FX Weekly 平成 28(2016)年 11 月 18 日 GLOBAL MARKETS RESEARCH チーフアナリスト 内田 稔 三菱東京 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group Table of contents 1 今週のトピックス 2 来週の相場見通し 3 来週の経済指標・イベント 4 マーケットカレンダー 1. 今週のトピックス (1) トランプ政権の政策遂行を様子見しそうな Fed シニアマーケットエコノミスト 鈴木 敏之 (2) ユーロ圏の政治リスクに注意 チーフアナリスト 内田 稔 井上 雅文 2. 来週の相場見通し (1) ドル円:予想レンジの引き上げと下落パスの維持 予想レンジ 109.00 ~ 112.00 (2) ユーロ:ドル高と政治リスクを嫌気、年初来安値を更新 予想レンジ 対ドル: 1.0500 ~ 1.0800 対円: 115.00 ~ 119.00 (3) 人民元:下落基調は継続するも下落速度は和らごう 予想レンジ 対ドル: 6.8600 ~ 6.9300 対円: 1 FX Weekly | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 15.75 ~ 16.25 (1) トランプ政権の政策遂行を様子見しそうな Fed Fed は 12 月 14 日に利 上げ再開しそう その後は、新政権の政 策を様子見へ Fedは、12 月 13-14 日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ に進もうとしている。9 月 21 日のFOMC後に示した経済見通しでは、 2016 年に 1 回、2017 年に 2 回の利上げを見込んでいる。大統領選 挙を経て、Fed高官から 12 月 14 日の利上げに前向きな発言が繰り 返されており、12 月 14 日のFOMCは、何か余程のことがない限り 利上げに進みそうである。その先については見方が定まらないが、 金融政策の先行きの戦略を言い切ることがあるセントルイス連銀の ブラード総裁が 11 月 16 日に行なった講演が示唆するところが大き い。要は、トランプ政権の政策がどうなるかわからないので、当座 の見方は変えず、様子をみようというのである。 ① 12 月 14 日の利上げ 12 月 14 日の FOMC は、OPEC 総会、イタ リアの国民投票、米雇 用統計、トランプ政権 への過剰期待の剥落な どで大きな動揺がなけ れば、利上げ再開へ 相次いだFed高官による利上げへの前向き発言を経て、市場の見 る 12 月 14 日の利上げ再開の確率は 96%になっている。ここまでの 期待形成がなされていると、利上げをしないことによる混乱が大き いので、余程のことがない限り、0.25%の利上げがなされそうであ る。その場合、FF金利の誘導レンジは、現在の 0.25~0.50%から、 0.50~0.75%に引き上げられることが見込まれる。 その可能性は小さいが、もし仮に利上げを断念するとすれば、次 の場合であろう。 イ)11 月 30 日のOPEC総会で、減産協調の見方が大きく修正され る場合。 ロ)12 月 2 日に発表される 11 月分の雇用統計で想定外といえる数 字が出る場合。 ハ)12 月 4 日のイタリアの憲法改正を問う国民投票、オーストリ アの大統領選挙で、世界の金融市場に何かのショックが起きる 場合。 ニ)トランプ次期大統領の政策への市場の過剰、偏向のみえる期待 の剥落、ドル高による新興国市場の動揺などによる市場の波乱 が起きる場合。 ② その後の金融政策の進め方 今後の金融政策の見定 めで参考になるブラー ド総裁の講演 要点はトランプ政権の 経済運営を様子見 その後の金融政策の進め方について、11 月 16 日にセントルイス 連銀のブラード総裁の行なった講演が参考になる。ブラード総裁は 選挙結果をふまえて、今後の米国経済をどうみるかについて方向性 を示した。 (講演の内容説明の示されているURL) https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2016/usmonetary-policy-aftermath 2 今週のトピックス | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 イ)選挙結果は、ホワイトハウスと議会が同一政党になったことが 事前の予想外と言えることで、政策が前に進む期待を高めたこ とが市場に(株価上昇、債券利回り上昇、ドル高などの)反応 を引き起こしているところがある。ただし、市場の動揺は、こ の 1 年ほどでみられた範囲でしか起きていない。 ロ)実際に政策が前に進むかは、微妙である。共和党内の路線対立 があり、上院も民主党のフィリバスター(議会の規則内での議 事妨害)を封じるまでの共和党の大勝ではなかった。いずれに しても、政策が経済見通しに影響を与えるのは 2018 年以降に なろう。 ハ)財政発動、規制の変更は、2017 年に法制化され、2018 年、 2019 年、2020 年の経済見通しに影響を与える。こうした政策 は、現在の最大の問題である生産性の成長力を高めることが見 込まれる。税制変更による外国からの資金還流の投資押し上げ 効果も期待される。 ニ)貿易、移民政策は、マクロ経済にやがて大きな影響をもたらす。 要するに、トランプ政権下で今後の経済政策がある程度みえてく るまで、Fedは従来の見方をもとに当座の政策を運営するという見 解である。新政権の政策の進め方については、現時点では不確実性 が大きく、この様子見が現実的な判断といえよう。 ちなみに、ブラード総裁は年内に 1 回の利上げを行い、その後の 利上げは不要という見解である。ブラード総裁は、新政権の政策が 自然利子率を引き上げる可能性をみており、それが明らかになった 場合は、利上げの見方を上方に修正してくるであろう。 ③ イエレン FRB 議長の議会証言 11 月 17 日のイエレン FRB 議長の議会証言 は、市場の利上げ期待 を受容 = 実質的に 12 月 14 日の利上げ告知 11 月 17 日に、イエレンFRB議長が、上下両院合同経済委員会 (JEC)で証言を行なった。 イ)利上げ再開示唆 まず、金融政策、利上げ再開についてであるが、最初のキイノー トで次の発言があった。