株式譲渡益課税の仕組み

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-1
株式譲渡益課税の仕組み
株式等の譲渡所得等に係る納税額を算
用されます。申告分離課税とは、株式等
出するまでには、譲渡損失との通算や前
の譲渡損益を他の所得と区分して計算
年以前に発生した損失の繰越控除などを
し、算出された税額を申告納税する方法
行い、残った所得金額に対して税率を掛
です。税率は、20%(所得税15%★(注1)
・
けることになります。
「株式等」
・
「上場株式等」の範囲
申告分離課税の対象となる「株式等」
に
上場株式等は、譲渡損失の繰越控除、
含まれるもの、株式等のうち「上場株式
上場株式等の配当等との損益通算の対象
等」に含まれるものは、次の図のとおり
となりますが、一般株式等は対象となり
です。株式等のうち上場株式等に該当し
ません(76ページ参照)。なお、平成28
ないものは「一般株式等」と呼ばれます。
年1月1日以後は、株式等に公社債が追
公募株式投資信託、ETF 、REITなど
加されています(詳しくは149ページ参
は上場株式等に含まれます。
照)
。
平成28年1月1日以降
●株式等の譲渡所得等に係る税額計算の流れ
譲渡所得
エンジェル※1
株式等のうち上場株式
等以外のものを
「一般
株式等」
と呼ぶ
事業所得・雑所得
上場
一般
エンジェル
※1
上場
一般
[ 所得間での損失の控除 ]
◇譲渡・事業・雑所得のうちに損失が生じた場合には、株式等の譲渡による他の所得から
控除します。
特定中小会社株式の取得に要した金額の控除等
1/2 特例※2
1/2 特例※2
(過年度の)上場株式等または特定中小会社株式に係る譲渡損失の繰越控除
(過年度の)雑損失の繰越控除※3
譲渡所得等の金額(上場株式等)
金額が負
(損失)
翌年以後
に損失
を繰越
金額が正
(所得)
譲渡所得等の金額(一般株式等)
金額が正
(所得)
各種所得控除※3
株式等に係る課税譲渡所得等の金額
金額が負
(損失)
なかった
ものと
みなす
株式等
株式
(新株予約権などを含む)
出資
株式投信・公社債投信
公社債
(新株予約権付社債を含む)
特定受益証券発行信託の受益権
社債的受益権
外国法人に係る上記のもの
など
住民税5%)です。
式
株式等の譲渡益には申告分離課税が適
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
株
株式譲渡益課税の全体像
上場株式等
上場株式
(上場新株予約権などを含む)
日本銀行出資証券
信金中金等の上場優先出資証券
公募株式投信、ETF、REIT、ETN、ベンチャーファンド
公募公社債投信
上場新株予約権付社債
外国上場株式
特定公社債
公募または上場された社債的受益権
など
(※)下線部が平成28年1月1日以後追加されたもの
所得金額の計算の原則
株式等の譲渡による所得金額の計算
所得・雑所得に分けて計算します(注2)。
は、基本的に、株式等の譲渡による収入
なお、株式等の譲渡損益の帰属時期は
金額から、取得費をはじめ株式等の取得
原則として受渡日です。ただし、確定申
に要した費用などを控除して算出しま
告する場合には約定日とすることも可能
す。株式等の譲渡による事業所得・譲渡
です。
(
株式等の譲渡に
株式等の取得価額
株式等を取得するために
− + よる収入金額
ま た は 取 得 費
要した負債の利子の額
※2
※1
その他
手数料等各種経費
株式等の譲渡のため
+ + + 管理費 + に係る消費税等
経 費
に要した委託手数料
)
※1 口座管理料などの管理費を控除できるのは、事業所得または雑所得に該当する場合で
す。
※2 株式等を購入した際の委託手数料やそれにかかる消費税などは取得価額または取得費
に含まれます。
税率 20%( 所得税 15%★・住民税 5%)
※1 「エンジェル」とは、特定中小会社(いわゆるエンジェル税制の対象会社)株式(83ページ
参照)の譲渡による所得を意味します。
※2 1/2特例については、平成20年4月30日以前に取得した分について適用されます。くわしく
は、86ページ参照。
※3 その年の総所得金額等から控除しきれない場合に控除されます。
66
16税金読本_p065-120_04.indd 66-67
(注1)★ 印の付いている所得税については、復
興特別所得税も課されます。復興特別所
得税の税率は、基準所得税額の2.1%で
す。詳しくは45ページをご参照ください。
(注2)申告分離課税の対象となる株式等の譲渡
による所得は、総合課税のような、50万
円の特別控除はなく、長期譲渡所得の税
負担軽減措置(所有期間が5年を超える
場合における1/2課税)もありません。
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● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
取得価額
(または取得費)
の計算
株式等の譲渡益の所得区分
◆ (1)取得価額(または取得費)の計算の原則
株式等の譲渡による所得は、譲渡所得のほか、事業所得
や雑所得に区分されることもあるのですか? 所得区分
が異なることによって何か違いはありますか?
