「税を考える週間」に寄せて…北野 彰三

特集
平成 28 年度
「税を考える週間」に
寄せて
国税庁長官官房 広報広聴室 課長補佐 北野 彰三
広報第ニ係長 内藤 賢輔
国税庁では、日頃から国民の皆様に租税の意
また、各国税局や税務署においても、様々な取
義、役割や税務行政の現状について、より深く理
組を行っています。その一つとしては、大学生や
解してもらい、自発的かつ適正に納税義務を履行
社会人の皆様を対象とした講演会を全国で開催
していただくために納税意識の向上に向けた施策
し、各国税局や税務署の幹部が、税の意義や役
を行っています。
割、くらしを支える税をテーマに国民生活との関
特に、毎年 11 月 11 日から 11 月 17 日までの一
わりを説明しています。
週間を「税を考える週間」とし、この期間を中心
このほかにも、全国の中学生・高校生の皆様か
に様々な広報広聴施策を実施するとともに、税務
ら応募のあった「税に関する作文」の入選作品の
行政に対するご意見やご要望をお寄せいただく機
表彰や展示を行うほか、関係民間団体と連携して
会としています。
様々な税に関する催しを開催しています。
今年の「税を考える週間」では、
「くらしを支
える税」をテーマとして、国民の皆様に国民生活
是非、この機会に「くらしを支える税」につい
て考えていただければ、幸いです。
と税の関わりを理解してもらうことにより、国民
各層の納税意識の向上を図ることとしています。
今年の「税を考える週間」に国税庁が実施して
いる広報広聴施策では、インターネット広告など
のマスメディアを通じた広報を行うほか、国税庁
ホームページに国税庁の取組を紹介するページ
(以下「取組紹介ページ」といいます。
)を開設し
ています。
この取組紹介ページには、インターネット番組
「Web-TAX-TV」を掲載して、国税庁の取組や税
務手続を分かりやすく紹介していますので、国税
庁の仕事のことを知りたい方や税務手続を動画で
見たい方は是非ご覧ください。
このほか、国税当局が実施している講演会の資
料も掲載しており、この講演会資料には、国税庁
の取組や税務署の仕事、税の役割など国税庁に関
する情報について、最新のデータなどを基に詳し
く解説しています。
2 ファイナンス 2016.11
平成 28 年度「国税庁の取組紹介ページ」
特集
平成 28 年度
「税を考える週間」に寄せて
国税庁の取組を紹介する
「Web-TAX-TV」の番組紹介
国税庁ホームページのインターネット番組「Web-TAX-TV」では、国税庁の取組や税務手続を紹介す
る番組を配信しています。
その中には、国税庁の取組をドラマ仕立てで分かりやすく紹介した番組として、
「マルサ」で知られる
「国税査察官の仕事」や国際的な取引について調査を行う「国税局調査部の仕事」などを掲載しています。
また、平成 29 年 1 月以降に、所得税等の申告書や法定調書等へのマイナンバー(個人番号、法人番号)
の記載が本格化することを踏まえて、マイナンバーに関する新番組を作成して公開しております。
人気の番組や新番組の概要を以下にご紹介いたしますので、是非一度ご覧ください。
人気番組 国税査察官の仕事
人気番組
海を越えた税務調査
国税局調査部の仕事
緻密な情報収集や内偵調査、裁判所から交付さ
海外子会社を利用した悪質な国際的租税回避行
れた許可状に基づく強制調査など、徹底した調査
為を行うグローバル企業に対し、外国税務当局と
により、脱税を行っていた納税者を検察官に告発
情報交換を行うなど綿密な調査を行い、真実を追
するまでの国
及する国税局調査部の仕事を紹介しています。
税査察官の仕
事をドラマ仕
立てで紹介し
ています。
新番組
マイナンバーと
法定調書
新番組
マイナンバー制度に
伴う税務手続の変更点
マイナンバー制度の導入により、報酬などの支
マイナンバー制度の導入に伴い、税務署に提出
払をする方が税務署に提出する法定調書にマイナ
する一部の申請書や申告書などに、マイナンバー
ンバーの記載が必要となりました。
の記載が必要になりました。
そのため、報酬を受ける方に対して、報酬を支
平成 29 年 1 月以降は、申告書や法定調書への
払う方から、マイナンバーの提示を求められるこ
マイナンバーの記載が本格化します。皆様の身近
とがあります。
な確定申告書への記載を例に、記載欄や本人確認
この番組では、どのような場合にマイナンバー
の手続を分かりやすく紹介しています。
を提供することとなるのか、よくあるケースを紹
介しています。
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ファイナンス 2016.11 「税を考える週間」の歴史
よき理解者、協力者であるべきことを改めて認識
し、広報広聴の対象とするとともに、各種の施策
を通じて、声を聞くという受身の姿勢だけでな
「税を考える週間」のようなキャンペーン期間
を設けて集中的に行う広報広聴活動は、かなり古
くから行っています。
く、積極的に税の重要性、執行の公平性等を広報
することを目的に実施しました。