今後、得られるデータがFOMCの目標に近 づいている証拠になる場合、利上げに進める根拠が強まると判断し、 それは、比較的早く(Relatively Soon)利上げするのが妥当である と、11 月のFOMCは判断していたとしている。 イエレン議長の議会証言のキイノートの中の利上げについての記述 At our meeting earlier this month, the Committee judged that the case for an increase in the target range had continued to strengthen and that such an increase could well become appropriate relatively soon if incoming data provide some further evidence of continued progress toward the Committee's objectives. (キイノートのテキストが掲載されているURL) https://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/yellen20161117a.htm 3 今週のトピックス | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 引き続き、利上げ再開をとりやめる場合もありえるという言い方 ではあるが、12 月 13-14 日のFOMCでの利上げ再開の可能性は大き いとみられる。 この証言の時点で、市場の 12 月 14 日利上げの確率は 90%以上で あった。これだけの期待形成があって利上げをしないと、大きな混 乱になる。もし、利上げをしない可能性をある程度でも思っている のであれば、この機会で、それを打ち消さなければならない。その 打消しをしなかった。 また、利上げの時期について、比較的早く(Relatively Soon)と いう言及があった。金融政策については、If(政策変更を行なうか、 否か)、When (いつ動くか)、How(どういう手段で政策変更す るか)、How Fast(どれ位のペースで政策変更を行なうか)、How Far(どこまで利上げ/利下げを行なうか)の判断が要る。ここで、 Whenについて言及があったのは、もうIfは問題ではないこと、つま り、利上げはやるということを示しているといえる。 ロ)利上げ後の金融政策 利上げ後の金融政策運 営に不透明 その先の金融政策の進め方については、キイノートでは、“Only Gradual” に利上げを進めることを言っている。一方で、質疑応答で は、現在の経済状態と財政発動の度合いに議長は関心を示し、債務 の増加も問題にした。図のとおり、米国の有識者間では、財政の拡 張が米国経済の悪化をもたらす危惧は非常に強い。財政はじめ、新 政権の経済政策如何で、利上げの進め方を調整する可能性を示唆し たといえる。 第 1 図: 米国経済最大の懸案の生産性の伸び率は財政拡張でさらに悪化の危惧も (%) (%) 4.0 3.5 3.0 20 労働生産性 高成長 ↑ 低成長 ↓ 連邦債務少 ↑ 連邦債務多 ↓ 30 40 2.5 50 2.0 60 1.5 70 1.0 0.5 80 0.0 90 労働生産性伸び率の趨勢値(左目盛) 連邦債務対GDP比率(右目盛) (年/月) (資料)米財務省、商務省、労働省のデータより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 これは、ブラード総裁の見方とあわせると、新政権の経済政策の 進め方が見定められたところで大きな軌道修正がありえることにな り、やがて、市場はそこに大きな不確実性をみることになりえる。 4 今週のトピックス | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 また、質疑応答でイエレンFRB議長は、ドット=フランク法に代 表される現行の金融規制の枠組みを保持する姿勢を言った。これは、 一部にある共和党政権ならば、規制は大きく見直しという見方と異 なる。なお、即座に完全否定であったが、議長の任期到来前の離任 について質疑応答があった。こういう話題が、公式の議会証言で出 ることは、今後の不透明を大きくするところがある。 ④ 結び イエレンルールに従え ば、来年の利上げは 2 回 しかし、新政権の政策 が霍乱要因に 先行きについては、イエレンルールという金融政策の決定方式を もとにみると、FOMCが 9 月に示した経済見通しを前提にする場合、 12 月 14 日に 1 回の利上げを行い、来年は 2 回の利上げを行なうと いう姿になる。 既に米国の景気拡大は成熟の時間帯に入っていて、勢いが鈍れば 2 回の利上げはできない。一方で、仮にトランプ次期大統領の政権 が順調に稼働し、大型の財政発動が動きだすようであれば、Fedは その経済の押し上げ効果、債務の増加の弊害を勘案して、利上げの 加速も含めて政策を調整して行くことになろう。不確実性は大きく なる。 第 2 図: イエレンルールにもとづく金融政策の行方 FF 金利=0.75×前期の FF 金利+0.25×[均衡金利+インフレ率+0.5×(インフレ率-目標 インフレ率)+1×産出ギャップ] (%) 12 (%) 10 FOMCの経済見通し とおりに経済が上向 き続けた場合のイエ レンルールによる金 利のパス 8 6 4 2 0 ‐2 ‐4 85 87 89 91 93 95 97 FF金利<左目盛> 99 01 03 05 07 09 11 13 イエレンルールによるFF金利<左目盛> 15 17 (年) (資料)米商務省、労働省、FRB,アトランタ連銀のデータより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 実績の FF 金利は、ゼロ金利期間は、アトランタ連銀のシャドーFF 金利 シニアマーケットエコノミスト 5 今週のトピックス | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 鈴木 敏之 (2) ユーロ圏の政治リスクに注意 ユーロ圏での政治リス クの高まり 英国のEU離脱方針が決定されて以降、欧州ではシリア難民受け 入れ政策を巡り、反EU機運が急速に高まり表面化している。