BK ウイルス感染を疑わせる尿中ウイルス感染細胞のスクリーニング検査

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BK ウイルス感染を疑わせる尿中ウイルス感染細胞のスクリーニング検査の有用性
◎牧原 理江 1)、宮地 英雄 1)、上條 隆雄 1)、野口 輝久 1)、恩田 千佳子 1)、片山 孝文 1)、
楠木 啓史 1)
独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 1)
【はじめに】
であった。尿沈渣でウイルス感染細胞が検出
近年の腎移植は、免疫抑制剤の進歩により急
した 9 名の内、BKV 陽性者は 4 名、JCV 陽性
性拒絶反応が少なくなっている。しかし、こ
者は 6 名、重複者は 2 名であった。
れまで注目されてこなかった BK ウイルスによ
また、細胞診検査デコイセル検出者 21 名の内、
って BKV 腎症を引き起こし、移植腎に重篤な
BKV 陽性者は 7 名、JCV 陽性者は 14 名、重複
腎機能障害をもたらすことが明らかになって
者は 2 名であった。
いる。当院では 2012 年 6 月より尿沈渣実施時
BKV が陽性であり尿沈渣・細胞診検査で共に
にウイルス感染細胞判定をスクリーニング検
ウイルス感染細胞・デコイセルが認められた
査とし取り入れた。
のは 2 名であった。(共に陰性2名)
今回、集計を行い、尿細胞診、血清学的検査
③尿沈渣でウイルス感染細胞が認められ、
(BKV と JCV 感染)と比較し検討した。
BKV 陰性者の内、JCV 陽性者は 4/5 名(80%)
【方法】 であった。(陰性1名)
2012 年 6 月から 2015 年 7 月までに尿沈渣でウ
【考察】
イルス感染細胞判定をオーダされた 238 名
尿沈渣のウイルス感染細胞発見率は尿細胞診
(1681 検体)を対象とし、①ウイルス感染細
に比し低値であったが(3.8%VS13.5%)尿沈
胞の検出率(1/WF<を陽性)②尿細胞診のデ
渣のみでウイルス感染細胞を指摘できる症例
コイセル出現(全視野1個/2 標本<を陽性)
もあった。
・比較、③BKV の PCR-DNA 検査(血清およ
一方、尿沈渣のウイルス感染細胞陽性は 8/9 名
び尿)、また同ポリオーマウイルス属である
(89.0%)に BKV または JCV 感染が認められ、
JCV の PCR-DNA 検査(血清および尿)との比
尿沈渣のウイルス感染細胞判定には JCV が関
較を検討した。
係していることが示唆された。同じパポバウ
BKV、JCV 感染は PCR-DNA 定量陽性(血清
イルス科ポリオーマウイルス属であるため尿
2.0×102 コピー/ml<、尿
沈渣では鑑別が困難と思われた。
1.0×106コピー/m
l<)を基準とした。
【結語】
【結果】
尿細胞診や血清学的検査は結果に時間,コス
①尿沈渣では 9/238 名(3.8%)にウイルス感
トがかかるため、診察前検査として行うこと
染細胞が検出された。
が困難である。尿沈渣でスクリーニング検査
②対象 238 名中 156 名で尿細胞診検査が施行
を行うことは BKV 腎症の早期発見および早期
され、デコイセル検出は 21/156 名(13.5%)
治療に繋がり重要な意義を有することが示唆
であった。
された。 TEL:052(691)7151
尿沈渣、尿細胞診検査におけるウイルス感染
細胞の一致率は 5/21 名(23.8%)であった。
③PCR-DNA 定量では BKV 陽性者は 24/238 名
(10.1%)、JCV 陽性者は 60/238 名(25.2%)