そして、平成 16 年からは、国民一人一人が、
その歴史について、ご紹介します。
我が国をどのようにして支えていくのか、公的
当時は、昭和 22 年に申告納税制度が導入され、
サービスと負担をどのように選択するのかを含め
昭和 24 年に国税庁が発足した時期であり、税務
て、税の在り方、国の在り様を真剣に考えていた
行政に対する納税者の不満が多く聞かれていたと
だく時期に来ているという観点から、単に税を知
いう時代でした。
るだけでなく、能動的に税の仕組みや目的を考え
そのような時代背景があり、円滑な税務行政の
てもらい、国の基本となる税に対する理解を深め
成否は、納税者の協力いかんにかかっている点に
ていただくことを明確にするため「税を考える週
鑑み、昭和 29 年から、
「納税者の声を聞く月間」
間」に改称しています。
を設けたことから始まります。
この時は、積極的な苦情相談、納税施設の改善
及び各税法の趣旨の周知を中心とした納税意識の
向上に関する各施策を中央及び地方を通じて組織
的に行うこととしていました。
そして、昭和 31 年からは、苦情相談を重点項
目として期間を「月間」から「旬間」に改め、税
務行政に対する納税者の皆様の意見や要望を積極
的に聴き、各種の行事を通じて納税者の皆様との
信頼を深め、納税者の皆様にとって近づきやすい
税務署というイメージを作り、納税意識の向上を
図ることを目的に実施していました。
その後、昭和 49 年には、
「旬間」の全般的な見
直しを行い、毎年同じ時期に行うこととして「税
を知る週間」に改称しました。
「週間」の実施に
当たっては、税を社会全体の役割の中で捉える見
地から、納税者の方だけでなく国民各層が、税の
4 ファイナンス 2016.11
このように、この取組は大変歴史のあるものな
のです。
特集
平成 28 年度
「税を考える週間」に寄せて
各国税局・税務署の取組紹介
「税を考える週間」では、各地で様々なイベントや講演会、租税教室を実施しています。
ここでは、昨事務年度に実施した各国税局・税務署の取組をご紹介いたします。
高校生との紙上座談会
【広島国税局】
財務局と協働した租税教室
【金沢国税局】
若年層の税に対する関心を高めるアプローチの
福井県立敦賀高校(2 年特進クラス)において、
一つとして、広島国税局長と広島市内の高校生 3
「総合的学習」の時間を利用し「財務局職員によ
人が税に関する新聞紙上座談会を実施しており、
る財政の授業」と「税務職員による租税教室」を
「税を考える週間」
(11 月 11 日~17 日)の初日に
組み込んだ「財政教育プログラム」の取組が行わ
地元紙に「税を考える週間」の特集紙面として大
きく掲載された。
高校生は、事前に「租税教室」を受講しており、
れた。
この取組は、平成 28 年 5 月から 7 月の間で授
業 6 回にわたり開催されたもので、最終回では、
財政の状況や税収の使い道などについての意見交
9 班に分かれた生徒たちが、財務局等職員のアド
換を行った。対談テーマの一つである消費税の軽
バイザーから助言を受けながら、国の予算編成を
減税率については、奇しくも三者三様に意見が分
行った。
かれ、それぞれ、消費税の仕組みや特性を理解し
た上で、自分たちが求める社会をイメージしなが
その後、班ごとに発表、質疑、投票を行うな
ど、主権者意識を高める試みも展開された。
ら、今後の消費税の在り方について論じ合った。
受講した生徒からは、「税にはいろいろな働き
座談会を通じて、今後選挙権を有することにな
があることが理解できた。」、「これから自分たち
る高校生自身が、主権者の一人として税について
が直面する課題を考えることができて良かった。」
の理解を深め、今後の税の在り方について考える
などの声が聞かれた。
機会となったのは言うまでもなく、読者の紙面に
このほか、富山県内の税務署においても、財務
対する注目度が高く、中でも学生などの若年層ほ
事務所の職員と一緒に租税教室を開催するなどし
ど高評価を得られた。
て財政と税務を組み合わせた授業を行った。
将来の社会を担う高校生との税に関する意見交換
アドバイスを受けながら予算編成を行う生徒たち
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ファイナンス 2016.11 大学での国税局幹部の講演会
【大阪国税局】
大阪国税局では、国民各層の納税意識の向上が
「税を考える授業」
高校生によるディベート開催
【関東信越国税局】
図られるよう、
「税を考える週間」に合わせて幅
平成 27 年 12 月 4 日(金)に埼玉県立浦和高等
広い層をターゲットとした講演会を開催してお
学校 3 年生の政治経済履修者及び現代社会履修者
り、平成 27 年 11 月 10 日(火)には京都大学で
を対象に、租税教室(税を考える授業)の一環
講演会を開催した。
として「消費税率 10%引き上げ時に軽減税率を
当日は、大阪国税局長が講師となり、
「税務行政
の現状と課題」と題して、法学部の学生を対象に
導入すべきだ」を論題としたディベートが開催
された。