今年 後半と来年に掛け選挙イヤーを迎える欧州だが、難民・雇用・社会 保障政策等を巡る対立構造が更に深刻化する懸念がある(第 1 表)。 欧州における反難民感情が高まる中、今後のイタリアやフランス、 ドイツの政治状況は流動的だ。英国のEU離脱に関する国民投票結 果や、米大統領選挙でトランプ氏が勝利したサプライズもあり、反 難民(反EU)を掲げるポピュリスト政党の台頭には警戒が要る。 第 1 表:欧州主要政治イベント日程 日程 国名 選挙内容 16 / 12 / 4 イタリア 12 / 4 オーストリア 12 月 ドイツ 17 / 1-3 ? イギリス EU 離脱の通告、交渉の開始? 3 / 15 オランダ 下院議会選挙 4 / 23 フランス 大統領選挙(第 1 ラウンド) 5/7 フランス 大統領選挙(第 2 ラウンド) 9 月頃 ドイツ 上院権限縮小の為の憲法改正の是非を問う国民投票 大統領選挙の再決選投票 (10 月 2 日から延期) キリスト教民主同盟 (CDU) 党大会 メルケル首相 4 選に向けた信任投票 連邦議会選挙 (資料)各種報道より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 今後の注目材料 今後を見据えるとユーロ圏における政治リスクをみる上で、迫る イタリアの国民投票の動向に最も注目が集まる。ユーロ圏での政治 リスクが改めて意識されたことを受け、対ドイツでみたイタリアや フランスの金利スプレッドが拡大したこともユーロドル下落の一因 だ(第 1 図、第 2 図)。 第 1 図:ユーロ圏の長期金利の推移 第 2 図:ユーロ圏の長期金利の対独スプレッドの推移 (%) 2.1 (%) 0.9 (%) -0.3 1.8 0.6 -0.6 1.5 -0.9 0.3 1.2 -1.2 0 0.9 -1.5 0.6 -0.3 16/01 16/02 16/03 16/04 16/05 16/06 16/07 16/08 16/09 16/10 16/11 (年/月) ドイツ(左目盛) フランス(左目盛) イタリア(右目盛) スペイン(右目盛) (資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 イタリア国民投票拮抗 が予想される 6 -1.8 16/01 16/02 16/03 16/04 16/05 16/06 16/07 16/08 16/09 16/10 16/11 (年/月) フランス イタリア スペイン (資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 12 月 4 日にイタリアで予定される憲法改正の是非を問う国民投 票は、事実上のレンツィ首相の信任投票と言える(第 2 表)。一部 報道では、国民投票は反対が優勢で、改革派のレンツィ首相は辞任 する可能性が高いとしている。もっとも、世論調査結果は僅差であ 今週のトピックス | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 り、まだどちらに投票するか決めていないとの回答も多く見受けら れることから情勢は極めて流動的だ。 11 月 14 日のラジオインタビューにてレンツィ首相は、国民投票 で憲法改正案が否決された場合、辞任する可能性を改めて示唆した。 首相の進退問題に関わらず、大統領が議会を解散し総選挙を実施す る公算は小さいと予想される。しかし、政治空白が生じれば、銀行 の不良債権処理問題や構造改革は遅れ、政治の先行き不透明感から イタリア経済が弱含む可能性も高く、予断を許さない状況が続く。 ファンダメンタルズでは徐々に下げ渋ると予想するユーロ相場だ が、政治的な要因による下落材料を抱えている点には注意が必要だ。 第 2 表:イタリア国民投票の概要 【投開票スケジュール】 現地時間 2016 年 12 月 4 日(日) 午前 7 時~午後 11 時 投票終了後、即日開票 東京時間 12 月 5 日(月)朝 7 時過ぎには大勢が判明する可能性が高い 【可決条件】 投票率に関する最低ラインの規定はなく、過半数が賛成に達した場合に可決とする 【改正内容】 メインは上院議会の権限を縮小させること 上院議員数を 321 議席から 100 議席に削減する (内、95 人を期間 5 年任期の地方代表者に、5 人を大統領が指名する期間 7 年任期の上院議員とする) 上院議会は解散をしない 上院議会が持つ内閣に対する信任・不信任決議権をなくす 予算案や法案の採決は下院議会が優先される 【注目理由】 事実上のレンツィ首相の信任投票 レンツィ首相は、国民投票で憲法改正案が否決された場合、辞任する可能性を示唆している。 【世論調査】 一部報道では、国民投票は反対が優勢で、レンツィ首相は辞任する可能性が高いと報じている。 但し、世論調査結果は僅差で拮抗している。 まだどちらに投票するか決めていないとの回答も多く、流動的な状況が続いている。 (資料)各種報道より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 チーフアナリスト 7 今週のトピックス | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 内田 稔 井上 雅文 (1) ドル円:予想レンジの引き上げと下落パスの維持 ドル円続伸、110 円台 を回復 ドル円相場が米大統領選後の騰勢を維持している。17 日には、 「relatively soon(比較的早期に)」と 12 月の利上げ実施の可能性 を示唆したイエレンFRB議長の議会証言を手掛かりに、約 5 ヵ月ぶ りとなる 110 円の大台を回復。18 日の日本時間に入ってからも、 さらに 111 円台を目指す勢いだ(第 1 図)。 第 1 図:2011 年以降のドル円相場 (円) 135 125 115 105 95 85 75 11 12 13 14 15 (月) 16 (資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 トランプ次期大統領の誕生に加え、上下両院とも共和党が過半数 を占めた為、法人税の減税を含む税制改正やインフラ投資といった 拡張的な財政政策への期待が市場では高まっている。このため、米 国債の利回りは全般的に上昇し(第 2 図)、米国の主要株価指数も 金融セクターに牽引され、史上最高値圏で推移している(第 3 図)。 