日銀の新しい政策執行を注視する展開

~日銀の新しい政策執行を注視する展開
2016年11月1日(火)
上田八木短資株式会社
1. 国内経済情勢
(経済・景況判断)
8月の景気動向指数(CI)一致指数(改定値)は、前月から0.1ポイント低下し112.0となった。政府
は10月の月例経済報告で、国内景気は「このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いて
いる」とし、8カ月連続で基調判断を据え置いた。個別項目では、生産を「持ち直しの動きがみられる」
とし、9月の「横ばいとなっている」から9カ月ぶりに引き上げた。
9月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比0.5%下落した。マイナスは7カ月連続で、家
電製品の価格下落や食品の上昇ペース鈍化が続いている。
2. 短期金融市場の動向
(10月の短期金融市場動向等)
10月の日銀当座預金残高は309兆円台でスタートしたが、日銀オペ等で増加し、結局315兆円台
で越月した。無担保コール・オーバーナイト・レートは加重平均レートで▲0.04~▲0.02%程度で
推移し、前月よりも資金調達ニーズが強かったようだ。無担保コール市場残高も9月末が終わり増加
基調にある。債券レポGC・TNレートについては、東京レポレートで▲0.10~▲0.08%のレンジと
前月と同水準で推移した。オープン市場では、CPの発行レートはa-1格の銘柄で0%近辺と前月と
同水準であった。新発CP発行残高の減少は続いているが、10月は9月末明けで償還残高よりも発
行残高が上回ったようだ。TB については、3ヶ月物については業者間で▲0.40~▲0.30%のレ
ンジでの取引となった。
無担保コールレートと市場残高
8.00
0.0000
7.00
-0.0100
無担保コール市場残高
-0.0200
6.00
無担保コールオーバナイトレート(%)
-0.0300
5.00
4.00
-0.0400
兆円
-0.0500
%
3.00
-0.0600
2.00
-0.0700
1.00
-0.0800
0.00
-0.0900
H28.10.17
H28.10.3
H28.9.19
H28.9.5
H28.8.22
H28.8.8
H28.7.25
H28.7.11
H28.6.27
H28.6.13
H28.5.30
H28.5.16
H28.5.2
H28.4.18
上田八木短資株式会社 1
(11月の短期金融市場見通し)
引き続き、無担保コールオーバーナイトレートや債券レポGCレートは、積みの進捗とマクロ加算残高
の空きを睨みながらの金利横ばい圏での動きが予想される。イールドカーブコントロール導入後、市
場に大きな変動がなければ、日銀が国庫短期証券買入オペで購入する金額は、日銀既購入分のうち
その月に償還する金額が目安になるが、11月償還額は7兆円程度と予想されている。
(上田八木・金融政策サーベイ)
10月31日~11月1日の金融政策決定会合においては、不変を予想する先が98%と調査開始以来
最も多くなり、追加緩和を予想する先は2%と調査開始以来最も低い数字となった。金利見通しにつ
いては、3か月先の無担保コールON金利DI(「上昇」-「低下」)が▲4(前回▲61)。10年国債金利DI
(「上昇」-「低下」)は調査開始以来初めて上昇が低下を上回った(+9)。前回から市場の先行き金
利観が大きく変化していることを示唆する結果となっている。
3. 海外経済情勢
(金融政策)
米連邦準備制度理事会(FRB)が公表したFOMC(9月20-21日開催)議事録によると、金融政策
当局者は利上げがもたらす効果について議論し、「ぎりぎりの判断」で据え置きを決定した。幾人かの
FOMCメンバーは比較的早い時期の利上げが適切になるとの見解を示した。次回会合は、11月1-
2日両日に開催される予定。
(経済・景況判断)
米国では、9月のISM製造業景況感指数が前月から2.1ポイント上昇し、51.5となった。節目の50
を再び上回った。中でも新規受注は前月の49.1から大きく上昇し55.1となった。9月の非農業部門
雇用者数の伸びは15.6万人。前月同様緩やかな伸びを示した。失業率は5.0%へ0.1ポイント上
昇したものの、平均時給も0.2ポイント上昇した。
10月のユーロ圏製造業景気指数(PMI)速報値は52.0と前月から横ばい。9月の中国景気指数
(PMI)も前月比変わらずの50.4となった。50近傍での推移が続いている。
上田八木短資株式会社
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4. 海外市場動向
米10年国債利回りは、強含み。7月に1.35%まで低下したが、その後は金利強含みに推移し、5
月来の高水準まで上昇した。米追加利上げへの警戒感が背景にあるが、欧州を含め海外金利は
総じて上昇基調となった。
為替相場は、ドル強含み。金利裁定からの米ドル買いに加え、リスクアペタイト回復による米ドル資
金需要がうかがえる。米ドル独歩高な状況。
5. 今月の注目点
『閑散に売り無し』
引き続き米国大統領選挙がキーイベントになるが、大勢はクリントン民主党候補が有利。それぞれ優
勢な結果となった過去3回のテレビ討論会後には、安心感から米ドル買い(為替、株式)となった。
中央銀行金融政策に関しては、「日銀:当面据え置き、FRB:年内追加利上げ」 がコンセンサスになり
つつある。
マーケットムーバーの観点で年内を見渡すと、注目イベントはそれほど多くない。11月米国大統領選
挙が終わると、 「閑散に売り無し」 となる公算が大きい。
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