川端康成スタディーズ

◎ 2016 年 12 月刊行
川端康成スタディーズ
21 世紀に読み継ぐために
【目次】
川端研究の新しい広場を作るために▼坂井セシル
○巻頭エッセイ
雪の中で踊るたんぽぽ▼多和田葉子
第 I 部 川端康成のアクチュアリティー
1 川端康成と 21 世紀文学―カノンの効果をめぐって
▼坂井セシル
2 川端康成、コレクションと資料の現在▼川端香男
里
3 川端―日本語と仏教▼ジャン=ノエル・ロベール
[平中悠一/訳]
4 川端と映画―「文学的」と「映画的」の近代▼アー
ロン・ジェロー
近代の文化遺産、KAWABATA を、世界の舞台に再生する。
パリで開催された「川端康成」の国際シンポジウムをもとに、 第 II 部 モダニズム再考―その時代性と実験性
ヨーロッパ・アメリカ・アジアの執筆者が大集結。21 世紀の 1 一九二〇年代のモダニズムと政治―川端、横光の
読者が、20 世紀ノーベル賞作家の川端をどのように解釈、あ 比較から▼スティーブン・ドッド
るいは再解釈してゆけるのか。今世紀以降も読み直し、翻訳 2 東京―浅草の都市空間―「浅草紅団」の未完性▼
や考察を続行してゆく試み。
和田博文
編者
坂井セシル/紅野謙介/十重田裕一/
マイケル・ボーダッシュ/和田博文
3 川端康成における心霊学とモダニズム▼仁平政人
文学・美術・映画、あらゆる分野から巨人を分析し、既成の 4 モダニズムと身体―川端康成『雪国』における旅
批評神話の超越を目指す。
の意味を中心に▼李征
特別寄稿、多和田葉子・四方田犬彦。川端研究史上初、志村 第 III 部 問題としての伝統―言語・身体・ジェンダー
三代子による川端原作映画の紹介事典付。
1 川端康成の文章観・国語観・古典観―『新文章読本』
と文学史の系譜づくり▼鈴木登美
執筆は、坂井セシル/多和田葉子/川端香男里/ジャン=ノ 2 聞こえざる響き―『山の音』におけるナラション
エル・ロベール/平中悠一/アーロン・ジェロー/スティー と撞着法▼ジョルジョ・アミトラーノ[平中悠一/訳]
ブン・ドッド/和田博文/李征/仁平政人/鈴木登美/ジョ 3 川端康成「山の音」と小津安二郎監督『晩春』の
ルジョ・アミトラーノ/田村充正/金井景子/イルメラ・日 詩学における〈日本〉▼田村充正
地谷=キルシュネライト/紅野謙介/十重田裕一/マイケ 4 「初老の男」の想像力―『山の音』のジェンダー編
ル・ボーダッシュ/四方田犬彦/志村三代子/兪在真/黃翠 成▼金井景子
娥/信國奈津子/坂上弘。
5 身体と実験―川端文学における不具者の美学▼イ
ルメラ・日地谷=キルシュネライト
【一九六八年に日本文学史上初めての文学ノーベル賞を受賞
した作家の研究が、没後約 45 年経った現在、国際的な場で再 第 IV 部 文学の政治学
考察されるのはごく自然なことであろう。この再考察は既成 1 「代作」と文学の共同性▼紅野謙介
の文学研究の蓄積をふまえながら、批評方法をさらに批評し 2 占領期日本の検閲と川端康成の創作―「過去」
「生
てゆき、新しい視野を開拓してゆく所に目標がある。大きく 命の樹」「舞姫」を中心に▼十重田裕一
分けて、作家の同時代的で実験的な創作法、つまりモダニズ 3 冷戦時代における日本主義と非同盟の可能性―『美
ムと、日本の伝統的な美学や慣習に修飾を求める表現法、つ しい日本の私』再考察▼マイケル・ボーダッシュ
まり伝統主義の両方を、批評的な神話と捉えて、それらを超
越してゆく観点を編み出してゆくのが、本書のねらいである】 第 V 部 川端康成原作映画へのアプローチ
…序文「川端研究の新しい広場を作るために」より
『伊豆の踊子』映画化の諸相▼四方田犬彦
川端康成原作映画事典▼志村三代子
ISBN978-4-305-70822-9 C0095
予価:本体 3,200 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・312 頁(予)
新刊案内
第 VI 部 世界のなかの川端康成―ヨーロッパ・アメ
リカ・アジアの最新動向紹介
①フランス編 ②ドイツ編 ③アメリカ・イギリス編
④中国編 ⑤韓国編 ⑥台湾編 ⑦日本編 ●参考資料 川端康成略年譜 日本近代文学館・パリ
日本文化会館共催「川端康成と『日本の美』―伝統と
モダニズム」展の記録 執筆者略歴 あとがき
124
[単元構成/配当時間/教材化された万葉歌/教材の
典拠となったテキスト/典拠と教材との異同/脚注の
傾向と問題点/学習の手引き等の傾向と問題点/趣意
書の特色/指導書の構成と問題点/総合所見]
…梶川信行・野口恵子・佐藤織衣・鈴木雅裕・佐藤愛
はじめに/東京書籍『新編国語総合』
(国総 301)/東
京書籍『精選国語総合』
(国総 302)/東京書籍『国語
梶川信行編
総合 古典編』
(国総 304)/三省堂『高等学校 国語総
合 古典編』
(国総 306)/三省堂『精選国語総合』
(国
教科書に書いてあることは、時代遅れ ? 間違いがあるなん 総 307)/三省堂『明解国語総合』
(国総 308)/教育
て !? 記述が昭和の時代から更新されていない、教科書の万葉 出版『国語総合』
(国総 309)/教育出版『新編国語総
集を徹底分析。最新の情報に基づく読み方と、古典が好きに 合 言葉の世界へ』
(国総 310)/大修館書店『国語総合
なる授業方法を提案しつつ、教材の本当の姿と面白さを伝え 古典編』
(国総 312)/大修館書店『精選国語総合』
(国
る、研究者からの熱いメッセージ。中学・高校の先生、先生 総 313)/大修館書店『新編国語総合』
(国総 314)/
を目指す人、
古典愛好家、
必読の書。高校「国語総合」教科書、 数研出版『国語総合 古典編』
(国総 316)/数研出版『高
全 23 種の解剖所見付。上代文学会
等学校 国語総合』
(国総 317)/明治書院『高等学校
監修。執筆は、梶川信行/多田一
国語総合』
(国総 318)/明治書院『精選国語総合 古典編』
臣/菊川恵三/城﨑陽子/永吉寛
(国総 320)/筑摩書房『精選国語総合 古典編』
(国総
行/野口恵子/佐藤織衣/鈴木雅
322)/筑摩書房『国語総合』
(国総 323)/第一学習社
裕/佐藤愛/品田悦一/吉村誠。
『高等学校 新訂国語総合 古典編』
(国総 325)/第一学
習社『高等学校 国語総合』
(国総 326)/第一学習社『高
ISBN978-4-305-70815-1 C0037
等学校 標準国語総合』
(国総 327)/第一学習社『高等
定価:本体 2,500 円(税別)
学校 新編国語総合』
(国総 328)/桐原書店『探求国語
A5 判・並製・カバー装・336 頁
総合 古典編』
(国総 330)/桐原書店『国語総合』
(国
総 331)/「国語総合」における『万葉集』の採択状況
【目次】はじめに…梶川信行
一覧
I 今、なぜ教科書を問うのか
IV 最新の研究で教材を読み解く
国語教育の危機…多田一臣
はじめに―教育政策そのものへの疑念/国語教育の昔と今/ 忘却された起源―憶良の歌が定番教材となったわけ…
品田悦一
古典を学ぶこととは/教科書の中の『万葉集』/おわりに
はじめに―問題のありかを見失わないために/最近の
古すぎる教科書の万葉観…梶川信行
はじめに―『万葉集』はどのように教えられるべきか/「国 指導書/明治の文学史書/昭和戦前・戦中期の国語読
語総合」の教科書/教材化された万葉歌/古典を学ぶ目的と 本/おわりに/資料 1 明治期刊行日本文学史書/資料
意義/秀歌選のパッチワーク/古い常識に基づく記述など/ 2 昭和戦前戦中期中学校用国語読本
宴席のコミュニケーション術―大伴坂上郎女の「姫百
おわりに
合」歌を例として…野口恵子
II 問題のありかを探る
はじめに―生徒の興味を引き出すために/教材化され
小・中学校教科書と万葉集…菊川恵三
はじめに―小学校教科書に登場した古典教材と、中学校古典 た「姫百合」歌/「姫百合」歌の研究史/「姫百合」
教材との違い/小学校国語教科書の和歌/中学校国語教科書 歌の表現構造/宴席歌としての「姫百合」歌/表現技
と万葉歌/「韻文から散文」
、
「散文から韻文」/おわりに― 巧を考えるための教材
明快な「読み」のない歌―大伴家持「春愁歌」…吉村
活動を通した和歌学習
誠
高等学校国語における古典教育の実態と諸問題…城﨑陽子
はじめに―高等学校国語教員へのアンケート調査実施/調査 はじめに―最新の研究成果をどのように生かすか/新
学習指導要領を基盤とした古文の授業展開/『万葉集』
結果と考察/おわりに―古典教育の現状と打開
研究の目標/大伴家持の「春愁歌」/教材としての「春
「手引き」から考える万葉集学習の特性…永吉寛行
はじめに―学習指導要領の求める目的は実現可能か/音読に 愁歌」/おわりに
ついて/「心情を表現に即して読み味わう」こと/「ものの 『古事記』倭建命―読み換えられる《悲劇の英雄》…
見方、感じ方、考え方を豊かにする」こと/「比較読み」に 鈴木雅裕
ついて/創作活動との関わり/おわりに―生徒達の万葉歌理 はじめに―教材『古事記』の大半は倭建命の物語/教
科書『古事記』の基礎調査/「伝承」という枠組み/
解のために/参考各教科書会社の「手引き」
倭建命の人物像/教科書が生み出す新たな倭建命
万葉歌から何を学ばせるか…梶川信行
はじめに―教科書の万葉観と現在の研究水準の乖離/時代に V こう教えたい『万葉集』―新たな教材の提案…梶
即した学習に向けて/万葉歌から何を学ばせるか/古典教育 川信行
はじめに―教材の提案/音読する『万葉集』―「国語
の未来に向けて
総合」/東アジアの中の『万葉集』―「古典 B」
III 高校「国語総合」の教科書、全二十三種を徹底解剖
万葉集歌索引 あとがき…梶川信行
◎ 2016 年 11 月刊行
おかしいぞ ! 国語教科書
古すぎる万葉集の読み方
125
新刊案内
◎ 2016 年 12 月刊行
萬葉集訓読の資料と方法
池原陽斉
寺本の形態/西本願寺本の漢字使用率/おわりに 第
三章 赤人集三系統の先後関係―萬葉集巻十抄本の変
遷史― はじめに/書陵部本増補歌群の性格/西本願
寺本の脱落歌/長歌の改変/「詞書」の残存状況/お
わりに 補説 赤人集と古今和歌六帖―十世紀後半の
萬葉歌の利用をめぐって― はじめに/作者名に関す
る検証/本文異同に関する検証/おわりに/附録 萬
葉集巻十および赤人集三系統対校表
第二部 萬葉集の訓読と本文校訂
第一章 赤人集による萬葉集本文校訂の可能性 はじ
めに/萬葉集本文校訂における赤人集の有用性/本文
校訂の可能性/一八九〇番歌の「犬」と「友」/おわ
仮名作品とは異なり、漢字文献である『萬葉集』を読む際に りに 第二章 萬葉集の本文校訂と古今和歌六帖の本
は「訓読」の工程を抜きにすることはできない。
文異同―佐竹昭広説の追認と再考― はじめに/誤写
資料として、10 世紀後半成立の『赤人集』をとりあげ、従来 説の妥当性/佐竹説の再検証/写本系六帖による誤写
いわれていた萬葉集との享受関係だけでなく、本文校訂や訓 説の再建/おわりに 第三章 「御名部皇女奉和御歌」
読面でも活用できることを実証。
本文異同存疑―諸伝本の字形の傾向から― はじめに
『古今和歌六帖』も視野に入れ、平安朝仮名文献活用の端緒 /先行研究瞥見/次点本の書写年代から/写本におけ
を開く。
る字形の傾向①―廣瀬本・紀州本の場合/写本におけ
「訓む」ために本文を校訂し、
本文の校訂が「訓み」を変える。 る字形の傾向②―元暦校本・類聚古集の場合/おわ
2 つの連動を実践し、萬葉集の真の姿に切り込む!