第 2 図 :米国債のイールドカーブ変化(大統領選前後) 第 3 図 :米 S&P500 株価指数 (%) 3.5 2300 11/17 3.0 2200 2.5 11/7 2.0 2100 1.5 2000 1.0 1900 0.5 1800 0.0 1 2 3 5 7 10 30(年国債) (資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (月) (資料)Bloomberg データより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 当方は、かねてよりトランプ氏が勝利した場合、市場が嫌う不確 実性が高まるため、従来から予想する円高傾向が加速すると予想し たが、実際の相場は異なる動きをみせている。足もとの勢いは非常 に強く、短期的にはドル円の堅調推移を想定する必要が高まった。 8 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 日米間の予想実質金利差に鑑みても、110 円大台の前半までなら、 異常値とも言えず、予想レンジの引き上げが必要だ。 第 4 図:日米予想実質金利差から推計したドル円の推計±1 標準誤差と実績 (円) 140 130 120 110 100 90 80 実績 推計値-1標準誤差 推計値+1標準誤差 70 60 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 (日米とも名目金利は 2 年物国債、予想物価上昇率は 5 年先 5 年インフレスワップ金利利用。 但し、ドル高円安トレ ンドへの転換や定着は 困難か 17 (年) 一方、2017 年を展望すると、ドル高円安トレンドが定着するこ とは容易ではないだろう。まず、トランプ政権への期待がどの程度、 持続するのか不確実性が極めて高いためだ。法人税減税などは、小 さな政府を志向する共和党と方向性が一致しており、実現の可能性 が高い。しかし、連邦政府債務残高の拡大につながるインフラ投資 は基本的に民主党寄りの政策であり、財源確保を含めて実現性に疑 問も残る。大統領選後の勝利演説をはじめ、トランプ氏の発言内容 が穏やかなものへ修正されている点も見逃せない(第 1 表)。これ らは、市場の安心感を誘う一方、選挙キャンペーン中の発言が、選 挙を意識したものに過ぎなかった可能性を示唆しているためだ。 第 1 表:トランプ氏の選挙キャンペーン中とその後の発言 ・撤廃すると公言してきたオバマケアに関して、オバマ大統領との会談後、その一部の条項を 維持する可能性を示唆。 ・メキシコとの国境にメキシコ政府負担の壁を建設する構想も、一部はフェンスで構わないと トーンダウン。 ・強制送還する不法移民も主張していた「全員」ではなく、「犯罪歴のあるもの」をまずは送還す ると範囲を限定。 (資料)各報道より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 まずは、就任初日(来年 1 月 20 日)に実行するとしていた NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定) からの脱退や撤退方針の表明、中国の為替操作国への指定などが有 言実行されるか注目される。また、減税などの税制改革やオバマケ アの廃止、不法移民対策などは、就任後 100 日間で立法化を目指す としてきた。この為、トランプ新大統領の政策手腕や遂行能力など は、就任から 100 日目となる 4 月末までにある程度、みえてくるだ ろう。しかし、トランプ次期大統領は、政治経験が皆無であり、閣 9 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 僚人事や議会、共和党主流派との関係構築など不透明要素が多い。 多くの公約がスピード感をもって事前の期待に応える内容で実現す る可能性は低いのではないか。 政策のチグハグ感、ア ベノミクスとの比較 次に、政権交代がその後の大きな相場の転換点となったいわゆる アベノミクスと比較すると、トランプ新政権が置かれる状況は多く の点で異なっており、政策のチグハグ感が強い(第 2 表)。 第 2 表:アベノミクスとトランプ政権下で見込まれる政策の方向 アベノミクス トランプ新政権 共同声明で協調コミット (よく言えば)独立 財政 拡張的 拡張的 金融 緩和的 正常化 為替 通貨安 不明瞭 谷付近 (アクセル全開可能) 山付近 (アクセルはインフレへ) 中央銀行との関係 政策の方向 景気循環上の位置 (資料)三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 例えば、2013 年 1 月、日本政府と日銀は、共同声明「デフレ脱 却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携に ついて」を発表するなど、デフレ脱却に向けた相互の強力なコミッ トを示した。当然ながら機動的な財政、大胆な金融緩和、円高是正 (或いは円安誘導気味)の為替政策と、すべての方向性が一致して いた。対する米国では、財政こそ拡張方針が示されているが、金融 政策は正常化(利上げ)が見込まれ、逆向きである上、財政支出拡 大と合わせ、金利上昇を加速するおそれがある。また、インフラ投 資の財源候補に挙がる本国投資法も、ドル高を招くおそれがあり、 景気には強い逆風となろう。仮に、減税措置が実現した場合も、そ のプラス効果を金利上昇やドル高が相殺するとの見方に転じる過程 で、それまでの相場の動きに対する反動を誘うだろう。 財政出動、効果発揮な らインフレへ 一方、公約通りの財政出動が実現し、経済へのプラス効果があら われる場合、完全雇用に近い米国では、インフレ圧力が強まる可能 性が高い。その際、利上げに慎重とされるイエレン議長でさえ、利 上げペース加速を検討せざるを得なくなろう。これは、ドル高要因 との連想を招くが、実際にはそうではないだろう。予想物価上昇率 (期待インフレ率)も上昇するため、ドルの予想実質金利(=名目 金利-予想物価上昇率)はかえって低下すると考えられる。実際、 先の第 4 図でも、最近の米国の予想物価上昇率の上昇を映じ、今後 のドル安円高の可能性を示している。「インフレ通貨は値下がりす る」とのセオリー通り、インフレ圧力が高進すれば、ドル高が抑制 されたり、ドル安へとつながろう。