~水害を我がこととしてとらえる~

~水害を我がこととしてとらえる~
吉野川上流域の堤防整備は、昭和40年に早明浦ダムによる洪水調節が具体化したことか
ら、直轄区間を延伸し、ようやく着手することができ、治水安全度は徐々に向上しています。
しかし、未だ無堤の箇所があり、浸水被害が発生しているため、無堤部対策を推進すると
みずぼうさい いしきしゃかい
「水防災意識社会」の再構築に向け、
取組方針を決定しました!
ともに、河道掘削や早明浦ダムの洪水調節機能の増強により治水安全度を向上することとし
ています。
我が国では、近代的河川改修
が実施される以前、水害は日常
的に起こるものと認識されてい
ました。
このため、水害を「我がこと」
昭和 49 年 9 月洪水による吉野川の氾濫被害
(美馬市脇町)
として捉え、これに自ら対処し
ようとする意識が社会全体に根
付いていました。
高地蔵(たかじぞう)
城構えの家(しろがまえのいえ)
(洪水でつからないように土台を
高くした地蔵という説もある。
)
(家屋の浸水を防ぐ石垣)
洪水遺跡
平成 16 年 10 月洪水による吉野川の氾濫被害
(東みよし町)
このように、近代的河川改修が進み、水害の発生頻度が減少したことに伴い、社会の意識
は「水害は施設整備によって発生を防止するもの」へと変化しています。また、洪水や水害
の歴史、水防の重要性に関する認識などが風化しつつあることも否めません。
吉野川は、古くから「四国三郎」として我が国の三大暴れ川に数えられ、洪水と水害の歴
史であり、藩政期頃には現在のような堤防はなく、人々は、毎年のように氾濫する洪水と懸
命に闘い、その姿は「高地蔵」、「城構えの家」などの洪水遺跡として残されています。
このため、近年、気候変動の影響により洪水リスクが高まり、施設の整備水準を超える洪
水が発生することを前提に、住民が「水害を我がこととしてとらえる」ことができるように
各種施策を講じ、社会全体で洪水氾濫に備える「水防災意識社会」を再構築する必要があり
美馬市から三好市の上流域は、長らく徳島平野の
ます。
※
遊水地帯として堤防整備に着手することができず、
地域の人々は、自衛の手段として、高石垣の家や水
吉野川においては、地域住民の安全・安心を担う沿川14市町 と河川管理者等で構成する
防竹林などにより激甚な水害を軽減してきました。
協議会において、平成32年度を目途にハード・ソフト対策を一体的・計画的に推進するこ
ととしました。
吉野川下流域では、水害の増加、藍の衰退による
稲作への転換から、堤防整備が強く求められ、明治
40年から昭和2年にかけて、内務省による連続堤
※吉野川沿川14市町: 徳島市、鳴門市、吉野川市、阿波市、美馬市、三好市、石井町、松茂町
北島町、藍住町、板野町、上板町、つるぎ町、東みよし町
水防竹林(三好市三野町)
防の整備、別宮川の放水路化、善入寺
■5年間で達成すべき目標
四国三郎と言われる暴れ川の歴史を踏まえ、想定最大規模降雨に
伴う洪水に対して 「知る」 「逃げる」 「取り戻す」 をテーマに地域
住民の危機意識を高揚させ、人的被害の回避はもとより、被害の最
小化を目指し、社会基盤の早期復旧を実現する。
島の遊水地化などの抜本的改良が行わ
れ、沿川の人々の多くは、吉野川の氾
濫から切り離され治水安全度が飛躍的
に向上しました。
これらの第一期改修工事以降も堤防
上記目標の達成に向け、以下の項目を3本柱とした取組を実施します。
の拡築、早明浦ダム等洪水調節施設の
建設など対策を進めており、幸いにし
て、約90年にわたり堤防の決壊によ
る激甚な被害は発生していません。
第一期改修工事竣工平面図
知る
逃げる
取り戻す
危機意識の高揚に向
けた啓発活動、情報
発信の強化
避難時間確保のため
の情報発信手法の確
立と水防活動強化
排水・施設運用等の
現状把握と緊急排水
計画(案)の作成等
■各構成機関が実施する取組内容
ハード対策
ソフト対策
項目 事項
内容
目標時期
実施する機関
平成28年度から
順次実施
協議会全体
・隣接市町における避難場所の共有
平成28年度から
順次実施
各市町
・住民等へ適切かつ確実に情報伝達する体制や方法の改善
平成28年度から
順次実施
協議会全体
・広域的な危機管理演習の実施
平成29年度から
順次実施
下流域の協議会全体
・洪水リスクに関する住民意識調査の実施・公表
平成29年度から
順次実施
各市町、四国地整
平成28年度から
順次実施
徳島県、四国地整
・ハザードマップの改良と周知
平成28年度から
順次実施
各市町