りに 第四章 類聚古集と廣瀨本の関係―共通する缺
陥本文をめぐって― はじめに/類聚古集と廣瀨本の
【本書では『萬葉集』の訓読を研究対象とする。その訓読の 接点/共通する脱字の例/改字、衍字の例/類聚古集
精度をあげるためには、厳密な本文校訂が缺かせない。同時 と廣瀨本の接点をめぐる問題点/おわりに 第五章 に、どのように訓読するかを念頭におかないで本文校訂をな 「雪驪朝楽毛」の本文校訂と訓読―次点本の本文が対立
すことはできないだろう。そして本文校訂と訓読の成果を少 する場合の一方法― はじめに/結句「朝楽毛」の検
しでも堅牢なものにするためには、伝本や校勘資料の検証が 証/第四句の字義と附訓の検証/改字説の検討と伝本
不可缺である。
の関連性/「雪驢」による訓読と解釈/おわりに
本書の内容は、右の研究手法のすべてにおよんでいる。その
うえで、書名に「訓読」を選択した理由はなにかと問われれ 第三部 萬葉集訓読の方法
ば、「本文研究・本文校訂の目的は、その作品を精確に読む 第一章 「戯嗤僧歌」の訓読と解釈―「馬繋」と「半甘」
ためにあるから」ということになろう。 平安時代の仮名作品 を中心に― はじめに/表記法と訓読の原則/ハニカ
とは異なり、
『萬葉集』を読む際には「訓読」という工程が ムの語釈/格助詞ニの省略と「馬繋」の語義/おわり
缺かせない。
『萬葉集』には「読む」ことと連動して「訓む」 に 第二章 「献新田部皇子歌」訓読試論―「茂座」借
ための研究が必要ということであり、本書はその研究領域に 訓説をめぐって― はじめに/先行研究瞥見/借訓説
少しでも寄与すべくまとめたものである。本書が小さな橋頭 の再検証/正訓字の可能性/シクの傾向/おわりに
堡となることができれば、
これに過ぎたる喜びはない。】…「序 第三章 「籠毛與 美籠母乳」の訓読再考―注釈史の対
論 本書の目的と構成」より
立を読み直す― はじめに/次点本古訓の様相/韻律
精確な読みで原典の姿に迫る。
論の注釈史/韻律論の再検討/カタマの語義と「籠」
との対応/コとカタマの優劣/おわりに 第四章 萬
葉集の「風流士」―字訓史との関係から― はじめに
/ミヤビ=風流説への懐疑/遊仙窟古訓の再検討/上
代におけるミヤビの語義/変字法の再検討/おわりに
【目次】凡例 第五章 「みやび」と「風流」の間隙―萬葉集と伊勢物
序論 本書の目的と構成 はじめに/古典本文研究のなかの 語の非連続性― はじめに/「字訓史」による通説の
萬葉集/仮名文献活用の意図と意義/萬葉集研究からみた赤 再検討/古今集真名序の「雅情」/平安時代前中期の
人集の位置/本書の構成/おわりに
「風流」と「いちはやきみやび」/能宣集のミヤブと
アテブ/「いちはやきみやび」再考/おわりに
第一部 萬葉集抄本としてみた赤人集
結論 本書のまとめと展望
第一章 萬葉集伝来史上における赤人集の位置 はじめに/ はじめに/平安朝文献の活用で拓けるもの/貫之と萬
排列と脱落歌をめぐって/次点本訓との関連性/萬葉歌の異 葉集の研究史概観/新撰和歌の萬葉歌―引用と改作の
同から/萬葉伝来史における赤人集の位置づけ/おわりに 問題/おわりに
第二章 西本願寺本赤人集の成立―萬葉集巻十抄本からの展 初出一覧 あとがき
開を中心に― はじめに/赤人集三系統の共通本文/西本願 索引(人名・書名・歌番号)
ISBN978-4-305-70821-2 C0092
定価:本体 11,000 円
A5 判・上製・カバー装・408 頁
新刊案内
126
□シリーズ一覧 ◎ 2016 年 12 月刊行
中世王朝物語全集 5
石清水物語
(全 22 巻+別巻 1)
●=既刊 ◎=未刊
三角洋一校訂・訳注
第 15 回配本。
源氏物語以後、院政期から鎌倉時代にかけて生み出され、今
に伝わる王朝物語全集。
原文・現代語訳 2 段組構成。
待望のシリーズ最新刊!
【編集委員】市古貞次・稲賀敬二・今井源衛・大槻修・鈴木一雄・
樋口芳麻呂・三角洋一
武家の伊予守が主人公の異色作。上下二巻から成る中編。成
立は後嵯峨院時代とされる(在位 1243 〜 46、院政〜 72)。
父大臣に知られず、常陸国で生まれ育ったヒロイン木幡の姫
君は、兄妹とは知らぬ秋の君の接近、後見役の伊予守との密
通、入内取り止め、老人の中務宮との結婚、帝による略奪と
いう曲折を経て女御にまで昇り、伊予守は出家する。
男主人公の側から見れば悲恋遁世談で、女主人公の側からい
うと女の出世を描いた物語。
【構成】
本文・現代語訳・注・梗概・年立・人物系図・人物一覧・校
訂付記・解題
(梗概・年立・人物系図・人物一覧担当:井 真弓)
底本には『鎌倉時代物語集成』第二巻を使用。同書は射和文
庫本を底本とし、内閣文庫本を部分的に対校している。
01 ●あきぎり・浅茅が露 本体 4600 円 ISBN978-4-305-40081-9
02 ●海人の刈藻 本体 3689 円(在庫僅少) ISBN978-4-305-40082-6
03 ◎有明の別
04 ◎いはでしのぶ
05 ●石清水物語 本体 5000 円 ISBN978-4-305-40085-7
06 ●木幡の時雨/風につれなき 本体 4000 円
ISBN978-4-305-40086-4
07 ●苔の衣 本体 4660 円(在庫僅少) ISBN978-4-305-40087-1
08 ●恋路ゆかしき大将/山路の露 本体 4700 円(在
庫僅少) ISBN978-4-305-40088-8
09 ●小夜衣 本体 4000 円 ISBN978-4-305-40089-5
10 ●しのびね/しら露 本体 4400 円 ISBN978-4-305-40090-1
11 ●雫ににごる/住吉物語 本体 3592 円 ISBN978-4-305-40091-8
12 ●とりかへばや 本体 4900 円 ISBN978-4-305-40092-5
13 ◎八重葎/別本八重葎
14 ◎兵部卿宮/松浦宮物語/雲隠六帖
15 ●風に紅葉/むぐら 本体 4000 円 ISBN978-4-305-40095-6
16 ●松陰中納言 本体 4800 円 ISBN978-4-305-40096-3
17 ◎夢の通ひ路物語(上)
18 ◎夢の通ひ路物語(下)
19 ●夜寝覚物語 本体 6800 円
ISBN978-4-305-40099-4
20 ●我が身にたどる姫君(上) 本体 4500 円(重版出
来) ISBN978-4-305-40100-7
21 ●我が身にたどる姫君(下) 本体 4500 円(在庫僅
少) ISBN978-4-305-40101-4
22 ◎物語絵巻集[藤の衣物語絵巻・下燃物語絵巻・豊
明絵巻・なよ竹物語絵巻・掃墨物語絵巻・葉月
物語絵巻]
23 ◎別巻
「中世王朝物語全集(全 22 巻 + 別巻 1)パンフレット」
web で公開中です。
http://kasamashoin.jp/2009/03/221pdf.html
ISBN978-4-305-40085-7 C3393
定価:本体 5,000 円(税別)
A5 判・上製・函入・316 頁
127
新刊案内
◎ 2016 年 12 月刊行予定
源氏物語の政治学
史実・准拠・歴史物語
高橋麻織
「歴史」を踏まえて『源氏物語』を読む—。『源氏物語』准
拠論の従来の問題点を乗り越えるべく、果敢に新たな方法を
提示。歴史史料の調査による史実、中世の『源氏物語』研究
の成果、歴史物語の叙述を踏まえつつ、
『源氏物語』の歴史
性—物語に描かれる政治世界—を解明する野心作。
【平安時代の文化・制度・政治・習慣などを理解することで、
『源
氏物語』の政治世界を明らかにし、恋愛物語としての一面だ
けでない『源氏物語』の魅力に迫る。そして、史実そのもの
だけでなく、
『源氏物語』と歴史物語との間に、創造された〈歴
史〉を介在させることで、
『源氏物語』の歴史性を改めて問
い直してみたい。
】
「はじめに」より
ISBN978-4-305-70819-9 C0093 定価:本体 8,500 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・416 頁
【目次】はじめに/凡例
序章 『源氏物語』准拠論の可能性―物語の政治世界を読み解
く― 一 『源氏物語』と「日本紀」―物語と歴史―/二 准
拠説の成立と展開/三 准拠論の可能性―「作者の方法」と「読
者の方法」―/四 書名と本書の構成
第Ⅰ部 光源氏の政治―〈家〉の形成と王権―
第一章 冷泉帝の元服―摂政設置と后妃入内から― 一 問
題の所在/二 史実の検証―醍醐天皇と一条天皇の事例―/
三 光源氏と致仕大臣家―弘徽殿女御の入内/四 光源氏と
兵部卿宮家―王女御入内の阻止―/五 結語
第二章 光源氏の摂政辞退―物語における摂関職― 一 問
題の所在/二 「摂政したまふ」の語義/三 『源氏物語』にお
ける摂関職/四 歴史上の摂政と物語における摂政/五 光
源氏にとっての摂政/六 結語
第三章 明石姫君の袴着―腰結の役をめぐって― 一 問題
の所在/二 物語における袴着の描写/三 歴史史料に見る
袴着/四 紫の上が「腰結の役」をつとめる意味/五 結語