加えて、連続利上げの可能性が 10 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 高まれば、不動産市況や株式相場への下押しとなり、ドル円も水を 注される可能性が高まる(第 5 図)。特に、米国のS&P500 株価指 数の予想株価収益率は、ITバブル期を除くと、18 倍が上値目処と なってきた(現在 18.4 倍、第 6 図)。もちろん金利上昇やドル高 による企業業績への下押しを上回る法人税減税効果があらわれる可 能性はあるが、公約通りに法人税減税が実施されているなら、同じ く保護主義的な政策が実現している可能性が高い。総合的にみて、 米企業の収益環境が必ずしも明るいものとはなっていないと考えら れる。 第 5 図 :米国の不動産価格指数(S&P ケースシラー) 第 6 図 :米 S&P500 株価指数の予想株価収益率 (PER) 220 (倍) 28 持続不能な住宅価格 200 26 24 180 22 予想PER18倍 160 140 20 18 16 120 14 (ITバブル) 100 12 (2000年1月=100) 10 80 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 予想レンジ引き上げ (年) 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (資料)Bloomberg データより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 2012 年以降、政治や経済政策への期待から、ドル円が大きく上 昇した例をみると、持続期間は最長で 2 ヶ月を超え、上昇率でみて 1 割超えも珍しくない(第 3 表)。 第 3 表:過去 5 年間のドル円急上昇の顛末 時期 背景・イベント 期間 (週) 安値 高値 上昇幅 上昇率 (円) (%) 12 年 2 月 日銀、「物価安定の目途」導入 5週 77.36 84.18 6.82 8.8% 12 年 12 月 衆院選で自民党勝利、第 2 次安倍内閣発足へ 7 週 84.8 94.46 9.66 11.4% 13 年 11 月 米政府機関閉鎖解除 10 週 96.94 105.45 8.51 8.8% 14 年 10 月 日銀の追加緩和 6週 109.18 121.86 12.68 11.6% 16 年 7 月 ヘリコプターマネー議論の台頭 2週 100.35 107.49 7.14 7.1% 16 年 11 月 米大統領選でトランプ氏勝利 2週 101.19 110.78 9.59 9.5% (資料)三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 トランプ新政権への期待が燻る年内は、ドル円が底堅さを維持す る可能性が高く、年内の上値目処を現時点では 113 円とする。しか し、ドル高が進んだり、持続するほど、新興国通貨や原油先物相場 の続落を招くなど市場の不安定化を助長する。特に原油先物相場は、 11 月末のOPEC(石油輸出国機構)総会で減産調整が不調に終わる 可能性も低くない。さらに、ドル高は設備投資を抑制するなど、米 11 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 経済にとって引き締めに似た効果を発揮する。こうしたことに市場 の懸念が高まると、トランプ新政権への期待だけでは相場が持ちこ たえられず、意外と早い時期にドル円が大統領選前のレンジ 100~ 105 円圏へと反落する場面も大いに想定されよう。もちろん、米連 邦公開市場委員会(FOMC)が 12 月に利上げに踏み切った後、昨 年同様、年明けより市場が不安定化する可能性も決して低くない。 来年以降の下落パスは 維持 来年を展望すると、第 1 四半期頃までドル円が底堅さを維持する 可能性は残るが、それ以降ともなると、ドル円の上昇トレンドが定 着するとは考えにくい。先に述べた通り、トランプ政権への期待の 持続性が疑わしい上、政策のチグハグ感が強いためだ。また、財政 出動が実現した場合、インフレ圧力が強まる可能性もある。つまり、 トランプ政権の経済政策が、期待倒れに終わった場合は、失望に よってドル円は上昇分を吐き出すであろうし、期待に応えた場合も、 インフレ圧力高進によってドル高が阻まれる可能性が高い。日本で は、株高・円安効果によっていくらか景況感に明るさも戻ろうが、 本質的に予想物価上昇率が高まりにくい(予想実質金利は下がりに くい)状況が続く公算が大きい。足もとの強いドル高圧力が和らぐ と、大統領選前のドル安円高基調へと戻る可能性が高いだろう(第 4 表)。以上を踏まえ、予想レンジを引き上げるが、下落パスを維 持する。 第 4 表:向こう 1 年の予想レンジ (円) 予想レンジ 11 月~12 月 1 月~3 月 4 月~6 月 7 月~9 月 USD/JPY 102~113 99~111 97~109 95~108 (資料)三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 リスク要因 トランプ政権下でも、ドル円上昇が長続きしないとの見方に対す るリスク要因は、ここまでの指摘と逆のことが起きる場合だ。即ち、 トランプ政権下にてインフレ圧力が適切にコントロールされ、米国 の緩やかな景気拡大局面が持続する場合だ。このとき、世界経済へ の前向きの効果が期待され、米国の緩やかな利上げも市場の安定を 脅かすことにはならないだろう。そうしたケースであれば米国の利 上げやその期待は、素直にドル高円安をもたらす。また、そうした 米経済の状態は、日本経済への好影響も想起され、日本の予想実質 金利低下を通じた円安圧力を高めると考えられる。加えて、本国投 資法が施行されると、ドル高への思惑が高まろう。 いずれにせよ、現時点では今後を見通す上での判断材料に乏しい。 状況を注視しながら、シナリオを適宜、点検していく時間帯が続く と考えられる。 来週の予想レンジ ドル円:109.00 ~ 112.00 チーフアナリスト 12 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 内田 稔 (2) ユーロ:ドル高と政治リスクを嫌気、年初来安値を更新 ユーロドルは 1.0822 で寄り付いた(週間高値 1.0826)。