株式等の譲渡による所得金額を算出す
計算が重要です。取得価額は、株式等の
る際には、取得価額(または取得費)の
取得形態によって、次のようになります。
区分
取得価額
株
払い込んだ金銭の額※1
②有 利な払込金額により株式を取得する権利(スト
ック・オプションを除く)の行使により取得した
株式等
有利な払込金額により株式を取得する権利に係
る払込期日または給付期日における価額
具体的には、売買の回数、数量・
額は、譲渡所得、事業所得
金額、取引の種類、資金の調達方法
または雑所得に区分した上で計算す
などの状況から、営利を目的として
ることとされています。個人が株式
継続的に行われていると判定された
等を譲渡した場合には、そのほとん
場合は、事業所得または雑所得とな
どが譲渡所得に該当するものと思わ
ります。
③株 主等として新たな払込み等を要しないで取得し ゼロ
た株式・新株予約権・新投資口予約権※2
れます。税法上は、その株式等の譲
ただし、次の①・②の所得につい
④購入した株式等(②に該当するものを除く)
購入の代価※3
渡が営利を目的として継続的に行わ
ては譲渡所得として差し支えないこ
れているかどうかによって判定する
ととされています。
⑤上記①〜④以外の方法で取得した株式等
取得時におけるその株式等の取得のために通常
要する価額
こととされています。
※1 新株予約権の行使により取得した株式等である場合にはその新株予約権の取得価額を含むこととし、金
銭の払込みによる取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算します
※2 他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限ります。
※3 購入手数料、購入のために要した通信費、名義書換料、購入手数料にかかる消費税等などを含めた金額です
①上場株式等で所有期間が1年を超えるものの譲渡による所得
②一般株式等の譲渡による所得
※上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、信用取引等の方法による上場株式等の
同一銘柄の株式等を2回以上にわたっ
より算出します。
合には、当該部分は事業所得または雑所得として取り扱って差し支えないこととされ
て取得した場合には、銘柄ごとに1単位
いずれの方法も、取得価額の総額を譲
ています。
当たりの取得価額を算出し、この金額を
渡直前の保有株式数で割って算出します
基に所得金額を計算します。1単位当た
が、計算の基礎となる期間が異なるほか、
りの取得価額は、所得の区分に応じて、
総平均法に準ずる方法では、譲渡のつど、
総平均法または総平均法に準ずる方法に
取得価額を算出します。
譲渡による所得など上記①に掲げる所得以外の上場株式等の譲渡による所得がある場
株式等の譲渡による所得が、どの
ような取扱いの違いが生じます。
所得に区分されるかによって、次の
譲 渡 所 得
事業所得・雑所得
口座管理料や投資顧問料を必要経費として控除
できる
×
○
相続により取得した株式等を譲渡した際の所得
計算において、一定の相続税額を取得費に加算
することができる(71ページ参照)
○
×
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式
①金 銭の払込みにより取得した株式等(②に該当す
るものを除く)
株式等の譲渡による所得金
算出方法
①株式等の譲渡に 総平均法
よる所得が事業 譲渡のあった年(1月〜12月)を基礎として、年初に有していたものの取得
所得の場合
価額の総額と年中に取得したものの取得価額の総額との合計額を、その株式
等の総数で割って計算した金額を1単位当たりの取得価額とする方法
②株式等の譲渡に
よる所得が譲渡
所得または雑所
得の場合
総平均法に準ずる方法
その株式等を最初に取得したとき(その後すでにその株式等の一部を譲渡し
ている場合には、直前の譲渡のとき)から譲渡のときまでの期間を基礎と
し、最初に取得したとき(または直前の譲渡のとき)に有していたものの取
得価額の総額とその期間内に取得したものの取得価額の総額との合計額を、
その株式等の総数(譲渡直前の保有数)で割って計算した金額を1単位当た
りの取得価額とする方法
69
