2016 年 11 月 14 日 プレスリリース スマート農業に関する調査を実施(2016 年) ~2018 年度以降、農機の無人運転を実現する精密農業により、市場は拡大推移と予測~ 【調査要綱】 矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内におけるスマート農業について調査を実施した。 1.調査期間:2016 年 7 月~9 月 2.調査対象: スマート農業参入事業者、農業法人<水稲/農園芸(野菜・果樹・花き)/酪農・畜産>、関連団体・協会、管轄官庁等 3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail 等によるヒアリング調査および文献調査併用 <スマート農業とは> 本調査におけるスマート農業とは、従来からの農業技術とロボット技術や ICT 等の先端技術を連携させることで、超省力化や高 品質生産等を可能にする新たな農業であり、農業の生産から販売まで先端技術を活用し、高い農業生産性やコスト削減、食の安 全性や労働の安全等を実現するものである。 <スマート農業市場とは> 本調査におけるスマート農業市場規模は、①栽培支援ソリューション(農業クラウド、複合環境制御装置、畜産向け生産支援ソリ ューション)、②販売支援ソリューション、③経営支援ソリューション、④精密農業(GPS ガイダンスシステム、自動操舵装置、車両型 ロボットシステム)、⑤農業用ロボットを対象として算出した。(詳細は表 1 を参照のこと) なお、国内市場を対象とし、市場規模には 農業向け POS システム、農機、農業用ドローン等は含まれていない。 【調査結果サマリー】 ◆ 2015 年度のスマート農業国内市場規模は 97 億 2,400 万円、 栽培支援ソリューションが全体の約 3 割を占める 2015 年度のスマート農業の国内市場規模は 97 億 2,400 万円と推計した。内訳をみると、栽培支援ソリューショ ンが 30 億 6,700 万円(栽培支援ソリューションの内訳:農業クラウド 11 億 2,500 万円、複合環境制御装置 14 億 2,500 万円、畜産向け生産支援ソリューション 5 億 1,700 万円)と全体の約 3 割を占め、販売支援ソリューションが 9 億 7,300 万円、経営支援ソリューションが 25 億 6,300 万円、精密農業が 29 億 500 万円(精密農業の内訳:GPS ガイダンスシステム 10 億 500 万円、自動操舵装置 19 億円)、農業用ロボットが 2 億 1,700 万円であった。 ◆ 2022 年度のスマート農業国内市場規模は 331 億 8,600 万円に拡大すると予測 スマート農業の国内市場は、2017 年度頃まで栽培支援ソリューションが中心となり、2018 年度以降は、販売支 援ソリューションや経営支援ソリューションが拡大する見通しである。その後、農機の無人運転を実現する精密農 業が普及する見込みで、2022 年度の同市場規模は 331 億 8,600 万円まで拡大すると予測する。 ◆ 資料体裁 資料名:「2016 年版 スマート農業の現状と将来展望 ~省力化・高品質生産を実現する農業IoT・精密農業・農業ロボットの方向性~」 発刊日:2016 年 9 月 30 日 体 裁:A4 判 401 頁 定 価:190,000 円(税別) 株式会社 矢野経済研究所 所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝 設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/ 本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/) ㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected] 本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。 本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 11 月 14 日 プレスリリース 【 調査結果の概要 】 1. スマート農業とは スマート農業は、従来からの農業技術とロボット技術や ICT 等の先端技術を連携させることで、超省力化や高 品質生産等を可能にする新たな農業※である。例えば、スマート農業により、収穫量増加等のための化学肥料の 投入や農薬の散布は、土壌や作物の状況に応じて最適に調整することができ、大規模生産のためのトラクター 等の農業機械(以下 農機)は、GPS 等により自動運転の実用化が期待されている。