トラン プ氏の勝利を受け拡張的な財政政策への期待から米長期金利が大幅 に上昇する中、ドル高が優勢となりユーロドルは軟調に推移した。 イエレンFRB議長をはじめとする米FOMCメンバーによる年内利 上げに関する前向きな発言や、今後の欧州の政治リスクが想起され たことも相俟って、ユーロドルは本稿執筆時点で 1.06 付近と年初 来安値圏で推移している。 今週のレビュー 第 1 図: 今週のユーロドル相場の推移 (ドル) 1.085 ↑ユーロ高 1.075 1.065 ↓ユーロ安 1.055 11/14 11/15 11/16 11/17 11/18 (月/日) (資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 足元の経済指標は、 ユーロ圏経済の底堅さ を示す結果に 足元のユーロ圏の景気動向だが、15 日に公表されたドイツZEW 景気期待指数は 13.8(予想 8.1 前月 6.2)と 4 ヶ月連続で持ち直す 結果となった(第 2 図)。また、ユーロ圏やドイツ、イタリアの第 3 四半期のGDP速報値は、総じて強くはないが安定した結果となっ た(第 3 図)。英国のEU離脱決定から 3 ヶ月が経過した後も、 ユーロ圏経済が低成長ながらも底堅く推移したと評価できる。 もっとも、米大統領選でトランプ氏が勝利したことから、政治と 経済面で不透明感が強まる可能性もあり、今後の景況感には注意が 要るだろう。 第 2 図:ドイツ ZEW 景気期待指数の推移 第 3 図: ユーロ圏各国の GDP 成長率(年率)の推移 110 (%) 6 80 4 2 50 100 0 -2 20 -4 -6 -10 90 13 14 ZEW景況感指数・期待(左目盛) 15 16 (年) Ifo景況感指数・期待(右目盛) (資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 13 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 -8 08 09 ユーロ圏 10 11 ドイツ 12 フランス 13 14 イタリア 15 16 (年) スペイン (資料)Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 来週の見通し 米欧の金融政策のスタ ンスに注目 ECBは 10 月 19、20 日に開催した理事会の議事要旨を公表し、次 回 12 月 8 日開催予定の理事会にて、資産買入策の期限延長の是非 を決定することが判明した。2019 年の予想を含む最新のスタッフ 経済見通しをもとに、資産買入策の内部検証が終了する 12 月に判 断したいとの意見で一致したようだ。また、資産買入のテクニカル に関する変更は、中長期的な物価見通し等に与える影響を勘案して 決定すると指摘。銀行や金融機関の長期的な仲介機能への副作用も 検討し、市場による過度な追加緩和への期待に留意するべきとの認 識も明らかとなった。 前回のECB理事会開催時期と比べ、ユーロ圏の長期金利が大幅に 上昇している。米大統領選挙に関する結果とその影響に関しECBメ ンバーは、経済や 12 月の政策決定に対し影響を与えるかどうかを 判断するには時期尚早とし、冷静になる必要があると発言している (第 1 表)。18 日にドラギECB総裁による講演が予定されており、 次回のECBによる金融政策に関する発言に注目が集まろう。 イエレンFRB議長をはじめとする米FOMCメンバーによる年内利 上げに関する前向きな発言を受け、急速なドル高が進みユーロドル は軟調に推移した。来週もユーロドルが続落する可能性がある。但 し、ECBによる追加緩和拡大への期待が後退するようであれば、米 大統領選後のドル買い一巡後、次第にユーロドルは下げ渋ると予想 する。 第 1 表:ECB メンバーによる発言内容 名前 クーレ ECB 専務理事 発言内容 12 月の政策決定に米大統領選挙の結果が影響を与えるかどうかを言うには時期尚早だ。 プラート ECB 専務理事 市場よりも冷静になる必要がある。 メルシュ ECB 専務理事 ECB は政策調整には非常に慎重。金利の底入れ宣言は近い可能性がある。 レーン・アイルランド連銀総裁 ノボトニー・オーストリア連銀総裁 バイトマン・ドイツ中銀総裁 トランプ氏勝利が経済に及ぼす影響を検証するのは時期尚早。 ECB は必要ならば緊急時に介入する用意がある。政策担当者は当然に警戒を怠ってはならない。 著しい政治的不透明感が現時点で成長見通しを圧迫している。 (資料)各種報道より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 予想レンジ ユーロドル:1.0500 ~ 1.0800 ユーロ円:115.00 ~ 119.00 チーフアナリスト 14 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 内田 稔 井上 雅文 (3) 人民元:下落基調は継続するも下落速度は和らごう 今週のレビュー 6.81 台後半で寄り付いたオンショア人民元(CNY)は、米大統領 選(トランプ氏勝利)後のドル独歩高を背景に続落。新興国通貨全 般に下落圧力が加わる中で、人民元においても、下押し圧力が強 まった。11/18 には、一時 6.8950 まで下落するなど、2008 年 6 月以 来、約 8 年 5 ヶ月ぶり安値を示現している(第 1 図)。一方、元円 相場は、ドル円の上昇に連られて底堅く推移。週末にかけて 16 円 台を突破するなど、約 4 ヶ月ぶり高値を示現している。 第 1 図 : オンショア人民元相場の推移 (USDCNY、逆目盛) 6.10 6.20 ↑ 人民元高 6.30 6.40 6.50 6.60 6.70 6.80 ↓ 人民元安 6.90 7.00 15/01 15/04 15/07 15/10 16/01 16/04 16/07 16/10 (年/月) (資料) Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 元安懸念が再燃している。①トランプ氏勝利後の急速なドル高進 行が主因ではあるものの、②当局が元安を容認しているとの観測、 ③SDR(IMFの特別引き出し権)組み入れ開始に伴うハードカレン シー化(自由に他国通貨と交換可能な通貨)への思惑、④中国経済 に対する先行き不透明感の高まり、⑤国内から国外への資本流出の 動き、⑥外貨準備および米国債保有額の減少と、それに伴う介入余 力への不信感など、中国側に起因する材料も少なくない。