車載用CFRPの世界需要予測調査を実施(2016年)

2016 年 11 月 9 日
プレスリリース
車載用 CFRP の世界需要予測調査を実施(2016 年)
―マルチマテリアルの進化が、クルマをもっと軽くする―
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて車載用CFRPの世界需要予測調査を実施した。
1.調査期間:2016 年 7 月~10 月
2.調査対象:自動車メーカー、炭素繊維メーカー、成形加工メーカー、機器メーカー、研究開発機関等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<CFRP とは>
CFRP(Carbon fiber-reinforced plastic;炭素繊維強化プラスチック)とは、強化材に炭素繊維を用いた繊維強化プ
ラスチックである。炭素繊維は、鉄と比較して比重が 1/4 であるが、強度は 10 倍という優れた特性を持っている。炭素
繊維がそのまま利用されるのは、シートヒーター等の一部の用途に限られ、ほとんどは CFRP として利用されている。
なお、マトリックスに熱硬化性樹脂を利用したものを炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRTS)、熱可塑性樹脂
を利用したものを炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(以下 CFRTP)と呼ぶ。本調査における CFRP とは、このどち
らも対象とする。
<車載用 CFRP の需要量とは>
本調査における車載用 CFRP 需要量は、自動車のフレームとボディを一体に作ったモノコックボディや、クロスメン
バー、ピラー、センタートンネル等の構造材の一部、ボンネットやフード、バックドア等の取替え可能な部品(パーツ)
等で採用される炭素繊維・CFRP 需要量(単位:t)から算出したが、但し、燃料電池車に使用される水素タンク向け
の炭素繊維・CFRP 需要量は除く。
【調査結果サマリー】
‹ 2015 年の世界の自動車向け CFRP 需要量は 9,231t、2020 年には 28,000tに増加と予測
2015 年の世界の自動車向け CFRP 需要量を 9,231t と推計した。自動車での CFRP の本格採用は 2017
年頃から開始され、2020 年頃まではモノコックでの CFRP 採用は BMW の i3/i8 や高級車での採用が中
心と考えられる。そのほか、高級車の構造材の一部での CFRP 採用や、取替え可能な部品レベルでの
鉄からの置き換えによる採用が中心と考えられる。これらの採用により 2020 年の自動車向け CFRP 需要
量は 28,000tに増加すると予測する。
‹
自動車の「マルチマテリアル化」の進化で、
2025 年の世界の自動車向け CFRP 需要量は、85,231tに増加と予測
2020 年以後に関しては、鉄からの置き換えによる CFRP 化から、車体設計全体での材料設計の見直し
とハイブリッド材料(鉄+CFRP、アルミニウム+CFRP)を使用した「マルチマテリアル化」に対応した自動
車の登場が見込まれる。そうした開発が進んでいく中で、現状の高価格帯の車種のみだけでなく、より低
価格帯の車種での CFRP 採用が期待される。それら生産数量の大きな車種に採用される上で、CFRTP
成形品の採用も見込まれ、2025 年の世界の自動車向け CFRP 需要量は 85,231tに増加すると予測す
る。
‹ 資料体裁
資料名:「車載用 CFRP の世界需要予測 2016」
発刊日:2016 年 10 月 26 日
体 裁:A4 判 190 頁
定 価:150,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
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2016 年 11 月 9 日
プレスリリース
【 調査結果の概要 】
1. 市場背景・概況
¾ CFRP(炭素繊維を用いた繊維強化プラスチック)は 1970 年代から、スポーツ(釣竿、テニスラケット、
ゴルフシャフト)や航空用途での採用が開始されてきた。自動車向けでの CFRP 採用は 1979 年か
らであるが、年間数十台~1,000 台/1 車種の生産量であり、製造コスト・生産性の問題から、これま
で需要としては限定的であった。
¾ 2013 年に BMW が CFRP を車体構造部に採用した EV(Electric Vehicle)である i3 を製品化したこ
とで、車体重量の軽減への要求度の高い EV を中心に CFRP の本格採用に向けた取り組みが活発
化している。
¾ 2015 年の世界の自動車向け CFRP 需要量を 9,231t と推計した。主に欧州の自動車メーカーにお
いて、自動車のモノコック、構造材の一部、取替え可能な部品(パーツ)等、それぞれでの採用が
徐々に進展している。
¾ 現在、欧州の自動車メーカーである BMW、Volkswagen グループの Audi や Lamborghini 等は、
CFRP 採用に対して積極的な姿勢を示している。また、日系のメーカーもトヨタ自動車が「部品レベ
ルでの検討は終了」していると述べているように、CFRP 採用に対して積極的な姿勢に変化してきて
いるが、主要骨格での採用というよりは、取替え可能な部品(パーツ)から採用が開始し、徐々に採
用範囲が拡大していくものと推測する。米国のメーカーに関しては、ハイテン(High Tensile Strength
Steel Sheets)、アルミニウム等の材料の採用が中心であるが、GM が Mixed Material Body Structure
※
を提案しているように、CFRP 採用の可能性もあると見られる。
※Mixed Material Body Structure とは、ハイテンやウルトラハイテン、ホットプレス材、アルミニウム、マグネシウム、CFRP 等