第四章 冷泉帝主催の七夜の産養 一 問題の所在/二 平
安時代における産養の主催者/三 冷泉帝による産養の物語
意義/四 『うつほ物語』における東宮妃出産時の産養/五 結語―『源氏物語』から『栄花物語』へ―
第Ⅱ部 桐壺院の政治―後宮運営と皇位継承―
第五章 光源氏立太子の可能性―桐壺更衣の女御昇格― 一
問題の所在/二 平安時代中期の立太子/三 更衣から女
御への昇格/四 桐壺帝による桐壺更衣の処遇/五 結語
第六章 藤壺の宮の立后―藤原遵子との比較から― 一 問
題の所在/二 藤壺の宮立后の特異性/三 円融朝における
藤原遵子の立后/四 后位の問題と後宮の変遷/五 『栄花物
語』における円融朝の後宮/六 もうひとりの后妃尊子内親王
第七章 桐壺院の〈院政〉確立―後三条朝の史実から― 一 問題の所在/二 院政前史としての後三条朝/三 桐壺帝の
新刊案内
政治―後宮と皇位継承の問題から―/四 『源氏物語』
における〈院政〉の意味―桐壺院から光源氏へ―/五
結語
第八章 殿舎「桐壺」に住まう后妃の形象―桐壺更衣
から明石女御へ― 一 問題の所在/二 本文に見え
る殿舎としての「桐壺」/三 〈桐〉と〈鳳凰〉の故事
/四 結語―桐壺更衣から明石女御へ― 第Ⅲ部 大臣家の政治―後宮政策と摂関政治―
第九章 弘徽殿大后の政治的機能―朱雀朝の「母后」
と「妻后」― 一 問題の所在/二 史実の母后と弘
徽殿大后―藤原詮子の例から―/三 弘徽殿大后によ
る朧月夜の後見/四 弘徽殿大后の政治戦略―朱雀帝
の母として、右大臣家の娘として―/五 朱雀朝の「母
后」と「妻后」―朧月夜の后位への道― 六 結語
―『源氏物語』に描かれる摂関政治―
第十章 左大臣家の後宮政策―冷泉朝における立后争
い― 一 問題の所在 二 弘徽殿女御の入内 三 冷泉朝の立后争い―所生皇子の不在― 四 「素
腹の后」遵子と秋好中宮に対する批判 五 左大臣
家の入内・立后志向 六 結語
第十一章 匂宮への皇位継承の可能性―夕霧大臣家と
明石中宮― 一 問題の所在/二 平安時代の史実か
ら―為平親王の例―/三 据え直される匂宮/四 中
の君と若君の社会的立場/五 もうひとりの皇位継承
候補者―冷泉院の皇子―/六 ふたつの対立構図―冷
泉院と八の宮、夕霧と薫―/七 結語
第十二章 物語作品における中央政治―諸寮の様相―
一 はじめに/二 大舎人寮/三 図書寮/四 内
蔵寮/五 縫殿寮/六 内匠寮/七 雅楽寮/八 玄
蕃寮/九 諸陵寮/一〇 主計寮/一一 主税寮/
一二 木工寮/一三 左・右馬寮/一四 兵庫寮/
一五 結語
第Ⅳ部 『源氏物語』から歴史物語へ―〈歴史〉の創造
―
第十三章 『栄花物語』円融朝の立后争い 一 問題の
所在/二 円融朝の立后問題と皇位継承/三 遵子立
后に関わる円融天皇の意思/四 円融天皇と関白頼忠
/五 兼通・兼家兄弟の不和と摂関職/六 結語
第十四章 『大鏡』の歴史認識―「すゑのよの源氏のさ
かえ」― 一 問題の所在/二 先行研究と「源氏の
栄え」―道長の妻、源倫子と源明子―/三 「藤氏の栄
え」の意味するところ/四 禎子内親王の位置づけ/
五 「すゑのよの源氏のさかえ」/六 結語
第十五章 歴史物語における「源氏」の位相―創造さ
れる〈歴史〉― 一 はじめに/二 『栄花物語』にお
ける後三条天皇と源基子/三 『大鏡』に描かれる安和
の変と「源氏」
第十六章 「帝の御妻をも過つたぐひ」―后妃密通とい
う話型― 一 はじめに/二 「帝の御妻をも過つたぐ
ひ」/三 歴史物語に描かれる「后妃の密通」/四 「后
妃の密通」と皇統断絶
終章 『源氏物語』と史実・准拠・歴史物語―今後の展
望―
初出一覧/あとがき 平安京内裏図/天皇・源氏系図
/藤原氏系図/『源氏物語』人物系図 索引
128
和歌の新しさ/閉塞感の背景/俊頼の試み/古い方法
の新しい可能性/俊成の試み/伝統に繋がる 3 西行という巨人―詩魂の系譜▼宇津木言行
和歌の新しい領域/西行独自の語の採集/ことばの多
様性をひらく/音韻への関心/西行から芭蕉へ
第 3 章◉和歌の広がりをどう見ていくのか
[和歌はあらゆるところに生きている。日本文化を、
奥深くから、ゆたかに築き上げてきたのが和歌である。
図像、庭園、占い、景観、飲食をとりあげてみた。和
歌の広がりにきっと読者は驚くだろう。]
1 [図像] 和歌をめぐる図像―密教化する秘説の視
覚性▼松本郁代 錦 仁 編・和歌文学会監修
はじめに―秘説による図像化とは/「いなおほせとり」
『万葉集』から今日まで約一三〇〇年、日本人は三一文字の とは何者か?/羽のある人物は誰か/密教における図
歌を止めようとしない。この短い表現形式を愛して止まない 像/おわりに のはなぜか。
2 [庭園] 六義園から歌を見る―日本文化の力▼島
もっともっとみんなで歌について語り合うために、知ってお
内景二 きたいことを「和歌はどう日本を作ってきたのか」「和歌の 空間芸術を目指した和歌/六義園の遊芸門と久護山/
伝統はどう創られてきたのか」
「和歌の広がりをどう見てい 武蔵野のど真ん中の大海原/新玉松という和歌の聖地
くのか」
「短歌を詠んで生きるとは」という全 4 章で案内する。 /正しく生きるとは/楽しく生きるとは/人は、なぜ
私たちのまだ知り得ないものが、歌にはたくさん隠されてい 生きるのか/古代から現代まで/日本と中国と天竺/
ます。執筆は、浅見和彦/宇津木言行/奥村晃作/佐藤通雅 和歌は、異文化と調和する/和歌・短歌の生命力/和
/島内景二/田宮朋子/中村 文/錦 仁/原田信男/平 歌、そして『源氏物語』の力を信じる 3 [占い]
神が降りる、神と遊ぶ―歌占の世界▼平
野多恵/松坂 弘/松本郁代/渡部泰明/渡邉裕美子。
野多恵 ISBN978-4-305-70824-3 C0095
おみくじ/神のお告げ/巫女の神がかり/謡曲「歌占」
予価:本体 1,900 円(税別)
/神おろしの歌/時代を映す鏡 四六判・並製・カバー装・272 頁
4 [景観] 歌枕の危機―姨捨山と余呉の海▼浅見和
彦 姨捨山/余呉の海 【目次】
5 [飲食] 飲食は和歌や短歌にどう詠われてきたか
はじめに―本書を手にする方へ
▼原田信男 歌は時代を超えて/構成と内容
はじめに―飲食の位置/和歌における飲食―古代・中
第 1 章◉和歌はどう日本を作ってきたのか
世・近世/近代短歌のなかの食―文学の一角を占めて
[和歌は、神世の昔に始まるという。かたちはそのままに短歌 /現代短歌のなかの食―人間行動の表現として
として今に続く。歴史を超えて生き続ける和歌によって、ど 第 4 章◉短歌を詠んで生きるとは
のような国を作り上げようとしたのか。
]
[現代の歌人は、なぜ短歌を作るのか。何を見つめて、
1 後鳥羽院の野心―和歌の帝国▼渡邉裕美子
どのように表現するのか。和歌を研究する人は、古典
京都白川の今昔/後鳥羽院の最勝四天王院/最勝四天王院の 歌人の「心」を見つめ、表現を味わう。それなら現代
完成まで/歌と名所絵/最勝四天王院の内部空間/歌の役割 歌人の「心」は、どうか。垣根を越えて出会えるので
/野心の結末
はないか。
]
2 歌枕と名所―和歌に包まれた国▼錦 仁 1 私の短歌作法▼松坂 弘
歌枕を見て参れ/歌合と名所/『古今集』の仮名序/和歌に 体験の一例/「詠む」のか「書く」のか/「説明」
「記
包まれた国/「浮島」は実在するという論理/同じ名所が複 録」「伝達」/初心を忘れない/歌会への出席の薦め
数ある/歌枕は共有し分有される/和歌の力
2 何を選び、何をうたうか▼田宮朋子
第 2 章◉和歌の伝統はどう創られてきたのか
何をうたうか/
[平安時代の歌人たちは『古今集』を仰ぐべき古典として詠 3 「ただごと歌」を創る▼奥村晃作
歌に励んだ。その古典たるゆえんを明らかにし、和歌の流れ 蘆庵の「ただごと歌」/私の短歌観
を明らかにする。平安和歌から中世和歌への歩みが見えてく 4 私の短歌―震災以後▼佐藤通雅
るように。]
ことばの壊滅、その後/
1 君に語る『古今集』―大人の美学▼渡部泰明 あとがきにかえて―優美な和歌の陰に
『古今集』は大人の歌集/見立てという技法/比喩と見立て 和歌の歴史/和歌は優美/和歌の政治性/和歌イコー
の違い/演技としての見立て/「うつせみの世」の歌/詠み ル日本/和歌に隠されたもの
手にとっての見立て/無私の心 2 源俊頼から藤原俊成・定家へ▼中村 文 ◉執筆者一覧
◎ 2016 年 12 月刊行
日本人はなぜ、
五七五七七の歌を
愛してきたのか
129
新刊案内
◎ 2016 年 12 月刊行予定
アプリで学ぶくずし字
くずし字支援学習アプリ KuLA の使い方
(仮)
飯倉洋一編
【目次】
はじめに
──くずし字は絶対に読めるようになる!
1 アプリでくずし字学習をはじめよう!
❶このアプリで何ができるのか?
❷アプリマニュアル
○ダウンロードしてみよう
○機能を使ってみよう ─ まなぶ・テスト
○機能を使ってみよう ─ よむ
○機能を使ってみよう ─ つながる
❸「よむ」資料『しん板なぞなぞ双六』の注釈
2 オンライン座談会
刀剣ゲームファンが KuLA でくずし字を学ぶ!