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● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
◆ (2)購入等以外の方法により取得した場合の取得価額
●取得価額および税額の計算例
売買年月日等
売買の別
①平成27年11月×日
取得
数 量
3,000株
300株
(1:1.1)
単 価
金 額
1,680円
5,040,000円
―
―
取得するものばかりとは限りません。払
価額については、株式の買取価格(権利
込みや購入等以外の方法により取得した
行使価格)が取得価額とみなされます(80
株式等の取得価額は、次のようになりま
ページ参照)。
す。
一方、税制非適格ストック・オプショ
◆
(1)
相続や贈与により取得した場合
ンの権利行使により取得した株式は、権
相続(限定承認に係るものを除く)や
利行使日の価額が取得価額となります。
贈与または遺贈(包括遺贈のうち限定承
②平成28年3月×日
株式分割
③平成28年6月×日
譲渡
2,000株
1,750円
3,500,000円
④平成28年7月×日
取得
5,000株
1,700円
8,500,000円
⑤平成28年10月×日
取得
3,000株
1,760円
5,280,000円
認に係るものを除く)により株式等を取
◆
(3)従業員持株会を通じて取得
した場合
⑥平成28年12月×日
譲渡
5,000株
1,790円
8,950,000円
得した場合には、被相続人または贈与を
従業員持株会を通じて取得した株式の
した人(以下、被相続人等)の取得価額を
取得価額は、その株式を従業員持株会が
そのまま引き継ぎます。被相続人等の取
取得したときの価額によることが原則と
得価額がわからない場合には、被相続人
されています。従業員持株会に加入して
等が名義書換を行った日をもとに取得価
いる場合には、同一銘柄の株式を複数回
額を計算することも可能です。
にわたって取得しているのが一般的で
なお、相続によって取得した株式等を、
す。そのため、従業員持株会を通じて取
相続開始日の翌日から相続税の申告書の
得した株式については、総平均法に準ず
提出期限の翌日以後3年を経過する日ま
る方法により取得価額を算出することと
での間に譲渡した場合には、譲渡した株
なります(従業員持株会を通じて取得し
式等に対応する相続税額を取得費に加え
た株式の譲渡による所得が、譲渡所得に
ることができる特例があります(譲渡益
該当することを前提としています)。
総平均法
⑴③で譲渡した2,000株・⑥で譲渡した5,000株の取得価額
5,040,000円+8,500,000円+5,280,000円 ×(2,000株+5,000株)
3,000株+300株+5,000株+3,000株
=1,666円
(端数切上げ)
×7,000株
=11,662,000円 ⑵③および⑥で譲渡したことによる譲渡益および税額
譲渡益=
(3,500,000円+8,950,000円)−11,662,000円=788,000円
所得税額=788,000円×15%★=118,200円
住民税額=788,000円×5%=39,400円
総平均法に準ずる方法
⑴③で譲渡した2,000株の取得価額および譲渡益
5,040,000円 ×2,000株=1,528円(端数切上げ)×2,000株=3,056,000円
3,000株+300株
譲渡益=3,500,000円−3,056,000円=444,000円
(注)
が譲渡所得に区分される場合のみ) 。
◆
(2)ストック・オプションの行
使により取得した場合
式
ションの行使により取得した株式の取得
株
株式等の取得は、購入や払込みにより
◆
(4)新株予約権の権利行使によ
り取得した株式の取得価額
新株予約権の権利行使により取得した
⑵③の譲渡後の1,300株の取得価額
1,528円×1,300株=1,986,400円
いわゆる税制適格ストック・オプショ
株式の取得価額は、払込みをした金銭の
ンの場合、権利行使時に課税されること
額(当該新株予約権の取得価額を含むも
⑶⑥で譲渡した5,000株の取得価額および譲渡益
1,986,400円+8,500,000円+5,280,000円
×5,000株=1,696円(端数切上げ)×5,000株 1,300株+5,000株+3,000株
