Monthly Letter Nov,2016 派遣業界ニュース

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介護職に外国人材拡大 関連2法案が衆院通過
ヤフー、新卒の一括採用廃止 30歳未満は通年採用 年300人程度
日経新聞
日本経済新聞
人手不足が深刻化する介護現場での外国人材の受け入れを増やす出
入国管理・難民認定法改正案が、25日午後の衆院本会議で自民、公
明、民進など各党の賛成多数で可決された。日本の介護福祉士の国家
資格を持つ外国人を対象に介護職の在留資格を新設。働きながら技術
を学ぶ技能実習制度の対象職種にも介護を新たに加える。参院での審
議を経て今国会で成立する見通しだ。
技能実習の期間を最長3年から5年に延長する外国人技能実習適正
実施法案と併せて可決した。実習先の団体や企業を監督する組織も新
設し、実習生に対する人権侵害を防ぐ。両法案とも成立後1年以内に施
行する。
ヤフーは新卒の一括採用を廃止する。10月から新卒や既卒、第二新卒など
の経歴にかかわらず30歳未満であれば誰でも通年応募ができるようにする。
技術者や営業職など全ての職種が対象で、1年で300人程度を採用する計
画だ。海外留学生や博士号取得者の就職活動時期の多様化に対応するほ
か、新卒以外にも平等に採用機会を提供し優秀な人材を確保する。
現在、看護・介護の分野で外国人の受け入れが認められるのはインド
ネシアなど3カ国と結ぶ経済連携協定(EPA)の枠組みのみ。法整備後
はEPA締結国以外からも留学生として日本に入国し、介護福祉士の資
格取得後に就労ビザに切り替えて正式に働くことが可能になる。技能
実習生には日本の介護サービスを学びながら就労に従事してもらう。
厚生労働省の試算では2025年に日本国内で約38万人の介護職が
不足するとされ、政府は外国人材の登用が不可避とみている。介護現
場で日本語が未熟な留学生や実習生が増えればサービスの低下につ
ながりかねず、日本語教育の充実など対策を求める声もある。
経歴を問わない「ポテンシャル採用」を新設する。入社時の年齢が18歳以
上30歳未満が対象。入社時期は就業経験のない人は4月と10月、就業経験
者はいつでも入社できる。応募から2年以内に入社することが条件。就業経
験が十分ではなくても、将来性のある人材を確保しやすい採用形態に切り替
える。
これまで実施してきた中途採用や特殊技能を持つ人材の採用枠は継続す
る。ヤフーは週休3日制の導入を検討するなど、採用や働き方の見直しを急
いでいる。
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副業・兼業、拡大へ指針 政府、企業に容認促す千葉卓朗
2016年10月23日朝日新聞
政府は、会社員が副業・兼業をしやすくするための指針づくりに乗り出す。会社勤めを続けながら、勤め先に縛られない自由な発想で新しい事
業を起こしたい人を支援し、経済の活性化につなげるのが狙い。24日に開く「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)の会合で、副業・兼業
の環境整備を進める方針を打ち出す予定だ。
日本では社員の副業・兼業を就業規則で禁止・制限する企業が圧倒的に多い。「働き方改革」を掲げ、柔軟な働き方への移行を目指す政府内
には、一つの企業に定年まで勤める終身雇用を背景に「大企業が優秀な人材を抱え込みすぎだ」との見方が強い。就業規則を見直すときに必要
な仕組みなどを盛り込んだガイドライン(指針)を策定し、企業の意識改革を促す。
副業・兼業を容認するよう法律で企業に義務づけるのは難しいため、容認に伴って起きる問題への対応策などをまとめた手引をつくることで、労
務管理の見直しを支援することにした。
ロート製薬(大阪市)が今年から、国内の正社員を対象に他の会社やNPOなどで働くことを認める「社外チャレンジワーク制度」を始めるなど、副
業・兼業を積極的に認める大手企業も出てきた。ロートでは、正社員約1500人のうち100人程度から兼業の申し出があったという。こうした先行
事例を参考に、副業・兼業のメリットを指針で示すことも検討する。
欧米の企業では、兼業を認められた社員が起こした新規事業が大きく成長するケースが目立つ。起業に失敗しても、兼業なら職を失うこともな