3 アプリ活用法&くずし字を学ぶということ
❶わたしはアプリでこう教える・学ぶ
くずし字アプリの授業活用
【 く ず し 字 学 習 支 援 ア プ リ "KuLA"(Kuzushi-ji Learning /合山林太郎(慶應義塾大学)
Application)へようこそ。
くずし字アプリでの学習実践
日本の古典籍を読みたいという人、くずし字を学びたいと /南清恵(ホノルル美術館)
いう人は、世界中にいます。しかし、「どうやって学べばい
いの?」という人も多いのではないでしょうか。"KuLA" は、 ❷くずし字で広がる知の世界
スマートフォンやタブレットで、くずし字を手軽に学べるア 古地震学とくずし字解読
プリです。
/加納靖之(京都大学防災研究所)
"KuLA" を使えば、私たちが知っている今の字体とは違う 文字を書く壁
書き方をする変体仮名と、古典籍によく出てくる主要な漢字 /ロバート・キャンベル(東京大学)
のくずし字を楽しく勉強することができます。実際の習得度 変体仮名のコード化
をテストし、力試しに古典籍を読んでみることもできます。 /矢田勉(東京大学)
"KuLA" を使って、少しでも多くの人が、日本の古典籍に くずし字アプリケーションの目指すべき未来
親しんでいただけたら幸いです。さあ、早速はじめましょう! /金時徳(ソウル大学奎章閣韓国学研究院)
監修者 飯倉洋一(大阪大学)】…「はじめに──くずし字
は絶対に読めるようになる!」より
❸海外のくずし字学習事情
ケンブリッジ大学のくずし字教育
執筆は、飯倉洋一/合山林太郎/南清恵/加納靖之/ロバー /ラウラ・モレッティ(ケンブリッジ大学)
ト・キャンベル/矢田勉/金時徳/ラウラ・モレッティ/山 山邊進(二松学舎大学)
邊進/ユーディット・アロカイ/橋本雄太。
ハイデルベルク大学のくずし字教育
/ユーディット・アロカイ(ハイデルベルク大学)
4 独学でくずし字学習を続けるために
❶変体仮名一覧
❷主要くずし字一覧
❸くずし字学習参考書一覧
ISBN978-4-305-70826-7 C0091
定価:本体 800 円(税別・予価)
A5 判・並製・80 頁(予定)
・フルカラー
新刊案内
アプリ開発裏話
KuLA の誕生/飯倉洋一(大阪大学)
くずし字学習支援アプリ KuLA 開発のポイント
/橋本雄太(京都大学大学院)
執筆者&スタッフ一覧
130
◎ 2016 年 11 月刊行
【目次】
能・狂言の誕生
はじめに
Ⅰ 能・狂言研究史
1 誕生の過程が分かっていない能
Ⅱ 日本の中世文化
2 東アジア社会と連動した中世文化
諏訪春雄
Ⅲ 大陸芸能と能・狂言
3 能と追儺
能・狂言の誕生の秘密を解明する。中世に誕生した能や狂言は
4 能面と大陸仮面
その発生過程が未だあきらかになっていない―。
5 能・狂言・複式夢幻能
江戸文化が鎖国のなかで醸成され、人形浄瑠璃他、日本固有の
6 五から三へ
芸能を編み出したが、能・狂言は芸能大陸文化の影響を考える
7 猿楽の身分
ことなしに、その本質を見極めることはできない。
Ⅳ 能の誕生
明治以来、能楽の研究は日本各分野の芸能史研究と比較しても
8 能の誕生と誕生地
突出しているが、かなめの能の誕生を解明できなかったのは、
9 曲舞と能
中国大陸芸能の影響という視点が能楽研究の先達たちに欠けて
10 観世座の能楽界制覇
いたからである。大陸へのアプローチから本書は展開していく。
Ⅴ 日本文化の象徴
世阿弥の芸道論「申楽談義」に 1374 年、京都・今熊野で初めて
11 日本文化の象徴としての能・狂言
観阿弥・世阿弥父子が「申楽」を演じたとの記述があることに
注目し、そこに記されている今熊野が新熊野神社であることを
主要参考文献 あとがき
検証する。その演目もじつは解明できていなかった、
「幻の猿楽
(能)
」といわれる由縁である。
最近の研究で観阿弥が制作していた唯一の原作がそのままの状
態で残っていることが判明し、それこそが「白髭の曲舞」
(しら
ISBN978-4-305-70820-5 C0093
ひげのくせまい)だったことを実証する。能・狂言が誕生した 定価 : 本体 3,500 円(税別)
歴史的瞬間はここにあったのである。
A5 判・上製・カバー装・302 頁
◎ 2016 年 12 月刊行予定
漱石における
〈文学の力〉
とは
梅光学院大学公開講座論集 64
佐藤泰正編
矛盾に満ちた人生をいかに生き抜くか──
それは人間の確たる意識の力によって生きる覚悟。
生の矛盾を最後まで問い続けた漱石の〈文学の力〉とは。
ISBN978-4-305-60265-7 C0395
定価:本体 1,600 円(税別)
四六判・並製・カバー装・212 頁
131
【目次】
漱石の遺した〈文学の力〉とは何か
●小森陽一
近代資本主義の中の『こころ』
●石原千晶
夏目漱石『明暗』──イニシエーションの文学
●姜尚中
『文学論』の再帰性
●神山睦美
漱石とドストエフスキー
──死と病者の光学をめぐって──
●清水孝純
『草枕』と『夢十夜』──漱石の実験──
●石井和夫
漱石文芸の哲学的基礎
──則天去私の文学の道へ──
●望月俊孝
文学のリアリティは何によって保証されるか
──ゼロ地点と「先生の遺書」──
●中野新治
『こゝろ』の不思議とその構造
●浅野 洋
漱石における〈文学の力〉とは何か
──その全作品を貫通するものをめぐって
●佐藤泰正
新刊案内
◎ 2016 年 12 月刊行予定
平家公達草紙
【目次】
へいけきんだちぞうし
『平家物語』読者が創った美しき貴公子たちの物語
作品への招待
〜読者の願望が生んだもう一つの『平家物語』〜
巻頭カラー◆掌編『平家公達草紙』
Ⅰ『平家公達草紙』を読む
[影印・翻刻・コラム/補注/現代語訳]
櫻井陽子・鈴木裕子・渡邉裕美子
本書の読み方(凡例)
一、華麗なる一門
『平家物語』に満足できないなら
自分たちで書けばいいじゃない?
『平家物語』の登場人物を借り、鎌倉時代の読者が創った、
美しき御曹司たちが織りなす逸話集『平家公達草紙』。
公達への夢と憧れの詰まった、二次創作の元祖!
[1]平重盛─凛々しい大将
[2]平維盛─華やかな舞姿
[3]平重衡─陽気な悪ふざけ
[4]美しき小松家の人々
◆補注
◆現代語訳
二、平家の光と影
[1]おしゃれ合戦
[2]紅葉に遊ぶ
【
(
『平家物語』に対して、後世の読者たちは)こうあったらい [3]不吉なわざうた
いのに、という希望もあります。それらが書かれたものがな [4]追憶の建春門院
いのなら、
自分たちで書けばいいのです(中略)それがこの『平 [5]重衡と恋人たち
家公達草紙』です。現代で言えば、夢見る歴女が戦国武将や [6]東北院の思い出
幕末の志士に憧れてイケメン像を作り上げることと、一脈通 ◆補注
じるかもしれません。鎌倉時代のお嬢様やその周辺の人々が、 ◆現代語訳
『建礼門院右京大夫集』や『平家物語』の中から、特に好き
な男性のキャラクターに、自分たちの願望や憧れを籠めて、 三、恋のかたち
様々な手法を使って、平家公達の横顔を二次創作していきま
[1]恋のさやあて─維盛と隆房
した。
】…「作品への招待」より
[2]神出鬼没の隆房
[3]雪の日のかいま見
本書の特色
◆補注
❶全話の内容をストーリー仕立てでわかりやすく紹介!
◆現代語訳
❷現存する三系統の影印・翻刻・注・現代語訳を掲載!
❸本文の読解を助ける補注とコラムを豊富に収録
❹資料編には系図・書誌・人名一覧・人名索引を収録
❺『平家公達草紙』の下地『安元御賀記』翻刻を初紹介
Ⅱ 資料編
系図
人名一覧
書誌
『安元御賀記』翻刻
参考文献
人名索引
編集後記
ISBN978-4-305-70825-0 C0093
定価:本体 1,900 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・256 頁(予定)
新刊案内
132
◎ 2016 年 9 月刊行
【目次】
凡例
序論
一 本書の目的/二 「神代」の発想/三 本書の概要
I 「神代」の神―ムスヒ(ビ)
・オホアナムチ・スクナ
ヒコナ・オホヤマツミ―
第一章 ムスヒ神・ムスビ神研究の課題
一 研究史の整理/二 研究の角度
第二章 ムスヒ神・ムスビ神
一 はじめに/二 従来説/三 「神魂命」訓の試み/
森 陽香
四 まとめ
第三章 カムムスヒ・カムムスビの資性
一 はじめに/二 『古事記』の神産巣日神/三 『出
雲国風土記』の神魂命/四 「国造本紀」のカムムスヒ・
カムムスビ/五 おわりに―カムムスヒ・カムムスビ
の資性―
文芸・文学が生み出され、
伝承されてきた源には「神」がいる。 第四章 『古事記』と『日本書紀』のスクナヒコナ神話
古代の日本人は、生の根拠や規範を神々に求めた。その信仰 一 はじめに/二 問題の所在/三 『古事記』と「神
と伝承は、人々の心にどのように生まれ、成長し、文献上で 代紀」当該一書と/四 小括
確立されたのか。
第五章 『古事記』スクナヒコナ神話の成立―「つくる」
古事記・日本書紀・出雲国風土記・播磨国風土記・万葉集等 と「かたむ」と―
の諸作品を横断し、古代的心性のありようを明らかにする。 一 はじめに/二 「作」と「堅」と/三 スクナヒコ
自らの思いを、初めて文献に書き留めることに成功した古代 ナの「国かため」
人の精神に、文学的な方法と立場から迫る書。
第六章 石立たす司(かみ)―スクナミカミと常世の
酒と―
【折口信夫、池田彌三郎は、自らの学を、
「文学における日本 一 はじめに/二 スクナミカミと常世の酒と/三 民族の性格の偏向を対象として研究」するものであると述べ スクナミカミをまつる場
ている ...(略)... 本書は、その「日本民族の性格の偏向」を 第七章 オホヤマツミ考
考察するための核心的な課題として、「古代日本人の神意識」 一 はじめに―池田彌三郎「海神山神論」
「海神山神論
という問いを立てたものであり、従って全体をとおして、
『古 の計画」および「芸能・演劇胎生の場」―/二 本論
事記』・『日本書紀』
・諸国『風土記』等特定の文献の作品的 の視点/三 山の神としてのオホヤマツミ/四 性別
性格や、個々の編纂者あるいは作者の意図といった問題を論 の問題/五 海の神へ/六 おわりに
じることよりも、神あるいは霊魂に対する古代的な心性の実 II 地方の神と天皇―『播磨国風土記』研究―
相に、目をとめることを心がけた。優れた表現者がたった一 第一章 『播磨国風土記』の校訂を考える―揖保郡林田
度きり見つけ出した文学的感動の記録ではなく、「日本民族」 里条を中心に―
全体の心のありようを研究しようとする以上、個々の作品論・ 一 はじめに/二 揖保郡林田里条について/三 ま
形成論に学びながらも、諸文献を横断して注意すべき特徴を とめ
抽出し、日本の各地に生きた多くの無名の人々の、実生活の 第二章 『播磨国風土記』の古代性 1―「三群説」の検
堆積の中に成長していった神意識のありようを、具体的に 討―
掴もうとする姿勢こそが、求められると考えた次第である。】 一 はじめに/二 小野田光雄説(三群説)/三 三
……「終論―まとめにかえて―」より