=8,480,000円
はなく、権利行使により取得した株式を
のとし、その金銭の払込みによる取得の
売却するときまで課税の繰延べが認めら
ために要した費用がある場合には、その
れています。この場合、ストック・オプ
費用の額を加算した金額)です。
譲渡益=8,950,000円−8,480,000円=470,000円
⑷③および⑥で譲渡したことによる税額
所得税額=
(444,000円+470,000円)×15%★=137,100円
住民税額=
(444,000円+470,000円)×5%=45,700円
★ このほか、基準所得税額の2.1%の復興特別所得税が課されます。
※1 譲渡した株式等の取得価額の計算にあたっては、平成14年12月31日以前に源泉
分離課税の適用を受けた株式等の取得価額も含めて計算します。
※2 購入の際の委託手数料やそれにかかる消費税等は取得価額に含まれますが、
上記の例では便宜上これらの金額を考慮していません。
70
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(注)相続等により取得した株式等と同一銘柄の株
式等を有しており、特例の適用期限内にこ
れらの株式等の一部を譲渡した場合は、相
続等により取得した株式等から譲渡したも
のとすることも認められます。
71
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◆
(5)新株予約権付社債の権利行使
により取得した場合
株予約権の行使により発行される株式の
新株予約権付社債に係る新株予約権の
行法人の株価を基礎として合理的に定め
権利行使により取得した株式1株当たり
られている場合に限ります)
。
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
取得価額がわからない場合
発行価額が新株予約権付社債発行時の発
の取得価額は、下のようになります(新
●新株予約権付社債の権利行使により取得した株式の取得価額
合には、名義書換日から取得価額を確
価額がわからない場合、
まず
定することも可能です。つまり、名義
は購入した証券会社に問い合わせて
書換日を取得日とみなし、当時の株価
みましょう。証券会社では、取引記録
を調べることにより取得価額を確定す
の10年間の保存が義務づけられていま
るわけです。
す。
長期間にわたり株式等を保有して
証券会社に問い合わせてもわから
いる場合や、取得の時期・価額に関
ない場合は、取得価額を証明できるよ
する書類が不備で取得価額を推認で
◆
(6)他社株転換可能債(EB)の
償還により取得した場合
ライツ・イシューについては104ページ
他社株転換可能債(EB)の償還によ
権利行使して取得した株式の取得価額
り取得した上場株式については、他社株
は、権利行使の際に払い込んだ金銭の額
転換可能債の償還日における上場株式の
となります。
うな周辺資料
(例えば買付け時の代金
きる資料がない場合など、取得価額が
株価が取得価額となります。
◆
(8)生命保険相互会社の株式会
社化により取得した場合
の振込みを証明する預金通帳や振込
どうしても不明な場合は、譲渡による
票など)
から、取得価額を計算するこ
収入金額の5%を取得価額として計算
とも認められます。周辺資料もない場
することが認められています。
◆
(7)無償で交付された場合の新株
予約権の取得価額、新株予約権の行
使による上場株式等の取得価額
参照)
。したがって、無償新株予約権を
加入していた生命保険の会社が相互会
社から株式会社に変わり、株式が割当て
保有する上場株式等に対して、新株予
られた場合、割当てられた株式の「売出
約権が無償交付された場合、当該新株予
価格×割当株数(の整数部分)
」が取得
約権の取得価額は原則として0になりま
価額になります(69ページの⑤に該当し
す(69ページの③に該当します。なお、
ます)
。
式
取引報告書などがなく取得
株
株式1株
新株予約権付社債の権利行使直前の取得価額が新株予約権付社債
につき
+ の額面金額を超える場合のその超える部分の金額
払い込む
権利行使により取得した株式の数
べき金額
購入時の取引報告書などを処分してしまったため取得価
額がわかりません。このような場合には、どのようにし
て取得価額を計算すればいいのですか?
