NOW 第 15 号 国立大学法人 C O N T E N T S 学長対談 株式会社 箔一 北陸先端科学技術大学院大学 浅野 哲夫 学長 発行日 平成 28 年 10 月 31 日 発 行 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 大学戦略・広報室 〒 923-1292 石川県能美市旭台 1-1 tel. 0761-51-1031 ホームページ http://www.jaist.ac.jp 浅野 邦子 代表取締役会長 仕事の中で、教育の場で、 「人間力」を育んでいくために。 6 ジャイストナウ 北陸先端科学技術大学院大学 No. 15 2 2016 2016 No. 15 ジャイストナウ 特集 世界最高強度の透明樹脂の開発に成功。 ガラス代替による、 軽量化社会の構築に貢献 環境・エネルギー領域 金子 達雄 教授 8 展開図、折り紙、ゲームの、 難解な問題を解くアルゴリズム ゲーム・エンタテインメント領域 上原 隆平 教授 9 CG を核とするメディア技術により 創造活動やエンタテインメントを より豊かに、楽しく 10 研究室訪問 知識マネジメント領域 応用物理学領域 杉山 清隆 さん 敷田研究室 ゲーム・エンタテインメント領域 池田研究室 大島研究室 研究室での経験を糧に、 仕事と向き合い、 新技術を追究しています 14 16 JAIST HOT NEWS JAIST INFORMATION 国立大学法人 宮田 一乘 教授 同窓会・修了生レポート 北陸先端科学技術大学院大学 13 ヒューマンライフデザイン領域 浅野 邦子 代表取締役 会長 北陸先端科学技術大学院大学 浅野 哲夫 学長 仕事の中で︑教育の場で︑ ﹁人間力﹂ を育んでいくために︒ 株式会社 箔一 学 長 対 談 2016 2 学 長 対 談 J A I S T は 今 年4 月 よ り 従 来 の3 研 究 科(知識科学、情報科学、マテリアルサイ エンス)を統合し、再編された9領域にお いて、社会的な課題の解決を念頭においた 研究を展開しています。この教育システム の中で目指すのは、確かな専門性とともに 幅広い経験と知を備え持つ社会や産業界の リ ー ダ ー と な る 人 材 で す。 そ こ で 今 回 は、 女性のリーダーとして石川県の代表的な伝 統技術である「金箔」を現代のモノづくり 気持ちがわかるの? などと食い下がって怒 られてばかりだったんです。でも、別の先生 は間違っていると言われる。どうして作者の といった設問があって、答を出しても先生に 者はどういうことを考えているのでしょう」 浅野 私自身は理系が好きで、むしろ国語が 嫌いでした。というのも、例えば「ここで作 ぜだろうと… さんいるのに、日本だけは少ない。これはな に多い。外国に行くと理系の女子学生もたく の先生が男性で、理系では男子学生が圧倒的 のがおかしい。大学を見渡しても、ほとんど るでしょう。 分野で専門を身につけることは大きな力にな し、生涯働こうと思う女性にとって科学技術 にも抵抗がなくなってきていると思います から大学院に進んでから就職するという進路 しています。最近は結婚年齢も上がり、学部 てみようという学生が現れてくることを期待 う一歩踏み出して理系の方向へチャレンジし 違って興味が湧くと。そんな人の中から、も る ん で す。 高 校 ま で の 受 験 の た め の 授 業 と を受講すると、そこに面白みを感じる人もい 部に入った学生が講義の中で理系に近い内容 大に注目しているのですが、女子大の文系学 学も単に知識を伝授するだけでなく、そのよ 学長 リーダーにふさわしい能力をもった人 材を育てるのはなかなか難しいことです。本 指導者の助言というのはとても大事ですね。 いう方のことをいうのかと感じ入りました。 うって奮起できたんです。リーダーとはこう けないかもしれないけど、私なりに勉強しよ とおっしゃってくれた。その言葉で、追いつ よ。 ここの人はみんなそれを学びたいんです」 て、地域の産業に発展させた人はいないです に「 あ な た の よ う に、 地 方 で 一 か ら 創 業 し した。でも、その時に経団連の榊原会長が私 当初はコンプレックスで押しつぶされそうで に生かし、地域活性化に貢献してきた株式 から「算数は答 えが一つだよ」 といわれて、 生まれで、同じ「浅野」ということもあって、 浅 野 学 長( 以 下、 学 長 ) 浅 野 会 長 は 確 か 京 都のご出身だとお聞きして、私も同じく京都 新しい分野に目覚めた女性の 再挑戦に期待したい ただきました。 材育成や産学連携をテーマに語り合ってい 会社箔一の創業者・浅野邦子氏を招き、人 年ほど前に当時少なかった女性経営者とし 一方的に親近感を覚えておりました。会長は や、頑張ってくれた社員のこと、そんなこと たことは忘れて、人に助けていただいたこと そうですね。でもありがたいことに大変だっ 浅野会長(以下、浅野) が、それは大変なことだったとお察しします。 て起業され、会社を成長させてこられました 階でもっと近づきやすい教え方をすれば変わ 女の人が少ないというのは、そんな最初の段 しみが湧いたものです。ですから、理工系に なものと思えばいい、と教えられてとても親 る謎解きと同じ。クロスワードパズルのよう くるx やy は、わからないところを隠してあ 世界に魅力を感じました。例えば数式に出て なるほどそうかと明確な正解にたどり着ける されている内容もチンプンカンプン。小学生 手にしている大企業の社長さんばかりで、話 いているのですが、まわりを見れば世界を相 の夏から経団連の副議長を務めさせていただ べてあげることも大切かと思います。私はこ 浅野 新しい分野を学ぼうとか、何か次の段 階に進もうという時には、誰かが手をさしの 功したと教えること。それによって、部下も りなど、全てが加味された上でこの仕事が成 要な能力です。いろいろな失敗や人との交わ 結びつけて部下に教えられることは上司に必 よく言いますが、自分の体験の様々な要素を 浅野 学校の先生は自分の体験を話してあげ ることも大切ではないでしょうか。会社でも 生方にも言っています。 のか、これを真剣に考えていきましょうと先 うな「人間力」をつけるにはどうしたらいい が懐かしく思い出されます。 る部分もあるのではないかと思います。 一つひとつの事柄を繋いで考えることができ リーダーの資質を養う教育とは 学長 今、私は女性のリーダーに大いに期待 していまして、感受性の面でも男性より豊か が大学院生の中に紛れ込んだようなもので、 な面があると思いますし、何よりも人間には 学長 いわば〝かくれ理系ファン〟の女性が 日本にもいるはずなんですね。私は最近女子 男と女がいるのに、男性が中心の社会という JAIST NOW No.15 3 40 ただけるのか、そういった過去・現在・未来 る、それをお客様が買って、本当に喜んでい る感じがします。商品を作って、値段をつけ 線で結んで考えるのが不得手になってきてい 優秀で個々の問題は解決できても、点と点を いう教え方ができないので、若い人は非常に るようになります。ところが、なかなかそう て箔の技術を伝え発展させていくために、工 営してきました。現在当社では、産業におい 術を後世に伝承していきたいという思いで経 収益を上げ、社員の生活を安定させながら技 なければ衰退してしまう。だから企業として みんな下請けだったのです。でも技術は使わ ミリに伸ばす素晴らしい技術がありながら、 金沢の箔は素材産業でした。金を1万分の1 えると思います。私が箔一を立ち上げた頃は、 す の で、 中 小 企 業 に 対 し て 大 学 が 寄 立つような内容がかなりあるはずで て で は な く、 限 ら れ た 人 の た め に 役 で取り組んでいる研究の中にも、万人に向け ことでビジネスが成り立ちます。JAIST ながら、その製品やサービスを改善していく きな市場でなく、一定数の顧客に満足を与え くのは大変です。一方、中小企業の場合は大 その研究には競争相手も多く、勝ち残ってい 本的に大量生産、 大量消費の物を扱っていて、 考えるようになりました。大企業の場合、基 K u n i k o の繋がりを考えることもそうです。また何か 芸品や食品、化粧品など様々な商品に展開し 与できる可能性が潜んでいるのでは A s a n o 困難にぶつかった時、人と話して少し力を借 ています。それらの製造には人間の技術に加 ないかと思うのです。 浅野 邦子 りれば解決できるのに、自分一人で悩んでし えて半自動の機械が活躍していますが、その 1975年 金沢箔工芸品の製造に着手、箔一を創業。 2009年 株式会社 箔一 代表取締役会長に就任。 経団連 (日本経済団体連合会) 審議員会 副議長、経団連地域経済活性化委員会 委員長、北陸経済連合会 常任理事、北陸経済連合会総合対策委員会 女性部 会長、金沢経済同友会 理事、金沢商工会議所 評議員、 「スーパーグローバ ルハイスクール事業」 運営指導委員 など。 まう。これも人の力を結びつけられないこと 多くは箔づくりで使ってきた機械の基本的な 創 造 力、 企 画 力、 営 業 力、 は な ら な か っ た で し ょ う。 