内閣府経済財政諮問会議 「2030年展望と改革タスクフォース」第4回会合資料 資料4 国際経済・エネルギー・環境 2016年11月14日 (株)資源・食糧問題研究所 代表 柴田明夫 経済学と「(劣化しない無限)自然」 • 「これらの商品は・・・もしわれわれがその獲得に必 要な労働を投下する気になれば、ただ一国におい てだけでなく、多くの国においても、ほとんど無制限 に増加することができるだろう」 リカード『経済学および課 税の原理』第一章 地球規模の自然の限界に達するまでの 「成長の理論」 逆に、経済は自然の限界まで達すると必ず 停 滞し定常状態になる「停滞の理論」。 2 資源・エネルギー・食料の安全保障 • 国民生活、経済・社会活動、国防等に必要な「量」 の資源・エネルギー・食料が、受容可能な「価格」で 確保できること。 Ø 1990年代まで:商品(commodity)としての資源時代 ⇒市場経済下では、あらゆる情報は価格に凝縮される Ø 2000年以降:「戦略物資」としての性格を強める ⇒資源国による「資源ナショナリズム」の動きが高揚 Ø 今後:最近の資源価格の暴落により、資源メジャーの上 流部門への投資が控えられ、2020年以降、新たな需給 ひっ迫要因になる恐れがある。 ⇒水面下では資源権益獲得競争が激化 Ø 「有限な資源」を前提とした対策の必要性(安価な資源時 代は終焉した) 3 国際経済 4 1.日本経済と資源・エネルギー •日本は海外・国内両面から資源・エネルギーの長期的供給制約問題に直面 Øエネルギーは、財政赤字・成長戦略の両面からの解決の鍵。 ⇒急増・急減するエネルギー輸入額 (2010年18兆円⇒2013年28兆円⇒2015年17兆円) 日本の貿易 (通関ベース) 単位:億円 900,000 日本の鉱物性燃料輸入金額 輸出 輸入 700,000 貿易バランス 500,000 300,000 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2016予 -300,000 2001 -100,000 2000 100,000 年度 原油 石油製品 LPG 2010 97,559 17,072 8,283 2011 118,938 23,473 9,280 2012 125,255 26,063 10,645 2013 148,264 27,123 11,185 2014 118,605 24,161 9,406 2015 77,252 17,099 6,037 2016予 39,645 9,264 4,521 15/10年比 0.79 1.00 0.73 (注)2016年は1−4月の実績を年換算 (資料)財務省「外国貿易概況」 •日本の資源・エネルギーResilience戦略 1)長期的には脱石油戦略 2)企業としては省エネ・省資源・CO2削減戦略 3)国家としては資源権益確保(安定調達)戦略 4)官・民学・での資源情報Literacyの向上 LNG 35,492 54,044 62,141 73,424 77,547 47,797 31,527 1.35 石炭 22,615 25,250 22,231 23,435 20,404 19,710 12,678 0.87 億円 合計 181,021 230,985 246,335 283,431 250,123 167,895 97,635 0.93 総輸入金額に占める石油輸入比率 % 30 25 20 15 10 5 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 •アベノミクスのエネルギー戦略(3E(Energy efficiency、Environment、Energy Security of Supply) +S (Energy Safety) ) Ø 「長期エネルギー需給見通し」・・2030年度自給率6%→25%程度 5 2. 国際商品市況は底割れ。13年ぶりの下値へ u 商品市況は 2003-13 年のスーパーサイクルが終焉 NYダウ工業株30種の推移 ドル 19000 18000 17000 16000 15000 14000 13000 12000 11000 10000 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 500 450 17787.0 RJ・CRB指数の推移(1967年=100 ) ⑤ ④ 1956 1959 1962 1965 1968 1971 1974 1977 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013 2016 400 18,312 ③ 350 300 2030年 ② 250 200 ① 150 構成品目19:原油(ウェート23)、暖房用油(5)、無鉛ガソリン(5)、天然ガス(6)、金(6)、 銀(1)、銅(6)、アルミ(6)、ニッケル(1)、小麦(1)、大豆(6)、トウモロコシ(6)、砂糖(5) 、コーヒー(5)、ココア(5)、オレンジ果汁(1)、綿花(5)、生牛(6)、豚赤身肉(1) 100 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 2002 04 06 08 2010 12 2014 2016 6 3.価格は底を探り、新たな均衡点を模索(“Equilibrium Price” Shifting) 鉄鉱石(ブラジル)価格推移 (米セント/DMTU(鉄分1%当たり)、本船渡し) 180 原油スポット価格(全油種平均)の推移 177.00 110 160 146.00 140.60 140 90 120 70 5年平均価格 57.58 101.00 93.74 ドル/バレル 100 80 77.40 60 46.87 50 31.52 30 40 30.05 28.77 21.99 13.75 20 37.90 31.39 17.58 15.49 10 25.46 29.42 15.51 2.11 4.37 -10 2015 16 2010 2005 2000 1995 1990 1985 1980 1975 1970 1965 0 一般炭(豪州)価格の推移 LME銅価格の推移 180 9,000 160 152.00 8,000 140 7,000 120 6,000 ドル/トン 95.80 5年平均価格 5 year averae 100 80 2,000 37.47 43.84 38.41 20 9.32 4,000 73.80 40.91 49.60 40 5,000 3,000 58.38 60 1,000 15.36 2015 16 2010 2005 2000 1995 1990 1985 1980 1975 1970 0 0 1965 米ドル/トン 28.50 18.13 年 7 4.