●株式等の取得価額の確定方法
取引報告書
あり
なし
顧客勘定元帳
(証券会社)
株
式
あり
等
なし
本人の手控え
(例:日記帳や預金通帳) あり
の
取
なし
名
義
書
換
日
の
確
認
株券電子化後手元に
残った株券の裏面
株主名簿・複本
株式異動証明書
(株式の発行会社)
(証券代行会社)
取
得
時
期
の
把
握
の記ベ証
確事ー券
認等ス会
にや
当社
よ時の
るのデ
終新ー
値聞タ
得
価
額
※ 名義書換の日をもって取得時期として差し支えありません。
(出所)国税庁
(注)
株式等の譲渡による所得が譲渡所得にあたる場合で、昭和27年12月31日以前から引続き所有している株式等が含ま
れているときは、上場株式等であればその取得費は昭和27年12月の公表最終価格等とするなどの特例があります。
72
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73
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● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
◆ (3)株主割当増資・株式分割などが行われた際の取得価額の修正
株式等を取得するために要した負債の利子
株主割当増資・株式分割等により新株
株主割当増資・株式分割等で取得した新
を取得した場合、株主はその銘柄につき
株を譲渡した場合、修正された取得価額
取得価額の修正を行わなくてはなりませ
をもとに譲渡損益および税額を算出しま
借入金で株式等を購入した場合には、その年に支払った負債の利子を、配
ん。具体的な計算方法は次の通りです。
す。
当収入か株式等の譲渡による収入金額のいずれかから控除することができま
す。配当収入から控除するか、譲渡による収入金額から控除するかは次によ
●株主割当増資等に伴う取得価額の修正
取得価額
}
旧株1株につき取得した新株の数+1 ②株式分割、株式併合、株式無償割当ての場合(株式無償割当てに関しては、旧株
と同一種類の株式を取得した場合に限る)
①その年中に譲渡しなかった株式等を取
得するために要した負債の利子
配当等の収入金額から控除
②譲渡した株式等を取得するために要し
た負債の利子
譲渡にかかる必要経費(譲渡費用)に
算入
※ 負債の利子を配当等の収入金額から差し引く際には、借入金で取得した株式だけでなく自
己資金で取得した株式の配当からも差し引くことができます。
株式分割・株式併合・株式
旧株1株の従前の取得価額 × 旧株の数
無償割当て後の所有株式 = 株式分割・株式併合・株式無償割当て
1株当たり取得価額
後の所有株式の数
配当等の額から差し引くことができる負債の利子の額が配当等の額を超え
③合併の場合(合併法人又は合併親法人
負債の利子を配当収入から控除するのか、譲渡による収入金額から控除す
※1
るとき(配当所得が赤字のとき)は、その超える部分のうち一定額を株式等
にかかる譲渡所得等の金額の計算において差し引くことができます。
の株式以外の資産の交付がないものに限る)
旧株1株当た
旧株1株の従 旧株1株に対応する
合併法人株式又は
+
※2 +
りの取得費用
合併親法人株式1 = 前の取得価額 みなし配当等の金額
旧株1株について取得した合併法人株式又は合併親法人株式の数
株当たり取得価額
④分割型分割の場合(分割承継法人又は分割承継親法人※3の株式以外の資産の交
付がないものに限る)
旧株1株の従 分割承継法人株
分割承継法人株式又 分割承継法人株
純資産移転割合※4
×
前の取得価額 式又は分割承継
は分割承継親法人株