当 社 の よ 指 し た な ら、 世 界 を 相 手 に し な く て もし完全に自動化して大量生産を目 浅 野 そ う で す ね。 私 た ち の 会 社 も 人間の技術でしか生み出せない部分 なんでもできる総合力が うに伝統技術を守ることであったり、 構造に、全く別の分野の機械を組み合わせて 備わっていないと生き残 あ っ た り、 中 小 の 企 業 は 個 々 の 役 割 新たに開発したものです。つまり、技術と技 れないです。 を も っ て 頑 張 っ て い ま す。 産 学 連 携 を残しながら半機械化でやってきた 学長 本学では産学連携 を大きな柱として取り組 に よ っ て そ れ が サ ポ ー ト で き れ ば、 ので大企業と競合せずにきましたが、 ん で き て い ま す が、 大 企 研究がさらに生きてくると思います。 術を結びつけることで当社は伸びてきたんで 業、 中 小 企 業 の ど ち ら と そ の た め に も、 大 学 側 は 自 分 達 が 何 す。 こ う い っ た 工 夫 を 含 め て、 中 小 企 業 は のあらわれかと思います。 中小企業のビジネスに、 生かせる研究がきっとある 浅野 点と点を結ぶことは技術についてもい 組むかで戦略が変わって 使いやすく人に優しい製品の開発で くるのではないかと最近 浅野会長 次の段階に進もうという時には、 誰かが手をさしのべてあげる ことも大切です 4 2016 のではないかと思います。 ルしていただくと産業との結びつきが強まる を得意とするか、特徴をもっと明快にアピー でいく上では非常に大事だと思っています。 するんです。これが入学後に研究に取り組ん 差しで合否を決めずに、学生のやる気を重視 のか、これを徹底的に聞き、偏差値などの物 でどんな勉強をしてきた たいのか、そのために今ま あなたはどんな研究がし を 見 る こ と に し て い ま す。 知 識 の 量 で は な く、 意 欲 の 入 試 は 面 接 だ け で す が、 た い の で す。 J A I S T 臨んだらどうかと提案し いは博士として再就職に 門知識を深めて修士ある ら の 体 験 を 話 す こ と で、 彼 ら が 世 の そ し て、 私 た ち 企 業 側 は 若 い 人 に 自 身 で 切 り 拓 い て い く べ き も の で す。 て 自 分 た ち が ど う す る か は、 学 生 自 問 の 習 得 を 手 助 け し、 そ れ を 生 か し 浅 野 様 々 な 経 験 を 経 て 知 恵 を つ け て い く こ と は 大 事 で す ね。 学 校 は 学 にしたいなと思っています。 学 ん で く れ た ら 嬉 し い。 そ ん な 大 学 から這い上がるにはこうするのかと る の か 〟 と 境 遇 の 違 い を 知 り、 逆 境 出会い、 〝えっ、君はそんな経歴があ 会社を辞めて苦労してきた同級生と 学生もかなりいます。そんな彼らが、 もと彼らが辞めた理由で2番目くらいに多い つけて再就職することも多いようです。もと 所を探して例えば専門学校に行き、手に職を 職の問題です。離職した若者は、次に働く場 くらいで企業を辞めてしまうという、早期離 学長 本学でこれから力を入れようと思って いるのが、学部を出て新卒で就職しても3年 と思います。JAISTには留学生も多く在 まわりにも影響を与えてくれるのではないか 学に来てくれる学生がいるとしたら、 それは、 学長 一度企業に入って、組織を経験してか ら、キャリアアップしようと意欲をもって本 ります。 体験のひとつになって、成長を促すことにな その重大さは自分が一番よくわかる。貴重な んです。もし失敗して会社に損害をかけたら、 失敗を恐れたらあかん、やってみなって言う 浅野 意欲が大切というのは本当にその通り と思います。うちの会社も完全にそうですよ。 が、今後も学内で真剣に考えていきたいと思 できるのか、まだ私にも答はみつかりません 意義を改めて感じました。どうしたらそれが 持つこと、言い換えれば人間力を培っていく 学長 お話を伺って、リーダーとしての能力 を養うこと、あるいは逆境を乗り越える力を けっこういるんですよ。 私にあこがれて入社してくる女性も か が い ま す が、 そ こ で 話 を 聞 い て ら れ る。 私 は 時 々 大 学 に も 講 演 に う す。 逆 境 を 乗 り 越 え る 話 も し て あ げ 中で頑張っていくお手伝いができま のが「キャリアアップしたいから」だという ) 、学長補佐 ( ) 、大学院教育イニシアティブ ) 、研究科長 (情 報 科 学 研 究 科)( 浅野学長 逆境から再挑戦する姿から 学ぶことのできる 大学にしていきたい JAISTを次の キャリアアップの場に のです。そこで、我々としてはキャリアアッ ) 、評議員 ( ) 、北陸先端科学技術大学院大学情報科学 ) 、学長補佐 ( ) 、同教授 ( ) 、 大阪電気通信大学工学部助 います。本日はありがとうございました。 教授 ( 大阪大学大学院基礎工学研究科修了 ( 北陸先端科学技術大学院大学長。 籍 し ま す が、 エ リ ー ト 的 な 立 場 で 来 て い る Te t s u o 1 9 7 7 年より現職。 『計算幾何』 など著書多数。 − 研究科教授 ( ) 、 − 2 0 0 2 2 0 1 2 1 9 8 8 2 2 1 0 0 9 1 1 9 4 0 7 − 2 2 0 0 1 0 2 8 − 2 1 0 9 1 9 0 9 − 2 0 0 0 1 9 7 9 2 0 0 4 2 0 1 4 セ ン タ ー長 ( JAIST NOW No.15 5 プを考えるなら、ぜひ本学で全力で学び、専 A s a n o 浅野 哲夫 学 長 対 談 世界最高強度の透明樹脂の 開発に成功。ガラス代替による、 軽量化社会の構築に貢献 金子達雄研究室では地球環境保全 をモチベーションに、高分子ナノ構 造制御によりバイオマス由来の環境 適応型材料の開発に挑み続けている。 主な研究課題は、高性能バイオプラ スチックの創製、そして新規多糖類 「サクラン」の物性解明と応用である。 天然分子は多様かつ複雑な構造で ある上、易分解性で、物質科学者は 概ね敬遠する。それでも、金子教授 をバイオマス高分子化学へ駆り立て るのは、自然環境維持への意思と「天 然分子に潜む新機能の発見というロ マン」だ。 り、 力 学 強 度 は M Pa 程 度 で す。 チックの高分子に比べて柔軟であ の主骨格は一般的な工業用プラス ポ リ エ ス テ ル の ポ リ 乳 酸 で は、 そ ま し た。 例 え ば、 代 表 的 な バ イ オ 使い捨て分野に使用が限られてい 柔 軟 な ポ リ エ ス テ ル で あ る た め、 の多くが耐熱性や力学物性が劣る か し 現 状 は、 バ イ オ プ ラ ス チ ッ ク の 構 築 に 有 効 と さ れ て い ま す。 し る 種 類 が あ り、 持 続 的 低 炭 素 社 会 中に二酸化炭素を長期間貯留でき 植物などの生体分子から得られ る バ イ オ プ ラ ス チ ッ ク に は、 材 料 バイオプラスチックが 克服すべき課題 最高強度を誇る透明樹脂を開発した。 研究室開設 周年を迎えた今年4 月、金子教授の研究グループは、世界 10 60 1 特集 必 要 と し、 工 程 が 複 雑 と い う 欠 点 か し、 透 明 性 は 全 く 無 く 添 加 物 を ラ ス チ ッ ク を 作 製 し て い ま す。 し 菌 を 作 製。 発 酵 生 産 さ れ た 4 ‐ ア 成要素)を生産する組み換え大腸 の放線菌が産出する抗生物質の構 2 〜 4 千 円 /㎏ ) に な る と 予 想 さ が問題となっています。 がありました。 二酸化炭素固定化と自動車の軽量 金 属 部 品 を 代 替 す れ ば、 生 産 時 の ラスチックを微生物から開発して 能なスーパーエンジニアリングプ あ り ま す。 ポ リ ア ミ ド な ど の 高 性 金属や無機材料の使用が減りつつ て 部 品 へ の 要 求 耐 熱 条 件 が 緩 み、 ジンからモーターへの転用によっ 常 に 高 い 価 格( 約 1 0 0 万 円 /㎏ ) 的 に 生 産 す る と 工 程 数 が 多 く、 非 在 し な い ア ミ ノ 酸 で す。 石 油 化 学 私たちが着目する4‐アミノ桂 皮 酸 は、 天 然 に は ご く 微 量 し か 存 的に大量生産する手法を確立 ① 4‐アミノ桂皮酸を遺伝子工学 その研究の主要な成果は3つです。 イ オ プ ラ ス チ ッ ク を 開 発 し ま し た。 今 回 の プ ロ ジ ェ ク ト で は、 ガ ラ ス代替材料となる新しい概念のバ 毒性が高いために合成困難とされる は困難です。今回、微生物に対する 芳香族ジアミンと芳香族ジカルボ ン酸の両方を同じ原料から得ること 難な芳香族ポリアミドを合成 ② 微生物から得ることの極めて困 に な り ま し た( 筑 波 大・ 高 谷 教 授 マス原料から生産することが可能 ニンと4‐アミノ桂皮酸をバイオ ンである4‐アミノフェニルアラ 換( 図 ① )。 