群説の検討―記述の形式面について―/四 三群説の
検討―記述の内容面について―/五 まとめ
第三章 『播磨国風土記』の古代性 2
一 はじめに/二 地名表記と起源譚と/三 まとめ
第四章 神・天皇・人の伝承分布
一 はじめに/二 古代播磨の交通路/三 「神の伝
承」と「天皇にかかわる伝承」と「人の伝承」と/四
まとめ
第五章 神代と人代
一 はじめに/二 「以後」
「後」
「今」
・
「一云」
「一家云」
/三 ミマツヒコノミコト/四 品太天皇/五 まと
め
ISBN978-4-305-70803-8 C0091
終論―まとめにかえて―
定価:本体 8,500 円(税別)
初出一覧・あとがき・索引
A5 判・上製・カバー装・348 頁
古代日本人の神意識
133
新刊案内
◎ 2016 年 12 月刊行
『源氏物語』
「後朝の別れ」を読む
ISBN978-4-305-70827-4 C0095
予価:本体 3,300 円(税別)
四六判・上製・カバー装・262 頁
きぬぎぬ
【目次】
序章 後朝の別れ─闇のなかで─
I 後朝の風景
第一章 後朝の時間帯「夜深し」
音と香りにみちびかれて
第二章 女性たちへの別れの挨拶─須磨下向へのカウ
ントダウン─
II 音がみちびく別れ─聴覚表現─
吉海直人
第三章 人妻と過ごす時─空蝉物語の「暁」─
旧来の研究では別れの時間を安易に「夜明け頃」としてすま 第四章 庶民生活の騒音─夕顔巻の「暁」─
せてきたのではないか。暗い時間帯であることが看過されて 第五章 大君と中の君を垣間見る薫─橋姫巻の「暁」
─
きたのではないか。
第六章 契りなき別れの演出─総角巻の薫と大君─
「明く」は「暁」の到来であり、従来の明るくなる時間帯では
第七章 牛車のなかですれ違う心─東屋巻の薫と浮舟
なく、むしろ真っ暗な時刻(午前 3 時)であることを、小林
─
賢章氏が着目し検証したが、この論をきっかけにすると、暁
III 香りの物語─嗅覚表現─
の始まりは季節にかかわりなく真っ暗であるということにな
第八章 「なつかし」と結びつく香り
る。なので『源氏物語』でも視覚よりも聴覚や嗅覚の描写が
第九章 男性から女性への「移り香」
多くなっているのではないか。
第十章 漂う香り「追風」─源氏物語の特殊表現─
聴覚や嗅覚の重要性を、前著『「垣間見」る源氏物語』
(笠間
第十一章 感染する薫の香り
書院)で指摘したが、それは「後朝の別れ」でも応用可能で
第十二章 すりかわりの技法─擬装の恋物語─
ある。本書では「暁」を告げる時計代わりの「鶏鳴」
・
「鐘の音」
初出一覧
や、嗅覚に訴える「移り香」の重要性を丁寧に検証した。
あとがき
◎ 2016 年 11 月刊行
【目次】はじめに 参考文献
第一部 『古今集』春・秋・恋の和歌と歌群の生成
第一章 素性法師「見渡せば」考/第二章 貫之の落
花の歌について―「散華」との関わりの可能性―/第
三章 山吹の歌群の生成をめぐって/第四章 秋歌下
和歌と歌群の生成をめぐって
落葉歌群 二八五〜二八八番歌について/第五章 『古今集』の「紅葉」を「幣」に見立てる歌をめぐって
佐田公子
/第六章 藤原興風の鏡の歌
第二部 『古今集』
「雑歌」の生成
生成の過程から独自の文学として立ち上がる『古今和歌集』
『古今集』
「雑歌」の位置と先行研究
の真価を読み解く。
第一章 雑歌上の生成/第一節 雑歌上 巻頭歌考/
歌を撰び、配列を決める編纂作業には、当時の文学的動向、
第二節 み山隠れの朽木と花と―兼芸法師の八七五番
律令精神や宗教・習俗・文化など多岐に渡る動向、撰者達の
歌考―/第三節 蟬の羽の夜の衣は薄けれど―雑歌上
配慮などが関与した。生成の要因や様相を明らかにし、その
八七六番歌の位置―/第四節 「老」の歌群をめぐっ
意義、構想を探ることで、
『古今和歌集』の理解は深化する。
て/第五節 月・老・水の歌群配列をめぐって/第六
【これまでの『古今集』の研究では、伝本研究、表現論、修辞論、
節 雑歌上巻末屏風関連歌について/第一章まとめ 歌語研究、歌人研究、享受史研究、構造論や配列論などが活
雑歌上の構成と生成要因
発になされてきた。このような研究において歌や歌群の成り
第二章 雑歌下の生成/第一節 「世の中」歌群の生成
立ちについて部分的に触れた論や注釈書はあるが、その部立
について/第二節 菅原の里・三輪の山もと・宇治山
内での歌や歌群の生成の要因や様相を中心に据えた論は必ず
の歌―雑歌下九八一〜九八三番歌をめぐって―/第三
しも多いわけではなかった。そこで、このような視点に立っ
節 雑歌下「宿」の歌群と『古今集』における「宿」
て稿者が検討を進めていくと、最初の勅撰集として『古今集』
の歌について/第四節 「魂」の歌ことば「袖に包む魂」
・
が生成されていく過程における具体的な要因や様相及び意義
「夢のたましひ」―『古今集』時代の歌ことば表現の一
の一端が窺え、
『古今集』の文学性を考察することができたの
考察―/第二章まとめ 雑歌下の構成と生成要因
で、ここに纏めておくこととした。】……[はじめに]より
『古今集』雑歌上下の生成
ISBN978-4-305-70818-2 C0092 定価:本体 9,000 円(税別) おわりに 初出一覧 あとがき 和歌初・二句索引 A5 判・上製・カバー装・416 頁
『古今和歌集』論
新刊案内
134
◎ 2016 年 11 月刊行
枕草子章段構成論
【目次】
はじめに 凡 例
序 研究史の概観と問題の所在
第Ⅰ部 章段構成を支える漢詩文・和歌の表現と論理
第一章 漢詩文の表現を活かす章段構成
第一節 「憚りなし」が指示する『論語』古注と基本軸
第二節 「この君にこそ」という発言と「空宅」の取り
古瀨雅義
なし
第三節 返りごととしての「草の庵を誰かたづねむ」
第四節 「香爐峯の雪いかならむ」への対応と展開
第五節 「少し春ある心地こそすれ」の解釈と対応
第二章 和歌の表現を活かす章段構成
第一節 「扇」から「くらげ」への展開と構成
清少納言は、
『枕草子』の本文をただ筆に任せて記したのでは 第二節 「ほととぎす」の歌ことば世界と創造への志向
ない。あらかじめ綿密に考案した「設計図」をもとに推敲し 第三節 「ほととぎす」から「下蕨」への展開とねらい
ながら各章段を書き、それが好評を博していたのである―。 第四節 「円融院の御果ての年」章段における歌ことば
「椎柴」の応用と展開
本書は
『枕草子』
を
「章段構成」
の視点から考察する。書き手が、
設定した各章段のテーマにどのような素材と表現を選択して 第Ⅱ部 章段構成の方法と論理
いるのか、それらをどのように組み立てて話の筋を展開して 第一章 主題を活かす章段構成の方法
いるのかという視点で、各章段の構成の有り様を探る。
『枕 第一節 積善寺供養章段の時間軸とモザイク的様相
草子』が現代文学として成立した平安時代当時、書き手と読 第二節 雪山章段における表現の対比と効果
み手が共有していた知識と解釈について詳細に検証して、章 第三節 「いはで思ふ」歌からみた『古今和歌六帖』享
段の中で素材と表現が対応しながら絡み合い、有機的に関連
受の様相
しつつ展開していく構成の「仕組み」を明らかにする。各章 第四節 「寝起きの顔」章段における一手法としての再
段における素材や表現の展開と構成に注目することで、『枕
構成
草子』の文学史的な到達点と位置付けをとらえ直していく。 第五節 「芹摘みし」歌の異化作用と「めでたし」評
第二章 表現の展開を活かす章段構成の論理
【書き手の清少納言は、章段の前半に「仕掛け」となる素材 第一節 「鳥のそら音」章段における表現の重層性と論
と表現をさりげなく記しておき、話の展開とともにそれらを
理
ある特定の意味へと「変容」させながら後半に深く関わらせ、 第二節 「なかなるをとめ」の表現意図と「ずれ」の様
基本軸となる解釈の「指標」を示して、章段末尾に至って首
相
尾良く収束させている。この事象が随所に確認できることか 第三節 「六位の笏」と「辰巳」の隠し題とその論理
ら、書き手は読み手を意識して書き進め、一章段が緊密な構 第四節 積善寺供養章段における「申しなほす」の効
成を持つ様に設計し、話の展開を計算して書いていることが
果
明らかになった。
】
「はじめに」より。
第五節 「春は曙」章段における対比構成の変容
第三章 〈場〉を活かす章段構成の論理
第一節 「宜陽殿の一の棚に」と発言した「頭中将」は
源経房か
第二節 場面を展開する右近内侍の役割
第三節 初出仕時の体験と雪の日の来訪者をめぐる会
話
第四節 〈海〉の写実的描写と幼少期の周防下り
第五節 清少納言の見た『古今和歌六帖』は寛文九年
版本の祖本か
ISBN978-4-305-70817-5 C0095
定価:本体 11,000 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・496 頁
135
【資料報告】
刈谷市中央図書館蔵村上文庫本『清少納言枕草子』に
ついて
収録論文と既発表論文との関係一覧
あとがき
索引[人名・研究者名・書名・章段]
新刊案内
◎ 2016 年 11 月刊行
投げ救助業」と琵琶湖疏水― 1 土地の歴史、文学の
記憶/ 2 京都、岡崎の近代と物語の時間/ 3 菊池寛
は岡崎・疏水に何を見たか/ 4 物語のもう一つの伏流
―金銭をめぐって/ 5 京都近代の傍流の風景
第三章●鉄道と近代小説―近松秋江「舞鶴心中」と京都・
舞鶴― 1 道行はどこへ―近代テクノロジーと心中/
2 「舞鶴心中」の踏まえるもの―実話・世話浄瑠璃/ 3
描かれる鉄道の利便と愉楽/ 4 鉄路の道行―心中と
軍港/ 5 距離と時間、そして今生の名残の抹殺
第Ⅱ部 文学作品と同時代言説を編み変える
日比嘉高
第四章●笑いの文脈を掘り起こす―二葉亭四迷「浮雲」
― 1 笑いから見る「浮雲」/ 2 「浮雲」の笑い―類
文学の歴史を書き直すために、何に出会い、どう書くか。
型的性癖描写、言葉遊び、列挙/ 3 列挙と百癖、ある
さまざまな切り口がいざなう、近代日本文学研究の可能性。 いは〈当世官員気質〉―発想の型に注目する/ 4 何が
既存の思考の呪縛のうちにある、
「文学研究」を取り囲む〈枠〉「浮雲」の笑いを消したのか
と格闘し、
どうもがいたか。
「空間」
「文学史」
「メディア」をテー 第五章●作品の死後の文学史―夏目漱石「吾輩は猫で
マに、全 11 章で考えていく書。
ある」とその続編、
パロディ― 1 「吾輩の死んだあと」
の文学史/ 2 吾輩の死後の生活圏―〈アーカイブ〉の
【小説は何をどのように書いてもよいと、鷗外が言ったとき、 生成// 3 二次的創作の中の「猫」たち―その四類型
彼は「夜の思想を以て」と付していた。ここまで私は、文学 / 4 〈アーカイブ〉から考える〈文学史〉
研究は何をどのように書いてもよいといい、文学研究と隣接 第六章●人格論の地平を探る―夏目漱石「野分」― 1
領域との交通の重要さを主張したわけだが、しかしそもそも 明治末、人格論の時代/ 2 白井道也の『人格論』と
「文学(研究)
」の内/外という物言い自体が、既存の思考の 同時代の人格論パラダイム/ 3 「感化」と小説―人格
