2016.11.15 JAXA

共振応答を回避する振動絶縁装置
及びばね・ゴム材の配置方法
百束 泰俊/梶川 隆史
宇 宙 航 空 研 究開発 機構 J A X A
G O S AT-2プロ ジェ クト チ ーム/環 境試験 技術ユニ ッ ト
2016.11.15 JAXA 新技術説明会
こんな時、どうしましょう?
振動で機器の性能がうまく引き出せない!
振動・騒音で作業環境が悪い!
⇒機械の振動・騒音を低減したいけど、
何をどうすれば良いかわからない・・・。
騒音
擾乱
制振
苦情
振動
共振
振動絶縁
工場騒音
バネ
ゴム
免震
カップマウント
アイソレータ
減衰
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GOSAT-2プロジェクトチーム/環境試験技術ユニット
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こんな時、どうしましょう?
振動を抑えるために、ばね・ゴム材を買ってきた!
⇒とりあえず機械の下に挟んでみたけど、
うまくいかない。むしろ振動が増えた・・・。
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こんな時、どうしましょう?
性能の良い振動絶縁材料ができた!
⇒でもうまくユーザに売り込めない・・・。
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こんな時、
共振応答を回避する振動絶縁装置
及びばね・ゴム材の配置方法
が解決策になるかもしれません!
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宇宙開発で重要な振動
ロケットで打ち上げる際の振動→数G~数千G
構造体の共振による振動
エンジン燃焼の音響振動
分離時の火薬爆発に起因する衝撃
μGから数千Gまでの振動に対し
機器の設計・検証を行う
宇宙空間での振動(擾乱)⇒μG
リアクションホイール、冷凍機、回転機器
等の機構が作動することによる微小振動
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従来技術:振動絶縁
振動絶縁とは・・・
IN
地面・構造体
振動
絶縁
機器を強固に固定するのではなく、柔らか
い振動絶縁材料・装置を挟み込むことで共
振周波数を下げ、共振周波数よりも高い周
波数帯の振動環境を緩和する
OUT
搭載
機器
IN
地面・構造体
※搭載機器が振動源となる場合
も振動伝達を絶縁効果がある
振動絶縁装置
ばね材・ゴム材
振動伝達特性
通常
OUT
搭載
機器
振動絶縁原理 イメージ
周波数
振動絶縁帯域
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従来技術:振動絶縁
原理上の課題
振動絶縁装置は、自身の共振により低周波で振動を過大に増幅さ
せる帯域が必ず存在してしまう
振動伝達特性
増幅域← →絶縁域
増幅域の共振周波数と一致
する振動入力がある場合、
大きな共振応答が出る。
振動入力
周波数
従来技術では、減衰材の負荷やアクティブに制御することによって、
この共振の山を下げる・抑える対策が取られている。
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原理上の課題の難しさ
振動応答=入力×振動伝達率
共振=増幅
共振=増幅
Y回転運動の共振周波数と一致する
振動入力(②、③がある)
現実には、共振周波数(剛体モード)
は6個存在し、これらが相互に影響を
及ぼしあう。
⇒共振してしまった周波数“だけ”を
簡単には動かせない・・・
十分な振動絶縁効果があり、
この周波数帯の振動入力は
問題とならない
振動入力イメージ
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振動絶縁の新技術:共振周波数調整型振動絶縁装置
もし、共振周波数を意図通り調整させる機能があれば、高周波の
振動絶縁効果を担保したうえで、低周波の共振発生という原理的
デメリットを根本的に解決することができる。
そのために必要なことは、機器の四隅に配置していたバネ・ゴム
を、クルッと回して、ある形に、配置・調整するのみだった!
バネ・ゴム
コロンブスのタマゴ的
発想転換!
機器底面
機器底面
従来は四隅
(座標系を)クルッと回して、ある形に配置
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新技術の機能イメージ
振動応答=入力×振動伝達率
ずらす
ずらす
Y回転運動の共振周波数と一致する
振動入力(②、③がある)
新技術に基づきバネ・ゴムを配置する
ことで、6つ共振を相互影響をなくすこ
とができる。
⇒共振してしまった周波数“だけ”を
簡単に動かせる!