こ う し て、 芳 香 族 ア ミ さらに4‐アミノ桂皮酸へ生物変 生 産 す る 組 み 換 え 大 腸 菌 を 用 い て、 ルアラニンアンモニアリアーゼを ミ ノ フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン を、 フ ェ ニ 一 方、 樹 脂 に 代 表 さ れ る 高 分 子 系 材 料 は、 金 属 に 比 べ て 軽 く リ サ 化 と 温 室 効 果 ガ ス 抑 制 に つ な が り、 金属部品の代替材料として期待さ れています。とくに、ハイブリッド 化に伴う大規模な二酸化炭素排出 と な り ま す が、 遺 伝 子 工 学 的 手 法 型 自 動 車 や 電 気 自 動 車 で は、 エ ン 削減が可能です。 で 作 製 す れ ば 食 品 添 加 物 並 み( 約 との共同研究)。 私 た ち は こ れ ま で に、 剛 直 な 構 造 の 桂 皮 酸( シ ナ モ ン 系 分 子 ) か 新規プロセスによる バイオプラスチック イ ク ル 可 能 な た め、 自 動 車 の 軽 量 ら得るバイオポリエステルにガラ 科学技術大学院大学に着任。2016 年 3 月より現職。 その対策として強化剤の添加や結 専門分野は高分子合成、天然物化学、ソフトマター。 れます。 東京工業大学博士(工学) 。北海道大学、鹿児島大 M Pa の 力 学 強 度 を 持 つ バ イ オ プ 学、大阪大学での助手を経て 2006 年、北陸先端 ス 繊 維 を 混 ぜ 込 む こ と で、 1 4 5 Kaneko Tatsuo 晶 化 処 理 な ど が 行 わ れ て い ま す が、 金子 達雄 これらの処理による透明性の低下 金子 達雄 教授 ま ず、 グ ル コ ー ス を 原 料 に 4 ‐ ア ミ ノ フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン( あ る 種 環境・エネルギー領域 6 2016 遺伝子操作により日本のお家芸をさらに発展 COO- ● 光 透 過 率: 450nm) これら2種の芳香族モノ マ ー を 両 方 と も、 4 ‐ ア ● %( 光 の 波 長 %重量減少温度:370℃ ミノ桂皮酸の光二量化法 243‐252℃ 種々のカルボン酸誘導体を反応させ して有効であることが証明されま ることで、芳香族ポリアミドだけで し た。 こ の 芳 香 族 ジ ア ミ ン と 他 の と く に、 ア ジ ピ ン 酸 を 導 入 し た 場 合 に は、 透 明 度 %、 力 学 強 度 4 0 7 M Pa を 確 保 す る 優 れ た 透 ズやセンサーなどのガラス代替材 また、今回の微生物由来芳香族ポ リ ア ミ ド は 高 屈 折 率 で あ り、 レ ン ●ガラス転移温度:273℃ なく、他の様々な高強度バイオプラ 射することにより原料にまで戻す 料としても利用できると考えられ スチックを合成していきます。 こ と が で き る な ど、 化 学 リ サ イ ク に よ り 合 成 し ま し た。 こ 明材料を得ました。 MPa )の約6倍、透明樹脂として ルの可能な環境に優しい材料であ こ の 力 学 強 度 は、 ガ ラ ス 代 替 と して最も注目されている透明樹脂 最近クローズアップされたナノセル ます。今後、自動車、航空機、船舶 の方法は極めて効率が高 ロ ー ス 膜 の 2 2 3 M Pa を も 凌 駕 ることもわかりました。 く、 ほ ぼ 1 0 0 % の 変 換 す る 値 で あ り、 透 明 樹 脂 の 中 で 最 さ ら に、 こ れ ら の 芳 香 族 ポ リ ア ミドは溶液中で特殊な紫外線を照 ‐ジアセ キシル酸と芳香族ジカル も高い値です。耐熱温度も273℃ のポリカーボネートの力学強度( トアミドトルキシル酸を で あ り、 工 業 用 途 と し て 充 分 に 利 も の で あ り、 硬 さ と 適 度 ル酸という珍しい骨格の 得られた芳香族ポリア ミ ド の 構 造 は、 ト ル キ シ 設計 うに極めて高い値となり 成 し た と こ ろ、 以 下 の よ 半芳香族ポリアミドを合 肪族カルボン酸を加えて こ の 2 つ の モ ノ マ ー に、 第3のモノマーとして脂 認しています。 物 質 と し て 設 計 す る 予 定 で す。 私 たちが得た新規バイオプラスチッ NHAc 図② 4-アミノ桂皮酸からの4、 4' -ジアミノトルキシル酸ジメチル (4番 「バ イオ由来芳香族ジアミン」 :左ルート)および4、4' -ジアセトアミドトルキ シル酸(6番「バイオ由来芳香族ジカルボン酸」 :右ルート)の光反応による合 成、および重縮合による芳香族ポリアミド(7 番)の合成ルート。4-アミノ 桂皮酸からの4、4' -ジアミノトルキシル酸ジメチル(4番「バイオ由来芳香 族ジアミン」 :左ルート)および4、 4' -ジアセトアミドトルキシル酸(6番「バ イオ由来芳香族ジカルボン酸」 :右ルート)の光反応による合成、および重縮合 による芳香族ポリアミド(7 番)の合成ルート。 ク に よ る 軽 量 化 は、 二 酸 化 炭 素 排 7 ボ ン 酸 の 4, な 変 形 性 を 併 せ 持 つ「 分 ました。 n COOMe ‐ジアミノトル 得 ら れ ま し た。 芳 香 族 ジ 用可能なレベルといえます。 出 量 の 削 減、 産 業 廃 棄 物 の 削 減 へ 効 率 で、 芳 香 族 ジ ア ミ ン ア ミ ン の エ ス テ ル 化 後、 以 上 の 成 果 に よ り、 微 生 物 由 来 分子である4‐アミノ桂皮酸の光 子バネ」のような働きに ● 引 っ 張 り 強 度: 2 2 3 COOMe AcNH NHAc の 4, 一般のポリアミド合成条 一 方、 こ の 卓 抜 し た 力 学 強 度 の 発 現 に は、 芳 香 族 ジ ア ミ ン と 芳 香 の貢献が期待できます。 より優れた力学物性を示 ‐407MPa % HOOC MeOOC など様々な輸送機器のガラス代替 件下で芳香族ポリアミド 二量体が高強度透明樹脂の原料と し ま す。 芳 香 族 ポ リ ア ミ ●ヤング率:8‐ GPa COOH ガラス代替材料として 実用化へ を合成しました(図②)。 族ジカルボン酸両方のモノマー構 O C 造が重要であることも確 ドからキャスト法により ●破断伸び7‐ NMP (PhO)3P COOMe O H N C H N COOH ③ 最 高 強 度、 高 耐 熱 の バ フ ィ ル ム を 得 ま し た。 そ % 重 量 減 少 温 度: hv 6 イオプラスチックを分子 のフィルムの物性は次の ●光透過率: ‐ %(光 の波長450nm ) ● 356‐359℃ glucose NH3Cl Benzene (λ> 250 nm) HOOC 62 87 NHAc NH2 1) Me3SiCl, MeOH 2) 1N NaOH aq. とおりです。 GPa hv Pyridine 4 H2N 3 ClH3N ferment Hexane (λ> 250 nm) ● 引 っ 張 り 強 度: 3 5 6 MPa ●ヤング率: ● ガ ラ ス 転 移 温 度: 2 4ʼ ●破断伸び7% JAIST NOW No.15 7 5 AcNH MeOH 1 COOH (CH3CO)2O COOH conc.HCl COOH H 2N Acetone ClH3N 90 発酵生産 93 12 37 83 4-アミノフェニル アラニン (4APhe) 4-アミノ 桂皮酸(4ACA) NH2 NH2 NH2 10 10 papABC 4ʼ 11 OH シキミ酸 経路 4-アミノフェニル ビルビン酸 コリスミ酸 Pristinamycin I (放線菌の作る抗 生物質の一種) PAL AT COO- O NH2 O CH2 グルコース COOCOO- COO- フェニルアラニン生産性大腸菌 生物変換 図① 4-アミノフェニルアラニンの構造を天然物(抗生物質)の化学構造(左)と組み換え大腸菌を用いた4-アミノ桂皮酸の合成ルート(ブドウ糖(グ ルコース)から4-アミノ桂皮酸を合成する経路) 提供:筑波大学生命環境系 高谷直樹教授 展開図、折り紙、ゲームの、 難解な問題を解く アルゴリズム 計算折り紙、ゲームやパズル の計算量 折り紙は、Origamiで世界に 通用するほど知名度があり、計算折 り紙をはじめ多様な科学の研究対象 となっています。折りのアルゴリズ ムや計算量に関しては、本研究室が 日本での最先端です。 たとえばジャバラ折りは、端から 順に折らずとも、紙を重ねて一度に 折れば、 手早く折り目をつけられる。 こうした折りを定式化して、効率の 野にも、コンピュータサイエンスが 報科学とは相容れないと思われる分 めく。それらパズルや折り紙など情 上原研究室の一室には、人間の知 的欲求をとりこにするツールがひし 一方、計算機で解こうとする問題 が 非 常 に 難 解 で あ る と い う こ と も、 いえます。 