研究開発 - 日本下水道新技術機構

研究開発
自主研究
下水道事業における様々な課題の中で、地方公共団体や民間企業での調査研究の取り組みが進んでいない課題について、将来に
向けて本機構が自主的に先導的な調査研究に取り組んでいます。
・下水道BCP図上訓練に関する調査研究(H27)
・マンホール本体の豪雨時内圧対策検討(H27)
・下水灰の肥料利用のための調査研究(H27~)
・衝撃弾性波検査法の利活用に関する研究(H27~)
・事例ベースモデリング調査の利活用に関する研究(H27~)
政策支援研究
国の主要施策の推進や新たな事業制度の立案等において、主要な調査研究等を行うとともに、地方公共団体における当該施策や
事業制度の円滑な導入に向けたガイドラインの作成を支援するなど国の施策を支援する調査研究に取り組んでいます。
下水道機能の持続性確保
災害リスクへの対応力向上
・下水道クイックプロジェクト技術フォ
ローアップ支援調査(H27)
・下水道管路起因道路陥没の予兆検知技
術に関する技術評価支援調査(H27)
新たな価値の創造
・下水道分野の気候変動による影響検討調査(H27)
・下水道管きょ内水位等の観測情報の活用
方策検討支援調査(H27)
・下水道管きょ内の水理を応用したストッ
ク活用方策検討支援調査(H27)
・水域の早期水質改善に向けた段階的高
度処理推進に関する調査研究(H27)
・下水道事業における汚泥腐敗防止技術
の適用性検討支援調査(H27)
・下水道部門における温室効果ガス排出抑制
等指針のマニュアル作成に係わる検討支援
調査(H27)
共同研究
地方公共団体との共同研究
新技術の現場での適用性の検証や地方公共団体に共通する課題の解決など、地方公共団体と共同
して、下水道事業における様々な課題解決等のための調査、研究開発、評価等に取り組んでいます。
民間企業との共同研究
民間企業で開発された技術の下水道事業への採用を促進するため、その効果、適用範囲、留意
事項等を技術マニュアル・技術資料としてとりまとめます。なお、地方公共団体の下水道管理
者が参加する「管理者参加型」の共同研究を積極的に進めます。
共同研究の流れ
地方公共団体や民間企業との共同研究は、当機構での相談や依頼、課題公募等で始まります。皆様が抱えている課題等の相談は
いつでもお受けしています。まずは、課題解決に向けた方策の企画提案等を行います。その後、開発目標、研究フロー、研究ス
ケジュール等を依頼者と協議し、共同して調査・研究開発・評価等を開始します。進捗等に応じて、学識経験者等で構成する技
術委員会等で内容の審議が行われるほか、随時、進め方の調整等も行われます。また、成果報告後は、必要に応じてフォローアッ
プ等を行います。なお、研究成果は、下水道事業実施団体をはじめ広く普及を図っています。
地方公共団体・民間企業との共同研究の流れ
地方公共団体・
民間企業
相談・依頼
下水道機構
提案
技術委員会・
部門別委員会等
研究協定締結
協力
情報交換
共同研究の実施
成果報告
普及・啓発
評価・フォロー
技術の向上
下 水 道 事業
実 施 団 体 等の
関 係 機関
機能高度化促進事業(新技術活用型)における共同研究の流れ
相談・依頼
国土
交通省
事業要望
地方公共
団体
研究協定締結
実用化研究
交付金
事業実施
交付金
評価・報告
成果報告
研究協定締結
下水道機構
技術委員会・
部門別委員会
新技術の
普及促進活動
下 水 道 事業
実 施 団 体 等の
関 係 機関
性能評価研究
成果報告
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これまでの主な成果
これまで当機構が実施した研究開発の課題数は約950件、技術マニュアル・技術資料としてまとめた技術は160件を超え、そ
