日本の労働生産性の動向 2016 年版

2016 年 11 月 2 日
報道機関各位
日本の労働生産性の動向 2016 年版
1.
~時間あたり名目労働生産性は 8 年ぶりに過去最高を更新~
公益財団法人
日本生産性本部
公益財団法人日本生産性本部は「日本の労働生産性の動向 2016 年版」を 11 月 2 日、発表
した。
日本の労働生産性は、OECD 加盟 34 カ国中 21 位(『労働生産性の国際比較』日本生産性本
部、2015 年)で加盟国平均を下回っており、低迷が続いている。
2015 年度の日本の労働生産性は、時間当たりの名目労働生産性が 4,518 円(前年度比+
2.3%)で、8 年ぶりに過去最高を更新したことが明らかとなった。これは、パートタイム労
働者比率の上昇に加え、パートタイム労働者一人あたりの労働時間が短くなっていることが
影響しているが、依然として欧米より低い水準にある。
日本生産性本部では、最新の国際比較を 12 月上旬にとりまとめ、公表する予定。
1. 2015 年度の日本の名目(時間あたり)労働生産性は 4,518 円、8 年ぶりに過去最高を更新。
・2015 年度の日本の時間あたり名目労働生産性(就業 1 時間当たり付加価値額)は 4,518 円(前
年度比 2.3%増)。リーマン・ショックにともない 2008 年度に大きく落ち込んでいた時間当
たり労働生産性は、8 年ぶりに過去最高を更新した。
2. 2015 年度の実質(時間あたり)労働生産性上昇率は+0.9%。
・2015 年度の時間あたり実質労働生産性上昇率は+0.9%。労働者全体に占める比率上昇が続
くパートタイム労働者で労働時間が短くなっていることなどが影響し、就業者 1 人あたり上
昇率より 0.5%ポイント高くなっている。
3. 2015 年度の日本の名目(1 人あたり)労働生産性は 784 万円。実質労働生産性上昇率は
製造業 電気ガス
卸小売 飲食宿泊 運輸
+0.4%と、2
年ぶりにプラスへ転換。
郵便通信 金融仲介 ビジネスサービス
70.6%
61.0%
42.4%
37.8%
48.4%
73.2%
87.8%
50.8%
・2015 年度の日本の 1 人あたり名目労働生産性(就業者 1 人あたり付加価値額)は 784 万円。
名目ベースでみると、リーマン・ショック後に大きく落ち込んだものの、2011 年度に底打
ちしてから 4 年連続で上昇が続いている。
・2015 年度の 1 人あたり実質労働生産性上昇率は+0.4%。消費税率引上げによる景気後退で
マイナスとなった前年度(-1.5%/2014 年度)から 1.9%ポイント改善し、2 年ぶりにプラス
となった。
【お問合せ先】
公益財団法人
日本生産性本部
担当:木内
生産性研究センター
TEL.03-3409-1115
日本 生産性 動向
検索
報 告 書 の 本 文 は 、 日FAX.03-5466-7661
本生産性本部・生産性研究センターのホームページ
(http://www.jpc-net.jp/annual_trend/) よりダウンロードしてご覧いただけます。
(レポート p.4~7参照)
日本の時間あたり労働生産性
(就業者1人当たり付加価値額)の現状
JAPAN PRODUCTIVITY CENTER
•
2015年度の日本の時間あたり名目労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)は
4,518円。リーマン・ショックに伴って2008年度に大きく落ち込んだ日本の労働生
産性水準は、その後しばらく停滞基調が続いていたが、2014年度にこれまでの
ピーク水準(4,416円/2007年度)を回復し、2015年度は8年ぶりに過去最高を更
新した。
•
2015年度の時間あたり労働生産性上昇率は+0.9%。就業者の増加が生産性上
昇にマイナスに寄与したが、実質経済成長率(+0.8%)がプラスに転じ、労働者全
体に占める比率上昇が続くパートタイム労働者で労働時間が短くなっていることも
あり、就業者1人あたり上昇率より0.5% ポイント高くなっている。
•
2015年度の上昇率がプラスに転じたのは、0.9%程度の「ゲタ」をはいていたこと
が影響。「ゲタ」とは、比較対象となる前年度に経済環境等が大きく回復して年度
最終四半期の水準が年度平均を上回ったとき、次年度の上昇率がその分だけプ
ラスにかさ上げされる統計上の効果であり、その分を控除すると2015年度の実質
労働生産性上昇率は0%近傍にとどまる。四半期ベースでみても、経済成長率が
伸び悩む中で就業者が増加する状況を背景に、2015年度を通じてほぼ横ばいで
推移している。
図1 日本の時間当たり名目労働生産性の推移
4,600
4,518
4,396
4,393
4,400
4,222
4,212
4,334
4,315
4,290
4,288
4,254
4,416
4,416
4,399
4,314
4,327
4,148
4,200
4,352
4,300
4,366
4,317
JAPAN PRODUCTIVITY CENTER
4,083
4,000
3,800
(単位)
円/時間
1995
年度
1996