十分な振動絶縁効果があり、
この周波数帯の振動入力は
問題とならない
振動入力イメージ
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従来技術・競合技術との比較
低周波の増幅域の過大な応答を抑制する為の従来技術
①試行錯誤で対策する
⇒共振が起きないような配置、材料、設計をトライ&エラーでの対策となる。
非常に労力がかかり、設計・製造の出戻りも発生する。
②共振点での増幅率を下げる機構・材料(動吸振器や減衰材)の付加
⇒所定の効果を得るには重量・体積の超大が避けられない場合がある
③アクティブな振動制御デバイスを用いる
⇒センシング、制御ロジック、演算装置等の複雑なシステム設計・付加が必要
新技術では配置・調整のみで、容易に課題を解決できる。
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共振周波数調整型 振動絶縁の優位性
新技術の優位性
どの方式でも大差無し
原理的デメリットを解消
低周波での
共振応答
大きな共振応答
が出る
共振応答を低減
設計の
しやすさ
共振応答が出る
場合は、試行錯
誤の設計変更が
試される。
特殊な減衰機構
や制御ループな
どの詳細設計が
必要
共振しない
周波数
従来技術
容易である
搭載機器
or
振動源機器
従来技術
製造の
しやすさ
重量
設計情報
設計変更に伴い、
製造の手戻り(再
製作)を要する。
それぞれの設
計・製造ノウハウ
が必須
軽量
効果を得るには
重量増が避けら
れない
軽量
詳細な設計情報
を要する
簡単な質量特
性のみで良い
詳細な設計情報
を要する
増幅域 ← → 絶縁域
絶縁域の特性を維持したまま
増幅域の山を下げる。
共振応答が低減される。
容易である
周波数
優位性あり
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増幅域の共振周波数と
一致する振動入力がある
場合大きな共振応答が出る。
振動伝達特性
JAXA
新技術
従来技術
増幅域 ← → 絶縁域
振動伝達特性
高周波での
振動絶縁特性
従来の常識
(四隅配置)
搭載機器
or
振動源機器
増幅域 ← → 絶縁域
JAXA新技術
搭載機器
or
振動源機器
JAXA
新技術
増幅域の共振周波数をシフト
させ、振動入力との一致を
避ける。共振応答が生じない。
振動伝達特性
比較項目
従来の常識(四隅)
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周波数
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参考:手法の検証
検証のため試作した振動絶縁装置(左)と試験の様子(右)
ゴム材X4
6自由度共振周波数の変化
(マーカ:試験値、線:解析値)
加速度 [m/s2]
ゴム材の配置変更が可能な試作装置と振動試験機を用いて手法の検証を実施
-アイソレータ上面加速度
-アイソレータ下面加速度
低減量
低減量
アイソレータなし
アイソレータあり
試作振動アイソレータの低減効果一例
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新技術の適用先イメージ
スピーカインシュレータ
スマホ(タブレット)スタンド
生活の「質」の向上
家電
振動絶縁
技術
産業問題を解決
産業機械
航空機搭載用カメラ
ドローン搭載用カメラ
技術革新
サービス創出
建築物
車載カメラ
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特願2016-145581:請求範囲(未公開特許)
名称:
振動アイソレータの共振周波数の調整方法及び調整システム、
振動アイソレータ、並びに振動アイソレータの設計方法、設計システム、及び製造方法
大きく分類すると以下の4項目に分けられる。
共振を避ける設計・製造方法
共振周波数を調整できる装置
共振周波数と弾性体配置を表示する設計ツール
共振周波数調整方法
想定される用途:
スマホ(タブレット)スタンド、スピーカインシュレータ
車載カメラ、航空機・ドローン搭載用カメラ等の振動低減アタッチメント
家電、産業機械、建築物の騒音・振動低減架台
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適用イメージ①:生活の質を向上させるグッズとして
新技術の共振周波数調整機能を既存の生活グッズへ組み込み、ターゲットに合わ
せたデザインを行うことで、ユーザの求心力向上が可能。
商品
デザイン
JAXA
新技術
出典:strapya.com
<適用先>
• スマホ(タブレット)スタンド
• スピーカインシュレータ
⇒よりユーザにとって魅力的な商品デザインに!
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適用イメージ②:設計ツール・営業ツールとして
新技術の解析プログラムに対し、目的に合わせたユーザインタフェースを整備することで、
設計ツール、営業ツールとしての応用が可能
タブレット端末に実装できる程度の計算負荷
操作画面のイメージ
<適用先>
• スマートフォン(タブレットPC)のアプリ、解析ソフトウェアのアドオン
• ばね材、ゴム材の販売用WEBブラウザソフトウェア
⇒設計者の負荷低減、購入者への販売促進に!
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適用イメージ③:振動低減アタッチメント
新技術を適用した振動低減アタッチメントを、振動を嫌う機器(カメラなど)に組み
込むことで、機器性能の向上が図れる。(既存の振動絶縁、免震、制御技術と組
み合わせることで相乗効果も得られる)
ゴム・ばね材の
配置を調整
回転角(θ)を調整
カスタ
マイズ
出典:jar-labo.jugem.jp
振動低減アタッチメントイメージ
<適用先>
• 車載カメラ、航空機・ドローン搭載用カメラ
• 免震(建築)
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適用イメージ③共振を避ける設計・製造方法の活用
新技術の考え方を、振動を発生する機器の支持脚、土台の設計に応用することで、
簡易に騒音・振動を抑制した製品設計が可能。
大きな振動を発生する回転機器の
振動を絶縁する支持設計
機械が振動したとしても、共振を発
生させない支持脚の配置設計
※既存の振動絶縁、免震、制御技術と
組み合わせることで、相乗効果も得られる。
<適用先>
産業機械、モーター、オーディオ、自動車、洗濯機、建築…等
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まとめ
新技術の特徴
振動絶縁装置の原理上の課題を、対象機器の簡易な設計情報(質量、重心位置、
慣性モーメント)に合わせてばね・ゴム材等の配置調整のみで解決する新技術
中・高周波の振動絶縁性能を確保した上で低周波の増幅域で共振を起こさない
既存のばね・ゴム材を組み込むことで、相乗効果が得られる
振動絶縁対象物の詳細な設計情報(数値解析モデル)がなくても導入可能
想定される用途
スマホ(タブレット)スタンド、スピーカインシュレータ
車載カメラ、航空機・ドローン搭載用カメラ等の振動低減アタッチメント
家電、産業機械、建築物の騒音・振動低減架台
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お問い合わせ先
宇宙航空研究開発機構
新事業促進部 新事業課
e-mail
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[email protected]
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