の分野も下水道事業を広範囲にカバーするとともに、その時々の主要課題に対応するものが多く含まれます。全国的に活躍する
技術も数多く、成果は広く社会に貢献しています。
分野
技術名
らせん案内路式ドロップシャフト
施設整備と再構築
の最適化
シールド発進立坑用地の省面積システム
シールドトンネルの内面被覆工法
シールド切替型推進工法
衝撃弾性波法を用いた管路診断技術
健全化・老朽化対策 マンホール改築・修繕工法
管きょの部分改築工法
維持管理の効率化
下水処理場等における効率的な
管理・運営のための情報共有
下水処理場等における効率的な管理・運営のための情報共有
フラッシュゲート
地震・津波対策
津波シミュレーションモデル
下水処理施設のネットワーク
ボルテックスバルブ
浸水対策
プレキャスト式雨水地下貯留施設
雨水浸透施設
立型ガスタービン雨水ポンプ施設
ボルテックスバルブ
① 貯留
NADH風量制御を利用した
嫌気無酸素好気法
事例ベースモデリング技術を用いた
雨天時浸入水発生領域の絞込み
③ 復帰
雨水貯留施設(ノンポイントソース対策)
水環境・再生水
利用
② 転倒
担体利用生物脱臭システム
紫外線消毒装置
CSO対策ろ過スクリーン
雨天時高速下水処理システム
プレキャスト式雨水地下貯留施設
フラッシュゲート
NADH風量制御を利用した
嫌気無酸素好気法
省エネ型反応タンク撹拌機
チェーンフライト式汚泥かき寄せ機
バイオマスエネルギー活用推進
簡易型繊維ろ過施設
水面制御装置
下水汚泥バイオマス燃料化設備
下水汚泥リン回収設備
地域バイオマス
活用
バイオマスメタン発酵設備
鋼板製消化タンク技術
下水処理場へのバイオマス
( 生ごみ等 )受け入れ技術
省エネ型反応タンク撹拌機
チェーンフライト式汚泥かき寄せ機
省エネ型汚泥処理システム
低炭素下水道
消化ガス発電設備
システム・
創エネ・
活性汚泥法等の省エネルギー化技術
再生可能エネルギー
汚泥焼却炉からのN2O削減技術
エネルギー回収・汚泥減量化技術
(レセルシステム)
汚泥熱分解燃料化システム
海外展開
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GCUS下水道海外ビジネス展開共同研究
最近の主な共同研究
県と市町村が連携した下水道BCP策定に関する共同研究(H26・27)
下水道BCPとは
(県)各自治体
大災害発生時、人・モノ・情報等に制約がある
状況下において下水道機能を維持・確保してい
くことを目的として定められる計画であり、
「減
災」対策として非常に有効な手段です。
関連情報
の提供
勉強会等
への参加
下水道
BCPを作成
下水道機構
下水道BCPの課題
作成時の課題として「一自治体では作業ができ
ない」
「作成のためのノウハウがない」等が挙げ
られます。このため、本機構が支援し、県及び
市町村が一体となり、これらの課題を解決する
とともに、実効性の高い下水道BCPを作成する
共同研究を行っています。さらに、作成後の課
題として、
「職員に周知されない」等が挙げられ
ます。そのため、本機構では、効果的な訓練プ
ログラムの企画・検討・運営を行っています。
勉強会の実施
県下共通のBCPの考え方
下水道施設の被害想定
実用的なBCPひな型
県・各自治体・機構で連携した下水道BCP図上訓練
実 大分県:BCPの作成(10自治体)
石川県:BCPのブラッシュアップ及び図上訓練(17自治体)
績 長野県:BCPの作成及び図上訓練(47自治体)
共同研究のメリット
①勉強会で得た知見を踏まえ、共 通 の 認 識 をもって下 水 道 BCPの 作 成 が可能となる。
②他自治体の情報を参考にすることができ、横 の 繋 が りを持 った下 水 道 BCPの 作 成 が可能となる。
③ 県 下 統 一 の 手 法 で被 害 想 定 を行うことにより、県内全域の被害状況が検討条件に偏ることなく把握できる。
