面する。中小機構が公表し
ている
「平成
27
アジアビジネスのリスク対応はこうする
(図表14) 海外拠点の撤退における課題
撤退に係る費用
投下資本の回収
合弁先、取引先等との調整
現地の法制度への対応
現地政府・行政機関等との調整
撤退を相談する相手の確保
特に障害・課題はない
代替拠点の確保
0
10
20
30
40
50(件)
(出所) 中小機構「平成27年度中小企業海外事業活動実態調査報告書」
25
経理情報●2016.11.20(No.1463)
項 目
留意事項
・新興国では業界構造や事業構造、商慣習が日本
とは大きく異なるため、対象会社のビジネスモデ
ビジネス
ルの把握に困難を伴うことも多い。現地の事業
DD
環境の把握を目的として現地専門家に市場調査
を依頼する事例もある。
ITDD
・M&A実行後にIT投資が必要となる可能性があ
るため、DDによって現在のシステム概要のみで
なく、今後導入が必要となるシステムの概要、投
資金額の概算および導入期間を把握することが
重要である。
○システムの導入状況が不十分であることから、
必要な情報が取得できず、適切な意思決定が
困難となる場合がある。
○親会社が金融業などの規制産業に属している
場合、対象会社と業務系システムの統合や、シ
ステムのアウトプット情報および情報セキュリ
ティレベルの統一化が必要となることがある。
・M&A実行前の大気汚染、土壌汚染、水質汚染や
廃棄物の不法投棄についても責任を問われる可
能性があるため、まずはこのような事象の有無を
把握する必要がある。
・COP21
(国連気候変動枠組条約第21回締約国
会議)
のパリ協定などにみられるような、世界的
な環境問題の意識の高まりから、近年、新興国に
環境DD
おいても環境関連の法規制の整備が進んできて
いる。
一方、新興国企業のなかには未だコンプラ
イアンス意識が低い企業も存在しており、現地法
規制への対応が進んでいないことも多い。
現地に
おける環境面の法規制を把握するとともに、対象
会社の工場や建物が古い場合には現行規制に
対応できているかといった点に留意されたい。
・クロスボーダー M&Aでは、
現地の各種法制に基
づく対象会社の法務リスクを理解することが必
要であり、現地の法律専門家の関与は必須であ
る。
また、DDでの検出事項は、M&A当事者間
の交渉、
株式譲渡契約書で取り扱われることとな
る。
外国企業の法務DDでは、特に下記のような
法務DD
項目に留意されたい。
○外資規制、
ライセンス
○知的財産権の侵害
○カルテルや競争法の違反、贈賄規制等のコン
プライアンス
○親会社への利益還元時の配当規制
(図表13) 撤退した(または撤退を検討している)拠点の撤退理由
現地従業員の雇用関係の整理
その他
(図表12)
各種DD領域における留意事項
現地における人材費等コストの上昇
日本本社の戦略変更(海外拠点の再配置等)
現地における人材確保の困難さ
現地における品質管理の困難さ
現地における商習慣や文化の違い
現地における競合企業との競争激化
現地ビジネスパートナーとの関係悪化
日本本社の経営悪化
現地における原材料・部品の調達困難
親会社や取引先の国内回帰
現地における資金調達の困難さ
その他
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10
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60
70 80(件)
(出所)
中小機構
「平成27年度中小企業海外事業活動実態調査報告書」