呪縛のうちにある。
「文学」と「研究」がその姿を変えない 論のキーワード
まま「外」といくら交渉を重ねても、一時しのぎの意匠が増 第七章●文学と美術の交渉―文芸用語「モデル」の誕
えていくだけだろう。
生と新声社、无声会― 1 文芸用語「モデル」の来歴
本当に新しいものは、見晴らしのきく昼の世界においては を探る/ 2 田口掬汀「もでる養成論」の新奇さ/ 3 見つからない。わかりきったルーティーンの作業と、それに 「モデル」という用語の流通経路―平福百穂・新声社・
慣れきった思考が支配するのが昼の世界である。鷗外は役所 无声会/ 4 「モデル」をめぐる理論的文脈―大村西崖
勤めでへとへとになった自分を一度眠らせ、深夜に起き出し と田口掬汀/ 5 文芸用語「モデル」
、その後の展開
て原稿を書いた。
「昼の思想と夜の思想とは違ふ」
(
「追儺」 第八章●表象の横断を読み解く―機械主義と横光利一
五八七頁)
。昼の怠惰な明澄さを眠らせ、文目も分かぬ「夜 「機械」― 1 時代が機械美を発見する/ 2 機械をめ
の思想」にいかに分け入るか。そ
ぐる想像力 1―機械・人間・ロボット/ 3 機械をめぐ
る想像力 2―機械の運命論/ 4 機械の運命論と横光利
こで何に出会い、どのように書い
一「機械」/ 5 「科学」としての「文学」が測り始め
て い く の か。 も ち ろ ん、 夜 の 冒
るもの
険は昼の冒険よりも格段に難し
第Ⅲ部 メディアが呼ぶ、イメージが呼ぶ
い。
】...... 本書「空間・文学史・メディ
第九章●声の複製技術時代―複合メディアは〈スポー
ア 何に出会い、どう書いていく
ツ空間〉をいかに構成するか― 1 複製された声とス
のか」より
ポーツの空間/ 2 声の争奪戦―スポーツ・アナウン
サーと活字メディア/ 3 スポーツ・ジャーナリズムの
拡大と〈スポーツ空間〉
ISBN978-4-305-70823-6 C0095
定価:本体 2,500 円(税別)
4 ファンの姿が描かれることの意味
A5 判・並製・カバー装・256 頁
5 呼びかける声の向こうに
第一〇章●風景写真とまなざしの政治学―創刊期『太
【目次】空間・文学史・メディア―何に出会い、どう書いてい 陽』挿画写真論― 1 雑誌に写真が入った時代/ 2 くのか
写真版印刷の登場と『太陽』/ 3 創刊期『太陽』の
第 I 部 言葉と空間から考える
挿画写真概観/ 4 外国風景の挿画写真―机上旅行と人
第一章●身体と空間と心と言葉の連関をたどる―梶井基次郎 類学のまなざし/ 5 日本風景の挿画写真/ 6 創刊期
「檸檬」― 1 〝上ル下ル〟から京都と「檸檬」を読む/ 2 『太陽』挿画写真の機能と効果
身体と空間と心を言葉はどう語っているか/ 3 「街の上で」 第一一章●誰が展覧会を見たのか―文学関連資料から
という表現が示す身体と空間/ 4 身体を読む―潜在と顕在の 読む文展開設期の観衆たち― 1 「観衆」とは誰か/ 2
劇のなかで/ 5 身体の模倣と抵抗―想像の「大爆発」とは/ 美術展覧会と近代観衆/ 3 複層化する観衆/ 4 展
6 読者の身体、読者の街
覧会システムと観衆化/ 5 文展観衆のなお「外」に
第二章●文学から土地を読む、
土地から文学を読む―菊池寛
「身 あとがき 索引(人名・書名・事項)
文学の歴史を
どう書き直すのか
二〇世紀日本の小説・空間・メディア
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136
◎ 2016 年 10 月刊行
『太平記』をとらえる
第三巻
【目次】
はじめに―『太平記』における言葉の重み?▼小秋元段
1 ●『太平記』における知の表現 1 『太平記』の兵法談義―その位置づけをめぐって―▼
森田貴之/ 2 『太平記』巻三十七「楊貴妃事」と『詩
人玉屑』▼張 静宇 ●コラム 南北朝時代の重要性と
世界文学としての『太平記』▼ジェレミー・セーザ
2 ●有力守護大名と歴史の表現
1 今川了俊と『太平記』▼和田琢磨/ 2 『太平記』の
情報操作―山名父子の離反をめぐって―▼北村昌幸●
コラム 『太平記』の「左馬頭」―予稿―▼今井正之助
3 ●書物としての探求 1 神田本『太平記』の表記に関する覚書―片仮名・平
仮名混用と濁点使用を中心に―▼小秋元段/ 2 北畠文
庫旧蔵本『太平記』管見▼長坂成行 ●コラム 神田本
太平記の引用符号▼鈴木孝庸
□外国語要旨 英語▼ジェレミー・セーザ訳/中国語▼
鄧 力訳/韓国語▼李章姫訳
『太平記』国際研究集会編
森田貴之
張 静宇
ジェレミー・セーザ
和田琢磨
北村昌幸
今井正之助
小秋元段
長坂成行
鈴木孝庸
ISBN978-4-305-70763-5 C0095
定価 : 本体 2,800 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・226 頁
全
◎ 2014 年 11 月刊行
作品論であれ考証的研究であれ「作品」そのものを対象
とする研究が停滞するようでは、文学研究は貧弱化す
る。
『太平記』は南北朝期の四十年に及ぶ戦乱をともか
くも描ききった希有の書。しかし四十巻という膨大な分
量や、取り組む研究者が少ないことなどから、基本的な
研究課題を積み残している。様々な課題に少しずつ挑み
次世代の研究基盤を構築すべく編む論集。全三巻完結。
3
巻 完 結
!
◎ 2015 年 10 月刊行
『太平記』をとらえる 『太平記』をとらえる
第一巻
第二巻
ISBN978-4-305-70761-1 C0095 定価 : 本体 2,800 円(税別) ISBN978-4-305-70762-8 C0095 定価 : 本体 2,800 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・228 頁
A5 判・並製・カバー装・236 頁
【目次】はじめに―新たな研究基盤の構築をめざして▼小秋元 【目次】はじめに―作者の文学史的環境と政治的・社会的環
境を明らかにする▼小秋元段
段
『太平記』巻
1 ●『太平記』における知と表現/ 1『太平記』の引歌表 1 ●『太平記』における説話の淵源と機能/ 1 『太平記』と
現とその出典 ▼北村昌幸/ 2『太平記』テクストの両義性 三十八「大元軍事」と宋元文化▼張 静宇/ 2 『太
―宣房・藤房の出処と四書受容をめぐって―▼森田貴之/ 弘法大師説話―引用説話の射程―▼森田貴之/●コラム 『太平
コラム○「桜井別れの図」に思う ▼長谷川端/コラム○ 平記』の「良将」に関する覚書▼佐伯真一/●コラム 新井白石と『太平記秘伝理尽鈔』に関する覚書▼山本晋平 記』に残る漢籍受容の足跡―『白氏文集』の本文系統につい
て―▼金木利憲/ 2 ●『太平記』に描かれた「歴史」/ 1 『太
2 ●歴史叙述のなかの観応擾乱
1 下剋上への道―『太平記』に見る観応擾乱と足利権力の 平記』における諸卿僉議―南朝の意思決定をめぐる諸問題―
神話―▼ジェレミー・セーザ/ 2『太平記』巻二十七「雲 ▼北村昌幸/ 2 高師泰の枝橋山荘造営をめぐる脇役の周縁―
『太平記』
景未来記事」の編入過程について▼小秋元段/コラム○『太 『太平記』注解補考(三)―▼長坂成行/●コラム と仁和寺―天正本系の一増補箇所から―▼大坪亮介/ 3 ●神
平記』の古態本について▼兵藤裕己
3 ●神田本『太平記』再考/ 1 神田本『太平記』に関する 田本『太平記』―本文の探求―/ 1 神田本『太平記』本文考
基礎的問題 ▼長坂成行/ 2 神田本『太平記』本文考序説 ―巻十六を中心に―▼小秋元段/ 2 室町時代における本文改
―巻二を中心に―▼和田琢磨/コラム○天理本『梅松論』 訂の一方法―神田本『太平記』巻三十二を中心に―▼和田琢
『太平記』巻一巻末の増補記事―〈もう一つの
と古活字本『保元物語』―行誉の編集を考える―▼阿部亮 磨/●コラム 太□外国語要旨/英語▼ジェレミー・セーザ訳/中国語▼ 歴史叙述〉の可能性―▼大森北義/□外国語要旨/英語▼ジェ
レミー・セーザ訳/中国語▼張静宇訳/韓国語▼李章姫訳
鄧 力訳/韓国語▼李章姫訳
137
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◎ 2016 年 10 月刊行
松岡正剛氏
「心が晴れる本」があるとしたら―この日記を繙く
べきである
清水文雄「戦中日記」
文学・教育・時局
ヴァイニング女史の前に清水文雄がいた。少年東宮
であった今上天皇を教えたのは清水だった。三島由紀
夫の前に清水文雄がいた。少年平岡公威の『花ざかり
の森』を三島由紀夫として世に送り出したのは清水だっ
た。天皇と三島。清水は二人の紛れもない師であった。
清水明雄・編
もとより清水は和泉式部研究の第一人者でありつづ
前田雅之・解説
けた孤高かつ浩瀚の国文学者である。和泉式部の生き
字引といえば清水をおいてはいなかった。私には衣通
姫伝承の奥にいったい何が秘められていたのか、その
謎に導いてくれた人でもあった。
「天皇と三島。清水は二人の紛れもない師であった。」
けれども、このたび『戦中日記』のゲラを読んで愕
然とし、そして沛然とした。「惟神の国振」を昭和を
(松岡正剛)
代表する人士に吹き入れていたのは清水だったのであ
「この時代が見失っている原型を浮かびあがらせる」
る。三島の師や皇太子の教授掛にとどまっていない。
(保阪正康)
和泉式部を中心とする平安朝文学の研究者で、三島由紀夫を 日記が示しているものは、天皇家に伝えるべき魂魄の
教育の計画全般に及んでいた。富士谷成章の脚結抄の
見出したことで知られる清水文雄の戦中日記。
活用にまでふれていることなどにも驚いた。
大学ノートに記された、昭和十二年より昭和二十年八月十五
日記は昭和十三年の「様式とは個性原理である」に
日までの「日本文学の会日誌」
(昭和十三年三月〜十六年二月)
始まって、敗戦八月十五日の「何か思ひ当たる予感の
「雑記帳」
「碌々斎日記」
(昭和十八年七月二十九日以降の名称) やうなものがある」で擱筆されている。この日記は
の全文を収録する。
二一世紀日本の「欠如の一隅」をきっと埋めるものに
なるだろう。
本日記には、三島由紀夫『花ざかりの森』が掲載されたこと もうひとつ、加えたい。清水日記はかけがえのない
で知られる雑誌『文藝文化』
(齋藤清衛・蓮田善明・栗山理一・ 読書録にもなっている。世の中に「心が晴れる本」が
池田勉など)が生まれてくる過程や、文藝文化グループ以外 あるとしたら何なのか、そのことを知りたいのなら、
の人々(伊東静雄・保田與重郎など)と清水の交流がわかる この日記を繙くべきである。
など、戦時期文学運動の実態が綴られるほか、皇太子(現今 【目次】
上天皇)を中心とする皇族教育起草案(国文教科書編纂)の はしがき 凡例
策定過程、今まで知られていなかった、三島以外との文学的 日本文学の会日誌
交流―戦時下の恋歌鑑賞、連歌、和歌の贈答など―は、「戦 昭和十三年(一九三八)三十五歳
時下のみやび」を伝えて余りある。戦時下、教師として研究 昭和十五年(一九四〇)三十七歳