④機構のノウハウや事例等を反映した効率的な図上訓練の実施により、実 効 性 の 高 い初 動 体 制 や 連 絡 体
制 等 の 確 立 が可能となる。
NADH風量制御を利用した嫌気無酸素好気法に関する共同研究(H26・27)
より省エネ・省面積の高度処理 を実現するため、NADH風量制御により好気槽での安定した同時硝化脱窒を実現
NADHセンサーで好気槽の反応状態を把握
NADHの測定値
好気反応時
<
同時硝化
脱窒反応時
実証実験
フロー
P
PAC
添加設備 (目標値超過時のみ稼働)
P
硝化液循環設備
T-P計
(硝化液循環率40~100%)
< 脱窒反応時
※NADH:還元型のニコチンアミド-アデニン-ジヌクレオチド
(活性汚泥微生物の呼吸反応に関与する補酵素)
メタノール
添加設備 (冬期のみ利用)
P
制御
装置
最終沈殿池
DO
流入水
嫌気
無酸素
嫌気
DO
DO
NADH
pH
DO
NADH
pH
DO
汚泥返送率
50~60%
ブロワ・風量調整
弁を自動制御
M
B
pH・NADH・DOの測定値を基に送風量を制御
M
M
M
M
仮設ルーツブロワ 1台
仮設ターボブロワ 3台
水質
反応タンク流入水
最大
平均
実証実験の結果
処理水
最大
平均
BOD[mg/L]
160
107
4.9
2.0
T-N[mg/L]
42.8
33.5
11.1
7.0
T-P[mg/L]
7
4.6
0.95
0.24
消費電力 0.31 (従来法より
3
約14%省エネ)
[kWh/m ]
HRT
[hr]
8~10 (水温:22
~30℃)
実験結果を基に、「NADH風量制御を利用した嫌気無酸素好気法およびNADH風量
制御を利用した循環式硝化脱窒法技術マニュアル」を発刊
○好気槽での脱窒を織り込んだ設計手順を明確化
○従来法との同等性を評価(従来法と同様の手順で設計・事業計画位置付けが可能に)
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下水道管路施設へのフラッシュゲートの適用に関する共同研究(H26・27)
下水道管きょにおいて、適正な流速が確保できない区間では、管きょ内に汚濁物や土砂等が堆積しやすく、悪臭の
発生や詰まり等の維持管理上の問題が生じています。本研究は、下水道管きょの自動洗浄が可能なフラッシュゲー
トについて、その効果を検証し、技術的事項について整理しました。
フラッシュゲートによる自動洗浄の原理
フラッシュゲートによる洗浄効果の検証
◎伏越し室上流部に設置した例
① 貯留
③ 復帰
162日
経過後
② 転倒
フラッシュゲート設置前
適正な流速を確保できない管渠
フラッシュゲート設置直後
(伏越し施設洗浄後)
固形物の堆積は見られない
内蔵されたばねにより、無電
源で貯留、転倒、復帰の動作
を繰り返す
下水による定期的なフラッシングにより、管きょ内に汚濁
物を堆積させることなく流下させることが可能
ボルテックスバルブに関する共同研究(H27)
雨水管きょや合流管きょでは一時的に計画を上回る雨水量が流入して排除しきれなくなったり、汚水管きょでは大
量の雨天時浸入水が流入して処理場の処理能力に影響を及ぼしたりする場合があります。
ボルテックスバルブは、装置内で渦流を発生させることにより、電力の使用や機器の操作を全く必要とせずに流量
制御を行う装置であり、この装置を利用して問題となっている箇所の流量を適切に制御すれば、既存ストックの能
力を最大限に活用して対処することができます。
本研究ではボルテックスバルブの今後の普及促進に役立てることを目的として、技術の概要、利活用方法および導
入手順を整理しました。
ボルテックスバルブの特徴
渦流を形成せずに開水路状態で
一定の水位を超えると渦流の形
