地区連の頁 北海道 ─北海道開発局─ 稚内港北防波堤ドーム老朽化対策について 1.はじめに るため、未腐食箇所においても劣化進行予測を行い 稚内港北防波堤ドームは、日本最北端に位置する 劣化度を5段階に分類し補修対象を設定した。外面 稚内市と樺太を結ぶ旧連絡船の発着場を高波から守 は一定矩形の単位領域を設定し観光資源としての美 るため、昭和11年に完成した全長427mの鉄筋コン 観保持から連続した面的補修とした。 クリート構造物である。平成13年には北海道遺産 また内面の基本的な補修方針については、日常的 に選定され、また平成15年には「海陸の連絡を波 に市民に利用され目に触れる機会が多いとともに観 飛沫から防護する類例のない設計であり、原形保存 光期には来訪者が頻繁に出入りしているという利用 に徹した復元と補修で次代へと受け継がれるドーム 実態を踏まえ、外面よりも第三者被害と美観に対す 型有覆防波堤」として土木学会の選奨土木遺産に認 る評価を厳格化した。 定され、市民散策路等の日常利用からコンサート等 対策工の選定にあたっては、劣化した部材また今 のイベント会場などさまざまな用途で活用される地 後の構造物の劣化進行を抑制し、耐久性の回復及び 域のシンボル的存在となっている。建設後昭和53 向上と第三者影響度の除去または低減を基本に、床 年には老朽化に伴う全面改修を行ったが、改修後約 版外面では面的な断面修復工法の吹付工法を、床版 40年が経過し再度老朽化が顕在化してきたため、 内面の線状劣化にはセメント系補修材による注入工 対策を早急に進める必要が生じた。 法を選択し、平成28年度より老朽化対策に着手す る予定である。 北防波堤ドーム 2.老朽化対策 ドームの外面と内面では気象等がおよぼす影響度 合いの相違により劣化状況が異なることから、現況 3.おわりに 評価と対策検討は外面と内面に分けて実施した。床 本事業は、利用頻度が高く歴史的価値が高い構造 版外面での鉄筋腐食における主な要因はかぶりコン 物の老朽化対策としてガイドライン等で提示される クリートの変状であったが、複数の部材で構成され 一般的な劣化判定規準に加え、構造物の特徴や性格、 る内面では部材毎に鉄筋腐食状況やかぶりコンク 環境条件等を考慮した総合的評価による劣化判定及 リートの変状の程度が異なった。 び工法選定を行ったライフサイクル延命化の事業で 現時点では、鉄筋腐食に影響がある変状を抽出し ある。ただし、未だ十分な知見等を以て実施される 補修を行うことで施設の長寿命化を図ることが可能 ものではないことから、検討結果等が現地で適切に であるが、鉄筋腐食が発生していない部分において 反映されているかフィードバックしながら事業を進 も塩化物イオン浸入が進行し、鉄筋位置の濃度が腐 めていくこととしている。 食限界に達した場合には腐食が発生し構造に影響す 50 外面部劣化状況 月刊建設16−07 (国土交通省 北海道開発局 稚内港湾事務所長 杉山 盛行)
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