講義を行い、国税庁の機構・定員の状況や税務行
参加した生徒たちは、11 月 20 日(金)に国税
政を取り巻く環境の変化を踏まえた税務調査の現
局課税第二部統括国税調査官による「消費税の引
状等、組織の様々な取組を分かりやすく説明した。
き上げの背景、消費税の仕組み等について」を演
特に、「国際的な租税回避等への対抗」として
題とした講義を受講し、11 月 27 日(金)に埼玉
の BEPS(税源浸食と利益移転)などの最新の話
県が推進している協調学習(ジグゾー法を用いた
題になると、学生は興味深く耳を傾けていた。
グループディスカッション)を取り入れた授業を
その他、学生に身近な話題である「確定申告」
経て、ディベートに臨んだ。
や「社会保障・税番号制度」についても触れ、
当日は、生徒代表が 4 人ずつ 2 組に分かれ、肯
「確定申告については、必要項目を入力すれば自
定側・否定側を決定してディベートを行い、白熱
動計算される確定申告書等作成コーナーが便利で
あり、是非確定申告を体験してもらいたい。
」と
した議論を展開した。
生徒による審査判定後には、授業のまとめとし
て国税局課税第二部統括国税調査官と浦和税務署
呼び掛けた。
最後に「社会に出てから税に関わることは多く
長による講評が行われた。
あり、皆さんが学ぶ法律の中では一番実学に近い
「税を考える授業」の集大成としてのディベー
ため、学生の間にしっかりと税法を学んでもらい
トは、税制の在り方について、次世代を担う生徒
たい。」と締めくくった。
たち自身が議論する画期的な授業となった。
なお、同講義の様子は、新聞等 3 紙に報道され
るなど、国民に広く税の役割や意義について周知
を図るよい機会となった。
グループディスカッションの模様
京都大学で講義する岡田局長(当時)
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特集
平成 28 年度
「税を考える週間」に寄せて
高校生が人前で小学生に授業を行うことは、高
高校生が小学生に租税教室
【仙台国税局】
校生本人の税に対する理解が深まるだけではな
平成 27 年 11 月 15 日(日)
、関係民間団体主催
ト会場の一般観客についても税に対する意識を高
による「税を考える週間」イベントにて、高校生
められるものであり、ユニークで効果的な施策で
2 名が、イベント会場に集まった小学生を対象と
あったと言える。
く、受講した小学生とその家族はもとよりイベン
した租税教室を行った。
好評であったこの施策は、本年も継続して実施
講師となった高校生は、出前授業による租税教
する予定である。
室で事前に税についての学習を行った後、自らの
言葉で分かりやすく小学生に説明するための準備
を重ね、パワーポイントを使用し、クイズなどを
取り入れた租税教室を開催した。
会場の小学生は熱心に受講し、クイズには元気
に回答していた。
高校生の、明るく元気で分かりやすい租税教室
に会場は大いに盛り上がり、隣で見ていた総合司
会者は、「恐るべし女子高生!」と感嘆の言葉を
発していた。
小学生を対象とした租税教室の講師を務める高校生
◆ 平成 28 年 11 月「税を考える週間」の主な行事予定
開催予定
イベント
11 月 11 日(金)
∼
キッザニア東京に
「TAX OFFICE」
11 月 17 日(木) を開設
11 月 11 日(金)
五輪メダリスト
(箱山愛香選手)
による街頭広報
実施:
11 月 12 日 ( 土 )
展示:
11 月 12 日 ( 土 )
∼11 月末(予定)
税に関係する
言葉の書道
パフォーマンス
11 月 12 日(土)
ザ・タックス
フェスタ 2016
in AMU 広場
開催場所
キッザニア東京
アーバンドック
ららぽーと
豊洲内
JR 長野駅
善光寺口
駅前広場
イオンモール
広島祇園
1階イベント広場
鹿児島中央駅
AMU 広場
主催
(一社)
東京法人会
連合会
長野税務署管内
納税関係団体
連絡協議会
概要
職場体験施設「キッザニア東京」に、
「TAX OFFICE(税務署)」パビリオ
ンを期間限定で開設します。子供た
ちは、税に関するセミナーを受けた
後、キッザニア内の他の店舗で税務
調査を体験するなど、楽しみながら
税の必要性や使い道について理解を
深めます。
リオデジャネイロ五輪で銅メダルを
獲得したシンクロナイズドスイミン
グ・チームの箱山愛香選手が、街頭
広報(チラシ・マスク等を通行者に
配布)を行います。
(公社)
広島北法人会
高校生による「税に関係する言葉の
書道パフォーマンス」を行います。
来客者に対して、国の基本となる税
に対する関心を持ってもらいます。
また、同日にパソコンによる確定申
告体験コーナーを設置する予定として
おります。
(公社)
鹿児島法人会
鹿児島中央駅前広場にて「税の作品
表彰式」や「書道パフォーマンス」
等、各種の税に関するイベントと併
せて、地元の著名人のライブなどを
行います。
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