年度
1997
年度
1998
年度
1999
年度
2000
年度
2001
年度
2002
年度
2003
年度
2004
年度
2005
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
図2 時間当たり実質労働生産性上昇率の推移
3%
2%
1%
0%
-1%
-2%
-3%
-4%
1995
年度
1996
年度
1997 1998 1999 2000 2001
年度 年度 年度 年度 年度
2002 2003 2004 2005 2006
年度 年度 年度 年度 年度
2007
年度
2008 2009 2010 2011 2012
年度 年度 年度 年度 年度
参考:就業者1人当り実質労働生産性上昇率
2.6%
1.8%
-0.5% -0.5%
1.2%
2.0%
0.6%
2.2%
2.2%
1.3%
1.3%
1.2%
1.3%
-3.3% -0.5%
3.4%
0.7%
1.0%
1.2%
-1.5%
0.4%
0.8%
1.5%
0.4%
0.4%
時間当たり実質労働生産性上昇率
2.4%
2.0%
0.7%
2.2%
1.9%
1.4%
2.4%
1.9%
2.7%
1.4%
1.1%
1.4%
-1.4%
2.7%
0.5%
1.3%
1.4%
-1.2%
0.9%
1.5%
2.0%
1.0%
0.6%
0.8%
1.5%
2013 2014 2015
年度 年度 年度
95~00 00~05 05~10 10~15
年度 年度 年度 年度
図3 実質労働生産性上昇率の推移
(四半期ベース前期比 / 季節調整済値)
4
2
3.2
2.9
3
2.2
2.1
1.0
0.9
0.9
1
0.3
2.0
0.8
1.2
0.4
0.3
3.0
1.5
0.4 0.3 0.6
0.4
-0.2
-0.2
-0.4
-0.3
-2
-0.2
-4
-0.4
-1.0
0.0
-0.2
-1.1
-1.7
-3
(%)
0.2 0.3
-0.1
0
-1
1.3
0.8 0.9
0.5
-0.2
-0.8 -1.1
-1.7
-0.7
-1.0
-1.0
-2.5
-3.1
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
実質労働生産性上昇率(前期比%) -0.2 1.0 -0.2 0.9 -0.4 0.3 -0.3 0.9 2.1 -1.0 0.8 -0.2 2.2 -1.7 0.3 -2.5 -1.1 2.0 -0.4 2.9 -0.2 1.2 0.4 0.4 -1.7 0.0 1.5 0.4 0.3 0.6 -0.2 -0.8 3.2 -1.1 0.5 -1.0 3.0 -3.1 -0.7 0.8 0.9 -0.1 0.2 0.3 -1.0 1.3
年率換算(%)
-0.7 4.1 -0.8 3.5 -1.7 1.2 -1.2 3.8 8.5 -4.0 3.4 -0.8 8.9 -6.6 1.3 -9.8 -4.5 8.4 -1.7 12.1 -0.8 4.9 1.6 1.7 -6.6 -0.1 6.1 1.8 1.3 2.4 -0.8 -3.3 13.6 -4.5 2.2 -4.0 12.4 -11.7 -2.7 3.4 3.6 -0.4 0.7 1.1 -3.9 5.3
※ 内閣府「国民経済計算」、総務省「労働力調査」、厚生労働省「毎月勤労統計」をもとに日本生産性本部が作成。
2009~2016年:GDP速報平成28年4~6月期第2次速報データを利用。労働生産性:付加価値ベースで計測。
(レポート p.1~3参照)
日本の労働生産性
(就業者1人当たり付加価値額)の現状
JAPAN PRODUCTIVITY CENTER
・2015年度の日本の名目労働生産性(就業者1人あたり付加価値額)は
784万円。
・名目ベースでみると、リーマン・ショック後に大きく落ち込んだ後、停滞す
る状況が続いていたものの、2011年度に底打ちしてから4年連続で上昇
が続いている。
・2015年度の労働生産性上昇率は+0.4%。消費税率引上げによる景気
後退でマイナスだった前年度(-1.5%/2014年度)から1.9%ポイント改
善し、2年ぶりのプラスへと回復した。
図4 日本の名目労働生産性の推移
8,500
8,000
JAPAN PRODUCTIVITY CENTER
7,500
7,000
6,500
6,000
1995
年度
1996
年度
1997
年度
1998
年度
1999
年度
2000
年度
2001
年度
2002
年度
2003
年度
2004
年度
2005
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
名目労働生産性水準 7,815
7,923
7,950
7,867
7,848
7,916
7,853
7,883
7,941
7,941
7,939
7,958
7,977
7,650
7,523
7,626
7,551
7,560
7,631
7,698
7,836
(千円)
図5 日本の実質労働生産性上昇率の推移(1995~2015年度)
3%
2%
3.5%
2.6%
2.2% 2.2%