事実、人 民元の資本逃避手段として用いられつつある暗号通貨(ビットコイ ン等)は足元で騰勢を維持(第 2 図)。また、本年 2 月以降、低下 傾向を辿ってきたリスクリバーサルにおいても、米大統領選以降、 反転(ドルコール人民元プットオーバーの拡大)の兆しが見られる 状況だ(第 3 図)。こうした中、中国国外で取引されるオフショア 人民元(CNH)は、心理的節目「6.90」台を突破。元の先安観が台 頭する中、オンショアとオフショアの価格差乖離が警戒される。 来週の見通し 第 2 図 : ビットコイン価格の推移 第 3 図 : オフショア人民元のリスクリバーサル (%) (人民元) 5.00 6,000 3ヶ月物USDCNH リスクリバーサル ビットコイン(CNY) 4.00 5,000 ↑ ドルコール人民元プットオーバー 3.00 4,000 2.00 1.00 3,000 2,000 16/01 0.00 16/01 16/04 16/07 16/10 (資料) Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 15 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 16/04 16/07 16/10 (年/月) (資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (年/月) 来週は中国側のイベントに乏しく、米ドル主導の動きが継続しそ うだ。トランプ新政権に対する期待感や米国債利回りの高止まりな どから、来週もドル高地合は続くと見られ、人民元には当面下押し 圧力が加わると予想される。但し、同水準では、介入警戒感も燻る ことから、一方向の下落も想定し辛い。下落基調は継続しつつも、 下落速度は和らぐだろう。来週は、6.86~6.93 のレンジ内での推移 を予想する。 予想レンジ ドル人民元:6.8600 ~ 6.9300 人民元円:15.75 ~ 16.25 アナリスト 16 来週の相場見通し | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 藤瀬 秀平 来週の主な経済指標 21 日 (月) 22 日 (火) 23 日 (水) 24 日 (木) 25 日 (金) 8:50 日 貿易収支(通関ベース、10 月・億円) 18:00 18:00 18:00 8:30 8:30 8:30 8:30 8:30 8:30 22:30 日 米 ユ ユ ユ 米 米 米 米 米 独 独 独 日 日 日 日 日 日 米 市場休場 中古住宅販売件数(10 月・万件) 消費者信頼感指数(11 月速報) 製造業 PMI(11 月速報) サービス業 PMI(11 月速報) 新規失業保険申請件数(11/19・万件) 耐久財受注(前月比、10 月速報) FHFA 住宅価格指数(前月比、9 月) 新築住宅販売件数(10 月・万件) 市場休場 Ifo 景況指数(景気動向、11 月) Ifo 景況指数(現況評価値、11 月) Ifo 景況指数(予想値、11 月) 消費者物価指数(全国、前年比、10 月) 消費者物価指数(全国、除生鮮、前年比、10 月) 18:30 21:30 22:00 1:00 16:00 18:30 21:30 4:00 ユ ユ 米 ユ ユ ユ ユ 米 コスタ・ポルトガル中銀総裁講演 リンデ・スペイン中銀総裁講演 フィッシャー・FRB 副議長講演 ドラギ・ECB 総裁講演 リーカネン・フィンランド中銀挨拶 / 講演 コスタ・ポルトガル中銀総裁講演 コスタ・ポルトガル中銀総裁講演 FOMC 議事要旨(11/1, 2 分) 3:00 3:00 19:35 3:00 12:45 ユ 米 米 ユ 米 日 欧州議会本会議(~24 日) 2 年債入札 5 年債入札 10 年債入札(ドイツ) 7 年債入札 40 年債入札 0:00 0:00 18:00 18:00 22:30 22:30 23:00 0:00 消費者物価指数(全国、除食料エネ、前年比、10 月) 消費者物価指数(東京都区部、前年比、11 月) 消費者物価指数(東京都区部、除生鮮、前年比、11 月) 消費者物価指数(東京都区部、除食料エネ、前年比、11 月) 卸売在庫速報(前月比、10 月速報) 中央銀行関連 21 日 (月) 22 日 (火) 23 日 (水) 24 日 (木) 25 日 (金) その他 21 日(月) 22 日(火) 23 日(水) 24 日(木) 25 日(金) ※市場予想は Bloomberg 調査中央値 時刻は日本時間 *印は作成日(11/18)現在で未確定のもの 17 来週の経済指標・イベント | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 予想 6,100 前回 4,976 544 ▲ 7.8 53.2 52.8 1.1% 0.5% 59.0 547 ▲ 8.0 53.5 52.8 23.5 ▲ 0.3% 0.7% 59.3 110.5 115.0 106.1 0.0% ▲ 0.4% 0.1% 0.2% ▲ 0.4% 0.0% 0.3% 110.5 115.0 106.1 ▲ 0.5% ▲ 0.5% 0.0% 0.1% ▲ 0.4% 0.1% 0.1% マーケットカレンダー 月 2016/11/21 日/貿易収支速報(10 月) 火 水 22 金 24 米/中古住宅販売(10 月) ユーロ圏/消費者信頼感指速報 米/FOMC 議事要旨(11/1, 2 分) 独/Ifo 景況指数(11 月) 耐久財受注速報(10 月) FHFA 住宅価格指数(9 月) (11 月) 新築住宅販売(10 月) ユーロ圏/製造業 PMI 速報 サービス業 PMI 速報 米・フィッシャーFRB 副議長講演 米・2 年債入札 欧州議会本会議(~24 日) 米・7 年債入札 日市場休場 米・5 年債入札 28 ユーロ圏/マネーサプライ M3 独/小売売上(10 月)* 木 23 29 25 米/卸売在庫速報(10 月) 日/消費者物価指数 (都区部 11 月、全国 10 月) 米市場休場 30 12/1 米/GDP 改定(3Q) 米/地区連銀経済報告 米/建設支出(10 