くらしを支える下水道 ~下水道の継続と発展~ なくてはならないインフラ 4月に名古屋市上下水道局長を拝命し,新鮮な気持 ちで上下水道事業の経営に力を注ぎ始めていた矢先の 4月14日および16日に平成28年熊本地震が発生しまし た。最大震度7を記録した2度の地震により,熊本地 方を中心に甚大な被害がもたらされ,市民生活に大き な影響を与えています。今回の地震でお亡くなりにな りました方々に心よりお悔み申し上げます。そして, 被災された皆さま方にお見舞いを申し上げるととも に,一日も早い復興をお祈り申し上げます。 今回の地震では,上下水道施設についてもかなりの 被害を受け,早期復旧に向けての支援活動が行われま した。このうち,熊本市の下水道被害調査については, 「21大都市災害時相互応援に関する協定」および「下 水道災害時における大都市間の連絡・連携体制に関す 名古屋市上下水道局長 丹羽 吉彦 Niwa Yoshihiko るルール」に基づき,東京都および全国19の政令指定 都市職員により,4月15日から5月25日までの延べ41 日間の管路被害調査の支援活動が行われました。本市 からも,下水道応援隊として合計38人を派遣し,支援 活動を行いました。 私も5月9日に熊本県へ足を運び,熊本市および益 城町での被害状況や上下水道の支援活動を視察いたし ました。現地での支援活動では,早期復旧を目指しひ たむきに頑張る各都市職員の団結力や使命感を目の当 たりにし,非常に心強く感じました。 今回の支援活動を通して,上下水道施設が災害によ り機能を失うことで市民生活や社会へ与える影響は非 4 —— 下水道機構情報 Vol.11 No.23 常に大きく,市民生活になくてはならない重要なイン ものと考えています。 フラである上下水道施設を維持管理していく責任とい うものを痛感しました。また,今回の支援活動での経 験を整理し,本市が被災することを想定した受援体制 下水道の最新技術を発信 と調整のあり方について再度検証し,万全の備えを さて,今年の7月26日から29日の4日間,名古屋市 図っていきたいと考えています。 のポートメッセなごやを会場とし「下水道展 ’ 16古屋」 そして, 「くらしを支える下水道」として安心・安 が開催され,「日本発!くらしを支える底力」をテー 全で安定したサービスを提供し続けられるように,本 マに,下水道に関する最新の技術・機器等が展示され 市の下水道事業においても地震対策,浸水対策や災害 ます。 対応力の強化に引き続き努めてまいります。 この「下水道展 ’ 16名古屋」での本市に関連する企 画をご紹介させていただきたいと思います。まず,パ うるおいのあるまちづくりに貢献 ブリックゾーンの名古屋市ブースにおいては,「街を また,下水道事業は社会基盤を支えるインフラであ 水対策事業である名古屋中央雨水調整池や広川ポンプ ると同時に,まちづくりのパートナーでもあると考え 所をPRするとともに,浸水体験や3Dゴーグルを使用 ています。下水道は汚れた水をきれいにして川に戻す した360度ヴァーチャルの豪雨体験を通して,下水道 ことにより,健全でうるおいある水環境を創造する重 について学べる企画などを予定しています。 要な役割を有しています。さらに,循環型社会構築へ 日本下水道協会主催の「テクニカルツアー」では, の貢献として,下水汚泥や下水熱など再生可能エネル 見学コースとして,本市の環境に配慮した最新施設で ギーの有効活用による新たな取り組みが必要とされて ある空見スラッジリサイクルセンターや,都市におけ います。 る貴重な水辺を生かしたまちづくりに寄与する名城水 本市では,現在全面改築を進めている露橋水処理セ 処理センターでの堀川水質浄化施策などをご覧いただ ンターに近接して大規模再開発が行われているささし けます。 3 浸水から守る!」をテーマに,今後の本市の大規模浸 まライブ24地区へ,高度処理水約30,000m /日を送 また,この“名古屋の母なる川”である堀川につい 水する施設整備を行っています。ささしまライブ24地 ての浄化活動やまちづくりなどを目的に活動している 区に送水される高度処理水は,地域冷暖房の熱源,中 NPOや市民団体による「水環境ひろば」では堀川を 川運河堀止部の水質改善,広場のせせらぎ施設の修景 取り巻く官学民連携の市民活動に関するパネルディス 用水として多目的に活用する予定です。また,露橋水 カッションを通して,水環境や下水道の理解を深めて 処理センターは水処理施設のほとんどを地下式とし, いただくとともに,市民活動の成功例として全国に発 施設の上部空間を,隣接する中川運河の再生計画にお 信したいと考えています。 ける公園やプロムナードと一体的に整備し,市民の憩 「下水道展 ’ 16名古屋」において,下水道に関する いの場とすることを計画しています。 最新技術や取り組みが全国ならびに全世界へ発信され このようにまちづくりのパートナーとして,各事業 るとともに,これからの下水道の持続と発展につなが と連携・パッケージ化した下水道事業を行うことで, る良い機会になればと祈念して,私のメッセージとさ 魅力とうるおいのあるまちづくりに大きく貢献できる せていただきます。 下水道機構情報 Vol.11 No.23 —— 5
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