式又は分割承継
親法人株式1株= 旧株1株について取得した分割承継法 +式1株に対応するみ +親法人株式1株
当たり取得価額
人株式又は分割承継親法人株式の数
なし配当等の金額
当たりの取得費用
⑤資本の払戻しの場合
旧株1株の従
{
旧株1株の従
前の取得価額 − 前の取得価額 ×
資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額
および金銭以外の資産の価額の合計額 株式発行法人の(資産の帳簿価額−負債
(新株予約権を含む)の帳簿価額) }
※1 合併の直前に合併法人の発行済株式若しくは出資(自己株式を除く)の全部を保有する法人を
いう。
※2 非適格合併または非適格分割に伴い利益の配当等として交付を受けたものとみなされる金額等
がある場合。
※3 分割型分割の直前に分割承継法人の発行済株式若しくは出資(自己株式を除く)の全部を保有
する法人をいう。
※4 純資産移転割合=
74
16税金読本_p065-120_04.indd 74-75
るのかを区分することが困難な場合は、次の式によって区分することができ
ます。
配当所得の金額の
株式等を取得
配当所得の収入金額 ① 計算上控除すべき = するために要した × A
負債の利子の金額
負債の利子の総額
株式等にかかる譲渡所得等
株式等を取得
負債の利子を差し引く前の
② の 金 額 の 計 算 上 控 除 す = するために要した × 株式等にかかる譲渡所得等の金額 べき負債の利子の金 額
負債の利子の総額
A
負債の利子を差し引
負債の利子を差し引く前
配当所得の
+ く前の株式等にかか + の総合課税の株式等にか
収入金額
る譲渡所得等の金額
かる事業所得等の金額
A = 資本の払戻し後の
1株当たり取得価額 =
式
{
株
①株主割当増資の場合(金銭の払込みを要するものに限る)
旧株1株の従
新株1株の
修正後の
× 旧株1株につき取
+
払込金額
得した新株の数
1株当たり = 前の取得価額
ります。
※1 ここでいう「株式等」には申告分離課税の対象とならない株式等も含みます。た
とえば、株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得の基因となる株式等などです。
※2 ①により算出された金額が、配当所得の金額の計算上控除すべき負債の利子の金
額となりますが、配当等の収入について申告不要制度の適用を受ける株式等を取
得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は除かれます。
分割法人の(移転資産の帳簿価額−移転負債の帳簿価額) 分割法人の(資産の帳簿価額−負債(新株予約権を含む)の帳簿価額)
75
16.10.31 4:51:41 PM
所得間での損益通算・上場株式等の配当等との損益通算
定譲渡)によって生じた損失である場合、
得・雑所得の各所得金額のうちに損失が
申告分離課税を選択した上場株式等の配
生じたものがある場合には、株式等の譲
当等と損益通算ができます。ここまでの
渡による他の所得の金額から控除するこ
計算の結果、所得金額が残っているか、
とができます。
損失が生じているかによって、以後の取
一方、上場株式等の譲渡損失について
扱いは次のようになります。
●特定譲渡
できません。また、株式等の譲渡損失を
一方、一般株式等の譲渡損失が残った
給与所得など他の所得の金額から控除す
場合は、その損失はなかったものとみな
ることもできません。
されるため、翌年以降に繰り越すことは
譲渡損失の繰越し
上場株式等の譲渡損失については、そ
にわたって繰り越すことが認められ、譲