とこそ、理論計算機科学の醍醐味と 問題の「解法を理論的に考える」こ 応用があります。そして抽象化した この両方を折れる展開図は2263 は、 1×1×5と1×2×3があり、 が (単位正方形=1×1)の箱に を証明しました。ちなみに、表面積 さらに、これが無限に存在すること 展 開 図 の 例 を 2 0 0 0 以 上 発 見 し、 いますが、私の研究室では、同様の アルゴリズムについても取り組んで ほか、ゲーム、パズルの解法のア ルゴリズムの効率や計算量、グラフ 示すこともできます。 価することでアルゴリズムのよさを します。こうした効率を理論的に評 ジャバラを折るアルゴリズムが存在 ムの開発です。実際、非常に高速に よい手順を考えることがアルゴリズ 隠れていることを上原教授は認知し 私の研究対象です。どんな高速コン いても検討しています。いまのとこ る種の問題の困難性を数学的に示せ いて効率のよい手順を考えたり、あ ズムに対応し、何らかの折り紙につ う行為は、コンピュータのアルゴリ る と す れ ば、「 折 り 紙 を 折 る 」 と い とえば「折り」を基本的な演算であ は2007年の著書で、異なる2つ の著書を上原教授が和訳している) メイン博士(計算折り紙で有名。彼 チューセッツ工科大学のE.D.ド 多 い の で す。 私 の 友 人 で あ る マ サ らかになっていない問題が非常に 最近の研究対象は立体の展開図で す。実は、展開図という分野には明 要です。 法をうまく組み合わせることが必 ピュータによる効率のよい探索方 に対する数学的な特徴付けと、コン うな結果を得るには、展開図や立体 ることがわかっています。以上のよ 4単面体とを折れる展開図は存在す ろ、立方体と正4面体に極めて近い たりもできます。このような「問題 います。 ている。展開図、折り紙、ゲームな があ の 場 合 は、 1 × 1 × 個。 表 面 積 が × ピュータでも理論的に解けないこと 個です。 20 面体)が共通の展開図を持つかにつ 12 の箱が折れる展開図を2例紹介して 複数の箱を折る展開図 の一つとしています。 対 し て 何 ら か の 妥 当 性 を も つ 解 を、 5 現実的な時間で与えることをテーマ 5 2つの正多面体(正4面体・ また、 立方体・正8面体・正 面体・正 5 の抽象化」は、実はあらゆる分野に にそぐわないものです。しかし、た 私の興味の対象は折り紙、展開図 など、一見、問題を解くという表現 理論計算機科学の面白さ ど を 対 象 に、「 問 題 の 解 き 方 = ア ル より現職。専門は計算量の理論とグラフアルゴリズム。 り、 こ の 3 種 を 折 れ る 展 開 図 は 9 University of Waterloo 客員研究員などを経て 2004 年 × 7、1 × 3 × 3、 ム研究所、東京工業大学情報理工学研究科非常勤講師、 を 証 明 す る の も 一 つ の 結 論 で す が、 電気通信大学博士(理学)。キヤノン(株)情報システ 私 た ち は、 「計算が困難な問題」に Uehara Ryuhei ゴリズム」を探索することが上原研 上原 隆平 教授 究室の主なテーマである。 上原 隆平 30 22 2 特集 ゲーム・エンタテインメント領域 8 2016 情報処理技術は、処理の効率化に とど ま ら ず 、 ひ と に 知 的 な 豊 か さ を もた ら す 手 段 と し て 多 分 野 で 躍 進 し てい る 。 た と え ば 、 現 実 世 界 で は 多 大な 作 業 を 要 す る 精 緻 な 事 物 を 美 し く再現するCG画像、あるいは、専 門的 技 巧 は な く と も 創 造 的 ア イ デ ア を具象化できるシステムなどをメ ディ ア 技 術 が 可 能 に す る 。 宮 田 研 究 室 で は 、 映 像 表 現 手 法 や 創造活動の支援を目指し、CG技術 を核 と し 、 そ の 周 辺 分 野 の 知 見 を 積 極的に取り入れた研究を進めている。 人でも自分の考案した模様デザイン ることで、専門的スキルを持たない ピュータの自動生成システムを用い 友 禅 で は、 精 細 な 模 様 描 き に コ ン 減 を 可 能 に し ま し た。 ま た、 加 賀 の大幅な削 ストと時間 に要するコ の漆器制作 制 作、 実 際 製品見本を 現によって いた素材表 データを用 射率の計測 長ごとの反 られます。ま いる感覚を得 験者は風景を自身の手で創り出して 振るたびリアルタイムで変化し、体 成します。風景画像はシェーカーを カーで混ぜることで風景のCGを作 の要素を材料とし、これらをシェー 『 風 景 バ ー テ ン ダ ー』 は カ ク テ ル のアナロジを用い、岩や水など風景 ストや展示会に出展してきました。 す。学生たちは毎年、各種のコンテ システムの開発にも力を注いでいま イスが融合したインタラクティブな は、メディア技術とセンシングデバ る分野も対象としています。私たち 体を動かすことへの動機付けを要す ニングやリハビリテーションなど身 メント分野のみならず、身体トレー ならびに、我々が生み出してきた技 ど う 解 決 す る の か を 考 え 抜 く こ と、 は、どのような問題があり、それを ことでしょう。研究室のメンバーに ように応用していくべきかが重要な が、こうした技術を人のためにどの CG技術はいまや、社会や生活に しっかりと根付いた基幹技術です 法などを開発しています。 プロジェクションマッピング制作手 の作成を支援する手法や、立体カー 最近では、任意のカラーイメージ に応じた調和のとれた配色パターン 関心を持つきっかけを提供します。 かを創るクリエイティブな遊びへの クな城に変化。体験者に、一から何 元CGによる仮想世界でダイナミッ ドとスマホを用いて児童でも扱える 人間に親しく寄り添う技術 を描くことができます。つまり、人 た、 『積み木 アート、デジタル映像、マルチメディアアプリケーション。 Visual Computing の創造性や表現力をより自在に引き キャッスル』 術を人に役立てることで新たな価値 2012 年本学知識科学研究科教授。専門は CG、メディア 私 た ち は 、 C G 技 術 、 な か で も プ ロシージャルモデリング、質感表現、 出すことを可能にします。 を創り出すことに重きを置くよう指 どを経て 2002 年、本学知識科学教育研究センター教授、 テ ク ス チ ャ 生 成、 ア ニ メ ー シ ョ ン、 では、体験者 東京工業大学博士(工学)。日本 IBM ㈱、東京工芸大学な 画像 処 理 な ど の 研 究 、 さ ら に コ ン テ Fun Computing が積み上げた Miyata Kazunori ンツ 制 作 支 援 技 術 や 感 性 情 報 処 理 に 導を行っています。 宮田 一乘 も取 り 組 ん で い ま す 。 積み木が3次 宮田 一乘 教授 人の日常に楽しさを創出するメ ディア技術の応用は、エンタテイン ヒューマンライフデザイン領域 C G に お け る プ ロ シ ー ジ ャ ル ( 手 続き 的 と い う 意 味 ) は 、 何 ら か の ア ルゴ リ ズ ム で 形 状 や 模 様 を 効 率 よ く 生 成 す る 手 法 で す。 たとえば、パラ の制 作が可 能であ り、 ゲーム分 野 な メータの変 更による多 様なコンテンツ くり 出 すことで、 ゲームに関 心 を 引 ら ば 変 化に 富 む 無 数のステージをつ き寄せるという効果を付与できます。 本学が在る石川県は伝統工芸の宝 庫で あ り 、 こ こ で も 私 た ち の C G 技 術が 活 用 さ れ て い ま す 。 漆 工 芸 の 分 野 で は、 金 箔 と 漆 素 材 に つ い て 波 JAIST NOW No.15 9 3 CGを核とするメディア技術により 創造活動やエンタテインメントを より豊かに、楽しく 特集 知識マネジメント領域 Shikida Asami 敷田研究室 高知大学農学部栽培漁業学科卒業後、石川県水 学院留学、金沢大学大学院社会環境科学研究 産課勤務。その間、豪州ジェームスクック大学大 資源活用戦略と 人材育成で 知識共創する地域を創る 者である環境省や地元関係者、学識 針です。戦略は世界自然遺産の管理 経験者による組織が運用しています。 という循環と進展です。このサーキッ 教 育 シ ス テ ム、NPO 活 動 な ど 非 トモデルは、地域づくり、まちづくり、 この戦略の策定では、新しい観光 利用や新しいルールの採用を議論す つの必要な視点に沿って関係 ム」を導入しました。3つの基本原 るために「知識共創プラットフォー 常に多様な分野で応用可能です。 エコツーリズムや 観光への応用 則と 会や経済を維持するための地域資源 ました。主な研究課題は、⒈地域社 ントをテーマとする研究室を開設し 今 年 1 月、 J A I S T に 着 任 し、 地域づくりや地域ナレッジマネジメ に昇格します。そして学習コア②でコ ④はその成果が評価され、コンセプト な成果が生まれる具象化、フェーズ ① )。 