・まるごとまちごとハザードマップの整備と周知
平成28年度から
順次実施
各市町
・市町長も参加した出水時対応を確認するセミナー及び洪水リスクが
高い区間についての共同点検
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、四国地整
・情報ソフトインフラも活用した避難訓練等の実施
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、四国地整
・小中学校における水災害教育
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、気象庁、四国地整
■平時からの住民等への周知・教育・訓練に関する事項
・想定最大規模降雨に伴う洪水に係る浸水想定区域の指定と周知
内容
目標時期
実施する機関
引き続き実施
四国地整
平成28年度から
順次実施
四国地整
・円滑かつ迅速な避難に資するCCTV、水位計等の整備
平成28年度実施
四国地整
・避難行動に必要なCCTVカメラの映像提供
平成28年度から
順次実施
四国地整
・防災拠点の整備
平成28年度から
順次実施
美馬市、徳島県、四国地整
ハード対策の主な取組
①危機意識の高揚に向けた啓発活動、情報発信の強化を実施(「知る」ための取組)
■情報伝達、避難計画等に関する事項
・洪水時における河川管理者からの情報提供等の内容及びタイミング
やそれらを踏まえた避難勧告等発令の対象区域・判断基準等の設定
(タイムラインの改良)
項目 事項
■洪水氾濫を未然に防ぐ対策
<吉野川>
・勝命箇所の堤防整備
・西林箇所、川島箇所の漏水対策、西原箇所の侵食対策
・脇町第一箇所、加茂第二箇所の堤防整備
<旧吉野川>
・中喜来地区、広島地区、新喜来地区の堤防整備
■危機管理型ハード対策
<吉野川>
・上板箇所、勝命箇所、徳島第2箇所の天端の保護
<旧吉野川>
・鳴門市大麻町の天端の保護、裏法尻の補強
・松茂町の天端の保護、北島町の天端の保護
<今切川>
・徳島市川内町の天端の保護、裏法尻の補強
・北島町の天端の保護、松茂町の裏法尻の補強
■避難行動、水防活動、排水活動に資する基盤等の整備
②避難時間確保のための情報発信手法の確立と水防活動の強化を実施(「逃げる」ための取組)
■水防活動の効率化及び水防体制の強化に関する事項
・水防指導者の育成
・重要水防箇所の見直し
・住民や水防団との共同点検
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、四国地整
引き続き実施
徳島県、四国地整
(水防団との共同点検)
引き続き実施
(住民との共同点検)
平成29年度から
順次実施
各市町、徳島県、四国地整
・水防に関する広報の充実
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、気象庁、四国地整
・水防資機材の整備
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、四国地整
・水防訓練の充実
平成28年度から
順次実施
各市町、徳島県、四国地整
平成28年度から
順次実施
各市町
平成28年度から
順次実施
各市町
■市町庁舎や災害拠点病院等の自衛水防の推進に関する事項
・施設の関係者への情報伝達の充実
・洪水時の庁舎等の機能確保のための対策の充実
■洪水浸水想定区域図(想定最大規模)
③排水・施設運用等の現状把握と緊急排水計画(案)の作成等を実施(「取り戻す」ための取組)
・資材搬入、作業等のルート確認、確保
平成28年度から
順次実施
各市町、四国地整
・排水施設、排水資機材の運用方法の改善
平成28年度から
順次実施
各市町、四国地整
・排水計画の作成及び排水ポンプ車運用の効率化を図るための釜場
の抽出、整備
平成28年度から
順次実施
各市町、四国地整
・関係機関と連携した排水訓練の実施
平成28年度から
順次実施
各市町、四国地整
・浸水が長期化する箇所における排水計画の検討
平成29年度から
順次実施
該当市町、徳島県、四国地整
・ダムの危機管理型の運用方法の検討
平成28年度から
順次実施
徳島県、水資源機構、四国地整
「この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の 5 万分の 1 地形図を複製したものである。
(承認番号 平 28 情複、第 100 号)
」
吉野川水系吉野川
洪水浸水想定区域図(想定最大規模)【総括版】