の年の譲渡益及び申告分離課税を選択し
渡益及び申告分離課税を選択した上場株
た上場株式等の配当等から控除し切れな
式等の配当等から控除することができま
かった分について、翌年以降最長3年間
す。
①証券会社等への委託による譲渡
■ 繰越控除の対象となる譲渡損失 ②証券会社への譲渡
繰越控除が認められるのは、76ページ
降の譲渡益から控除する際には、上場株
の特定譲渡により生じた譲渡損失に限ら
式等の譲渡益や申告分離課税を選択した
れます。
上場株式等の配当等からも控除すること
発生した年が異なる繰越損失がある場
が可能です。控除順序は次の通りです(く
合、先に発生した損失から順次控除にあ
わしくは、99ページCheck Point !参照)。
式
は、下表に掲げる一定の方法の譲渡(特
できます。
株
株式等の譲渡による事業所得・譲渡所
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
③登録金融機関、投資信託委託会社への譲渡
④発 行法人の合併、会社分割、資本の払戻し、自己株式の取得および組
織変更などに伴う金銭等の交付(配当等に該当する金額を除く)
⑤株式投資信託の償還または一部解約
⑥発 行法人の行う株式交換または株式移転によるその法人の親法人への
譲渡
⑦単元未満株または端株の発行法人への買取請求に伴う譲渡
⑧発行法人による端株の競売等に伴う譲渡
⑨信 託会社に信託されている上場株式等の譲渡で、外国証券会社等への
委託による譲渡または、外国証券会社への譲渡
⑩国外転出時みなし課税制度(※)
(405ページ参照)によって、行われたと
みなされる譲渡
てていきます。また、繰越損失を翌年以
●繰越損失により控除する所得の順序
①上場株式等の譲渡所得等
②申告分離課税を選択した上場株式等の配当等
■ 譲渡損失の繰越控除の適用手続き ※国外転出時みなし課税制度は住民税には適用されません。
◆ (1)所得金額が残っている場合
譲渡損失の繰越控除の適用を受けるに
その他参考となるべき事項を記載した明
は、譲渡損失が生じた年の確定申告書に、
細書等を添付する必要があります。
上場株式等にかかる譲渡損失の金額の計
譲渡損失が生じた年から繰越控除を受
算に関する明細書等を添付する必要があ
ける年まで継続して確定申告書を提出す
事業・譲渡・雑所得間での損益通算の
譲渡損失の控除を行い、その後、前年以
ります。また、繰り越した譲渡損失を控
る必要があるため、確定申告書は上場株
結果、所得金額が残っている場合には、
前から繰り越されている雑損失の控除を
除する年の確定申告書には、その年にお
式等の売買を行っていない年についても
前年以前から繰り越されている上場株式
行います(66ページの図参照)
。
いて控除すべき上場株式等に係る譲渡損
提出しなければなりません。
失の金額およびその金額の計算の基礎、
等の譲渡損失または特定中小会社株式の
◆ (2)譲渡損失が生じている場合
損益通算の結果、譲渡益から控除しき
株式等あるいは、特定中小会社株式であ
れない譲渡損失が生じた場合には、譲渡
るときは、譲渡損失が発生した年の翌年
損失の発生の基因となった株式等が上場
以降(最長で3年間)に繰り越すことが
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損失の申告を忘れていた場合
● 株式投資と税金 ―譲渡益・配当課税の原則―
株式の取得形態と取得日
昨年、上場株式の譲渡損があったのですが、確定申告
するのを忘れていました。今年は上場株式の譲渡益を得
たのですが、昨年の譲渡損失により繰越控除することは
可能ですか?