フ ェ ー ズ ③ は 知 識 か ら 具 体 的 に よ り 学 習 が 進 み ま す( 学 習 コ ア トワーク形成で、議論、体験、協働 フェーズ②は知識の共有によるネッ 種 の 知 識 の 開 示( 店 を 開 く ) で す。 生、経済の活性化など、地域におけ リズムは、環境保全、地域社会の再 必要になります。つまり、エコツー つつ、地域に利益をもたらす戦略が エコツーリズムでは、地域資源で ある自然環境を、その価値を保全し ズム」の持つ意味に共感しました。 際、 そ の 概 念 を 学 び、 「エコツーリ ジェームスクック大学に留学した 地域社会や経済にとって重要な「資 地なので、 地域関係者の利用もある、 すが、実際には世界遺産地域は観光 また世界自然遺産では、環境分野 の専門家が問題解決にあたっていま ロセスを明確にすることが重要です。 なニーズが混 在する 場 合、 達 成 目 標 観光、地域振興、自然保全など多様 知 床のエコツーリズム戦 略のように、 者 か ら の 提 案 を 実 現 し て い き ま す。 戦略のイノベーション、⒉地域活性 る複数の課題を多様な主体によるマ エコツーリズムは私の専門で す。 年ほど前、オーストラリアの 化を担う人材の効果的な育成と、仕 現れ、新たな知識が加わって、一段高 ンセプトに賛 同した 新たな 参 加 者が 源」です。そこには多様な意見や要 構成されています。フェーズ①は多 事と地域活動を両立できる新しい働 求が投影されますが、同時に関係者 ↑形成 ↓発信 を重視すべきだと私は考えています。 た「 文 化 」 も 貴 重 な 資 源であり、エ 自然と人との相互作用から形成され か し て、 新 た な 知 識 を 共 創 す る 場、 うしたアイディアや情報をうまく生 れる空間でもあります。そこで、こ の持つアイディアや情報が持ち込ま プラットフォーム設計が重要になる のです。 リズム検 討 会 議の 座 長 を 務 めていま 世界自然遺産地域適正利用・エコツー エコツーリズム戦 略 」です。 私は知 床 私が関与した事例のひとつは、知 床世界自然遺産地域における「知床 決が進められています。 ベーティブな知識創造、地域課題解 戦 略 モ デ ル な ど を 応 用 し て、 イ ノ 戦略では、サーキットモデルや資源 ナンス」です。知床エコツーリズム 様な主体が参加した「地域資源ガバ そ れ が 最 近 話 題 に な っ て い る 国、 県、自治体、NPO、企業など、多 域の保全と活用を推進するための方 す。知床エコツーリズム戦略は遺産地 知床のエコツーリズム戦略 への応用 コツーリズムでは「 生 物 文 化 多 様 性 」 を 定めるのではなく、 合 意 形 成のプ き方の研究、⒊観光による地域再生 ネ ジ メ ン ト で 解 決 す る「 地 域 経 営 」 新たな研究室のスタート 8 の優れた手段といえます。その際に、 30 次のサイクル、 再びフェーズ①に入る サーキットモデル を図る支援組織などの中間システム 【店を開く】 【表現】 の分析です。 【ネットワーク】 【評価】 応用自在な サーキットモデル これまでに考案した知識創 造のマネジメントデザインと し て「 サ ー キ ッ ト モ デ ル 」 が あ り ま す。 こ れ は、 い ろ い ろ な知識を組み合わせて新たな 地域づくりに参加する人が 知識や情報を出し合う 【学習コア②】 外部から新たな参加者 と知識を呼び込む 知識を具体的な成果に変え、 外部へ向かって表現する 仲間づくり 学習コア 翻訳・PR 地域づくりにかかわる人が ネットワークで結びつき、知 識や情報を共有する 【学習コア①】 議論や体験の中で 新たな知識を創造する 表現した成果が外部で評価 され(正当化され)、良いイ メージが形成される 活動を起こす必要があるケー ス に 応 用 で き ま す。 モ デ ル は つ の 性 質 を 持 つ「 場 」 を 内 部 と 外 部、 形 成 と 発 信 と い う つのコアで 交 互 に 組 み 合 わ せ、 さ ら に つのフェーズと 2 4 2 観光、地域再生、人材育成 科博士課程修了。2007 年北海道大学観光学高 ←外部で 内部で→ 1 研究室訪問 敷田 麻実 2 PROFILE 等研究センター教授、2012 年国連大学高等研究 地域資源戦略、地域マネジメント、地域人材育成。 所客員教授 。2016年から本学教授。専門は観光、 10 2016 池田 心 Ikeda Kokolo 等研究セ 学、進化計算、機械学習、エー 所客員教 ジェントシミュレーション。 高知大学 東京工業大学博士(工学) 。京 産課勤務 都大学学術情報メディアセン ﹁人間を楽しませる﹂︑ ﹁人間を上達させる﹂ ゲームAIをめざして が指導をする上で必要となる6つの 要素、 プレイヤの強さや好みを量る、 形勢を制御する、不自然な手を打た ないなどを洗い出しました。とくに プレイヤが初中級者の場合、相手を 勝たせること、しかも、あからさま に 悪 い 手 は 避 け る こ と が 重 要 で す。 人工知能(AI)の進化には目覚 ましいものがあります。1997年、 てくれない父の代わりに、教え上手 に。この体験から「なかなか勝たせ ら高等学校入学まで敬遠すること しかし、囲碁については、父の指 導の厳しさがつらくなり、就学前か 夢を抱くようになります。 は「ゲームの研究者になる」という てその効果を確認しています。 ける手法なども開発し、実験によっ る手法を開発。さらに、コンピュー えるのかを検証し、それらを抑制す 私たちはどのような手が不自然に見 IBMのプログラムがチェスのチャ なコンピュータが指導してくれたら ゲームのAIへの追求が主流です。 けるゲーム研究もまた、強いボード て進化を遂げてきました。日本にお うに、ゲームAIは「強さ」を求め ラスの棋士を破っています。このよ ムに取り組んでいます。まず、AI ませること」を目的とするプログラ つこと」ではなく「プレイヤを楽し 『 接 待 碁・ 指 導 碁 プ ロ グ ラ ム 』 の 研究では、AIが指導役となり、 「勝 テーマにつながっています。 いう思いを持ち、これが現在の研究 囲碁を続けていたかもしれない」と 働き、「不当に操作されている」 とゲー よってはプレイヤの認知バイアスが 要 に な っ て い ま す が、 目 の 出 方 に が実現可能になり、乱数の操作は不 為に乱数が用いられています。昨今、 コンピュータゲームでは、トラン プを配る、サイコロを振るなどの行 プレイヤが自然に感じる乱数の作成 タにありがちなワンパターンさを避 Google のプログラムが囲碁の世界トップク 面白さ志向のゲームAIを 研究対象に ンピオンに勝利し、最近では こうした傾向に対して池田研究室 では、ゲームAIの「強さ」だけで 「不当な乱数操作をしている」と いう思い違いのレビューに困惑する ゲームメーカーが多い現状を反映 し、私たちのこの研究をまとめた論 文は、情報処理学会の電子図書館で 閲覧数1位になるなど、注目を集め ています。 を上達させる」という要素を持つ しい乱数と私たちが調整した乱数と 考案しています。実際、数学的に正 に見える乱数生成のアルゴリズムを 度を落とすなど、真の乱数より自然 対応し、例えば同じ目が連続する頻 生成』の研究では、認知バイアスに 『偏りがあ こ う し た 状 況 に 対 し、 るように思わせない(偏った)乱数 ムに不信感を抱く場合もあります。 ベーションにしてほしい」と、常々 があるという気持ちを研究のモチ け で な く、 「こういうところに不満 す。しかし私は、ゲームへの愛着だ 当研究室のメンバーに共通してい るのは、ゲームが好きということで ちが一番乗りしたいと思っています。 かはわからない。そこはぜひ、私た す。 し か し、 プ ロ レ ベ ル の「 指 導 」 今後も、プロレベルのゲームプロ グラムが次々に現れると予想されま ゲームAIの進化を促すのは、 ひとの「不満」 ゲームAI、ならびにテレビゲーム を見せると、被験者の多くが後者の ある程度強いコンピュータプレイヤ な く、「 人 間 を 楽 し ま せ る 」・「 人 間 私は、囲碁や数学パズル、プログ ラミングを愛する父の影響で、幼少 話しています。 プレイヤを楽しませる、教え 上手な囲碁AI ができるプログラムが現れるかどう から囲碁やゲームに親しみ、やがて ほうを真の乱数だと判断します。 のAIについて研究を進めています。 プログラミングも始め、中学時代に JAIST NOW No.15 11 学院留学 科博士課 強い・楽しませる・教える AI 本学勤務。専門はゲーム情報 Shikid ゲーム・エンタテインメント領域 池田研究室 ター助教を経て 2010 年より 敷田 研究室訪問 2 PR PROFILE 地域資源 3 PROFILE 研究室訪問 大島 義文 Oshima Yoshifumi 応用物理学領域 大島研究室 東京理科大学学士(理学) (1989)、東京工業大学修士(理 学)(1991)、同大学博士(理学)(2001)。