さらに、センサー等により得 たビッグデータを解析することで、熟練生産者が行ってきた技術の再現や、病害虫の発生予測、収穫時期・収穫 量の予測も可能となる。また、農林水産省では、使用者が別の農機に搭乗して無人機を監視する方法による「ロ ボット農機に関する安全性確保ガイドライン」の最終案を 2016 年 3 月に公表しており、ガイドライン策定に向けた 検証を行うなどスマート農業の実現に向けた動きは活発化している。 ※参考資料:養液栽培システム市場に関する調査を実施(2016 年)2016 年 5 月 31 日発表 http://www.yano.co.jp/press/press.php/001564 2. スマート農業の現況と予測 2015 年度のスマート農業の国内市場規模は 97 億 2,400 万円であり、2016 年度 110 億 4,800 万円、2022 年度 には 331 億 8,600 万円まで拡大すると予測する。スマート農業市場は、2017 年度頃まで栽培支援ソリューション が中心となり、2018 年度以降は、販売支援ソリューションや経営支援ソリューションが拡大する見通しである。ま た、農機の有人機と無人機による協調作業システムや無人運転を実現するシステムが普及していくことから、 2018 年度頃から精密農業が更に拡大すると予測する。 一方で、スマート農業における課題・問題点としては、農業は、①他業種に比べ設備導入までの時間が掛かる、 ②データがストックできるまで時間が掛かる、③スマート農業の必要性を感じていない生産者が多い、④零細な 生産者が多いため、大きな設備投資が難しい、といったことが挙げられる。そのため、メーカーが新規の製品開 発等を行った場合は、安価での製品提供が困難となり、その結果として導入が進みにくくなると考える。今後、官 民連携してでき得る限り標準化等を進めたり、既存の技術・部品の活用等により、製品開発コストの削減につな げる努力が必要であると考える。 図 1. スマート農業国内市場規模推移と予測 (単位:百万円) 35,000 30,000 33,186 栽培支援ソリューション 販売支援ソリューション 精密農業 農業用ロボット 経営支援ソリューション 25,000 28,315 23,287 20,000 18,804 14,966 15,000 12,477 11,048 10,000 9,724 5,000 0 2015年度 2016年度 (見込) 2017年度 (予測) 2018年度 (予測) 2019年度 (予測) 2020年度 (予測) 2021年度 (予測) 2022年度 (予測) 矢野経済研究所推計 注1.事業者売上高ベース 注2.2016 年度は見込値、2017 年度以降は予測値 注3.スマート農業市場規模には、農業向け POS システム、農機、農業用ドローン等は含まれていない。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 11 月 14 日 プレスリリース 3. ソリューション分野別動向 3-1. 栽培支援ソリューション(農業クラウド、複合環境制御装置、畜産向け生産支援ソリューション) 2015 年度の栽培支援ソリューション市場規模は 30 億 6,700 万円であり、内訳は農業クラウド 11 億 2,500 万円、 複合環境制御装置 14 億 2,500 万円、畜産向け生産支援ソリューション 5 億 1,700 万円であった。 農業クラウドにおいては、今後、生産者の負担となっている入力作業が簡易なツールやセンサー搭載の農機 などが多数登場し、また、農産物の需要家である食品関連事業者から、IT 化によるトレーサビリティがより一層求 められることから、農業クラウドを利用する生産者数は拡大すると見る。しかし、生産者向けの利用料金は低価格 のソリューションが多いため、金額ベースでの大きな伸びはないと考える。 3-2. 販売支援ソリューション 2015 年度の販売支援ソリューション市場規模は 9 億7,300 万円であった。販売支援ソリューションでは、今後は AI やビッグデータを活用した需給予測などのソリューションが登場し、市場は拡大すると見込む。また、政府の 推進する農林水産物の輸出促進政策も追い風となり、生産から販売までの関連事業者を繋ぎ、4 定(定量、定時 期、定品質、定価格)を実現するソリューションの高度化も、引き続き期待される。 3-3. 経営支援ソリューション 2015 年度の経営支援ソリューション市場規模は 25 億6,300 万円であった。