者として、国家や天皇をどう考えていたのか。初めて明かさ 昭和十六年(一九四一)三十八歳
戦中日記(その 1)
れる貴重な記録。
昭和十二年〜十五年(一九三七〜四〇)
三十四歳〜三十七歳
昭和十八年(一九四三)四十歳
昭和十九年二月・六月(一九四四)四十一歳
昭和十九年七月
ISBN978-4-305-70816-8 C0095
昭和十九年八月
定価:本体 3,700 円(税別)
戦中日記(その 2)
A5 判・上製・カバー装・
628 頁 口絵 4 頁
昭和十九年九月(一九四四)
昭和十九年十月
昭和十九年十一月・十二月
推薦
昭和二十年一月(一九四五)四十二歳
保阪正康氏
昭和二十年二月・三月
昭和二十年四月〜八月
昭和精神史の中に脈々と流れる日本主義、その息吹はどの
ような形で「歴史」の海をつくりえたのか、古典文学の研究
清水家略系図 児玉家略系図
者、学習院にあっての教育者、その二つの顔をもつ文人の息
づかいが本書の魅力である。加えて、昭和の軸ともいうべき 山廣家略系図 清水文雄略年譜
国語教育、そして古典文学の粋を見つめる日本精神、その道 清水文雄著書・論文等目録
を歩みつづけた一教育者の時代の記録は、改めてこの時代が 解説 前田雅之 あとがき 人名索引
見失っている原型を浮かびあがらせる。
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138
◎ 2016 年 9 月刊行
地震と文学
災厄と共に生きていくための文学史
前田 潤
ISBN978-4-305-70810-6 C0095
定価 : 本体 3,200 円(税別)
四六判・上製・カバー装・364 頁
◎ 2016 年 9 月刊行
昭和文学研究
第 73 集
昭和文学会編
昭和期の文学を中心とする近現代
文学の研究を対象とした学会誌。
従来、会員以外は入手困難でした
が、通常の書籍同様、書店にてご
注文いただけるようになりまし
た。年 2 回刊行。定期ご購入をご
希望の場合は入会されると金額的
に お 得 で す( 年 会 費 7000 円、 入
会金 1000 円)
。
ISBN978-4-305-00373-7 C3393
定価 : 本体 4,200 円(税別)
A5 判・並製・232 頁
139
災厄と共に生きていくために、文学をどう読むのか。
災厄とはそもそも何なのか。災厄の前に現れ出る自己と
は何か。災厄そのものの淵源を大きく問いつつ、村上春
樹、小田実等の震災文学から根源的に迫ろうとする。ま
た、災厄の痕跡として、関東大震災直下の連載小説を読
み解きながら、現在を照らす。現代における「災厄の起
源」に思考の照準を当て、災厄と共に生きてゆくための
言葉をもう一度織り直し、自らの新しい言葉を獲得して
ゆこうとする、野心的な書。
【目次】
はじめに 第一部 災厄の起源―文学を通じて考える意味と可能性
序 章 「災厄」を引き起こした「わたし」とは何者
か/第一章 共同性―宙吊りの「わたし」と分有(パル
タージュ)の思考―/第二章 表象―鏡像としての「震
災」―/第三章 主権―例外状態と災厄の恒常性―
第二部 災厄の痕跡―現在を照らす関東大震災直下の連
載小説 第一章 「震災と文学」から直下の連載小説へ
/第二章 中村武羅夫「群盲」の亀裂―ある造船争議の
結末―/第三章 震災モラトリアム(支払延期令)直下
の商魂―村上浪六「時代相」の実験―/第四章 菊池寛
と婦人雑誌の被災―舞台焼失の後始末―/第五章 震災
と新聞小説挿絵―竹久夢二の「眼」―/第六章 直下の
連載小説から「文学の震災」へ
註・初出一覧・主要参考文献
あとがき
【目次】
【特集 詩歌と昭和】前衛詩/初期アナキズム
詩における〈グロテスク〉―〈フラン・ヴィタール〉
としての『夜から朝へ』―●村田裕和/〈こわれた〉街・
〈騙り〉の街への遠近法― 神戸発・昭和詩始動期の詩
人たちの仕事 ―●大橋毅彦/「汽罐車」のシンフォ
ニー―山口誓子の俳句連作について―●青木亮人/北
園克衛『円錐詩集』論―〈抽象映画〉およびシュルレ
アリスムとの関わりから―●大川内夏樹/一九四七年
の思惟―「荒地」・「肉體」・「桜の森の満開の下」―●
宮崎真素美/清岡卓行の位置―永遠と歴史の〈逆立〉
―●勝原晴希/クラインは自ら壺を割るか―吉本隆明
『固有時との対話』を読む―●疋田雅昭【論文】焼跡
を読み替える方法―石川淳「焼跡のイエス」とユート
ピア―●福岡弘彬/坂口安吾「文学のふるさと」と芥
川龍之介の遺稿●小谷瑛輔/松本清張と「文学」をめ
ぐる言説配置―「小説新潮」から「純文学論争」へ―
●吉野泰平/「今」を照らす起源の「夏」―島尾敏雄「そ
の夏の今は」論―●安達原達晴/分裂する自己、変貌
する自己―安部公房『燃えつきた地図』論―●片野智
子/現代日本語文学の中の「台湾」―津島佑子『あま
りに野蛮な』論―●笹沼俊暁/【資料紹介】昭和十一
年 詩誌『椎の木』細目●外村彰/【研究動向】火
野葦平●掛野剛史/開高健●中根隆行/伊藤比呂美●
跡上史郎【研究展望】「少女小説」を編む―『少女小
説事典』編纂の記録―●久米依子/安保法制と社会運
動を考える●佐藤泉/「国際三島由紀夫シンポジウム
2015」の意義●佐藤秀明 ほか。
新刊案内
◎ 2016 年 8 月刊行
西行学 vol.7
西行学会編
ISBN978-4-305-00407-9 C0395
定価 : 本体 4,200 円(税別)
A5 判・並製・244 頁
◎ 2016 年 8 月刊行
跨境(こきょう)
日本語文学研究 第 3 号
特集:文化翻訳/翻訳文化
東アジアと同時代日本語文学フォーラム
高麗大学校日本研究センター編
代行販売しています
ISBN978-4-305-40303-2 C0095
定価 : 本体 2,000 円(税別)
B5 判・並製・232 頁
新刊案内
2009 年 4 月に設立された新しい学会「西行学会」の機
関誌。
【目次】【大会講演記録】
『撰集抄』再考―『発心
集』
『西行物語』との関係など―●木下資一/【大会シ
ンポジウム記録 僧と和歌―西行和歌の再考に向けて
―】シンポジウム「僧と和歌―西行和歌の再考に向けて」
の趣旨と総括●山口眞琴/僧侶の恋歌―野僧と顕密僧
をめぐって―●前田雅之/西行の恋の題詠歌●渡部泰
明/和歌の〈場〉としての三井寺―平安末期三井寺にお
ける歌合―●中村 文【研究論文】西行和歌「秋篠や外
山の里」考●西澤美仁/備前焼の西行像●中西満義/西
行の社会性―「檜物工」の歌を中心に―●宇津木言行
【科研費報告書より】西行伝承研究会の科学研究費補助
金研究成果報告書について●西行学会/美濃中山道大
井宿の西行伝説●坂口博規/塩田平の高僧伝説―弘法・
円仁・西行を中心に―●宮本達郎/西行伝承から見た安
房船形・西行寺文書●宇津木言行【西行ノート】
『山家集』
の原風景を求めて―武隈の松・実方の墓・名取川―●名
古屋茂郎【西行文献目録】西行関係研究文献目録(総合
版)
二〇〇五―二〇〇六年●西行学会編/西行関係文
献目録(地方文献版)
滋賀県●黄地百合子編【西行学
の名著】山田昭全著『西行の和歌と仏教』―その可能性
とゆくえ―●大場 朗【書評】松本孝三著『北陸の民俗
伝承―豊饒と笑いの時空―』―北陸の西行伝承を訪ねる
―●花部英雄/山本章博著『中世釈教歌の研究―寂然・
西行・慈円―』●平田英夫【英文論文翻訳】僧侶の仲―
西行の出家とホモソーシャル欲求と和歌―●ジャック・
ストーンマン
「東アジアと同時代日本語文学フォーラム」は韓国、中
国、台湾、日本の各地域の近代日本語文学の研究者が参
加。真の意味での国際誌となることを目指すべく創刊。
【目次】□エッセイ―跨境の言葉 口承文学と脳内テク
ストについて●聶珍釗/「帝国」と「民族」の交差路で
―林和研究からはじめて●渡辺直紀/和諍の政治●趙
性澤 □特集 : 文化翻訳/翻訳文化 元台湾語通訳者市
成乙重とアジア・太平洋戦争期の「福建語」●冨田哲/
「巡礼の旅」のポリティクス―島崎藤村の南米訪問とそ
の語り●岡英里奈/李桃丘子と俳句―朝鮮俳句の解放 /
敗戦前後から現在へ●中根隆行/越境する『砂の女』―
安部公房、T・S・エリオット、ポール・ボウルズ●大
場健司/言語体験としての旅―佐藤春夫の「台湾もの」
における「越境」●河野龍也/「満州文学」における大
内隆雄の翻訳活動―「満人作家」の理解者、代弁者とし
て●単援朝/ヴェルヌから包天笑まで―鉄世界の重訳
史●陳宏淑/リービ英雄「千々にくだけて」論―複数性・
翻訳・俳句●藤田祐史 □一般論文 植民地期台湾にお
ける日本語俳句の受容と課題―植民地期朝鮮俳壇と比
較して●磯田一雄 □研究資料 「高砂寮」
(戦後の「清
華寮」
)関連記事―『台湾日日新報』より●横路啓子/
朝鮮総督府機関紙〈
『京城日報』文学資料 DB 構築〉事
業●金孝順/「満洲国」時代に刊行された日本語文学資
料の保存と整理●劉春英/「國民詩歌」―朝鮮半島にお
ける日本語詩歌文学の終章●嚴仁卿 □フォーラム参
加記 ●波潟剛 ほか
140
◎ 2016 年 7 月刊行
秀吉の虚像と実像 編者 堀 新・井上泰至
【目次】
○序
虚像編・編者より
秀吉の「夢」、語り手の「夢」[井上泰至]
実像編・編者より
実像と虚像、歴史学と文学、どちらも面白い[堀 新]
1 秀吉の生まれと容貌
実像編[堀 新]虚像編[湯浅佳子]
[執筆]
(執筆順)
2 秀吉の青年時代
実像編[北川 央]虚像編[湯浅佳子]
井上泰至[防衛大学校教授]
3 浅井攻め
堀 新[共立女子大学教授]
実像編[太田浩司]虚像編[柳沢昌紀]
湯浅佳子[東京学芸大学教授]
4 秀吉の出世
北川 央[大阪城天守閣館長]
実像編[太田浩司]虚像編[原田真澄]
太田浩司[長浜市長浜城歴史博物館館長]
5 高松城水攻めと中国大返し
柳沢昌紀[中京大学教授]
実像編[堀 智博]虚像編[菊池庸介]
原田真澄[演劇博物館招聘研究員]
6 清須会議と天下簒奪
堀 智博[共立女子大学非常勤講師]
実像編[谷口 央]虚像編[菊池庸介]
菊池庸介[福岡教育大学教授]
7 秀吉と女性
谷口 央[首都大学東京教授]
実像編[堀 智博]虚像編[網野可苗]
網野可苗[上智大学大学院]
8 秀吉と天皇
遠藤珠紀[東京大学史料編纂所助教]
実像編[遠藤珠紀]虚像編[森 暁子]
森 暁子[お茶の水女子大学研究員]
9 秀吉はなぜ関白になったのか
米谷 均[早稲田大学講師]
実像編[堀 新]虚像編[森 暁子]
金子 拓[東京大学史料編纂所准教授]
10 文禄・慶長の役/壬辰戦争の原因
丸井貴史[上智大学大学院]
実像編[米谷 均]虚像編[井上泰至]
谷 徹也[京都大学助教]
11 秀次事件の真相
藤沢 毅[尾道市立大学教授]
実像編[金子 拓]虚像編[丸井貴史]
どのようにして秀吉は「虚像」として語られ、12 豊臣政権の政務体制
実像編[谷 徹也]虚像編[藤沢 毅]
今その「実像」が問われているのか。
13 関ヶ原の戦いから大坂の陣へ
歴史学と文学のコラボレーションにより、 実像編[谷 徹也]虚像編[井上泰至]
14 秀吉の神格化
実像も虚像も追究する書。
実像編[北川 央]虚像編[井上泰至]
豊臣秀吉総体を捉えようとする、初の試み !
