2016/ マーケット・フォーカス 11/11 投資情報部 シニア FX ストラテジスト 由井 謙二 為替:新興国通貨 新興国通貨は目先波乱含みも、大幅調整には至らず 米大統領選の結果を受けて、新興国通貨は大幅下落。今後も米債利回りの上昇が続けば、 2013年5~6月のバーナンキ・ショックのような大幅な調整も考えられ、留意される。 もっとも、今回の米債利回りの上昇は、トランプ次期政権の政策に対する期待先行の面が大 きいと思われる。また、FRBの景気に配慮した慎重な利上げスタンスは変わらないとみられ、 米債利回りの上昇は限られよう。 新興国通貨は目先、米債利回りの動向をにらんだ波乱含みの展開が予想されるものの、調 整一巡後は値を戻す展開を想定している。 新興国通貨はトラン プ・ショック。対ドルで 大幅調整する動きも 11/8投票の米大統領選の結果を受けて、新興国通貨は大幅下落。11/9~10にか けてメキシコペソは対ドルで10%超の下落。南アランドやブラジルレアルも6%超の下 落となった。米大統領選で共和党候補のトランプ氏が勝利したほか、議会選挙でも 共和党が上下両院を制し、約10年ぶりにねじれが解消。トランプ次期政権での財政 支出拡大観測が財政悪化とインフレ加速の思惑を呼び、米利上げペースが速まる のではとの警戒感が高まった。米10年債利回りは急上昇し、11/8の1.8%台から 11/10には一時2.15%と1/12以来、約10ヵ月ぶりの水準に達した。ドル買いが強まる なかで、新興国通貨は売りに押された。ただ、NYダウは11/9に過去最高値を更新 する等、リスクセンチメントは悪化せず。日米金利差拡大を受けてドル円は一時1ド ル=106.95円と7/21以来の水準に上昇するなか、新興国通貨は対円で上昇する通 貨もみられている。 主要新興国・資源国通貨の対米ドル騰落率 主要新興国・資源国通貨の対円騰落率 (2016/11/8→2016/11/10) インドルピー 中国人民元 インドネシアルピア タイバーツ カナダドル 韓国ウォン マレーシアリンギ 豪ドル NZドル ロシアルーブル トルコリラ ブラジルレアル 南アランド メキシコペソ ▲ 12 (2016/11/8→2016/11/10) 中国人民元 インドネシアルピア インドルピー タイバーツ カナダドル マレーシアリンギ 豪ドル NZドル ロシアルーブル トルコリラ 韓国ウォン ブラジルレアル 南アランド メキシコペソ ▲ 0.0 ▲ 0.3 ▲ 0.4 ▲ 1.0 ▲ 1.3 ▲ 1.3 ▲ 1.8 ▲ 1.9 ▲ 2.3 ▲ 2.9 ▲ 2.9 ▲ 6.6 ▲ 6.6 ▲ 10.9 ▲ 10 ▲8 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 ▲6 ▲4 0 ▲2 (%) ▲ 12 1.3 1.1 1.1 0.5 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.4 ▲ 0.8 ▲ 1.0 ▲ 1.3 ▲ 1.7 ▲ 5.2 ▲ 5.2 ▲ 9.6 ▲ 10 ▲8 ▲6 ▲4 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 1 ▲2 0 2 (%) 2016/11/11 マーケット・フォーカス 米金利上昇は 期待 先行の面があり、 バーナンキ・ショック には至らない公算 2013年5~6月には、当時米連邦準備理事会(FRB)議長のバーナンキ氏が量的 緩和の縮小を示唆したことから、米10年債利回りが1%台後半から3%近くまで上昇。 投資資金が新興国から米国に回帰するとの思惑から、新興国通貨は大幅調整を余 儀なくされた。とりわけ、経常赤字対GDP比が大きい国は資金流出にぜい弱性があ るとの見方から売り込まれる動きとなった。今回も米債利回りの上昇が続くような場 合には、新興国通貨の売り圧力が強まる可能性があり、留意される。 もっとも、今回の米債利回りの上昇は、トランプ次期政権の政策に対する期待先行 の面が大きいと思われる。大統領と上下両院をすべて共和党が制したため、政策を 推進しやすい体制といえるが、トランプ氏が主張する減税規模や歳出拡大は財政 の大幅な悪化を招くため、小さな政府を志向する共和党主流派には受け入れづら い。公約通りの歳出拡大には至らず、主流派との調整のもとで、ある程度現実的な 政策に落ち着くものと思われる。 また、FRBは、潜在成長率の低下や賃金上昇率の低さ等、インフレ圧力の弱さを 指摘し、利上げは慎重に判断すべきとのスタンスを維持している。米国経済が潜在 成長率とされる2%程度の成長を続けているなかで、FRBが急激な利上げ路線に転 換するとは考えにくい。 さらに、これまで新興国通貨の下押し要因となった商品市況も安定化の動きをみ せている。