自然流下
成を開始
代表的な形状
渦流が発達し、流出量が減少
中心に柱状の空気核を形成し、
(キックバック)
渦流が安定化
ボルテックスバルブの利活用方法
●雨水貯留施設の有効活用(浸水対策)
オリフィスと比べて低水位時の放流量が大きくなるため、貯留量を節減可能。
→貯留空間に余裕が生じ、既定計画以上の降雨にも対応可能。
●流出量の抑制(雨天時浸入水対策等)
合流式雨水吐における遮集量、処理場・ポンプ場あるいは流域下水道への流入水量等を適正に制御可能。
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省エネ型反応タンク撹拌機の導入促進に関する共同研究(H27)
下水処理場での省エネを目的とし様々な取り組みが行われている中、水中撹拌機の省エネ化が水処理施設の省エネ化に非
常に有効であることが先行研究でわかりました。
本共同研究では、自治体が省エネ型反応タンク撹拌機の導入を検討する際に必要な技術的事項を整理することに加えて、
導入することによる省エネ効果を定量的に明示し、技術マニュアルとしてまとめました。
○省エネ型反応タンク撹拌機
プロペラ(インペラ)式
双曲面撹拌翼式 ドラフトチューブ式
直結式 旋回機構付プロペラ式
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水中撹拌機を設置している実際の反応タンクに、上記8機種の
省エネ型反応タンク撹拌機を導入した場合の消費電力量削減効
果をケーススタディで明らかにしました。
CASE2
CASE3
CASE4
水中撹拌機平均:11.0
10
平均削減率▲79%
5
省エネ型平均:2.3
水中撹拌機
省エネ型 H
省エネ型 G
省エネ型 F
省エネ型 E
省エネ型 D
省エネ型 C
省エネ型 B
0
省エネ型 A
その結果、導入前の水中撹拌機と比べた撹拌動力密度削減率は
▲66~96%(平均79%)と試算されました。
撹拌動力密度[W/m3 ]
CASE1
○ケーススタディによる導入効果の検証
省エネ型汚泥処理システムの構築に関する共同研究(H27)
従来設備から省エネ型汚泥処理設備に更新した際の、エネルギー消費量の削減量、温室効果ガス排出量の削減効果、LCC
の低減効果について、補器類を含めた設備全体で比較して省エネ効果などについて定量的にまとめています。
○対象技術
(1)汚泥濃縮設備 ・・・差速回転型スクリュー濃縮機、ベルト型ろ過濃縮機(ステンレスベルト)、
ベルト型濃縮機(樹脂ベルト)
(2)汚泥消化設備 ・・・鋼板製消化槽+低動力攪拌機、省エネ型攪拌機
(3)汚泥脱水設備・・・ハイブリッド型圧入式スクリュー脱水機、高効率型二軸スクリュープレス脱水機、
直胴型遠心脱水機、省エネ型遠心脱水機
(4)汚泥焼却設備・・・過給式流動焼却炉、気泡式高効率二段焼却炉
(5)プロセスの組合せ技術・・・ダイレクト型圧入式スクリュープレス脱水機による濃縮一体脱水法、
セミドライメタン発酵システム、レセルシステム、汚泥乾燥焼却システム
濃縮機洗浄
ポンプ
0.2%
○省エネ効果(一例)
汚泥濃縮設備でエネルギー消費量が従来設備(遠
心濃縮機)と比較して最大7割程度削減可能で
あった。
省エネ機器を導入することで、エネルギー消費量の
補器類が占める割合が大きくなるため、今後更なる
省エネ化には、補器類の省エネ化も重要となる。
余剰汚泥
供給ポンプ
23%
機械濃縮機
本体
77%
従来型濃縮設備(遠心濃縮)
凝集剤注入
空気圧縮機
凝集剤定量 ポンプ
4%
3%
供給機
0.2%
除湿機
凝集剤
1%
溶解槽
5%
機械濃縮機
本体
19%
余剰汚泥
供給ポンプ
72%
省エネ型濃縮設備(ベルト濃縮)
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