中国経済は、7%前後の「新常態(NEW NORMAL)」へ ●30年間続いた大量投入、大量生産、大量消費という粗放型の経済成長には限界。 中国のGDPの推移 1当たりGDP(ドル/人) 名目GDP(億ドル) 改革開放路線へと転換 南巡講話 WTO加盟 15.2 14.214.0 13.1 80000 11.6 11.3 50000 7.8 7.8 7.6 8.4 8.3 4.1 リーマン ショック 1人当たり GDP (出所)中国国家統計局編『中国統計年鑑(各年版)』中国統計出版社、中国国家統計局公表データ、 日本内閣府『経済財政白書(各年版)』国立印刷局のデータ、IMF等より作成。(注)10-15年予測はIMF10年10月。 12 11 10 09 06 05 04 03 02 01 2000 99 98 97 96 95 94 93 ↓(中国) 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 81 80 79 1978 0 6.9 6.7 天安門事件 10000 7.5 仏を抜い て第5位 伊を抜い て第6位 3.8 7.8 英を抜い て第4位 5.2 20000 10.0 独を抜い て第3位 アジア通 貨危機 30000 9.6 9.1 9.1 8.8 7.6 40000 9.3 9.2 9.1 10.4 10.010.1 10.0 8 8028 16 60000 11.3 10.9 1978年-2009年、平均実質経済成長率⇒10.0% 日を抜い て第2位? 15 10.9 12.7 08 70000 11.7 % 14.2 14 13.5 13 90000 上海万博(10) 北京オリンピック(08) 07 100000 実質成長率(右目盛、%) 0.0 (年) 5.世界経済: IMF 10月の世界経済予測:7月予測から下方修正 • D.ヤーギン「2つの謎」 ①原油価格が50%下落したにもかかわらず、景気刺激効果が生じないのは何故か、②地 政学的リスクが高まっているにもかかわらず、原油価格の高騰につながらないのは何故か。 • 世界経済を取り巻く環境は前回予測よりも悪化している。 ⇒「長期停滞」(secular stagnation)論も台頭(R.サマーズ教授) 世界経済成長率の推移 8.0 10年平均成長率 7.0 2016年 3.1% 2017年 3.4% 6.0 5.0 4.7 5.0 4.0 % 4.1 3.0 3.1 3.3 2.8 2.0 1.0 0.0 1951 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2015 9 6.世界貿易の伸びも、2011年以降は停滞色強まる 世界貿易指数 (物量ベース2005年=100) も停滞 2013年127.8 ⇒14年131.4 ⇒15年133.6 ⇒16年1-3月期132.6 世界貿易&前年比伸び 50.0 100億ドル 40.0 前年比% 30.0 20.0 10.0 0.0 (10.0) (20.0) (30.0) 197375 1980 85 1990 95 2000 2005 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 2010 2014 600 400 200 0 10 7.世界経済:米国の底堅さが試される2017年 EU圏実質GDP年率% ユーロ圏 前年比% 05/1-3 7‐9 06/1‐3 7‐9 07/1-3 7‐9 08/1-3 7‐9 09/1-3 7‐9 10/1-3 7‐9 11/1-3 7‐9 12/1-3 7‐9 13/1-3 7‐9 14/1-3 7‐9 15/1-3 7-9 16/1-3 EU28 -10.0 ドイツ -15.0 -20.0 2.9 0.8 4.0 2.0 (資料)OECD,IMF,内閣府 5.0 -5.0 6.0 世界&日本の実質GDP成長率 10.0 0.0 米国経済成長率(四半期年率) 12.0 11.0 10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 (1.0) 1963 (2.0) (3.0) (4.0) 世界経 済 日本 0.0 -2.0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 -4.0 -6.0 3.1 -8.0 -10.0 3.1 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 米国 2016 日本 緩和縮小に伴う米国 への資金還流 中国 新興国 安い資源を利用した粗放型経済の終焉⇒「新常態」へ 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 中国の発電量、電力消費増加率、GDP成長率 58,105 13.5 13.2 9.5 8.4 11.3 10… 12.1 9.5 固定資産投資額(全社会)と伸び率 16 14 12 8.9 7.7 7.7 7.3 10 6.9 5.9 資源依存の経済。中国向け輸出価格下落の影響大 8 60.0 40.0 30.0 4 20.0 0.5 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014 2015 発電量(億kwh) 電力消費増加率% GDP成長率% 2 0 10.0 51.2 30.1 50.0 6.7 6 3.8 (国民経済発展統計公報) 24.5 10.9 13.7 17.3 22.5 25.1 56.2 35.0 8.0 30.0 6.0 25.0 4.0 20.0 2.0 37.4 44.6 26.3 31.1 20.3 19.3 固定資産投資額 兆元 前年比%(右目盛) ブラジル 実質GDP前期比% 予測 15.0 14.8 10.0 9.8 0.0 5.0 0.0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 0.0 -2.0 -4.0 11 8.2017年の10大リスク(原油安により複合リスクへと発展する恐れ) u 原油価格急落が誘発・増幅するリスク ⇒ ①シェール革命のとん挫(シェール企業破たん⇒金融危機不安)、 ②中東不安定化(財政悪化、OPEC実質分裂、サウジvsイラン国交断絶) ③欧米の制裁に対するロシアの反発 u ロシア=ウクライナ問題 ⇒ ④ルーブル急落・米欧・露関係悪化と中露接近 中東・シリアでのプレゼンス拡大(米国の役割放棄) u イスラム(IS)国の台頭 ⇒ ⑤ローンウルフ・テロ拡大、サウジvsイラン対立 ⑥中東・北アフリカの地政学リスク拡大 u 中国の5大リスクの顕在化 ⇒ ⑦環境、資源、農業、格差、腐敗⇒経済減速 ⑧チャイナショック(人民元安)、南シナ海問題 問題は、こ れら事態が 2015∼16 年に一向に 改善されな いまま、20 17年を迎え ようとしてい ること。 