い。これに対し、中小企業庁が2014年度に国内の約4500社を対象に実施した委託調査によると、副業・兼業を認めている企業は3・8%にとど
まった。本業がおろそかになることや、過労で健康を損なうことへの懸念が大きいうえに、会社への強い帰属意識を求める企業文化も背景にある
。
副業・兼業の容認が長時間労働を助長しかねないとの懸念もあることから、複数の企業で兼業する社員の働き過ぎを防ぐ時間管理のルールも
示す方針だ。(千葉卓朗)
■政府が目指す「柔軟な働き方」
▼副業・兼業の拡大
ガイドライン(指針)を策定し、企業に促す
▼中高年の転職・中途採用の促進
採用と結びついたインターンシップを導入
▼テレワークの普及
就業時間を管理するルールを整備
▼学び直しによる再就職
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給与上昇の歴史的“転換点”、人材関連株は“奔騰”へ <株探トップ特集>
―記録的人手不足が生み出すもの、動き出した“働き方改革”―
株探ニュース
全般強気に傾き、日経平均1万7000円台固めの動きに移行している東京市場だが、主力株の上値の重さが依然として意識されている。ここはテーマ物色の波
に乗り、全体相場を大きくアウトパフォームする銘柄を手にしたいというのが個人投資家共通の願いだろう。
そのなか、国策に乗る銘柄で株価大幅水準訂正の緒に就きながら、意外に見落とされているのが人材サービス関連株であり、要注目場面といえる。 人材派
遣や求人情報 などを手掛け、第3次安倍改造内閣が渾身の一撃で打ち出した「一億総活躍社会」の国策テーマを背景に、好調なビジネス環境を享受していくこ
とになる。
●求人倍率の高さは追い風の強さ
消費者のデフレマインドの再燃が多方面で指摘されているが、それをもって景気が冷え込んでいるとは言い切れない。企業側にとってみれば人材が欲しくて仕
方がない状態が続いている。求職者1人に対してどのくらいの求人があるのかを示した「有効求人倍率」は、今年に入ってこの記録的な人手不足の状況を如実
に映し出している。
来週28日に9月の有効求人倍率が発表される予定で、この数字が注目されるところだが、その前に過去のデータを確認してみたい。まず、半年前に遡って3月
の有効求人倍率は1.30倍と約24年ぶりの高い水準となり話題となった。バブルの余韻冷めやらぬ1991年の年末以来のことである。
しかし、それは物語の終わりではなく始まりだった。その後、さらに人材需給はタイト化することになる。4月の有効求人倍率は1.34倍とさらに上昇、5月は1.36
倍、6月は1.37倍とうなぎ上りで24年10ヵ月ぶりの高水準、7月と8月は1.37倍と横並びだったが高原状態が続いている。
この過程において訪日外国人観光客の急増が人手不足を加速させており、爆買い需要が剥落したとされる現状でも、モノ消費からコト消費への需要シフトを
背景として求人需要に陰りはみられない。一方、技術系人材も開発技術者に対する需要がなお旺盛な状況だ。
●東京五輪開催の年に労働者117万人増
需要と供給のバランスから当然ながら賃金も上昇傾向にある。民間調査によるとアルバイト・パートの9月の募集時平均時給が初めて1000円大台を突破した
ことが伝わっており、これも人手不足の実態を浮き彫りにしている。10月から最低賃金が引き上げられることで三大都市圏だけでなく、地方の時給にも浮揚効果
を与えたという面もあるが、高水準の需要が前提として存在していることはいうまでもない。今後、書き入れ時となる年末に向けて、さまざまな分野で人材ニーズ
が高まり、賃金の上昇傾向も一段と強まりそうだ。また、この流れは、既に人材派遣サービスを手掛ける企業と顧客企業の間で行われる派遣料金引き上げ交渉
などにも波及している。派遣社員の時給をはじめ待遇改善につながる環境整備も今後一段と進捗しそうだ。
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「一億総活躍社会」で柱となるのは“働き方改革”だ。高齢者や女性の活用などに重きが置かれており、株式市場でも折に触れてクローズアップされる。企業の側にと
