EY Institute 31 October 2016 シリーズ:企業価値向上のためのコーポレートガバナンス (速報)ISS が 2017年版議決権行使 助言方針(ポリシー)の改定案を発表 執 筆 者 EY総合研究所では、「シリーズ:企業価値向上のためのコーポレートガバナンス」 と題して、関連する情報を発信している。 本稿では最新のトピックスについて紹介・ 解説する。 議 決 権 行 使 助 言 の 世 界 最 大 手 ISS(Institutional Shareholder Services Inc.)は2016年10月27日、2017年版の日本向け議決権行使助言方針の改定案 (以下、新ポリシー) ※1を発表した。変更が予定されているのは「相談役・顧問制度 を規定する定款変更への対応」である。 ISSは11月9日までオープンコメントを募集 した上で、新ポリシーを正式決定することになる。 なお新ポリシーは2017 年2月開 藤島 裕三 EY 総合研究所株式会社 未来経営研究部長 主席研究員 催の株主総会から施行される。 改定案「相談役・顧問制度を規定する定款変更への対応」 相談役・顧問制度を新たに規定する定款変更議案に対して、反対を推奨する。ただ し相談役や顧問を取締役の役職として規定する場合、株主はその取締役の選任議案 <専門分野> • コーポレートガバナンス • 組織経営 に対して反対票を投じることができるため、定款変更議案には反対推奨しない。 上場会社において「第⃝条 取締役会はその決議によって、相談役および顧問各 若干名を置くことができる」といった定款規定を備えている事例は少なくない。 ISS の調査によると、2016 年6月に株主総会を開催した上場会社の 28 %に達するという。 もっとも今回の改定は「新たに」規定する定款変更議案に対するものであるため、実 務における影響( ISSによる反対推奨の増加)は相当に限定的と考えられる。 この点に関してISSは、改定の意図は「投資家の懸念」をメッセージとして伝える Contact EY 総合研究所株式会社 03 3503 2512 [email protected] ことにある、と説明している。元トップなどが相談役や顧問となって経営に影響力を及 ぼしていても、株主としては議決権行使を通じて責任を問うことができない。すなわ ち株主によるコーポレートガバナンスを健全に機能させる上で、相談役・顧問制度は 重大な阻害要因になりかねないという批判に基づいている。 その他、相談役・顧問に対する報酬(フリンジベネフィット含む)は開示されないこと、役 員退任後も会社に残ることで社外取締役候補者の人材プールが充実しにくいこと、などの問 題意識も提示されている。 前述のとおり本改定の実務における影響は軽微だが、上場会社 においては「投資家の懸念」を念頭に、自社の制度を見直すことが期待されている。 見送り「監査等委員会設置会社向けポリシーの厳格化」 2016 年 7月2日付の日本経済新聞は、「米 ISS 『社外取締役4人以上に』監査等委設置 EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EY について 会社に要求」と題した記事を掲載、監査役会設置会社に求めている社外取締役 2 人に対して、 監査等委員会設置会社については同 4 人を求める(不足なら経営トップの選任議案に反対の 可能性)方針だと報じた※2。 監査役会設置会社は会社法で2 人の社外監査役が義務付けら EY は、アシュアランス、税務、トランザ れており、監査等委員会設置会社においても同数の社外役員が必要との論理によるものと クションおよびアドバイザリーなどの分野 見られる。 における世界的なリーダーです。私たちの 深い洞察と高品質なサービスは、世界中の 資本市場や経済活動に信頼をもたらします。 同内容に関してISSは改定案のリリースで、監査等委員会設置会社向けポリシーの厳格化 私たちはさまざまなステークホルダーの期 を検討したものの、「 2017 年版ポリシーでの厳格化は見送る」ことにした旨を発表してい 待に応えるチームを率いるリーダーを生み る。東証のコーポレートガバナンス情報サービスで確認したところ、東証上場の監査等委員 出していきます。そうすることで、構成員、 会設置会社は700 社近くあるが、そのうち4 人以上の社外取締役を選任しているのは20 % クライアント、そして地域社会のために、 より良い社会の構築に貢献します。 EY とは、アーンスト・アンド・ヤング・グロー バル・リミテッドのグローバル・ネットワー クであり、単体、もしくは複数のメンバー ファームを指し、各メンバーファームは法 的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ ヤング・グローバル・リミテッドは、英国 強に止まっている。 ISSとしては実態とのかい離が現状では大き過ぎると判断、見送ったと 推測できよう。 ただし個別の機関投資家によっては、2017 年の株主総会において同様または類似の基 準をもって、監査等委員会設置会社の経営トップに反対票を投じる可能性を否定できない。 2016年3月開催の株主総会で監査等委員会設置会社への移行に反対した海外ファンドは、 の保証有限責任会社であり、顧客サービス 重要な業務執行の決定を取締役に委任するならば、社外取締役は過半数に達しているべき は提供していません。詳しくは、ey.com を だと主張した。このような見解を持っている投資家は相応に存在するのではないか。 ご覧ください。 EY 総合研究所株式会社について EY 総合研究所株式会社は、EY グローバル またISSにしても、「2017 年版ポリシー」での改定を見送ったにすぎない。再度検討した 上で2018 年版ポリシーから導入することは十分に考えられる。 あるいは2019 年版ポリ ネットワークを通じ、さまざまな業界で実 シーからの実施を2018 年版ポリシーで予告するかもしれない。遅かれ早かれ厳格化の方向 務経験を積んだプロフェッショナルが、多 で議論が進むことは間違いなく、監査等委員会設置会社においては状況を注視する必要が 様な視点から先進的なナレッジの発信と経 あるだろう。 済・産業・ビジネス・パブリックに関する 調査及び提言をしています。常に変化する 社会・ビジネス環境に応じ、時代の要請す るテーマを取り上げ、イノベーションを促 す社会の実現に貢献します。詳しくは、eyi. eyjapan.jp をご覧ください。 © 2016 Ernst & Young Institute Co., Ltd. All Rights Reserved. ED None 本書は一般的な参考情報の提供のみを目的に作成さ れており、会計、税務及びその他の専門的なアドバ イスを行うものではありません。意見にわたる部分 は個人的見解です。EY 総合研究所株式会社及び他の EY メンバーファームは、皆様が本書を利用したこと により被ったいかなる損害についても、一切の責任 を負いません。具体的なアドバイスが必要な場合は、 個別に専門家にご相談ください。 EY Institute ※1 ※2 https://www.issgovernance.com/file/policy/iss-policy-update-japanese.pdf http://www.nikkei.com/article/DGXLZO04372280R00C16A7DTA000/ 2 (速報)ISSが2017 年版議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案を発表
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