現在は会計業務におけるソフトウェ アが中心であるが、今後は農家の経営を把握し、生産者向けのサービスを提供する金融機関や保険会社で利 用されるソリューションが増加していくと考える。 3-4. 精密農業(GPS ガイダンスシステム、自動操舵装置、車両型ロボットシステム) 2015 年度の精密農業市場規模は 29 億 500 万円であり、内訳は GPS ガイダンスシステムが 10 億 500 万円、 自動操舵装置が 19 億円であった。今後の精密農業市場は、2016~2017 年度頃から GPS ガイダンスシステムや 自動操舵装置の利用が進み、安全性確保ガイドライン策定後の 2018 年度頃には、農機の IT 化による車両型ロ ボットシステムが登場すると見られる。車両型ロボットシステムは、2018 年度頃から農機の有人機と無人機による 協調作業システムから普及し始め、2020 年度頃には、農機の完全無人作業、複数機による作業などができるシ ステムが導入されていくと予測する。 3-5. 農業用ロボット 2015 年度の農業用ロボット市場規模は 2 億 1,700 万円であった。農業用ロボットは 2020 年度頃までは実証実 験や研究開発を中心に展開されており、本格的な商業販売は 2020 年度以降とみられる。農業用ロボットは、収 穫作業に多くの時間を要する果樹などの園芸作物を中心として、普及すると考える。 図 2. 2015 年度スマート農業国内市場 分野別構成比 (単位:百万円) 精密農業内訳 GPSガイダンスシステム : 1,005 自動操舵装置 : 1,900 栽培支援ソリューション内訳 農業クラウド : 1,125 複合環境制御装置 : 1,425 畜産向け生産支援ソリューション : 517 農業用ロボット 217 2.2% 精密農業 2,905 29.9% 栽培支援ソリューション 3,067 31.5% 2015年度 9,724百万円 経営支援ソリューション 2,563 26.4% 販売支援ソリューション 973 10.0% 矢野経済研究所推計 注4.事業者売上高ベース 注5.四捨五入のため、図内の合計値が一部異なる Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 11 月 14 日 プレスリリース 表 1. スマート農業 ソリューション分野別定義 ソリューション名 農業クラウド 栽培支援 ソリュー ション 定義 農作業に関わるデータをインターネット上で管理し、生産性を向上させるシステム 複合環境制御装置 外気温度、ハウス内温度、湿度、日射、CO2 濃度等を測定し、それぞれ最適な状態にするために 暖房機や保温カーテン、換気や遮光を自動制御するシステム 畜産向け生産支援 ソリューション 畜産業の生産コスト低減のため、情報通信技術(ICT)を活用した計画的繁殖による経営効率化を 実現するソリューション ① 販売支援ソリューション ② ③ 経営支援ソリューション GPS ガイダンスシステム 精 密 農 業 ① ② 気象情報や栽培情報等のデータを分析し、農作物の収穫予測及び需要予測を行うことで 農作物の安定供給につなげるソリューションで、②や③に加えて、生産者の販売支援を目 的とするシステム 農作物を調達している食品関連事業者の 4 定(定量、定時期、定品質、定価格)を実現する 全国農業協同組合連合会(JA)の職員の業務を ICT で軽減する 農業向け会計ソフトや農業法人の会計業務を ICT で支援するソリューション 気象データや過去の気象情報を基に、収穫時期や収穫量を予測し、発生する病害虫等を 事前把握することができるソリューションや、与信管理や農家向けの収入保険などの金融機 関や保険会社で利用されるソリューション GPS 機能によりトラクター等の農機の位置を測位し、走行経路を表示する装置 自動操舵装置 GPS ガイダンスシステムにより示された走行経路に沿ってトラクター等の農機を自動でハンドリン グする装置(無人走行ではない) 車両型ロボットシステム GPS 受信機、ロボットコントローラー、センサーなどをトラクター、田植え機、コンバイン等の農機 に付け、複数農機による協調作業や、農機の完全無人運転を可能にするシステム 農業用ロボット 設備型ロボット(接ぎ木ロボット等)、マニピュレータ型ロボット(収穫ロボット等)、作業アシスト型ロ ボット(パワーアシストスーツ等) 矢野経済研究所作成 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
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