の軽量材料を活用した GM の軽量化方針である。
2. 現状の採用における課題
2-1.自動車設計の見直し
現状の自動車の設計は、等方性材料である鉄用に進化させてきたものであり、そこに CFRP(異方性
材料)を当てはめて考えると、材料の特性上、CFRP で想定していた特性が発揮できないという問題があ
る。車体軽量化による燃費改善の徹底追求のため、鉄やアルミニウム、CFRP 等を複合的に活用する「マ
ルチマテリアル化」を前提として、最適な材料を利用した自動車設計を検討していく必要がある。
2-2.異種材料接合
異種材料の接合においては、融点・熱膨張係数の違いや界面の結合方法の違い等を考慮する必要
がある。現時点では CFRP 同士の接合では接着剤及び機械締結の採用が最も適した方法とされている
が、CFRP と異種金属の接合においては様々な方法が提案されており、開発途上のものも多くある。自
動車メーカーとしても様々な方式を試験している段階であり、「マルチマテリアル化」の進展においては
今後更なる発展が求められる。
2-3.成形品価格の低減、炭素繊維供給能力の向上
CFRP 普及における一つの課題は、CFRP 成形品価格の高さにある。炭素繊維価格の低下だけでなく、
樹脂や成形加工費、双方の更なるコスト低減及び歩留まり向上等が要求される。一方、2015 年時点で
炭素繊維需要量に対して供給量の不足はない。また、東レ株式会社、帝人株式会社/東邦テナックス株
式会社、三菱レイヨン株式会社等の炭素繊維メーカーは、2015 年以降の生産能力増強も発表している。
ただし、自動車向けは 1 車種に採用が決まると、その生産台数の多さから炭素繊維の需要量が一気に
増加するため、それを見据えた適切な設備投資が求められる。
3.需要量予測
自動車での CFRP 採用を考える場合、大きく分けて以下 3 つの採用方向があると考えられる。1 つ目
は、BMW i3/i8 やその他高級車で採用されているモノコックでの採用である。2 つ目は、1,000 万円以上
の価格帯の BMW の 7 シリーズや Audi 等で採用されているクロスメンバー、ピラー、センタートンネル等
の構造材の一部での採用である。3 つ目は、ボンネットやフード、バックドア等の取替え可能な部品(パ
ーツ)での採用が考えられ、これに関しては数百万円の量産車から高級車まで幅広く採用の可能性があ
る。
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2016 年 11 月 9 日
プレスリリース
3-1.2020 年までの予測
2020 年の世界の自動車向け CFRP 需要量は 28,000tに増加すると予測する。現状の自動車メーカー
各社の開発状況から推し測ると、モノコックでの採用に関しては、i3 に続く 1,000 万円以下の価格帯の車
種の登場は 2020 年までは見込めないと考えられる。そうなると、採用されたとしても i8 のように 1,000 万
円以上の価格帯の高級車での採用が中心となり、台数ベースでは1車種あたり 100 台~1,000 台規模程
度の採用になると予測する。自動車での CFRP の本格採用は 2017 年頃から開始され、2020 年頃までは
基本的には、2 つ目の高級車の構造材の一部での CFRP 採用か、3 つ目のパーツレベルでの鉄からの
置き換えによる採用が中心になると考える。
3-2.2025 年までの予測
2020 年までに登場してくるマルチマテリアルの自動車は、設計としては過渡期にあると考えられる。つ
まり、鉄から CFRP の置き換えの段階では、鉄を基準として CFRP の設計を考えている。しかし応力を例
に挙げると、鉄の設計では中空断面の設計がベストなものであっても、CFRP では異なる設計のほうがよ
り材料としてのパフォーマンスが発揮できる場合が多い。そういった未知の材料に対しての情報蓄積を
進めていくことが必要であると考える。2020 年以後に関しては、徐々にそれらの材料データが蓄積され、
鉄からの置き換えによる CFRP 化から、車体設計全体での材料設計の見直しとハイブリッド材料(鉄+
CFRP、アルミニウム+CFRP)を採用した、「マルチマテリアル化」に対応した自動車の登場が見込まれ
る。
そうした開発が進んでいく中で、現状の 1,000 万円以上の高価格帯の車種のみだけでなく、より低価
格な 500 万円前後の価格帯の車種での CFRP 採用が期待される。これまでの 100 台~1,000 台規模の
車種の自動車から、BMW の i3 やトヨタのカローラ、VW の Golf のような数万台以上の規模の車種に採
用されていくことが期待される。また、それら生産数量の大きな車種に採用される上で、CFRTP(炭素繊
維強化熱可塑性プラスチック)成形品の採用も見込まれ、2025 年の世界の自動車向け CFRP 需要量は
85,231tに増加すると予測する。
図 1.世界の自動車向け炭素繊維及び CFRP 需要量予測
(単位:t )
85,231
90,000
80,000
70,000
自動車向け炭素繊維需要量
自動車向けCFRP需要量
55,400
60,000
50,000
40,000
28,000
30,000
18,200
20,000
10,000
6,000
9,231
0
2015年
2020年
(予測)
2025年
(予測)
矢野経済研究所推計
注1:2020 年、2025 年は予測値
注2:CFRP 需要量は、炭素繊維重量含有率 65%で計算した。自動車のフレームとボディを一体に作ったモノコックボディ
や、クロスメンバー、ピラー、センタートンネル等の構造材の一部、ボンネットやフード、バックドア等の取替え可能な部品
(パーツ)等で採用される炭素繊維・CFRP 需要量から算出したが、但し、燃料電池車に使用される水素タンク向けの炭素
繊維・CFRP 需要量は除く。
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