っても新たな働き手の確保は喫緊の課題であり、高齢者や女性など人材の雇用範囲の広がりは人材サービス関連企業の収益機会へとつながっていく。
新アベノミクスが掲げる「一億総活躍社会」は、経済成長の隘路である少子高齢化のデメリットを全員参加で食い止めるという国家百年の計であり、東京オリンピック
開催年度の2020年度に117万人、さらにその5年後には204万人の労働者数増加を見込んでいる。その国策を舞台として、人材サービス関連企業は株式市場でも必然
的にスポットライトを浴びることになりそうだ。
●マイナンバー特需のフルキャスト、PEOで飛躍のアウトソシング
業界の草分けであるパソナグループ <2168> は人材紹介業や福利厚生代行業が好調、16年5月期の11%増益に続き、17年5月期も2ケタ利益成長を見込み、株価も
13週移動平均線をサポートラインにジリ高歩調が続きそうだ。
軽作業向けのアルバイト紹介とそれに付随する給与計算などの代行サービスを手掛けるフルキャストホールディングス <4848> も出来高流動性に富み市場の注目度
が高い。マイナンバー向け特需も収益に反映し、営業利益は15年12月期の4割増益に続き16年12月期も15%前後の増益が有望視されている。
アウトソーシング <2427> はIT業界や自動車業界などの工場製造ラインへの人材派遣を主力に、技術系の外部委託需要も囲い込んでいる。製造現場では派遣期間
の長い契約を中心に受注を確保するほか、PEO(メーカーの期間工を受け入れ派遣社員として派遣する方式)を通じ顧客企業との関係を強化、16年12月期は営業利
益段階で73%増益を計画、業績変化率の大きさは目を見張る。株価は足もと調整色をみせているが、13週移動平均線との接触場面は拾い場となる可能性がある。
●鮮烈な上昇波形成のアルプス技研、テンプ、夢真にも注目
テクニカル的に陽線の連続で鮮烈な株価上昇トレンドを印象づけるのがアルプス技研 <4641> だ。自動車向けや精密機器向け技術者派遣で高実績を誇る。設計・開
発分野や医療分野での需要取り込みに成功しており、16年12月期は8%程度の増益を確保する見通しで3.3%前後の高い配当利回りも魅力となる。
このメーカー向け技術者派遣ではテクノプロ・ホールディングス <6028> やトラスト・テック <2154> 、UTグループ <2146> [JQ]なども注目しておきたい。
業界大手のテンプホールディングス <2181> は存在感十分。企業の旺盛な求人需要を背景にM&Aによる業容拡大効果が反映されている。時価は1800円前後を上
限とするボックス圏推移だが、早晩ここを上放れ、実質上場来高値圏である2000円台を目指す展開が予想される。
建設現場の施工管理技術者派遣を手掛け大手ゼネコンを顧客とする夢真ホールディングス <2362> [JQ]も成長期待が強い。首都圏再開発や東京五輪関連のインフ
ラ需要がビジネスチャンスとなっているほか、フィンテック分野にも参入するなど多角的な経営に特徴がある。26週移動平均線をサポートラインとする下値切り上げ波動
が続いている。
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●求人サイト運営企業にもチャンスが膨らむ
一方、労働需給のひっ迫は、企業と雇用者をネットで結ぶ良質な求人情報を手掛ける企業にもフォローの風を与えている。特にスマートフォンの普及加速に伴い、
紙媒体よりもサイトを運営する企業の優位性が高まっている。その恩恵を大きく享受しているのがディップ <2379> やエンジャパン <4849> [JQ]である。
ディップはAKBグループなどを使った広告宣伝で認知度を高めたアルバイト募集サイト「バイトル」への広告出稿が好調、「はたらこねっと」なども引き続き高水準の
求人需要を獲得している。17年2月期営業利益は前期比23%増の88億円を見込んでいるが、保守的で市場ではさらなる上振れ観測が根強い。
また、中途採用や新卒などの求人情報サイトを総合的に取り扱うエン・ジャパンは主力の転職サイト「エン転職」や派遣会社向け求人サイト「エン派遣」が好調に広
告出稿需要を取り込んでいる。数年来、大幅増収増益トレンドが続いており、17年3月期営業利益は11%増の57億円を見込むが、やはり市場では大幅な増額修正
の可能性が取りざたされている。
解雇規制を緩和 自民小委が改革案、雇用流動化狙う
