UV 架橋系向け 新規表面調整剤評価結果 2016 年 11 月 第三報 ビックケミー・ジャパン株式会社 テクニカルサービスラボ 谷 泰輝 はじめに UV 架橋は木工・プラスティック塗装をはじめ、フィルムコーティングやフォトレジストなど多くの分 野に用いられている。BYK ではレベリング剤、擦り傷防止剤、顔料分散剤など多くの添加剤を UV 架橋 向けに上市している。今回は、金属酸化物のナノ粒子ディスパージョンである NANOBYK®シリーズの添 加効果について評価した結果を紹介する。 キーワード UV 硬化、耐擦り傷、鉛筆硬度、反り、ナノ粒子 実験装置 ■UV 照射システム:Light Hammer®10 (ヘレウス株式会社製) 発光効率が高く、照度が高い無電極ランプ。 直流電源による発光で、交流電源のものに比べてより 均一な分子サイズを持つ硬化膜の形成が可能となっている。 発光スペクトルは高圧水銀ランプ類似で、254、313 および 365nm に強いピークをもつ。 2 **最高出力:240 W/cm 2 ■条件:空気中及び窒素置換、照度強度:230mW/cm ナノ粒子ディスパージョン NANOBYK® NANOBYK®は金属酸化物のナノ粒子ディスパージョンで、容易にナノ粒子由来の特性を被添加物に付与 することができる点を特徴とする。 特に UV 架橋系向けでは、構造上大きく以下2のタイプに分類す ることができる。ここではナノシリカディスパージョンを例に挙げる。 図 1. ナノ粒子ディスパージョンの構造 実験①:有機変性ナノシリカディスパージョン NANOBYK®-3650, 3651, 3652 の評価 NANOBYK®-3650、同 3651、同 3652 は有機変性ポリシロキサンで表面が修飾されたナノシリカディス パージョンで、それぞれが極性あるいは構造面で異なる表面修飾されていることで異なる適応系を持つ 添加剤である。 図 2.NANOBYK®-3650、同 3651、同 3652 の構造イメージ ■耐擦り傷性 弾性タイプの NANOBYK®によって付与可能な代表的な特性の一つに「耐擦り傷性の向上」がある。 一般的な適応系はアクリル、ウレタン、ポリエステルやメラミンといった樹脂系が中心となるが、UV 硬 化型の多官能モノマーの系に対しても一定の効果を示す。 UV 硬化型樹脂への耐擦り傷性は、後述する架橋タイプによってより効果的に付与することができる。 左)PETA(ペンタエリストールトリアクリレート) 100% 右)PETA + NANOBYK®-3652 PETA (CONTROL) 5% NANOBYK®-3652 擦り傷試験機:Electronic Crockmeter (ATLAS 社) 試験条件:3M WETODRY 15μm、荷重 1N x 10 往復 2 照射条件:550mJ/cm , 空気中 基材:500μm PET、コーティング膜厚:12~14μm 図 3. NANOBYK®-3652 の耐擦り傷性 ■反り抑制 弾性タイプの代表的な特性付与効果に硬化収縮により発生する「反り」の抑制がある。 PETA に異なる極性の修飾鎖を持つ NANOBYK®を同一量添加するとそれぞれが異なった反り抑制効果を 示す。(図4) 言い換えると、シリカ粒子を修飾しているシリコン鎖の極性の選択が反りを効果的に 抑制する重要な因子であると云うことが言える。 今回の検討では中極性の NANOBYK®-3652 が最も効果的に反りを抑制した。 25.0 A5 サイズのコートフィルムの一辺を 固定した状態で最も反りの大きい部分 を計測 反り(mm) 20.0 15.0 10.0 NB=NANOBYK® 5.0 0.0 CONTROL NB-3650 10% NB-3651 10% NB-3652 5% NB-3652 10% NB-3652 20% 図4. NANOBYK®の反り抑制効果 ※フィルム作製条件 樹脂:PETA、NANOBYK®添加量:荷姿 コーティング膜厚:10μm 2 基材:PET (170μm)、照射条件:450 mJ/cm 空気下 実験②:有機変性ナノシリカディスパージョン NANOBYK®-3605 の評価 前述の通り、架橋タイプの NANOBYK®-3605 の最大の特徴は、その優れた耐擦り傷性付与効果にある。 UV 反応性を有するアクリル基によって修飾されたシリカ粒子によって、より高硬度の塗膜が形成され 表面の耐擦り傷性が向上すると考えられる。 擦り傷試験条件 A 部)研磨紙 3M WETODRY 15μm、荷重 1N x 10 往復 B 部)スチールウール#0000、荷重 約 5kg x 10 往復 樹脂系:DPHA/ウレタンアクリレート 照射条件:450mJ/cm 窒素下 基材:2mm アクリル、コーティング膜厚:25μm 図5. NANOBYK®-3605 のすり傷抑制効果 まとめ ナノ粒子ディスパージョン NANOBYK®は、粒子表面の修飾の違いによって付与し得る効果やその程度が 異なる添加剤である。 効率良くその効果を得るためには、以下に示す構造とそれに由来する特性付与 効果の関係の理解が重要である。 図 6. NANOBYK®の構造と付与特性 今後も評価・検討をさらに深く進め、NANOBYK®とその付与特性についての考察を進めたい。 以上 ビックケミー・ジャパン株式会社 http://www.byk.com/jp 本社:〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町 3-29 TEL 03-6457-5501 FAX 03-6457-5502 大阪:〒530-0004 大阪市北区堂島浜 1-4-4 TEL 06-4797-1470 FAX 06-4797-1477 テクニカルサービスラボ:〒660-0083 兵庫県尼崎市道意町 7-1-3-510 TEL 06-6415-2660 FAX 06-6415-2678
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