2.0%
1.8%
1.3% 1.3% 1.2%
1.2%
1%
1.3%
0.7%
0.6%
1.6%
1.0% 1.2%
0.4%
0.4%
0%
-1%
-0.6% -0.5%
-0.3%
-0.5%
-2%
-1.5%
-3%
-4%
-3.3%
労働生産性平均上昇率 0.8%
(1995~2015年度/年率平均)
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度
※ 内閣府「国民経済計算」、総務省「労働力調査」、厚生労働省「毎月勤労統計」をもとに日本生産性本部が作成。
2009~2016年:GDP速報平成28年4~6月期第2次速報データを利用。労働生産性:付加価値ベースで計測。
00-04 05-09 10-15
年度 年度 年度
労働生産性と全要素生産性
JAPAN PRODUCTIVITY CENTER
労働生産性とは
→労働者1人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの
output (付加価値額 ま たは 生産量など) 労働生産性 = input (労働投入量 〔労 働者数 または 労働 者数 × 労働時間〕)
として表されます。
※労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したものであり、労働者の
能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善などによって向上します。労働生産性の
向上は、経済成長や経済的な豊かさをもたらす要因とみなされています。
<参考>全要素生産性(Total Factor Productivity / TFP)とは
→一般に工学的な技術革新・規模の経済性・経営の革新・労働能力の向上などで
引き起こされる「広義の技術進歩」を表す指標とされています。
※全要素生産性の上昇は、経済成長や労働生産性向上の源泉となっており、(潜在成
長率を上昇させ)経済成長を今後持続させていく上でも、重要視されるようになってき
ています。
<参考>労働生産性の国際比較について
JAPAN PRODUCTIVITY CENTER
<参考>労働生産性の国際比較2015年版 図表
(図4)OECD加盟諸国の労働生産性
(2014年/34カ国比較)
0
30000
60000
90000
120000
1 ルクセンブルク
126,330
3 アイルランド
118,272
4 米国
日本生産性本部では、1981年より、OECDや
世界銀行、各国統計局などのデータに基づい
8 オランダ
116,817
105,194
6 スイス
103,378
7 フランス
99,680
97,536
9 オーストリア
95,919
10 イタリア
95,551
11 デンマーク
て世界各国の労働生産性の比較を行い、発表
しています。
93,331
12 ドイツ
92,904
13 オーストラリア
91,929
14 スウェーデン
91,742
15 スペイン
90,330
16 フィンランド
88,545
17 カナダ
87,637
18 英国
82,582
19 ギリシャ
80,873
20 アイスランド
80,556
21 日本
今年度は、2016年12月上旬に発表を予定して
います。
0
138,909
2 ノルウェー
5 ベルギー
150000
(図5)OECD加盟諸国の
時間当たり労働生産性
(2014年/34カ国比較)
72,994
20
40
60
92.7
85.6
3 アイルランド
76.2
4 オランダ
67.3
5 ベルギー
66.6
6 米国
66.3
7 フランス
65.1
8 デンマーク
63.7
9 ドイツ
63.4
10 スイス
59.7
11 オーストリア
57.4
12 スウェーデン
57.2
13 スペイン
54.1
14 オーストラリア
53.2
15 フィンランド
52.7
16 カナダ
50.6
17 イタリア
50.1
18 英国
49.6
19 アイスランド
46.4
20 スロベニア
42.1
21 日本
41.3
71,469
22 ニュージーランド
39.4
23 イスラエル
70,500
23 スロバキア
38.2
24 韓国
67,672
24 ポルトガル
37.9
25 スロベニア
67,397
25 イスラエル
37.0
65,609
26 ギリシャ
27 チェコ
64,250
27 チェコ
28 スロバキア
63,251
28 韓国
35.9
35.1
31.9
29 ポーランド
59,605
29 エストニア
30.9
30 ハンガリー
59,441
30 ハンガリー
30.8
31 エストニア
32 トルコ
33 チリ
34 メキシコ
OECD平均
56,654
31 ポーランド
56,299
32 トルコ
33 チリ
51,776
43,003
単位:購買力平価換算USドル
87,155
100
2 ノルウェー
22 ニュージーランド
26 ポルトガル
80
1 ルクセンブルク
34 メキシコ
OECD平均
30.6
29.1
27.1
19.9
単位:購買力平価
換算USドル
48.8