日経新聞
自民党の小泉進次郎農林部会長がトップの「2020年以降の経済財政構想小委員会」が月内にまとめる社会保障制度改革案の骨格が分かった。若者でパートなどの非
正規社員が増えているため、正規・非正規を問わず全ての労働者が社会保険に入れるようにする。企業への解雇規制を緩和し、成長産業への労働移動を後押しする。
月内にも党の財政再建に関する特命委員会に提言する。(1)社会保険の範囲拡大と解雇規制の緩和(2)年金支給開始年齢の柔軟化(3)医療・介護費の自己負担割合の
見直し――などが柱。
社会保険の適用範囲は10月、週の労働時間が30時間以上から20時間以上に広がったが、対象は従業員501人以上の大企業で働く労働者に限られる。改革案は企業
の規模を問わず全労働者が加入でき、低所得の労働者は社会保険料を軽くすることを求める。
財源として企業に負担増を求めるが、一方で経済界に要望の強い解雇規制の緩和を認める。労働者の学び直し支援も拡充し、衰退産業から成長産業に移りやすくして
労働生産性を高める。政府は激変緩和のための財政支援をする。
年金の支給開始年齢と年金保険料をいつまで納付するかを選択できるようにし、高齢者の就労期間を長くする。財政再建につなげるため、支給開始年齢引き上げの議
論も直ちに始める。
医療費や介護費に関しては、健康維持に取り組んできた人の自己負担の割合を低くする。予防のための健康管理を徹底させ、高齢化で膨らむ医療・介護費を抑える。
小泉氏は「人口減少を前提に、社会保障制度を設計し直す」と述べている。若者の就労を拡大し、高齢者が働く期間を延ばすことで、人口減少下で成り立つ社会保障制
度づくりをめざす。
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バイト時給1000円時代 外食・運輸で人手不足深刻
9月、初の大台 2016/10/19 日経新聞
アルバイトやパートの時給が上昇している。民間の調査で、9月の全国の平均時給が初めて1千円の大台を超えた。10月の最低賃金引き上げを控えて条件を見直す
動きが目立った。同月の社会保険の適用拡大も人手不足に拍車をかけており、かき入れ時の年末を控えた採用競争が激しさを増している。賃上げによる人件費増で企
業負担は一層増えそうだ。
求人サービス大手のインテリジェンスが19日まとめた9月の募集時平均時給(全国)は1003円だった。調査を始めた2002年以来、初めて1千円の大台に乗った。
前年同月と比べた伸び率は2.6%と13年以降で最も大きい。同社の求人サービス「an」編集長の上土達哉氏は「10月と予想していた1千円乗せが1カ月早まった」と話
す。
寄与度の大きい外食の時給上昇が平均額を押し上げた。
特に人手の確保が難しいのが居酒屋の店員だ。平均時給は前年同月比3.9%増の997円と飲食全体の1.6%を大きく上回り、上昇をけん引した。同じく不足が深刻な
運輸職の平均時給は1094円と前年同月比5%上昇した。
求人サイト運営のディップも「飲食大手が夏休み中の大学生をターゲットとした案件を増やし、特に飲食業で時給が上昇している」と指摘する。
10月に実施した最低賃金の引き上げが時給を底上げしている。上げ幅は全国平均25円と過去最大となった。スーパーなどが9月の段階で新しい最低賃金に合わせ
た時給を導入し、平均額を押し上げた。
9月時点でanの募集案件のうち10%が10月以降の最低賃金を下回る。最低賃金の反映で10月は一段の時給上昇が見込まれる。
企業は時給引き上げによる人材の確保を急いでいる。
ゼンショーホールディングスの牛丼店「すき家」は、アルバイトの募集時給額を11月から引き上げる。多くの店で、前月と比べて10~20円ほど上がる見込みだ。
デフレ再燃が指摘されるなか、賃上げ分を商品価格に転嫁するハードルは高い。日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは「時給上昇は経済全体で見ればプラス
」とした上で「賃上げできる体力があるかどうかで、企業間の格差が広がる可能性がある」と指摘する。
ラーメン店「日高屋」を展開するハイデイ日高の島需一取締役は「アルバイトの時給は上がっており、今後は利益の圧迫要因になる」と話す。吉野家ホールディングス