BREXIT、ト ランプリスク で不透明感 は長期化す る恐れ u 2016年大統領選挙:トランプ勝利に伴う経済混乱リスク ⇒ ⑨内向く外交戦略・金融正常化(追加利上げ)の影響 12 u EU問題⇒⑩ドイツ銀行、イタリア銀行経営悪化、難民問題、英EU離脱問題 12 エネルギー 13 9.原油:サウジ vs シェール革命 の“チキンゲーム(消耗戦)” ・原油価格が2014年6月以降、下げに転じた理由: 3つの中長期的要因(米シェールオイルの増産、世界経済の減速による需要低下、自動 車の燃費向上)と1つの短期的要因(OPECの減産見送り) 3,400 3,200 2,783 3,000 2,800 2,600 96.0 3,050 2,617 94.2 3,015 92.7 95.3 95.0 3,110 94.0 93.0 92.0 91.0 90.0 2,200 133.48 93.0 91.2 2,400 90.0 89.0 107.26 89.0 2,000 88.0 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017予 世界需要 100万バレル/日 商業在庫 (左目盛) 39.26 30.78 30.62 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 年 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2月11日、1バレル26ドル 台、12年9カ月ぶりの安値 2000 150 140 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 OECD原油在庫と世界石油需要 100万バレル (資料)OPEC Monthly Oil Market Report 2016,8 1999 ドル/バレル ニューヨーク WTI原油価格(期近)の推移 (資料)NYMEX 14 milion b/d 10.石油需要は史上最高を更新。OPEC、11月30日に協調減産へ 予測 世界の石油需要 (IEA 2016.5) 100 95.9 94.3 95 90 88.4 86.5 86.6 85 89.0 90.0 91.2 92.7 85.6 80 75.9 75 70 65 60 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 200 200 200 2010 2011 2012 2013 2014 "2015"2016 7 8 9 年 OPEC-14カ国の原油生産 国名 •OPECは9月28日、アルジェリアで開かれた非公式会合 で、加盟14カ国の現行生産量3324万b/d→3250万b/dに減 産することで合意。加盟各国の具体的生産量は11月30日 の次回総会で合意を目指す。実現すれば8年ぶりの減産。 •一方、国際エネルギー機関(IEA)は2017年まで供給過剰 が続くと予測。 ①中国・インドなど石油需要の伸び悩み、 ②原油が50ドル近辺では米シェールオイルのリグ(石油掘 削)稼働が活発化する、 ③原油在庫も増加を続け需給が均衡するには時間がかか る(7月末のOECD原油在庫は31.1億バレルと過去最高水 準に積み上がっている)―などが上値を圧迫。 単位 1,000b/d 2014 2015 2016/1 7 8 1,151 1,109 1,084 1,087 1,089 1,660 1,752 1,738 1,782 1,775 222 219 217 230 223 542 545 540 548 542 696 695 707 737 725 2,766 2,837 2,925 3,629 3,653 3,264 3,927 4,384 4,320 4,354 2,744 2,728 2,745 2,783 2,791 473 404 399 304 292 1,911 1,852 1,869 1,549 1,468 716 668 655 662 664 9,683 10,108 10,091 10,447 10,605 2,761 2,853 2,874 2,823 2,952 2,373 2,369 2,324 2,095 2,104 OPEC 計 30,962 32,066 32,552 33,175 33,174 (出所)OPEC Monthly Oil Market Reprort1 - Octber 2016 より作成 アルジェリア アンゴラ ガボン エクアドル インドネシア イラン イラク クウェート リ ビア ナイジ ェリ ア カタール サウジ ア ラビア UAE ベネズエラ 1月からの差 生産能力 7月生産余力 9 1,085 1 1,170 85 1,766 28 1,800 34 211 -6 — — 546 6 570 24 722 15 na na 3,665 740 2,900 -765 4,455 71 3,400 -1,055 2,826 81 2,850 24 363 -36 850 487 1,524 -345 2,000 476 659 4 730 71 10,491 400 12,400 1,909 2,994 120 2,900 -94 2,089 -235 2,600 511 33,394 842 34,170 776 15 12.OPEC諸国の埋蔵量の数値に関する疑念 • 可採埋蔵量の約70%はOPEC諸国が保有。ただ、その数値は各国の自己申 告値。OPEC諸国の申請値は査察がなされておらず信頼度が低いことはIEA も言及。 • 1986年頃に各OPEC諸国は一斉に埋蔵量を増加させた(埋蔵量に比例して OPEC諸国の輸出量を定める方針決定が背景)⇒以後、30年にわたり埋蔵 量は不変。