後述の新興国の経済ファンダメンタルズの改善もあって、2013年から15 年にかけてみられたような新興国通貨の大幅調整の動きには至らないと考えてい る。 米10年国債利回りと新興国通貨指数 商品市況 1700 (1トン=ドル) 180 3.25 1650 160 3.00 1600 140 2.75 1550 2.50 1500 2.25 1450 2.00 1400 1.75 1350 60 1300 40 1250 20 (日次:2013/1/2~2016/11/10) (%) 3.50 1.50 米10年債利回り(左目盛) MSCI 新興国通貨指数(右目盛) 1.25 1.00 13/1 1200 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 16/7 (日次:2013/1/2~2016/11/10) (1バレル =ドル) 120 100 120 80 100 60 80 0 13/1 40 20 中国輸入鉄鉱石価格(左目盛) WTI原油価格(右目盛) 0 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 16/7 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 22 2016/11/11 マーケット・フォーカス 経済ファンダメンタル ズは全般改善も、選 別の動きは継続 新興国の経済ファンダメンタルズの状況を確認すると、商品市況の持ち直しもあ り、成長率見通しには好転の兆しがみられる。とりわけ、ブラジルやロシアの景気は 最悪期を脱し、2017年にはプラス成長への回帰が見込まれる。経常収支対GDP比 は、通貨安の効果や輸入減少等からインド、ブラジル等で改善方向、ロシアは黒字 を維持。インフレ率は2017年にかけて総じて低下する見通しで、ブラジル中銀は10 月にインフレの落ち着きを受けて、4年ぶりの金融緩和を実施した。ロシアもインフレ 見通しが改善するなか、緩やかな利下げが見込まれ、景気を下支えよう。 こうした新興国通貨を取り巻く環境は過去と比較して、改善しているとの見方に著 変はない。ただ、各国の安定度合い等でばらつきは残るため、政治・経済情勢等に よる選別の動きは継続するとみられる。米国の政策動向に関しては、インフラ投資の 拡大により、資源価格がサポートされれば、資源国通貨の追い風になるとみられる。 一方で、トランプ氏は、メキシコ政府の資金による国境間の壁建設や、米国内の不 法移民の強制送還および移民送金の規制、北米自由貿易協定(NAFTA)見直しを 主張しており、実施されればメキシコ経済に打撃となるおそれがある。米国の政策を めぐる不透明感は引き続きペソの売り要因になるとみられ、注意が必要だろう。 (年次:2013~2017) 10 新興国の経常収支対GDP比 (%) 新興国の実質GDP成長率(前年比) (%) (年次:2013~2017) 6 ロシア ブラジル インド トルコ 予想 8 4 6 2 4 0 2 ▲2 0 ▲4 2013 赤字 ▲6 2014 2015 2016 2017 (年) (注) 予想はIMFの世界経済見通し2016年10月より 出所:ブルームバーグ、IMFのデータよりみずほ証券作成 ▲8 2013 (%) (年次:2013~2017) 16 18 予想 14 16 トルコ インド ブラジル ロシア 12 2014 2015 2016 2017 (年) (注)予想はIMFの世界経済見通し2016年10月より 出所:ブルームバーグ、IMFのデータよりみずほ証券作成 新興国のインフレ率(前年比) (%) 黒字 ▲4 インド トルコ ロシア ブラジル ▲2 予想 14 新興国の政策金利 (日次:2014/1/2~2016/11/10) ブラジル 14.00 トルコ 7.50 メキシコ 4.75 ロシア 10.00 インド 6.25 12 10 10 8 8 6 4 6 2 4 2013 2014 2015 2016 2017 (年) (注) 予想はIMFの世界経済見通し2016年10月より 出所:ブルームバーグ、IMFのデータよりみずほ証券作成 0 14/1 14/5 14/9 15/1 15/5 15/9 16/1 16/5 16/9 (年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 33 2016/11/11 金融商品取引法に係る重要事項 マーケット・フォーカス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-161111-22 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 44
© Copyright 2024 ExpyDoc