の河村泰貴社長も外食の人手不足の深刻化で「時給や新規採用のコストが上がっている」と懸念する。
人手不足は製造業も非製造業も共通の問題だ。とりわけ平均賃金が製造業より低い流通業で深刻になっている。
三菱総研の武田洋子チーフエコノミストは「IT活用で生産性を上げて賃金を持続的に上げるビジネスモデルをつくるのと、就労抑制につながっている税制や社会保険
。
の仕組みを政府が見直す両面の対策が必要だ」と指摘する
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外国人技能実習生、異例の過労死認定 残業122時間半
日雇い派遣禁止、見直しを 経団連が規制改革要望案
朝日新聞
朝日新聞
建設現場や工場などで働く外国人技能実習生が増え続ける中、1人のフィリピン
人男性の死が長時間労働による過労死と認定された。厚生労働省によると、統計
を始めた2011年度以降、昨年度まで認定はなく異例のことだ。技能実習生の労
働災害は年々増加。国会では待遇を改善するための法案が審議されている。
経団連がまとめた今年度の雇用分野の規制改革要望案で、「日雇い派遣」
の禁止の見直しや、グループ企業内の派遣規制の廃止などを求めている
ことが分かった。いずれも民主党政権時代に、不安定な派遣社員の立場を
改善するため規制を強化した項目だ。
ジョーイ・トクナンさんは、ルソン島北部の山岳地帯で生活する少数民族の出身。
妻レミーさん(28)と、娘グワイネットちゃん(5)ら家族を養うために11年に来日し
た。岐阜県の鋳造会社で、鉄を切断したり、金属を流し込む型に薬品を塗ったりす
る作業を担当していた。14年4月、従業員寮で心疾患のため、27歳で亡くなった。
帰国まで残り3カ月のことだった。
低賃金でキャリアが身につきにくい日雇い派遣は、ワーキングプア(働く
貧困層)問題の原因と批判され、2012年に施行された改正労働者派遣法
で、30日以内の短期派遣は原則として禁止された。経団連の要望案は、
専門の管理責任者を置くことなどを前提に「日雇い派遣の原則禁止を見直
すべきだ」とする。
また、自社や系列企業に働き手を派遣する「グループ内派遣」は、正社員
を解雇して傘下の人材会社に登録させて派遣社員として働かせるなど、労
働条件の悪化につながる恐れがあると指摘される。そのため12年の法改
正で、人材派遣会社が系列企業へ派遣する割合を全体の8割以下に制限
した。これに対し、経団連は「8割の根拠が薄弱」などと廃止を求めている。
最低賃金はもらっていたが、稼いだほとんどを毎月、フィリピンに送金。離れて暮
らす娘とテレビ電話で話すことを楽しみにしていた。「リサイクルショップに娘のお土
産を買いにいくんだ」。前日、そう同僚に話していたという。
岐阜労働基準監督署によると、1カ月に78時間半~122時間半の時間外労働を
していたとされる。労基署は過労死の可能性が高いと判断。昨年、遺族に労災申
請手続きの書類を送った。結婚の証明などを添えてレミーさんが申請し、今年8月
に労災認定された。一時金として300万円、毎年約200万円の遺族年金が支給さ
れるという。
労働条件の引き下げを防ごうと、働き手が離職して1年以内に元の勤務先
に派遣することも12年の法改正で禁止されたが、経団連は「働き手の就業
機会を阻害している」として、撤廃を求めている。
日雇い派遣が原則禁止され、グループ内派遣の規制がかかったことで、
派遣労働者の数が減り、当時、大企業には直接雇用に切り替える動きも出
ていた。(編集委員・堀篭俊材)
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配偶者控除存続へ
専業主婦世帯に配慮
毎日新聞2016年10月6日
2017年度税制改正の焦点となっている配偶者控除の見直しで、政府・与党は、代替案の夫婦控除(夫婦なら一定の控除を適用)導入を先送りし、配偶者控除の適用拡大を検討する
方針に転換した。安倍政権が掲げる「働き方改革」の柱として、女性の就労を妨げているとされる配偶者控除の廃止を探ったが、年明けの衆院解散が取りざたされる中、増税となる専
業主婦世帯などの反発を招きかねないと判断したためだ。
選挙意識し方針転換
配偶者控除廃止の動きは8月下旬に公になった。自民党の宮沢洋一税制調査会長が見直しを主張し、9月には茂木敏充政調会長が「配偶者控除から、パート収入の上限がない夫