一方、この間、原油生産量はサウジだけでも1,000億b超。 ・1986年頃に合計400⇒700 billion barrel急増 ・それ以降ほぼ一定 ・不自然 ・しかし、全ての石油統計は是認している 17 13.世界の原油生産量増加は、高コストの非在来型原油による IEAは、2016年の油田・ガス田向け投資が4500億ドル(約46.3兆円)で前年比24%減少すると予測。 設備投資は昨年の同25%減少に続き、2年間で3000億ドル余り減少。2017年も IEAは「多くの企業 が上流部門の設備投資を増やす計画をしている兆しはない」と、将来の投資不足を警告。 プロセスゲイン タイトオイル オイルサンド等 NGL 未発見 在来型原油 未開発 既開発 2040 2045 2050 18 石油の将来生産予測 NGL、シェ ールオイ ル、エタノ ールは軽 質で発熱 量は他よ り30-40% 少ない 発熱量換算による修正 シェールオイル 非在来型原油 NGL 未発見 未開発 在来型原油、稼動中 19 石油の将来生産予測 「発熱量換算+EROI」による修正 シェールオイル 在来型原油、稼動中 EROI=10 は、得られ る熱量は、 (10非在来型原油 1)/10=0.9 より10%減 となる。オ イルサンド NGL 、シェール 未発見 オイルの EROI=57程度で、 未開発 30-50%減 の熱量減 少。 20 石油の将来生産予測 更に、下記の項目を修正した結果が下図 ・ 生産の減退率は5%程度が現実的(IEAの予測は3%) ・未開発油田の利用可能量はIEAの50%程度が現実的 ・未発見油田は現実の4倍程度の過大見積もり 出典 What future for petroleum? by Marco Pagani http://cassandralegacy.blogspot.co.uk/2013/01/what-future-for-petroleum.html 21 ETP曲線 Exergy Fuel Oil no.31 141800Btu/Gallon Minimum theoretical waste heat Logistic Curve (統計的回帰モデル) 経済活動に使 えるエネルギー エネルギー入手に必 要なエネルギー 22 石油供給と価格が経済に与える影響(まとめ) (主に海外情報に基づく分析結果) 経済 石油価格$100/バレルを超えると 経済停滞(経験則) 石油価格 石油価格の上限 ≒$100 市場油価の高値安定:$100-110 安価な在来型石油資源の急速な減少 深海油田、非在来型石油などへ 石油価格の下限 ≒$100 石油開発コストの上昇≒$100程度 エネルギー 石油採取の物 収支 理的限界 構造的な 経済不況 産業に大きな影響 石油生産 「市場油価<開発コスト」では開発投資が停滞 ・世界の大手の石油会社は経営悪化 ・新規の石油開発を縮小、延期、中断 中東の産油国の輸出量の減少懸念 シェールオイル(タイトオイル)効果は限定的か? 経済の悪化 数年後には世界の 石油供給量は減少 の方向に 25 14.原油価格低迷に伴う将来シナリオ 短期トレンド (2016∼17年) 短期トレンド (2017∼20年) 中期トレンド (2020∼30年) 経済停滞 原油価格低迷 続く(40㌦台) 石油需要停滞 開発投資減少 (在来型原油)埋蔵量減少 石油需給ひっ迫 埋蔵量減少 脱 石 油 文 明 へ 石油争奪戦 ( 米シェールオイル、加オイルサンドも20年代には減産へ 在来型原油生産は、3割減少(2005年比、IEA) (先進国)脱石油 在来型原油生産は、6割減少(2005年比、IEA) 経済停滞 タ 、 協調減産・油価引き上げへ (90∼80㌦台) ー (産油国)原油(埋蔵量)危機 、 (消費国)石油危機 ) 長期トレンド (2030年以降) 、 原油価格反騰 (70∼80㌦台) I 再 o エ ネ t ビ 一 ッ 次 グ 産 デ 業 24 15.鉄鋼・鉄鉱石: 「供給過剰問題」を抱えた中国鉄鋼業 世界および中国の粗鋼生産 (WSA) 100万t 1,642 世界 Intensity of use and technical innovation 中国の粗鋼生産能力、生産、内需、稼働率 単位:100万t 1,637 1,599 1,598 Demand per capita 1,200 中国 823 815 805 804 1,160 1,200 1,205 79.7 1,000 Technical 800 innovation 600 823 740 400 200 輸出 10,000 11,454 11,240 輸入 Korea 2008 2009 生産能力 粗鋼生産 Japan 2013 2014 2016推 稼働率% 151,423 Taiwan Advanced countries 80,000 China World average 0 93,311 Korea Germany China Japan U.S. Australia Developing countries 20,000 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 16 予 2015 160,000 40,000 2,000 65 Larger GDP 鉄鋼内需 60,000 U.S. 66.8 中国の鉄鉱石供給 万トン 100,000 6,000 0 2012 2011 120,000 8,000 4,000 2010 140,000 9,378 70 60 Steel consumption per capita by major countries (source: WSI) 中国鋼材輸出・輸入の推移 万トン 12,000 80 805 66675 67.0 0 85 70.9 Chinese production 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 1700 1600 1500 1400 1300 1200 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 Malaysia Saudi Arabia 1975 1991 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 Russia India 輸入 Brazil A.