富士通株 式会社(1991)、東京工業大学大学院総合理工学研究 表面界面物性、電子線物理 科助手(1995)、横浜市立大学国際総合科学研究科非 常勤講師(2006)、科学技術振興機構さきがけ研究員 (2007)、大阪大学超高圧電子顕微鏡センター特任准教 授(2010)、北陸先端科学技術大学院大学准教授(2014) 透過型電子顕微鏡を駆使した︑ (液体を閉じ込められる・3電極があるなどの Au 観察例 金電極表面における銅メッキ反応の観察例。右図のように 金電極の電位に応じた反応をリアルタイムで観察した。 Au ナノギャップにグラフェンを架橋する 身につくこと 20 輪講 (3) 学会発表を積極的に行っています。 (1) 透過型電子顕微鏡の原理、技術、操作、解析手法などを習得できます。 (材料やデバイス開発に欠かせない透過型電子顕微鏡の習得は、大きなアドバンテージです) (2) プレゼンテーション能力が向上します。 (学会発表などのプレゼンテーション指導を重視しています) --全員で電子顕微鏡の基礎について勉強します。 (2) 自分のペースで研究を行っています。 (3) 学会発表を積極的に行っています。 (1) 透過型電子顕微鏡の原理、技術、操作、解析手法などを習得できます。 (材料やデバイス開発に欠かせない透過型電子顕微鏡の習得は、大きなアドバンテージです) (2) プレゼンテーション能力が向上します。 (学会発表などのプレゼンテーション指導を重視しています) d --全員で電子顕微鏡の基礎について勉強します。 論文紹介--自分が興味を持った論文を全員に紹介します(当番制)。 身につくこと c 論文紹介--自分が興味を持った論文を全員に紹介します(当番制)。 (2) 自分のペースで研究を行っています。 (1) 毎週、輪講と論文紹介(約3時間)を行っています。 輪講 b (1) 毎週、輪講と論文紹介(約3時間)を行っています。 の様子をナノスケールから原子ス 院生の活動 a グラフェンナノリボンの形成過程 ケールで可視化する手法の開発に臨 e 従来(2進法) 新しいデバイ 電気化学反応が起きている様子が直接観察で んでいます。 d 原子の個数に応じて、伝導は整数倍で 変化することがわかった。 ナノ物質を架橋できる装置を開発した。 装置の開発から 観察・計測・応用まで c 観察・計測 Te 開発に 年を注いだ、透過型電子 顕微鏡をベースとした計測システム b をいくつか紹介します。 a 電気伝導を測 電気化学反応セル開発によるメッ に は 約 0・1㎜ と い う 微 小 な 部 材 か 院生の活動 グラフェンナノリボンの形成過程 ハードウエ 例2 ら構成された測定装置が使われてい Au ナノギャップにグラフェンを架橋する 炭 素 の 原 子 シ ー ト「 グ ラ フ ェ ン 」 は様々な特性を有し、なかでも室温 金電極表面における銅メッキ反応の観察例。右図のように、 金電極の電位に応じた反応をリアルタイムで観察した。 ナノ伝導特性? 原子1個の抵抗(電気伝導)はどのくら いだろうか? シリコン結晶中のヒ素ドーパント観察 軽元素検出 動機 ナノ伝導計測法の開発によるグラフェン伝導の解明 ます。私たちは装置にさらなる改良 Au (液体を閉じ込められる・3電極があるなどの特徴がある) 観察例 元素識別 観察例 を自ら加えることで独創的な計測手 観察例 における電子移動度が非常に高いこ 電気化学反応が起きている様子が直接観察できる装置を開発した。 (極めて小さい電極をもつという特徴がある) とからポストシリコンと目されてい ナノ物質を架橋できる装置を開発した。 ナノ物質の構造を直接明らかにできる優れた装置です。 (極めて小さい電極をもつという特徴がある) 法を考案し、ナノ物質の原子配列と 電気化学反応セル開発によるメッキ反応の観察 大島 義文 E-mail: [email protected] 例えば リチウム原子の検出 例1 物性との関係を直接観察によって明 ナノ伝導計測法の開発によるグラフェン伝導の解明 ます。しかし、グラフェンを素子化 例2 すると特性が劣化してしまい、その 従来(2進法)にない4進法などで動作する 新しいデバイスの可能性が出てきた。 ら か に し、 ナ ノ 世 界 の 探 索 を 進 め 原子の個数に応じて、伝導は整数倍で 変化することがわかった。 ていきます。 リチウム原子の検出 電池の性能向上に役立てたいと考え Terabe et al. Nature 433, 47 (2005). ています。 リチウムイオン電池では、 応用 リチウムイオンが正極材料から負極 電気伝導を測定できる装置を開発しよう。 材料に移動することで蓄電し、正極 ソフトウエア 材料の元のサイトにもどることで放 電しています。しかし、リチウムイ オンの放出により正極材料の空乏状 ハードウエア 開発 態が構造変化を引き起こし、すべて のリチウムイオンが正極材料にもど 観察・計測 らないことが指摘されており、これ 原子1個の抵抗(電気伝導)はどのくら いだろうか? がリチウムイオン電池の性能劣化の ナノ伝導特性? 一因とされています。 こうした状況において、リチウム イオン二次電池の小型化や長寿命化 動機 などを図る研究が盛んに進められて 軽元素検出 おり、正極材料などの結晶中におけ シリコン結晶中のヒ素ドーパント観察 るリチウムイオンの局所的な振る舞 元素識別 いを制御することが課題となってい ます。私たちは、リチウムイオン電 池の固液界面における電気化学反応 ナノ物質の構造を直接明らかにできる優れた装置です。 2 一因として 次元構造ゆえの不純物 例えば 吸着による影響が挙げられます。 透過型電子顕微鏡 私たちは、クリーンな環境下で つの電極間にナノサイズのギャップ 透過型電子顕微鏡は、カーボンナノチューブの発見など未知のナノ物質の構造を明らかにできる極めて強力な研究手法です。 本研究室では、透過型電子顕微鏡に様々な物性計測装置を組み合わせる手法を独自に開発することで、ナノ物質の構造とその物性 (機能)の関係を明らかにしています。このような研究は、新しいタイプの電池やデバイス開発に大いに役立っています。 を形成し、ここにグラフェンを架橋 形成するという手法により、原子ス E-mail: [email protected] ケールの構造と伝導性との関係を追 大島 義文 究しています。このような接点構造 准 教 授 大 島 研究室 とコンダクタンスとの関係の解明 は、グラフェン素子の実現に寄与で きるものと考えています。 軽元素の可視化と その電気化学反応の解明 近年、収差補正装置の開発により 透過型電子顕微鏡の空間分解能が格 段に向上しました。私たちは、水素 に次いで小さいリチウム原子の可視 化に成功し、これをリチウムイオン 透過型電子顕微鏡を駆使した未知なる表面ナノ物質の探索 准 教 授 大 島 研究室 透過型電子顕微鏡は、カーボンナノチューブの発見など未知のナノ物質の構造を明らかにできる極めて強力な 本研究室では、透過型電子顕微鏡に様々な物性計測装置を組み合わせる手法を独自に開発することで、ナノ物 (機能)の関係を明らかにしています。このような研究は、新しいタイプの電池やデバイス開発に大いに役立 透過型電子顕微鏡 2 未知なる表面ナノ物質の観察と 物性の探索 物質の構造と物性との関係を 探究 携帯電話をはじめ私たちに身近な 電子機器は小型化が進んでおり、こ れ に と も な う 部 品 の 微 細 化 に よ り、 ナノ物質の探索に対する要求はます ます高まっています。私たち大島研 究 室 で は、 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 と プ ローブ顕微鏡などの計測装置を組み 合わせる独自の手法を駆使すること で、ナノ物質の構造を観察するだけ で は な く、 構 造 と 電 気 的、 磁 気 的、 光学的などの物性との関係を解き明 かすことに挑んでいます。 透過型電子顕微鏡は、光学顕微鏡 が観察対象に可視光線を照射して拡 大するのに対し、電子線を利用して 原 子 ス ケ ー ル の 世 界 を 観 察 し ま す。 カーボンナノチューブの発見に象徴 されるように、透過型電子顕微鏡は 極めて高い分解能を有しています。 ナノ伝導計測法の開発による グラフェン伝導の解明 大島研究室で取り組んでいる課題 透過型電子顕微鏡を駆使した未知なる表面ナノ物質の探索 2016 12 e 同窓会員インタビュー ンサーや微小流体デバイスをテーマ す。そんな時に知ったのがバイオセ 領域に惹かれるようになったんで 機械工学と生物学を融合させた複合 スα で き る 新 し い 分 野 を 探 す う ち、 む際に、それまで学んだことにプラ 思いを抱いていました。大学院に進 近で役に立つ方向に進みたいという 組んでいたのですが、もっと人の身 気の流れを測定する計測器等に取り 出身の高専では機械系の分野を学 び、例えば自動車の周囲で起きる空 てもうまくいかない期間がありまし り、毎日研究室に通って実験を続け ま し た。 研 究 途 中 で 躓 く こ と も あ とを新たな分野で生かすことができ 須であり、高専時代に学んできたこ じめ、機械や回路、加工の知識が必 な装置でした。開発には生物系をは ので、誰でも手軽に測定できる小さ は〝身近で役立つ〟ことに通じるも としました。