婦控除に移行していく」と踏み込み、所得税改革の機運が高まるとの見方が広がった。
配偶者控除は「夫が働き、妻は家庭を守る」という高度成長期の家族モデルを前提に、専業主婦世帯を優遇する制度。約20年前に共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、「時代にそ
ぐわない」との指摘が出ていた。
ただ、配偶者控除を廃止し夫婦控除を導入すれば、専業主婦世帯を中心に多くの世帯で増税となる可能性がある。次期衆院選を考えれば増税世帯の増加は避けたいのが与党の
本音。閣僚の一人は「どれだけ多くの世帯を敵に回すか分からない。政府内も一枚岩ではない」と漏らしていた。年明けの衆院解散説が広がった9月下旬から、夫婦控除導入論は急
速にしぼんだ。
支持層に専業主婦世帯が多い公明党への根回しも進んでいなかった。公明党が重視する東京都議選は来夏。夫婦控除の拙速な導入による選挙への悪影響を恐れた。公明幹部は
「議論を煮詰めるには時間が必要。今年の導入などとても無理だ」とけん制した。麻生太郎財務相も記者会見で「(家族のあり方の)価値観の話が入り、簡単ではない」と慎重姿勢を強
調。宮沢税調会長は6日の岸田派会合で「夫婦控除というものは、なかなか厄介な話がたくさんある」と述べ、導入見送りを事実上認めた。
しかし、安倍政権は女性の就労促進を含めた「働き方改革」を重要課題に掲げており、「税制改正でゼロ回答は許されない」(自民党幹部)事情もある。菅義偉官房長官は財務省幹
部に、配偶者控除を受けられる年収要件(103万円)の緩和検討を指示。茂木氏も6日の会見で「大切なのは、働きたければもっと働けるよう『103万円の壁』を早期かつ実質的に取
り払うことだ」と方向を一転させた。年収要件緩和でパート女性の就労時間を増やす狙いだが、経済官庁幹部は「選挙を意識した有権者向けの『あめ』に過ぎない」と冷ややかだ。【大
久保渉】
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適用範囲拡大、新たな壁
政府・与党が今後検討するのは配偶者控除の適用範囲の拡大だ。夫が会社員で妻がパートなどで働く世帯の場合、夫が配偶者控除を受けられる妻の年収上限は
現在103万円で、これを引き上げる方針。だが、引き上げ後の上限が女性の就労を阻む「新たな壁」となる恐れがある。
現在の配偶者控除は、妻の年収が103万円を超えると、夫の税負担が増える。また、企業も103万円を基準に配偶者手当などの支給を減らすところが多いとされる
。これを嫌って妻が働く時間を抑えようとするため、「103万円の壁」と呼ばれている。
総務省の調査によると、パートで働く女性の年収は「50万円以上〜100万円未満」が約48%を占める。新たな上限の水準を巡っては、政府内で「150万円程度」と
の意見が出ている。その程度まで引き上げられれば、多くのパート女性が働く時間を増やす可能性がある。
だが、新たな年収上限を超えれば夫の税負担が増える状況は変わらない。仮に150万円まで引き上げられると、今度は妻が年収150万円を超えないように働く時
間を抑える可能性があり、「150万円の壁」となりかねない。また、控除のメリットが専業主婦やパートの妻のいる世帯に限られ、妻がフルタイムで働く世帯との不公平
感は残ったままになる。
増税となる世帯が出るのも避けられない。上限引き上げによる税収減を防ぐため、夫の年収に上限を設けて適用対象を絞ることが検討されているためだ。夫婦控除
の導入より対象世帯の拡大が小幅にとどまるため夫の年収制限は比較的高い水準になる可能性がある。それでも専業主婦のいる高所得層は増税になるとみられ増
税世帯の反発を抑えられるかも課題となりそうだ。
女性の就労を巡っては、税制以外の「壁」も指摘される。年収が130万円以上だと年金など社会保険料の支払いが発生するため、「130万円の壁」と呼ばれている。
今月からは、従業員数501人以上の大企業でこの基準が106万円に引き下げられ、新たに「106万円の壁」が生まれたとされる。大和総研の是枝俊悟研究員は「社
会保険の壁があり、配偶者控除の年収上限を引き上げても女性の就労拡大を後押しするという効果は限定的」と指摘する。【横山三加子】