月) ADP 雇用統計(11 月) ISM 製造業指数(11 月) (10 月) ケース・シラー住宅価格指数 個人所得・消費支出(10 月) 自動車販売(11 月)* (9 月) シカゴ PM 景況指数(11 月) ユーロ圏/失業率(10 月) CB 消費者信頼感指数 (11 月) ユーロ圏/消費者物価指数速報 中/製造業 PMI(11 月) ユーロ圏/欧州委員会景況指数 (11 月) 日/法人企業統計(3Q) (11 月) 日/鉱工業生産速報(10 月) 独/消費者物価指数速報 住宅着工戸数(10 月) 2 米/雇用統計(11 月) ユーロ圏/生産者物価指数 (10 月) (CPI、11 月) 日/完全失業率(10 月) 家計調査(10 月) 米・ニューヨーク連銀総裁講演 5 米/ISM 非製造業指数(11 月) ユーロ圏/小売売上(10 月) イタリア・憲法改正の是非を問う 国民投票(4 日) オーストリア・大統領選挙の 再決選投票(4 日) 欧州議会本会議(~1 日) 6 米/貿易収支(10 月) 製造業受注指数(10 月) 7 米/求人労働異動調査(10 月) 消費者信用残高(10 月) 独/鉱工業生産(10 月) 日/景気動向指数速報(10 月) 8 ユーロ圏/ECB 理事会 ECB 総裁定例会見 中/貿易収支(11 月) 日/GDP 改定(3Q) 指数速報(12 月) 国際収支速報(10 月) 対外対内証券売買契約等 の状況(11 月) 景気ウォッチャー調査(11 月) 米・シカゴ連銀総裁講演 日・黒田日銀総裁講演 ユーロ圏財務相会合 9 米/ミシガン大消費者信頼感 独/貿易収支(10 月) 中/消費者物価指数(11 月) 生産者物価指数(11 月) 日/法人企業景気予測調査(4Q) EU 経済・財務相理事会 12 13 14 15 16 米/財政収支(11 月) 米/FOMC(~14 日) 中/マネーサプライ M2(11 月)* 輸出入物価指数(11 月) 日/機械受注(10 月) 独/ZEW 景況指数(12 月) 中/鉱工業生産(11 月) 小売売上(11 月) 米/FOMC 米/経常収支(3Q) 米/住宅着工件数(11 月) FRB 議長定例記者会見 NY 連銀景況指数(12 月) 建設許可件数(11 月) 小売売上(11 月) 消費者物価指数(11 月) ユーロ圏/貿易収支(10 月) 生産者物価指数(11 月) フィラデルフィア連銀景況 鉱工業生産(11 月) 指数(12 月) 設備稼働率(11 月) 証券投資収支(10 月) 都市部固定資産投資(11 月) 企業在庫(10 月) ユーロ圏/EU 新車登録台数 ユーロ圏/鉱工業生産(10 月) (11 月) 英/MPC(BOE 金融政策委員会、 製造業 PMI 速報(12 月) サービス業 PMI 速報(12 ~15 日) 月) 日/日銀短観 概要 英/MPC(BOE 金融政策委員会) MPC 議事録 日/日銀短観 調査全容、業種別統計 米・3 年債/10 年債入札 欧州議会本会議(~15 日) 米・30 年債入札 *印は作成日(11/18)現在で日程が未確定のもの 18 マーケットカレンダー | 平成 28(2016)年 11 月 18 日 EU 首脳会議(~16 日) 米・リッチモンド連銀総裁講演 照会先:三菱東京UFJ銀行 グローバルマーケットリサーチ チーフアナリスト 内田 稔 当資料は一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定のお客様のニーズ、財務状況又は投資対象に対応することを意図しておりませ ん。また、当資料は、適用法令上許容される範囲内でのみ利用可能であり、当資料の頒布を制約する法令が存在する地域の方によって利用されることを意 図しておりません。当資料内のいかなる情報又は意見も、預金、有価証券、デリバティブ取引その他の金融商品の売買、投資、保有などを勧誘又は推奨す るものではありません。 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当行はその正確性、適時性、適切性又は完全性を表明又は保証するものではなく、 当行、その子会社又は関連会社は、お客様による当資料の利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。ご利用に関しては、すべて お客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。 また、過去の結果が必ずしも将来の結果を暗示するものではありません。 当行は、当資料において言及されている会社と関係を有し、又はかかる会社に対して金融サービスを提供している可能性があります。当行のグループ会 社は、当資料において言及されている証券又はこれに関連する証券について権利を有し、又はこれらの証券の引受けを行っている可能性があり、また、こ れらの証券又はそのポジションを保有している可能性があります。 当資料の内容は予告なしに変更することがあり、また、当行、その子会社又は関連会社は、当資料を更新する義務を負っておりません。また、当資料は 著作物であり、著作権法により保護されております。当行の書面による許可なく複製又は第三者、個人顧客もしくは一般投資家への配布をすることはでき ません。 (BTMUロンドン支店のみに適用される情報開示) 株式会社三菱東京UFJ銀行(以下「BTMU」)は、日本で設立され、東京法務局(会社法人等番号 0100-01-008846)において登記された有限責任の株式会 社です。 BTMUの本店は、東京都千代田区丸の内二丁目 7 番 1 号(郵便番号 100-8388)に所在しています。 BTMUロンドン支店は、英国会社登録所において、英国支店として登録されています(登録番号BR002013)。 BTMUは、日本の金融庁によって認可及び規制されています。BTMUロンドン支店は、英国プルーデンス規制機構より認可を受けており(FCA/PRA番号 139189)、英国金融行為監督機構の規制とプルーデンス規制機構の限定された規制の対象となっています。英国プルーデンス規制機構によるBTMUロンド ン支店の規制の範囲の詳細は、ご請求いただいた方にお渡ししております。 19 FX Weekly | 平成 28(2016)年 11 月 18 日
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