自動血球測定装置を用いた髄液検査の運用

自動血球測定装置を用いた髄液検査の運用
これからの髄液検査の在り方
◎鈴木 康太 1)
JA 愛知厚生連 豊田厚生病院 臨床検査技術科 1)
【はじめに】
当院は、地域医療を中心とした豊田市の災害拠点病院であり、3次救急を担っている。臨床検査技術科の
日当直業務は2人体制で行っており、髄液検査の細胞数の算定・細胞分類は24時間365日対応する緊急
検査項目に含まれている。しかし、髄液検査は、ルーチン業務として行っていない技師にとっては、慣れな
い業務に不安を感じストレスとなっている。
近年では、髄液・胸水・腹水・関節液など体腔液や穿刺液の測定が可能なモードを搭載した血球分析装置
が登場し、当院では、XNシリーズ(sysmex 社、以下:XN)を導入した。
各種学会において血球分析装置による体腔液・穿刺液の検討報告もされており、検討の結果より髄液検査の
細胞数・細胞分類の測定は、XN で測定する運用に変更した。
【経緯】
導入に至った経緯として、精度管理の向上、報告時間の短縮や技師の負担軽減などが期待された。XN で
の測定は、5分程度で測定できることから報告時間が短縮する可能性が示唆された。計算盤による算定・細
胞分類を行わないことで、技師の不安解消に繋がる。また、精度管理の向上として、細胞数の算定・分類の
技師間差が少なくなり、一定の精度が保たれた結果を報告することが可能であると考えられた。
【運用】
髄液検査は、細胞数の算定と細胞分類(多形核球・単核球の割合)を XN で測定し報告している。しかし、
以下の条件にあてはまる場合は、サムソン液で染色し、Fuchs-Rosenthal 計算盤にて目視算定を追加で行うこ
ととした。
<鏡検条件>
①HF-BF が 1/μL 以上(WBC Abn Scattergram のフラグメッセージが認められた場合)
②WDF スキャッタグラムにて Debris 領域に集団が認められる
【問題点】
鏡検条件を設けた理由として、一部の検体において細胞分類が機械と目視で乖離した為であり、脳室ドレ
ナージ検体に多く認められた。それらの検体では、組織球を認めることが多いため、HF-BF が1/μL 以上で
目視をするようにした。
また、髄液検体の XN による測定において、スキャッタグラムが重要となってくる。異型細胞やクリプト
コッカスなどは、その特徴的なスキャッタグラムから推察することが可能である。そのため、スキャッタグ
ラムが読めないと異常に気付くことが出来ないため見逃してしまう可能性が否定できない。
【今後】
スキャッタグラムは普段から見慣れていれば、それほど難しいものではない。今後も、必要に応じて勉強
会を実施し、問題点の解決に繋げていきたい。また、髄液の生化学データとクロスチェックを行っていない
為、システムで行えるようにしていきたいと考える。
また、細菌や異型細胞、クリプトコッカスの特殊な症例について学会で報告し、更なる精度の向上が望ま
れる。このような特殊な症例では、血液・一般・病理・細菌検査など各部門担当技師が確認した方が良いと
考えるため、他部門との連携も図っていきたい。
連絡先:(0565)43-5000(内線 2963)
e-mail:[email protected]
髄液検査徹底討論!~見出す、輝きあるこれからの軌道~
◎平田 基裕、林 晃司 1)
一般検査研究班 1)
討論会のため抄録掲載しておりません。
なお、企画内容は別途掲載しております。