その中でも私のテーマ 測定できるような検査装置をテーマ がんの診断で重要な腫瘍マーカーを 研究室では人間の血液や尿の中に 極めて微量に含まれる物質、例えば やすい環境だと感じたものです。 集まっており、新たな分野に挑戦し 様々なバックグランドを持つ学生が 徴かと思いますが、JAISTには 籍した高村研究室では、まず大きな と感じています。というのも私が在 が、その力がJAISTで養われた していくというプロセスが必要です 自分なりに何か手立てを導き、実現 のですから、漠然とした方向性から う明確な指示はまず与えられないも をやりなさい〟とい で の 研 究 で は〝 こ れ ん で い ま す。 仕 事 上 イクルで毎日取り組 行 う。 そ の よ う な サ ん で、 実 際 に 実 験 を うにプログラムを組 ソコンで動かせるよ 立 て、 実 験 装 置 や 回 ついて一つの目標を り、 様 々 な テ ー マ に いくための研究であ で い る の が 印 象 に 残 り ま し た。 教 対して主体的な意識を持って臨ん と 感 じ る こ と が あ り、 特 に 研 究 に 現地の学生は日本とは様々に違う 留 学 し た こ と が 一 番 の 思 い 出 で す。 あ っ て、 5 か 月 間 ほ ど イ ギ リ ス に 中で過ごしたくないという思いも 仕事と向き合い、 新技術を追究しています (2007)、大 授(2010) マテリアルサイエンス研究科 博士後期課程 2015 年修了 28 歳 JAISTでは、自身にとっ て新たな分野の研究に取り組 まれたそうですね としている高村研究室であり、この たが、教授に相談して指導を仰ぎな 研究室での経験を糧に、 科助手(1 常勤講師( すぎやま・きよたか 株式会社 日立製作所 研究開発グループ バイオシステム研究部 研究員 杉山 清隆 Sugiyama Kiyotaka めたものです。1年経ってみると大 なアプローチを示していただいた上 課題が与えられ、それに対する様々 で す、 と 明 確 に 発 言 し た 上 で 助 言 授との接し方も自分の意見はこう 路 を 作 り、 そ れ を パ 研究室に入ろうとの思いでJAIS がら一つひとつ壁を越えるように進 きく進捗している、そんな時に達成 を 得 る と い っ た ス タ ン ス で す ね。 生 が 多 く、 日 常 的 に 外 国 の 方 と 接 一 方、 J A I S T の 学 内 に も 留 学 す る 機 会 に は 恵 ま れ ま し た。 こ う で、あとは自由にやりなさいという 題と向き合って自ら考え、なんとか い っ た 経 験 が、 現 在 の 仕 事 に お い 放任的な環境でしたので、学生は課 成 果 を 出 す こ と が 求 め ら れ ま し た。 て、 例 え ば 国 際 会 議 で 発 表 す る、 と考えています。 喜ばれる製品を開発していきたい に 目 を 向 け な が ら、 海 外 で 通 用 し、 て く れ た と 思 い ま す。 今 後 も 世 界 た場面で積極的になる素養を培っ 他国の情報を仕入れてくるといっ その経験から得た力が今、仕事の場 入学時から博士後期課程まで行 き た い と 考 え て い ま し た の で、 そ 学生生活では、どんな思い出 が残っていますか? 面で生きていると感じます。 感を感じましたね。 修了後も研究職に就かれてい ますが、在学中の経験はどう 役立っていますか? 現在は企業の一員として、医療用 の検査装置の開発に関わる研究に携 わっています。例えば健康診断で行 う血液検査で血糖値やコレステロー を行う装置です。その性能を支える の5年間をずっと限られた空間の ル等を調べますが、そういった分析 技術を今よりもさらに向上させて JAIST NOW No.15 13 Tを志望しました。大学院大学の特 JAIST 同窓会・修了生レポート 式会社(1 現在の研究職にも役立つものになったと当時を振り返ります。 学)(1991 JAIST での研究生活では漠然とした課題に主体的に取り組む姿勢や、海外で活躍するための素地が養われたと語り、 東京理科大 人の身近で役立つテーマを研究したいと、それまで専攻していた機械系とは異なる複合領域に挑戦した杉山さん。 大島 Oshim Interview PR 平成 28 年 4 月 欧州連合(EU)発の大学ランキング「U-Multirank」において、昨年に 引き続き、本学の研究等が世界的にトップクラスとなる優れた評価を獲得 U-Multirank から提供された評価結果「Sunburst Chart」 本学は、欧州連合(EU)の主導で発足した大学ランキング「U-Multirank」に 3年連続で参加し、 「研究」及び「国際指向」分野のうち、研究成果、外国語プ ログラム、外国人学生への学位授与率などの主要項目で、昨年に引き続き最高 ランクの評価を獲得し、世界の高等教育機関の中でトップクラスに位置付けら れました。国内の対象機関の中では、 「研究」関連分野の評価が、東京大学に次 ぐランクの評価となりました。 U-Multirank は、EU の出資を受けたコンソーシアムが、ドイツ・高等教育開 発センター(CHE:Center for Higher Education)やオランダ・トゥウェンテ 大学高等教育政策研究センター(CHEPS:Center for Higher Education Policy 解説:研究(桃色)、国際指向(橙色)については、右の指標に基づき調査され、高い評 価結果となっています。 Studies at the University of Twente)等の専門機関の支援を得て実施しています。 このランキングの特徴は、既存の国際的な大学ランキングとは異なり、異なる活動の成果を集めた混合得点による大学の順位表は作成 せず、教育・学習、研究、国際指向、知識移転等の各分野のパフォーマンスを分野ごとに比較できる多元的評価を導入していることです。 第3回となる 2016 年ランキングは、世界 90 カ国以上の 1,300 を超える高等教育機関が対象となりました。 平成 28 年 5 月 「JAIST-能美市連携オフィス」を開所 5 月 19 日、「JAIST -能美市連携オフィス」開所式を挙行 しました。 産学連携本部棟に設置された「JAIST -能美市連携オフィ ス」では、能美市職員を研究員として受け入れ、本学と能 美市で行政評価システム構築のための人材育成にかかる共 同研究を実施します。 能美市は、より質の高い行政運営を行うため、総合計画・ 総合戦略等の進捗管理と住民福 祉の向上に向けた政策・事業の 振り返りなどを有機的に繋げ、 行政組織に合った新たな行政評 価システムを構築することを目 指し、本学はその技術的・人的 なサポートを行います。 平成 28 年 6 月 シェレホフ市公式代表団が浅野学長を表敬訪問 6 月 23 日、シェレホフ市公式代表団が浅野学長を表敬訪問しま した。 浅野学長が代表団の来訪を歓迎して、「本学が有する最先端の科 学技術と教育研究に触れていただきたい」と挨拶し、代表団団長の モーディン・マクシーム シェレホフ地方行政府長官が謝辞を述べ ました。 代表団一行は、学長は じめ、理事、副学長と大 学院における教育や研究 に関する意見交換を行っ た後、本学の最先端の研 究設備を視察し、教員の 説明に熱心に耳を傾けて いました。 平成 28 年 7 月 平成 28 年 9 月 7 月 27 日、熊本大学(学長 原田信志)と「熊本地震からの復 興支援に向けた連携及び協力に関する協定」を締結しました。 本学は、これまで北陸地域を中心に、大学や企業のシーズ・ニー ズを集合させ、それらの自由な組み合わせの中から生み出され た『種』を、複数の地方自治体や金融機関が支援することによ り 『芽』 を出させ、 新製品・新事業へと発展させる活動を 「Matching HUB」と称して展開しており、産学連携・産産連携において成 果を上げてきました。 本協定は、本学の 「Matching HUB」 の活動が熊本県内産業の復旧・復興 にも繋がることが期待されることか ら、その活動を通じて両大学が協力 して熊本地震からの復旧・復興を支 援することを目的として、締結した ものです。 9 月30日、 駐日 インド大使のスジャ ン・ロメーシュチャ ンドラ・ チノイ大 使が本学を訪問し ま し た。 チノイ大 使 は、2015 年 12 月の大使着任以来 はじめて石川県を訪問し、インドからの留学生受入について高 い実績を持つ本学を視察しました。チノイ大使、大使夫人、石 川インド協会関係者を含め計 6 名が訪問しました。 浅野学長との懇談後、大使と本学のインド出身留学生、教員 及び研究員ら約 30 名と意見交換を行いました。この他、ナノ マテリアルテクノロジーセンターや図書館等を視察し、本学の 最先端の実験機器設備等について説明を受けました。 熊本大学と「熊本地震からの復興支援に向けた連携及び協力に関する協定」を締結 駐日インド大使が本学を訪問 2016 14 HOT NEWS [ ジ ャイ スト ホットニュー ス ] 平成 27 年 11 月 平成 27 年 11 月 11 月 6 日、公立大学法人金沢美術工芸大 学(学長 前田昌彦)と「大学間交流に関す る包括協定」を締結しました。 