横浜市における下水道管きょのストックマネジメント 脇本 景

講演ダイジェスト
第348回 技術サロン
横浜市における下水道管きょ
のストックマネジメント
脇本 景
横浜市環境創造局管路保全課長 下水道管路に起因する道路陥没は全国で約3,300カ
年が経過した区域は「改良区域」として設定し,面的
所(平成26年度)あると言われています。横浜市では
に年間約50kmでTVカメラ調査を行い,修繕が必要な
平成23年には57件ありましたが,24年は38件,25年は
場合は改良工事を実施しています。幹線は平成20年の
34件,26年は27件と発生数そのものは減ってきていま
時点で供用開始から20年を経過した170幹線(総延長
す。しかし,管路施設は整備後30年を経過すると陥没
約450km)を対象に,現在までに136幹線の目視調査
件数が急増する傾向があるとされていることから,横
を実施しました。
浜市でも同様のことが言えると思います。
破損部位をみてみると,本管11.1%に対し,取付管
ストックマネジメント
が88.9%と圧倒的に多くなっています。特に横浜市で
現在あるストックの把握のためデータベースの整理
は瀝青材を紙に浸透させて製作した軽量・安価・加工
を行い,ストックマネジメントを進めていきます。
性良好な管路(通称Zパイプ)が昭和40年代の宅地開
横浜市では,業務を効率的に運営するための情報共
発の取付管に多く使用されています。平成26 ~ 29年
有ができていませんでした。平成7年から下水道台帳
でこのZパイプ6,900カ所と陶管6,300カ所の布設替え
システムを運用していますが,下水道維持管理システ
をしていきたいと考えています。
ム(清掃,修繕,巡視点検),管きょ調査(TVカメラ)
維持管理手法
情報システム等も同じくあり,それぞれが独立したシ
ステムでした。そこで,管路項目を整理・統一し,維
今後20年間で老朽管が増大すると,今までの事後保
持管理データからリアルタイムに劣化予測ができるよ
全対応では公衆等のリスクの増加が見込まれるので,
うなシステムを現在構築しています。その結果,点検
予防保全型維持管理を推進していきます。前回の中期
調査のための効率的なスクリーニングが可能となりま
経営計画(平成23 ~ 25年)では,管内清掃を年間で
す。また,他課とも連携することで財政状況も加味し
1,800km(全体の15.2%),7年に1回程度の頻度で行
た維持管理計画の策定が可能となるほか,維持管理の
い,修繕費は約13億円かかりました。点検はしていま
実施状況も収集し,これまで経験知でしかなかった土
すが,TVカメラ調査は年間80kmしかできていません。
木事務所や横浜市下水道管理協同組合の情報を形式知
そこで今回の中期経営計画(平成26 ~ 29年度)では,
化していきたいと思います。
清掃は6.5年に1回程度の割合にし,予算も約16億円
本市ではこうして集められたデータを使い劣化予測
に増やしていきたいと考えています。
も行っています。緊急度が推移する確率を設置環境お
古くから管が入れられている臨海部を対象に第Ⅰ
よび経過年数で予測する「マルコフ推移確率モデル」
期,第Ⅱ期と更新区域を設定し,第Ⅱ期区域では供用
を使って解析したところ,通常の維持管理を行う場合
開始年度
(50年超)に基づき約8年ごとのⅠ~Ⅲステー
は年間約370億円かかりますが,予防保全型に移行す
ジに分類。ステージ内を約20haに細分化してリスク
ると約252億円になると試算されました。このように
(流下能力不足管路延長,陶管延長,清掃時点検異常
点検と調査を重点的に行うことでトータルコストが抑
箇所延長等)が高いエリアから優先的に,平成49年度
えられることが分かってきました。今後は,改正下水
までに再整備していきます。
道法で創設された維持修繕基準に対応した計画的な維
道路陥没の危険性が高まるとされる供用開始から30
持管理を推進していきたいと考えています。
下水道機構情報 Vol.11 No.23 ——
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