リポソームを用いるタンパクの 迅速高感度検出法 県立広島大学 生命環境学部 環境科学科 教授 三苫好治 主たる発明者 名誉教授 江頭直義 1 従来技術とその問題点 タンパク定量…医療分野における腫瘍マーカ、アレルゲン物質、ウイルス検 出などに用いられる重要な技術である 代表的なタンパクの検出法 Ⅰ ELISA法 Ⅱ イムノクロマト法 …抗原抗体反応と、酵素標識抗体の 酵素活性による検出法 …標識抗体との抗原抗体反応と毛細 管運動による流動を利用した検出法 2回の抗原抗体反応と 酵素の発色反応の3工程からなる ウイルスの迅速診断(POCT)に利用 20分程度の迅速診断が可能 ・迅速性に欠ける ・感度が低い 課題 ・感度が低い 2 新技術の特徴・従来技術との比較 抗体修飾 イムノリポソームの利用 従来法の課題 • ELISA法…迅速性に欠け、検出感度が 10-6 g/mL と低い • イムノクロマト法…感度が低い 脂質二分子膜 Current (µA) 新技術 • 抗体を修飾したイムノリポソームとの 抗原抗体反応とイムノリポソームに 内包した物質による電気化学信号の 検出を組み合わせたタンパクの定量 方法 抗体 化学物質 タンパク 5min リポソームに内包した 化学物質の定量 イムノリポソームの 抗原抗体反応 1. 電気化学物質を用いた定量分析により、検出感度が高い 2. 特殊な設備や装置が不要のため分析コストを抑制でき、定量分析が簡便 で高精度 3. 2次反応及び発色過程を省き、迅速性が向上 3 1. 電気化学物質を用いた定量分析により検出感度が高い 〈イムノリポソーム〉 電気化学物質 • 脂質二分子膜でできた閉鎖小胞である リポソームに抗体を結合させたもの 抗体 • 内部に水溶液を封入することが可能 脂質二分子膜 • 高濃度に化学物質を内包することで、 応答が増加 〈脂質〉 〈電気活性種〉 K4Fe(CN)6 Ru(NH3)6Cl3 Fc(COONa)2 • 水溶性が高く、低い酸化電位を持つ • 高濃度に内包でき、漏出の少ない物質を選定 4 2. 特殊な設備や装置が不要のため分析コストを抑制 でき、定量分析が簡便で高精度 〈電気化学検出〉 ポンプ インテグレーター • フローインジェクション法による迅速で 精度の高い分析 • 内包した化学物質の電気信号を検出 検出器 • 小型かつ安価 界面活性剤で リポソームを破壊 内包している化学物質を 電気化学検出器により測定 Current (µA) 〈測定手順〉 5min 電圧を印加した際の 酸化電流値を用い、定量する 5 3. 2次反応及び発色過程を省き、迅速性が向上 従来法 コーティング ブロッキング 30分 競合反応 30分 二次反応 30分 酵素反応 30分 測定 吸光度測定 新規検出法 コーティング 競合反応 30分 二次反応・酵素反応が不要 ⇒迅速性が向上 測定 5分 電気化学測定 タンパク マイクロプレート イムノリポソーム 30分程度で検出が可能 6 BSAタンパクの検出 14000 ◆ 競合反応30分 ○ バックグラウンド 12000 ピーク面積 10000 8000 6000 * 0.1M Fc(COONa)₂ 内包イムノリポソームを使用 *測定値は3回の平均値で表す 4000 2000 0 0.001 10-9 0.01 10-8 -7 0.1 10 10-61 10-510 10-4 100 10-3 1000 BSA濃度 (g/mL) • 30分程度で10-5∼10-8 g/mL程度の高感度なタンパク検出を可能にした • 反応工程の簡略化による検出時間の短縮 • ELISA法(感度10-6 g/mL )と比較し、約100倍の感度向上を実現した 7 想定される用途 • インフルエンザ等の迅速検出法の開発及び検出装 置やキットの開発 • ジカ熱等の新たな疾病用迅速分析キットの開発 • 食物アレルゲン等の迅速検出法の開発及び検出装 置やキットの開発 8 実用化に向けた課題 1/2 • 現在、本検出法は反応工程の短縮化に有効であるこ とを確認済み。しかし、コスト低減技術の点が未解決 である。 • 今後、電気化学検出工程の短縮化および低コスト化 のために2つの手法 * による電気化学応答の実験 データを取得し、条件設定を行っていく。 • 実用化に向けて、分析時間を20分程度まで短縮でき るよう技術を確立する必要もあり。 * …次ページにて説明 9 実用化に向けた課題 2/2 *電気化学検出工程における2つの手法(既に報告あり) 1. マイクロプレートの各ウェル内に直接微小電極を 挿入して検出する方法 2. マイクロプレートの各ウェル内に微小電極を組み 込む方法 コスト面から考えると1の方法が良いと考えている。 微分パルスボルタンメトリー(DPV)を採用するため実用化 に向けてDPV本体も小型化、低コスト化が必要となる(こ れは今後の開発すべき技術) 10 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:電解発光物質を内封するリポソームを用いた 迅速高感度アッセイ法 • 特許番号 :特許5344450号 • 出願人 :県立広島大学 • 発明者 :江頭直義、三苫好治 • • • • 発明の名称: 被検物質の定量方法 出願番号 : 特願2016-044902 出願人 : 県立広島大学 発明者 : 江頭直義、三苫好治 11 お問い合わせ先 県立広島大学 地域連携センター 渡辺 孝信 TEL 082−251−9534 FAX 082−251−9405 e-mail [email protected] 12
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