国内生産 製品鉱換算A*50% Dollars 25 16.銅:需給緩和で下値を探る展開 世界銅需給予測(Morgan Stanley) • 市況:2010∼11年にかけて欧州債務問題に伴う 世界景気減速懸念から売られる展開。 • 2012年以降、中国の買付意欲低下が弱材料 Ø 2013.6.1より、理財商品の原資となる仮需に対 する輸入規制 予測 5.6 • 国際銅研究会によると2013年の世界需給は4年 ぶりに供給過剰へ。2016年は5.6万tの供給不足 Ø 銅の平均生産コストは3,500ドル/トン前後 • 中国の一部銀行が、不動産等への融資厳格化⇒ 需要・輸入減少懸念から銅下落 • 一方、中国の銅消費量は2000年以降急拡大。世 界シェアは97年の約2割から2013年4割弱へ。 主要鉱山の操 業停止相次ぐ LME銅 ドル/トン 10,000 900 9,000 800 8,000 700 7,000 600 5,601 6,000 LME Copper inventry 1,000t LME銅在庫 1,000t 10年ぶり の高水準 2014.1∼2016.2 500 400 5,000 4,463 4,000 300 3,000 200 2,000 100 2 12 10 8 6 4 2 16 12 15 10 14 8 13 6 12 4 11 2 20 10 2013 20 09 2011 20 08 2009 20 07 2007 20 06 2005 20 05 2003 20 04 2001 0 1,000 28 17.銅鉱石供給:低下する鉱石の品位 1980年代に発見された鉱石の平均銅品位 1.02%に対し、90年代に発見されたものは0.52%と約半分 に低下 世界一の鉱石生産者である CODELCOの銅品位は、1990年の1.34%に対し2008年は0.78% 生産レベルを維持にはプラントの規模拡大や追加のインフラ整備が必要 採掘場所の深部化・硬度化も進行 ⇒ 生産コストの上昇へ 29 18.中国に偏るレアメタル生産。輸出抑制策⇒規制緩和(WTO提訴を受け) 主要金属の価格指数推移 (出所)日経商品情報1993年価格=100 2000.0 1800.0 1600.0 ニッケル アンチモニー チタン 1400.0 1993年=100 セレン 1200.0 銅 1000.0 800.0 600.0 400.0 200.0 0.0 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 年 •レアメタルの委託加工を禁止。 •輸出許可制(希土類、タングステン、アンチ モン)→すべてのレアメタルに拡大。 •還付税の完全撤廃 •輸出税の賦課(原則5%→10%、15%へ) •2008年から希土類の輸出税引き上げ(10% →25%へ)。 •将来的には輸出禁止項目が拡大する恐れ。 Ø 2015年6月1日―米レアアース最大手モリコー プ破産法申請 中国など特定国に偏るレアメタルの生産(2011年) 千トン、シェア% レアメタル 世界生産量 1位 2位 3位 フェロマンガン 13,200 中国(54%) ウクライナ(10%) 南アフリカ(7%) コバルト地金 60 中国(39%) フィンランド(15%) カナダ(8%) タングステン地金 50 中国(76%) ー その他(22%) モリブデン鉱石 242 中国(30%) 米国(25%) チリ(15%) 五酸化バナジウム 103 中国(37%) 南アフリカ(32%) ロシア(25%) ストロンチウム鉱石 420 中国(48%) スペイン(43%) メキシコ(7%) アンチモン地金 40 中国(96%) ベルギー(3%) ボリビア(1%) リチウム 25 チリ(34%) オーストラリア(34%) 中国(18%) 高純度ガリウム 173(トン) ドイツ・フランス(30%) 中国(27%) カザフスタン(17%) バリウム鉱石 6,900 中国(52%) インド(15%) 米国(10%) ビスマス 8 中国(67%) ペルー(14%) ボリビア(3%) インジウム鉱石 574(トン) 中国(52%) 韓国(14%) 日本(12%) レア・アース 133 中国(97%) インド(2%) ブラジル(0%) (資料)石油天然ガス・金属鉱物資源機構「非鉄金属のしおり」2013年版より筆者作成 日本の消費量(シェア%) 中国の消費量 1,200(6%) 10,300(54%) 16(30%) 14(27%) 6(9%) 38(55%) 25(11%) 66(39%) 9.1(11%) 14.5(17%) 31(-) ー 7(-) ー ‐(18%) ー(29%) 130(76%) 欧州(20%) ー ‐ ‐ ー 875(85%) ー 25(24%) 59(55%) 28 ◆非鉄需要:都市化と輸送インフラ 19.中国:鉄道・道路によって都市間を結合する方向へ 2020年までの中国の高速鉄道網計画 n n n n (出所)鉄道部等、丸紅経済研究所。 都市部地下鉄、都市間 高速鉄道、高速道路、都 市・農村間の輸送設備 の建設が進展。 09年、史上最大規模の 投資を行い、鉄道営業 キロ(8.6万キロ)はロシ アを抜いて世界第2位へ。 現在、建設中3.3万キロ、 投資規模2.1兆元(鉄道 部2010/1/21)。 2012年までに鉄道営業 キロが11万キロ、うち高 速鉄道が1.3万キロに達 する計画。高速鉄道が 人口の90%以上をカ バーし、人口50万人以 上の都市をすべて結ぶ。 31 ◆非鉄需要:都市化と輸送インフラ 20.中国:特別高圧送電網によって工業化・都市化を支援 – 中国初の特別高圧交流送電線「山西 省−河南省−湖北省(電圧100万V、 全長654キロ、投資57億元)」は、06 年8月に着工、08年末に完成、試運 転を経て09年2月当たりから正式に 商業運転へ。ほかに建設中の特別 高圧線は、安徽省淮南−上海、内モ ンゴル錫盟−上海、陝北−長沙等が ある。 中国における高圧送電網の展望(2020年) – 国家電網の「堅強スマートグリッド」 発展計画では、特別高圧送電網の整 備は重要な項目である。2020年まで に予定されているスマートグリッド関 連投資1兆のうち、6割強は特別高圧 送電網の整備に投入される予定。 東京電力と 電力中央研 究所と共同 で、設 計に 関する技術 コンサルティ ングを実施。 (05年10月∼ 06年6月) 図1 中国初の特別高圧(100万V)交流送電線 ( 山西省−河南省−湖北省) (出所)『国家電網第11次五カ年電網規画及び2020年展望』、聯合証券、丸紅経済研究所。 ( 写真)http://ns.aew.co.jp/topics/080808_spacer.html 32 21.中国の国家資源戦略の枠組み 供給 備 蓄 (1)供給量 の確保 (2)備蓄の拡充 安定供給のバッファー 役 需要 (3)省エネ の促 進 【国内】増産・新規探鉱 15年迄に石炭を250年分、原油を20数年 分新たに探鉱。石炭を2割増産、鉄鉱石 を1.4倍に増産。 【海外】資源権益の獲得 石油や天然ガス、鉄鉱石、銅鉱石などの 確保を目指し、アフリカ、中近東、中南 米、豪州へのアプローチを強める。 産地備蓄 戦略備蓄 石炭、タングステン、錫、アンチモン、レアアースなど比較 的に豊富な資源を対象。 石油、クロム、銅、ゲルマニウム、インジウムなど不足す る鉱物資源を対象。大豆、トウモロコシ 産業の 高度化 鉄鋼、非鉄金属、石炭、電力、化工、建材といった「二高一資」を 中心に、輸出制限、投資抑制、省エネ、資源の総合利用、技術改 造、効率の向上などを推進し、産業の高度化を積極的に図ってい る。 効率の 向上 GDP当たりエネルギー消費量の削減 05年 (出所)中国国土資源部『全国鉱物資源規画(2008∼2015年)』 対05年比 20%削減 注1 10年 対05年比 60∼65%削減 30年 31 食糧 32 22.「食」(食料品という財)の五つの特徴 l 絶対的な必需品(⇔食糧問題) Ø 成人男子で1日2400キロカロリー l 食品の飽和性(⇔農業問題) この限られた間で需給が 均衡すれば価格が安定 Ø 消費能力に限界 Ø 必需性と飽和性という二つの相反する性格から、食品の適正供給量は非 常に狭い範囲に限られる l 安全性 Ø 農水産物を自分で調理していた時代には、消費者は自分の食べているも のをよく知っていた Ø しかし、フードシステムが複雑化すると、自分の食べている食品の安全性を 確認することができない ― 食品表示問題、ブランドで評価 Ø 政府の役割も「食料の安定確保」から「食料の安全性確保」へ l 生鮮性 Ø 時間によって生鮮度が落ちる(地産地消=くっつく農業) Ø コールドチェーンが発達するとフードシステムが複雑化(離れる農業) l 習慣性 Ø 幼少時代の味は忘れられない(食文化)⇒TPPでは非関税障壁に 33 23.需給緩和を映し急落したものの、下値は固い •3年連続の史上最高生産を受け、穀物価格は急落。しかし、国際市場は一段と不安定化 ドル/ブッシェル ニ ャ 現 象 ニ ャ 現 象 ニ ョ 現 象 米 国 1 0 5 年 来 の 暖 冬 干豪 ば州 つ 1 が0 2 0 年年 連に 続一 度 の ミ シ シ ッ ピ 川 洪 水 ー ニ ャ 現 象 ○ ラ ニ ー ニ ャ 現 象 ● 史 上 最 大 の エ ル ニ ー ○ ○ ラ ラ ニ ニ ー ○ ラ ニ ー ニ ャ 現 象 ニ ョ 現 象 シ米 ッ産 ピ地 川の 大大 洪雨 水 ・ ミ シ な米 作中 付西 遅部 れ長 雨 で 記 録 的 ー ー ニ ョ 現 象 ○ ラ ニ ● エ ル ニ ー ● エ ル ニ ー 19.00 18.00 17.00 16.00 15.00 14.00 13.00 12.00 11.00 10.00 9.00 8.00 7.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0.00 米 国 5 0 年 ぶ り の 干 ば つ 米 中 西 部 乾 燥 天 候 ● エ ル ニ ニ ョ 現 象 州米 同国 時 ・ 干カ ばナ つダ ・ 豪 世 界 的 な 異 常 高 温 り米 の中 干西 ば部 つ半 世 紀 ぶ 米 国 記 録 的 大 雪 大豆 小麦 トウモロコシ 34 (資料)CBOTより作成 24.一段と不安定化する世界の食糧市場 今世紀に入って市場規模・価格水準とも新たなステージに入った。 2012年以降、世界的な過剰流動性食糧市場の変動リスクが拡大。 1. 穀物価格の変動(ボラティリティ)リスクが高まる。 ⇒情報の透明性、投機マネー規制、輸出規制、共通備蓄による対応 2.穀物市場・価格のステージ変化に対応した世界的な農業開発ブーム ⇒新大陸型農業を目指した世界的な商品化、装置化、機械化、情報化、化学 化、バイテク化(生物工学)による供給力拡大 ⇒農業の工業化、脱自然化、普遍化、単作化 3.一方、農業は自然の領域に深く関わるもの ⇒地球温暖化・水不足・植物の多様性喪失・土壌劣化 ⇒テールリスク(滅多に起こらないが、起こった場合の影響が甚大)への対応 4.需要面では、中国の大豆、トウモロコシ輸入拡大予想に加えて、中東・北アフリ カ地域の輸入拡大予想。 35 25.世界食糧市場は4年連続の豊作(需要→供給ショック) ⇒この一方、生産は25億トンで頭打ちとの見方も 需要の約半分 は家畜のエサ 世界の穀物生産・消費&期末在庫率の推移 (米農務省2016.10.12) 2,509.9 2,525.8 40% 2,500 生産量(左)・消費量(右) 35% 30.2% 30% 100万トン 25% 24.5% 21.0% 1,500 16.3% 15.3% 1,000 期末在庫率 穀物=小麦+粗粒穀物+コメ(精米) 500 20% 15% 10% %(期末在庫量/年間消費量) 2,000 5% 0% 36 26.ひたすら単収増を追求してきた米国農業 米国産トウモロコシおよび大豆の単収(ブッシェル/エーカー) 180.0 171.0 160.0 55.0 173.4 51.4 50.0 140.0 45.0 120.0 40.0 100.0 35.0 60.0 遺伝子組み換え(GMO)商業栽培 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 80.0 トウモロコシ(左目盛) 大豆(右目盛) 30.0 25.0 37 26.新興国を中心に70億を超えた世界人口 人口変動と経済成長:Y=Y、Y=P×(Y/P)、 ΔY(経済成長率)=ΔP(人口増加率)+Δy(生産水準上 昇率) ・・・① Δy=ΔY−ΔP・・・② ①と見た場合、成長率を高めるためには人口増加率を高めること が必要。一方、 ②と見ると、生活水準を一定に保つためには、人口増加率に見合 うだけの成長が必要。 Cf.マルサスの悪魔(人口過剰):「人口は制限されな ければ幾何級数的に増えるが、食糧生産は算術級数的 にしか増えない。」⇒貧困、飢餓、戦争 農用地約50億ha 内、草地35億ha 耕地15億ha 38 27.