証券会社を通じて購入した場合をはじめ、株式の取得形態と取得日の関係
は次のようになっています。
取得形態
取得日
②払込みによる取得
払込期日
③新 株予約権の行使(新株予約権付社債の新株
予約権の行使を含む)による取得
新株予約権の行使日
④株 式の分割・併合による取得及び株主割当て
による取得
取得の基因となった株式の取得日
⑤株式無償割当てによる取得※
取得の基因となった株式の取得日(基因とな
った株式と異なる種類の株式が割り当てられ
た場合は、株式無償割当ての効力を生ずる日)
損失が発生した年における
提出していた場合は、その譲渡損失
確定申告の有無と取引して
が一般口座または簡易申告口座(源
いた口座の種類により異なります。
泉徴収なしの特定口座)で生じたも
損失が発生した年に確定申告書を
のである場合に限り、更正の請求に
提出していなかった場合は、期限後
よって上場株式等の譲渡損失をある
申告により過去に発生した年の上場
こととすることができます。請求に
株式等の譲渡損失を申告することが
より更正が行われた場合、当該譲渡
⑥新 株予約権無償割当てにより取得した新株予
約権
新株予約権無償割当ての効力を生ずる日
でき、当該譲渡損失は繰越控除の対
損失について繰越控除の適用を受け
⑦法人の合併(分割)による取得
取得の基因となった株式の取得日
象となります。ただし、期限後申告
ることができます。更正の請求の期
受益権の取得日
の期限は損失が発生した年分の所得
限も、損失が発生した年分の所得税
⑧投 資信託の受益権に係る投資信託の信託の併
合による取得
税の確定申告期限から5年以内で
の確定申告期限から5年以内です。
受益権の取得日
す。
損失が発生した年に確定申告書を
⑨特 定受益証券発行信託の受益権に係る特定受
益証券発行信託の信託の併合(分割)による
取得
なお、給与所得者で給与・退職所
提出していて、かつ、その譲渡損失
⑩組織変更による取得
取得の基因となった株式の取得日
得以外の所得が20万円以下の場合、
が源泉徴収口座(源泉徴収ありの特
⑪株式交換(株式移転)による取得
契約で定めたその効力を生ずる日(株式移転
完全親法人の設立登記の日)
所得税の確定申告は不要ですが、確
定口座)
で生じたものである場合は、
請求権の行使日
定申告する場合にはこれらの所得も
確定申告書の提出後に上場株式等の
⑫取 得請求権付株式の請求権の行使の対価とし
て交付された場合
申告しなければなりません。このこ
譲渡損について申告していないこと
⑬取 得条項付株式の取得対価として交付された
場合
取得事由が生じた日
とは期限後申告であっても同じです
に気付いたとしても、繰越控除の対
取得決議で定められた取得日
ので注意が必要です。
象とすることはできません。
⑭全 部取得条項付種類株式の取得対価として交
付された場合
⑮信 用取引により買建てた株式を現引きした場
合
買建ての際の受渡日(または納税者が約定日
を取得日として確定申告した場合は約定日)
⑯相続・贈与による取得
被相続人、贈与者の取得日
損失が発生した年に確定申告書を
●確定申告期限後に気付いた上場株式の譲渡損について繰越控除を受
けるための手続き
源泉徴収口座で
生じた損失
一般口座または簡易申告
口座で生じた損失
損失が発生した年分の所得税に
ついて確定申告していた
×
更正の請求
損失が発生した年分の所得税に
ついて確定申告していなかった
期限後申告
期限後申告
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⑰他社株転換可能債(EB)の償還
当該社債の償還日
⑱有 価証券オプション
取引(証券取引所で
取引されている個別
株オプション取引)
権利行使により取得した株式の売買決済日(納
税者の選択により権利行使日も可能)
買建コール・オプション
の権利行使による取得
式
受渡日(納税者が約定日を取得日として確定
申告した場合は約定日も可能)
株
①他から取得
売建プット・オプション 義務の履行により取得した株式の売買決済日
の義務の履行(買方の (納税者の選択により義務の履行日も可能)
権利行使)
による取得
※ 特定口座に受け入れる株式無償割当てにより取得した上場株式等について、取得の基因となっ
た株式等の取得日が分からない場合で、①特定口座内保管上場株式等以外の株式等を基因とし
て割り当てられた上場株式等である場合、または、②特定口座内保管上場株式等及び当該特定
口座内保管上場株式等と同一銘柄の特定口座内保管上場株式等以外の株式等の双方に基因して
割り当てられた上場株式等の場合については、株式無償割当ての効力を生ずる日。
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