本協定は、教育・研究活動の包括的な交流 と連携・協力によって、教育・研究の一層の 発展に資することを目的として締結したもの で、 連 携 の 内 容 は、 教 職 員 及 び 学生の交流に関 す る こ と、 共 同 研 究、 セ ミ ナ ー 等の実施に関す ることなどです。 11 月 16 日、金沢大学(学長 山崎光悦)と「共同 大学院の設置に向けた連携協定」を締結しました。 本協定は、平成 27 年度文部科学省「国立大学改 革強化推進事業」において、金沢大学と本学の共同 申請による共同大学院設置構想の採択を受けて締結 したものです。 金沢大学が持つ “ 総合大学のスケール・多様性 ”、北陸先端科学技術大学院大学 が持つ “ 大学院大学の専門性・特殊性 ” というそれぞれの特色と、石川県内に隣接 する大学という地の利を最大限に生かし、平成 30 年度を目途に、領域融合型の共 同大学院として「先進融合学術共同専攻(仮称)」を設置し、新しい研究領域に挑 戦する “ 新たな融合型大学院教育モデル ” の構築を目指します。 金沢美術工芸大学と「大学間 交流に関する包括協定」を締結 金沢大学と「共同大学院の設置に向けた 連携協定」を締結 平成 27 年 11 月 北陸発の産学官金連携マッチングイベント『Matching HUB Kanazawa 2015 Autumn』を開催 11 月 16 日、17 日の 2 日間、ANA クラウンプラザホテル金沢にて「北陸発の産学官金連携 マッチングイベント『Matching HUB Kanazawa 2015 Autumn』」を開催しました。本イベン トは、北陸地域全体の活性化を目的に、本学産学連携本部産学官連携総合推進センターが実 施主体となり開催しているもので、今年で4回目を迎えました。今回は、公益財団法人北陸 先端科学技術大学院大学支援財団、独立行政法人中小企業基盤整備機構北陸本部及び国立研 究開発法人産業技術総合研究所中部センターとの共催により、「北陸地域の活性化を目指した 新産業創出と人材育成」をテーマとして開催し、2 日間で延べ 1,350 名を超える来場者が詰め 掛け、連日、大変賑わいました。 1 日目には、大学と企業が産学連携で課題解決へ取り組むことをテーマとしたテクニカルセッションを 9 テーマ行い、密接な産学連 携を模索するための活発な議論がなされました。 2 日目には、若者の地域定着をテーマとしたテクニカルセッションのほか、200 を超える企業・大学・公的機関によるパネル展示、 出展企業・大学が事業や技術内容、研究シーズを発表する 1 分間プレゼンテーションや、関係機関によるセミナーを実施し、広い分野・ 業種にまたがる産学連携活動の端緒となりました。 平成 28 年 3 月 平成 28 年 4 月 3 月 17 日、本学創立 25 周 年を祝し、ヤエザクラの記 念植樹式を挙行しました。 植樹式には、学内教職員 に加えて、経営協議会学外 委員も参加し、浅野学長の挨拶に続き、浅野学長及び 経営協議会学外委員の手により土入れの儀を執り行い ました。 ヤエザクラの花言葉は「豊かな教養」。本学で学ぶ 学生が、様々な学問や知識をヤエザクラの花びらのよ うに幾重にも身に纏い、「知的にたくましい」人材に 成長して社会に羽ばたいていく姿を、今後はこのヤエ ザクラが見守っていくことになります。 4 月 4 日、先端科学技術研究科のサイン除幕式を挙行しました。 先端科学技術研究科は、幅広い領域を体験し、世界や社会の課題に応 える「知的にたくましい」、実社会に渇望されるイノベーション創出人材 の養成を目指して、知識科学、情報科学及びマテリアルサイエンスの3 つの研究科を統合し、4 月 1 日に設置されたものです。 除幕式では、浅野学長の挨拶に続き、ご来賓の方々を代表して能美市 の酒井悌次郎市長からご祝辞をいただいた後、 除幕式が執り行われました。 創立 25 周年記念植樹式を挙行 15 JAIST NOW No.15 先端科学技術研究科のサイン除幕式を挙行 ストナ ウ INFORMATION 16 [ ジ ャイスト イン フォメ ー ション ] 5 号 ジャイストナウ 2016 院大学 全国各地で進学説明会を開催 No. 15 全国各地で「大学院進学説明会」を、11 月に本学石川キャンパスで「受験生のためのオープンキャンパス」を開催します。大学院への進学を検討され ている方は、ぜひご参加ください。 また、大学院進学説明会等に参加できない方のために、直接、本学への訪問を受け入れる「いつでも大学院進学説明会」、本学の教員が希望の場所に出 向く「どこでも大学院進学説明会」の制度もあります。 なお、以下の説明会の他にも、適宜説明会の開催を予定しています。詳細は本学ホームページをご覧ください。 ■石川キャンパス入学希望者対象 実施イベント 発行日 平成 28 年 10 月 31 日 発 行 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 大学戦略・広報室 〒 923-1292 石川県能美市旭台 1-1 tel. 0761-51-1031 ホームページ http://www.jaist.ac.jp 平成 28 年 12 月 10 日(土) 大学院進学相談会 平成 29 年 2 月 11 日(土) 平成 29 年 3 月 11 日(土) 大学院進学説明会 平成 29 年 1 月 21 日(土) 東京、大阪、名古屋、金沢 受験生のためのオープンキャンパス 平成 28 年 11 月 25 日(金)・26 日(土) 石川キャンパス(石川県能美市) 東京社会人コース入学希望者対象の説明会では、 東京サテライト(東京・品川)で社会人学生対象に提供する社会人コースの各プログラム「技術経営(MOT) プログラム」 、 「サービス経営(MOS)プログラム」 、 「医療サービスサイエンス (MSS) プログラム」 、 「先端知識科学プログラム」 、 「先端情報科学プログラム」 についてご紹介します。 ■東京サテライト(東京社会人コース)入学希望者対象 実施イベント N 開催日 開催地 平成 28 年 11 月 20 日(日) 東京社会人コース説明会 東京 平成 28 年 12 月 3 日(土) 【お問合せ先】 学生募集係 Tel:0761-51-1966 E-mail:[email protected] 入試日程 ■一般選抜(学修場所:石川キャンパス)平成 29 年 4 月入学 出願期間 博士前期課程 試験期日(本学が指定した1日) 試験場所 合格発表日 第3回 平成 28 年 12 月 1 日(木) ~ 14 日(水) 平成 29 年 1 月 14 日(土) ・15 日(日) 石川、東京、大阪 平成 29 年 1 月 27 日(金) 第4回 平成 29 年 2 月 1 日(水) ~ 14 日(火) 平成 29 年 3 月 4 日(土) 石川、東京 平成 29 年 3 月 10 日(金) 平成 28 年 10 月 26 日(水) ~ 11 月 15 日(火) 平成 28 年 12 月 19 日(月) ~ 28 日(水) (土日及び祝日を除く) 平成 29 年 1 月 4 日(水) ~ 6 日(金) 石川 平成 29 年 1 月 27 日(金) 試験場所 合格発表日 博士後期課程 ■社会人コース特別選抜(学修場所:東京サテライト/品川)平成 29 年 4 月入学 出願期間 博士前期課程 国立大学法人 さん 金沢 平成 29 年 1 月 7 日(土) 一般選抜試験(学修場所:石川キャンパス)の他、社会人コース特別選抜試験も実施しています。入試の詳細については、ホームページをご覧ください。 北陸先端科学技術大学院大学 ます 開催地 平成 28 年 11 月 12 日(土) ポート に、 開催日 博士後期課程 試験期日(本学が指定した1日) 第2回 平成 28 年 12 月 1 日(木) ~ 14 日(水) 平成 29 年 1 月 14 日(土) ・15 日(日) 第3回 平成 29 年 2 月 1 日(水) ~ 14 日(火) 平成 29 年 3 月 4 日(土) 平成 28 年 10 月 26 日(水) ~ 11 月 15 日(火) 平成 28 年 12 月 17 日(土) ~ 28 日(水) 平成 29 年 1 月 4 日(水) ~ 6 日(金) 平成 29 年 1 月 27 日(金) 東京 平成 29 年 3 月 10 日(金) 平成 29 年 1 月 27 日(金) 【お問合せ先】 入試係 Tel:0761-51-1177 E-mail:[email protected] 本冊子は、グリーン購入法に基づく基本方針 の判断の基準を満たす紙を使用しています。 ●リサイクル適性の表示:紙へリサイクル可 本冊子は、グリーン購入法に基づく基本方針 における「印刷」に係る判断の基準にしたが い、印刷用の紙へのリサイクルに適した材料 [A ランク]のみを用いて作製しています。 2016 16
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