世界の食糧需給の現状と2030年展望 • 需要の現状(1人当たり消費量*人口) – – – – – • 世界人口は1970年の37億人→2011年70億人へ 1.9倍 世界の穀物需要量は、70年の11億トン→13年24 億トンへ2.2倍に増加(1人当たり年間 320kg)。 小麦3.3→7.0億トン、トウモロコシ2.7→9.4億トン、大豆 0.46→2.7億トン、米(精米)2.1→4.7億トン 所得向上に伴う食肉需要の増加:畜産物1kgの 生産に必要な穀物量は7kg(牛11、豚7、鶏肉4、 鶏卵3)⇒7キロ食べさせて1キロ太る食に依存 バイオエタノールの急増:米国のトウモロコシ・エ タノール生産は、07年30億Bu→13年50億Buに 拡大。エタノール向けが飼料向けを上回る。 需要の見通し(2030年) – – – • 世界人口は、70億人→2030年96億人 1人当り穀物消費量320kg→346kg トウモロコシ・エタノールの需要は頭打ち 世界の食糧需要⇒ 供給の現状(生産=収穫面積*単収) – – – • 収穫面積は、1962年の6.48億ha→13年7.0億ha、 (1人当たり収穫面積は、1962年の20.8a→2013 年10.0aに半減。) 穀物単収は、1.4トン/ha→3.5トン/haへと2.5倍に拡 大。但し、その伸び率は60年代の年3%→70年 代2%→80年代後半以降1.5%へと低下。 近年、主産地での干ばつの影響もあり生産量は 伸び悩んでいる。 供給の見通し(2030年) – – – – 農水省予測:2030年の穀物収穫面積は、02∼04 年比10%増の7.3億ha。単収2.9トン/ha→4トン/haへ。 年率では1.1%増に止まる。 遺伝子組み換え作物は、単収の向上よりも生産 コスト削減が狙い。 世界の穀物収穫面積の約3割を占める灌漑農業 においては、地下水枯渇などが問題。 新たなリスク要因:地球温暖化、水不足問題 世界の食糧供給 ⇒ 29億t(7.3億ha*4t) 33億t(96億人*346kg) 39 世界の食糧需給はひっ迫傾向が強まる 28.中国の食糧生産6億トン強:今世紀に入り1.2億トン以上拡大 中国の食糧生産の推移(万トン) 60,703 65,000 60,000 密 植 55,000 62,144 60,193 51,229 50,000 43,060 45,000 黒龍江省国営新華農場のコメ圃場 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 ポテトを新たな必需食品へ ( CNTV 2015.1.18) 40 29.急増する中国の大豆輸入 (出所)中国統計年鑑、米農務省(2016.10) 配合飼料 需要量が 4. 4億トンとなる見通し 中国トウモロコシ需給 単位1,000t 218000 227000 生産量 200000 150000 輸入量 消費量 在庫量 100000 中国の牛肉輸入(枝肉)1,000トン 924 1000 50000 900 800 0 664 700 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 567 600 500 412 200 100000 輸入量 80000 消費量 60000 在庫量 99 100 100700 中国の搾油 工場の能力 は1.4億トン 0 86000 世界の穀物在庫に占める中国(16/17年度末)予測 30,000 25,000 20,000 15,000 40000 70.0 25,734 45.9 11,800 10,000 20000 5,000 0 0 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 721 460 300 生産量 870 515 400 中国の大豆需給 単位1,000t 628 821 774 974 63.8 60.0 20,704 49.0 50.0 21.510,661 10,150 6,806 6,821 40.0 30.0 20.0 10.0 1,468 0.0 小麦 トウモロコシ 世界 大豆 中国 % コメ 41 30.中国農業近代化を加速 • • • 2016年<1号文書> 党中央・国務院は2016年2月、農業について「改革・革新の度合いを強め農業の近代化を加速することに関 する若干の意見」(中央1号文書)を発表。全32項 2004年以降、連続13回、農業問題」が取り上げられていることからも、中国にとって農業問題が如何に重要 な課題(リスク)であるか窺い知れる。 昨年まで、食糧生産能力の増強や農業の構造調整、農産物の品質や食品の安全レベルの引き上げ、など を課題としていたのに対し、今年は最新技術に裏付けられた質の面での自信が感じられる内容。 1.食糧生産能力を絶えず増強する―省長責任制(各省ごとに食糧を自給させる)を徹底させる。 ・「技術による食糧備蓄戦略」(耕地の生産性や技術力を高めることを食糧生産の保障にすること)を実施。干ばつ・水害 に強く、安定して高収穫を上げ、生態環境にやさしい「高基準農地」約6,600万haの確保を目指す。 農地は、重大な水利プロジェクト建設の対象となる。水不足問題に対しては、節水のインセンティブと農業用水の利用効 率を高めるため「用水権取引市場」を育てる。 2.農業の構造調整を掘り下げる―主要農産物の自給水準を科学的に決め、農業の中の各業種の優先順位を合 理的に設定する。油料(搾油作物)、糖料(搾糖作物)、天然ゴムの生産能力整備計画をスタートさせる。 3.農産物の品質と食品安全レベルを高める―農業投入品の管理を厳格にし、農業生産の標準化を強力に推進 する。重要農産物の生産拠点、卸売市場の品質・安全検査試験費補助政策を実行に移す。 4.農業科学技術革新の駆動作用を強める―バイオ育種、スマート農業、農業機械・草地、生態環境などの分野 で一大突破を図る。種子プログラムを継続し、海南、甘粛、四川の3大国家級育種種子生産拠点づくりを進める。農業の 遺伝子組み換え生物の技術研究、安全管理、知識普及を強化する。 ・バイオ育種、ハイエンド農業機械設備、スマート農業(気象観測)、生態環境保護などの分野の基幹技術等で重点的な 突破(ブレークスルー)を図る。IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モバイルインター ネットなどの現代情報時術を活用。現代種子産業の発展推進を図る。 5.農産物の流通方法を刷新する―全国の農産物市場システムの転換・高度化を加速し、施設建設と付帯サービ スを重点的に強化し、取引制度を整備する。 42 環境・水 43 32.エルニーニョ現象と世界の穀物市場への影響 世界の主な異常気象と穀物市場 米 国 年 1970 1971 1972 (●エルニーニョ現象発生、○ラニーニャ現象発生) その他 世 界 穀物市場の動向 1993年春のミシシッピ川大洪水 ○ ● 大干ばつ(ソ連、インド、中国) 1973 1974 中西部干ばつ 1975 1976 中西部干ばつ 1977 1978 1979 1980 南部熱波・干ばつ ソ連大凶作 シカゴ大豆12.9ドル史上最高値 ○ 干ばつ(ソ連) ● ソ連大凶作 シカゴ穀物急騰 干ばつ(中国) 米国・対ソ穀物禁輸 米国穀物大減産 セントヘレンズ火山噴火 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 干ばつ(ソ連) ● 史上最大のエルニーニョ メキシコ・エルチチョン火山噴火 中西部熱波・大干ばつ ソ連大凶作 米国穀物大減産・相場急騰 ○ ● 中西部今世紀最大の干ばつ ○ 米国穀物大減産・相場急騰 ● ミシシッピ川大洪水 ● 長雨 豪州、中国、南アなどの干ばつ 米穀物大減産・相場高騰、平成コメ騒動 米国穀物史上最高の豊作 105年来の暖冬 ミシシッピ川洪水 米、加、豪 同時干ばつ 世界的な高温。 ただ、穀物生産は世界的大豊作 中西部(イリノイ)干ばつ ハリケーン襲来頻発 北半球・南半球同時干ばつ 北半球・南半球同時干ばつ ミシシッピ川大洪水 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 米中西部半世紀ぶりの干ばつ 2013 2014 米国記録的大雪 2015 (資料)資源・食糧問題研究所作成 米国穀物大減産・相場急騰 ○ ●史上最大のエルニーニョ 東南アジア干ばつ ⃝ 中国長江大洪水 米国東部干ばつ ⃝ 米国で高温乾燥懸念 ●エルニーニョ 南米の干ばつ 日本への台風本土上陸新記録10個 ミシシッピ河口港湾機能停止 豪州100年に一度の干ばつ ⃝豪州100年日度の干ばつが2年連続 北米、豪州小麦大減産・相場急騰 大豆相場急騰 大豆10ドル台に急騰後急反落 穀物価格下落 穀物価格高騰 穀物価格史上最高値に高騰 ●豪州大洪水、ロシア干ばつ ○ラニーニャ勢力を盛り返す バングラディッシュ、中国洪水 ●史上最強のエルニーニョ ●史上最強のエルニーニョ 小麦減産・輸出禁止、価格高騰 トウモロコシ価格史上最高値更新 トウモロコシ価格史上最高値更新 2015年の世界平均気 温は、史上最高であ った2014年を更新 2016年の気温はさら に16年を更新 (出所)気象庁 45 33.遺伝子組換え作物(GMO)は食糧問題の救世主か 世界GM作物の栽培面積推移 単位:万ha (資料)ISAAA 18,150 17,920 19,000 17,000 15,000 13,000 万ヘクタール 11,000 9,000 7,000 5,000 3,000 1,000 -1,000 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 年 G M 作物の主要国別作付け状況( 2 0 1 3 年) 栽培面積万ha 栽培作物 米国 7 , 0 1 0 トウモ ロコシ 、大豆、ワタ 、ナ タ ネ他 ブ ラジ ル 4 , 0 3 0 大豆、トウモ ロコシ 、ワタ アルゼンチン 2 , 4 4 0 大豆、トウモ ロコシ 、ワタ カナダ 1 , 0 8 0 ナ タ ネ、トウモ ロコシ 、大豆、テ ンサイ インド 1 , 1 0 0 ワタ 中国 4 2 0 ワタ 、トマト、ポプ ラ、パパイヤ、ピー マン パラグアイ 360 大豆、トウモロコシ、ワタ 南アフリカ 290 大豆、トウモロコシ、ワタ パキスタン 280 ワタ ウルグアイ 150 大豆、トウモロコシ ボリビア 100 大豆 他17カ国 260 合計 17, 520 (出所)バイテク情報普及会 46 34.地球は「水の惑星」:地球上の利用可能な淡水はごくわずか <水資源を逼迫させる諸要因> u人口増加 : 水利用者の増加 u経済成長 : 1人当たり水利用量の増加 工業用水利用の増加 u農業生産増加 : 灌漑用水利用の増加 u汚水の拡大 : 利用可能な水資源の減少 ストックとしてみれば 少ないが、フロー(循 環資源)としてみれば 、偏在性が問題 Ø国際河川での水紛争 Ø河川の断流、湖の縮小 今世紀に入り深刻化しつつある水問題は、 1)限られた水資源をめぐる争奪戦と環境破壊、 2)コモンズ(地元共有資源)か商品か、 3)食糧生産と地下水の枯渇、 4)シェールガス革命と水汚染、 5)奪われる日本の水源、などの対立軸となって現れている。 出所:「我が国水ビジネス・水関連技術の国際展開に向けて 」平成20年7月、経済産業省 Ø地下水位の低下 Ø汚染拡大と生態系の変 容 Ø2025年には世界人口の 半数が水不足 49 35.国内の水資源フル活用へ 1.災害時の緊急支援物資・渇水地域への飲料水、農業・産業用水の国内外への供給 2.特定港から船のバラスト水、ダブルハル化された空隙、水バックでの水輸送 50 36.経済発展とともに変化する世界の水市場 日本企業が目標とする地域とその課題 世界水ビジネスのカテゴリー区分 出所:産業協力懇談会「水処理と水資源の有効活用技術 」08年3月 【 原典:常杪、井村秀文、アジアの都市インフラ整備における海外直接投資に関する調査研究(2002)を元に作成】 51 38.電力小売り自由化で拡大する総合エネルギ市場 自由化によって新たに開放される7.5兆円の電力市場規模に止まらず、異業種の参入、 様々な関連サービスの拡大、需要家の選択肢の拡大、技術革新の進展などの相乗効 果により市場規模のさらなる拡大が期待される。 電力自由化で広がる事業機会の概念図 分散型発電会社(再生エネルギー) 集中型発電会社 電源 太陽光発電 風力発電 地熱発電 バイオマス発電 サービス事業者 中小水力発電 火力発電 電力広域的運用推進機関 (OCCTO) 石油 天然ガ LPガス 電力市場 7.5兆円 石炭 水力発電 ・ ・ スマートグリッド 原子力発電 据え置き 型蓄池 燃料電池 家庭 家庭 家庭 ・・・・・・ 電力需要家 企業 企業 企業 企業 市 場 規 模 の 拡 大 51 結び.資源・エネルギーのResilience戦略を 52
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