○コラム
北政所の実名[堀 新]
実像と虚像、歴史学と文学、どちらも面白く、重要であるこ
刀狩令[堀 新]
とが本書により改めて説かれる。単なる秀吉の通史ではない、
太閤検地[谷口 央]
多様な見方と大きな見通しの確認・発見を目指す書。
「惣無事」と「惣無事令」[谷口 央]
破り捨てられた? 冊封文書[米谷 均]
【本書は、豊臣秀吉を素材に、歴史学が実像編、文学が虚像
二つの「キリシタン禁令」[堀 新]
編を、それぞれの学問スタイルで執筆した。実像編は、主に
古文書・古記録を使用して、現在何が、どこまで明らかになっ
○付録
ているかを述べた。そのさい、必要に応じて典拠となる古文
秀吉関連作品目録
書・古記録を示している。これに対して虚像編は、一般に流
(軍記・軍書・実録・近代史論・
布している歴史常識が、どのような軍記物語によっていかに
歴史小説)
形成されたのか、その虚像のあり方を浮き彫りにしている。
[井上泰至編]
この両者があわさることによって、
「実像も虚像も追究する」
ことができるのである。それは、豊臣秀吉という人物はもち
主要秀吉関連演劇作品一覧
ろん、彼の生きた社会もより深く理解することである。それ
[原田真澄編]
だけでなく、秀吉死後の時代の姿をも、豊臣秀吉という人物
とその伝説を通じて掘り下げることでもある。】…序(堀新)
あとがき
より
[堀 新×井上泰至]
ISBN978-4-305-70814-4 C0021
定価 : 本体 2,800 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・408 頁
141
執筆者プロフィール
新刊案内
◎ 2016 年 6 月刊行
日本古典書誌学論 佐々木孝浩
書誌学は、文学作品を読み解く上で何の役に立つのか。
学を架橋することが挙げられているのも、たしかにと
うなずける。佐々木氏は、自身の研究の営みを総動員
して、書物をめぐる営為の謎を解き明かそうとする。
その意味で本書は、氏のこれまでの研究の集大成でも
あるといえよう。志の高い本である。
【目次】
はじめに
巻物や冊子といった書物の装訂や形態にはヒエラル □序編
第一章 日本古典書誌学論序説
キーがあり、書物とそこに保存されるテキストには相 第二章 日本語の文字種と書物の関係について
関関係がある。また書物に保存されているのはテキス
□第一編 巻子装と冊子本
第一章 冊子本の外題位置をめぐって
報も秘められているのである。そうした相関性や情報 第二章 絵巻物と絵草子―挿絵と装訂の関係について
を把握した上で、作品を具体的に読み解く必要がある。 ―
トのみではなく、書物とテキストにまつわる様々な情
既存の文学研究では明らかにできなかった事柄を、書 □第二編 巻子装と歌書・連歌書
誌学的な「読み」によって示す、古くて新しい書誌学 第一章 勅撰和歌集と巻子装
の具体的活用法!
【推薦】
パンフレットを
ご用意して
おります。
ご請求ください !
第二章 勅撰和歌集の面影―『新撰菟玖波集』の巻子
装本をめぐって―
第三章 巻子装であること―早稲田大学図書館蔵『新
撰菟玖波集〔政弘句抄出〕』をめぐって―
□第三編 源氏物語と書誌学
第一章 「大島本源氏物語」の書誌学的研究
第二章 二つの「定家本源氏物語」の再検討―「大島
渡部泰明・東京大学教授
本」という窓から二種の奥入に及ぶ―
佐々木孝浩氏には昔から教導を得てきた。それは、柿本人 第三章 「大島本源氏物語」続考―「関屋」冊奥書を
麿の画像を供養する歌会である人麿影供のことであったり、 めぐって―
鎌倉時代の歌壇のことであったり、さらには書誌学の指導法
を伝授してもらったこともある。いずれも氏の研究の重要な □第四編 平家物語と書誌学
分野であるが、このたび氏の近年の書誌学の成果が充実した 第一章 書物としての平家物語
大著としてまとめられたことを、学界においてもそうであろ 第二章 巻子装の平家物語―「長門切」についての書
誌学的考察―
うが、なにより私個人として悦ばしく思っている。
私が佐々木氏から学んだのは、その該博な知識からばかり 第三章 「屋代本平家物語」の書誌学的再検討
ではない。なにより、文学、とくに和歌にまつわる営為への
氏のこだわりからといってよい。私は、和歌を営みとして捉 □第五編 古典文学と書誌学
えたいと思ってきた。その重要なヒントを佐々木氏から与え 第一章 定家本としての枕草子
られたのであった。いやヒントだけではない。和歌史が持続 第二章 書物としての『枕草子抜書』
してきた謎の一端には、たしかに人の行為があったのだと、 第三章 書物としての歴史物語
後押しをされ続けてきたのだった。氏の独擅場たる人麿影供 第四章 室町期東国武士が書写した八代集―韓国国立
中央図書館蔵・雲岑筆『古今和歌集』をめぐって―
研究はその典型である。
今回の『日本古典書誌学論』でも、本をめぐって人がどう 第五章 長門二宮忌宮大宮司竹中家の文芸―未詳家集
動いていたか、その営為の中から多角的に書物の持つ意味を 断簡から見えてくるもの―
解明しようという志に貫かれているように思われる。もちろ
ん書誌学は書籍に関する事実を大事にする学問だろう。ただ おわりに―本書で明らかに
し事実を探求せんとして客観性を保持しようとするあまり したこと
に、視点や方法が単一化し、ひいては視野狭窄に陥ってしま 初出一覧 あとがき うというのは、分野を限らぬ、研究のもつ危険性といえよう。 目次(英訳)
佐々木氏の研究は、おのずとそうした弊を免れている。人間 おわりに(英訳)
の所業への果敢なまでの探究心があるからであり、それがあ 索引(人名・書名)
くない好奇心に支えられているからである。一言でいえば、
人の匂いがするのである。
しかも、取り上げられている書物は、勅撰和歌集・『源氏 ISBN978-4-305-70808-3 C0095
物語』・『枕草子』
・
『平家物語』
・歴史物語といった古典を代 定価 : 本体 9,000 円(税別)
表する作品群であり、本書の意図の一つとして、文学と書誌 A5 判・上製・函入・564 頁
わが導き手
新刊案内
142
◎ 2016 年 2 月刊行
【目次】
時代物浮世草子論
序章
第一章 時代物浮世草子の習作─其磧の赤穂浪士もの
第一節 『けいせい伝受紙子』論─「陸奥」の人物造
型を中心に─/第二節 『けいせい伝受紙子』の独自性
─男色描写と野村事件─/第三節 『忠臣略太平記』試
論─其磧作の可能性を求めて─/第四節 まとめ
第二章 其磧と演劇─時代物浮世草子を考えるために
第一節 其磧と荻野八重桐─『風流七小町』
『桜曽我
女時宗』
『女将門七人化粧』を中心に─/第二節 『安倍
清明白狐玉』論─浄瑠璃・歌舞伎における晴明ものの系譜
として─/第三節 『鬼一法眼虎の巻』と「鬼一法眼三
略巻」─浄瑠璃ずらし─/第四節 時代物浮世草子作者
論/第五節 まとめ
第三章 時代物浮世草子の消長─演劇と江島其磧への
視座から 第一節 八文字屋本の中の都賀庭鐘─『四
鳴蝉』私論─/第二節 其磧と初期洒落本─『本草妓要』
「漂游総義」を中心に─/第三節 上田秋成『諸道聴耳
世間狙』と歌舞伎─團十郎を中心に─/第四節 其磧没
後の浮世草子─『怪談御伽桜』とその周辺─
結章
資料 1 時代物浮世草子典拠作一覧/ 2 蓍屋勘兵衛
出版事項年表/ 3 北田清左衛門出版事項年表
江島其磧とその周縁
宮本祐規子
西鶴没後の小説界を牽引した作者
江島其磧(えじまきせき)の作品を再定義する。
其磧が数多く残した歌舞伎・浄瑠璃を典拠とする、
長編小説「時代物浮世草子」
。
作者の独自性が無いと低評価が続いていた
これらの作品群を習作から順に取り上げ、
後世の作家に与えた影響まで丹念に考察。
其磧研究に新たな視点を提示する。
ISBN978-4-305-70787-1 C0093
定価 : 本体 4,000 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・326 頁
◎ 2016 年 5 月刊行
噺本と近世文芸
表記・表現から作り手に迫る
初出一覧 あとがき 索引【作品名・人名】
【目次】
はじめに 凡例
第一部 「はなし」の定義
第一章 噺本研究史
第二章 「噺」と「咄」
─噺本にみる用字意識─
藤井史果
第二部 噺本にみる表記と表現
第一章 噺本における会話体表記の変遷
江戸時代を通して書き継がれた笑話集「噺本」の謎に、新たな 第二章 噺本に表出する作り手の編集意識 ─戯作者
と噺本─
視点で迫る。
再録や改作を繰り返す性質から作り手や創意に不明な点が多い
噺本。噺本を文字化された文芸として捉え、会話に付される記 第三部 謎につつまれた噺本の作り手 ─山手馬鹿人
号「庵点(いおりてん・ )
」の使用方法など、従来見過ごさ を中心に─
第一章 大田南畝・山手馬鹿人同一人説の再検討
れてきた表記・表現の面から検討。
第二章 山手馬鹿人の方言描写
新たな手法で噺本を読み直し作り手の
第三章 山手馬鹿人と洒落本
実像、その創意に迫りながら、近世文
芸史上のさまざまな謎の解明に挑む。
第四部 噺本作者の横顔 ─瓢亭百成をめぐって─
第一章 瓢亭百成の文芸活動
第二章 瓢亭百成の著作 ─未翻刻資料の書誌および
翻刻─ Ⅰ『福山椒』Ⅱ『華の山』Ⅲ『百夫婦』Ⅳ『舌
の軽わざ/とらふくべ』Ⅴ『申新版落咄 瓢孟子』Ⅵ『一
ISBN978-4-305-70811-3 C0091
口はなし 初夢漬』
定価 : 本体 5,200 円(税別)
初出一覧 あとがき 索引【人名・作品名】
A5 判・上製・カバー装・260 頁
143
新刊案内
◎ 2016 年 8 月刊行
万葉挽歌の表現
挽歌とは何か
高桑枝実子
ISBN978-4-305-70813-7 C0092
定価 : 本体 7,800 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・360 頁
◎ 2016 年 5 月刊行
『枕草子』連想の文芸
章段構成を考える
斎藤正昭
ISBN978-4-305-70809-0 C0095
定価 : 本体 8,500 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・336 頁
新刊案内
万葉人は、死や死者に対してどのように向き合おうとし
たのか。挽歌が必要とされた理由とは―。
万葉集に挽歌として載せられた歌は、編者にそのように
判断され配列されたものがほとんどである。歌の作者に
「挽歌を詠む」という意識があったとは限らない。では、
編者が挽歌だと判断したポイントはどこにあるのだろ
うか。編者の挽歌観を探ると共に、挽歌部に収載された
歌の表現と、収載されなかった表現との違いを見極め、
挽歌の成立とその本質を解明する。
【目次】序章 万葉挽歌研究の視点 第一節 万葉挽歌
研究史と本書の目的―予備的考察として―/第二節 万葉挽歌の表現と変遷 第一章 万葉人の挽歌観 第
一節 有間皇子自傷歌群の意味/第二節 有間皇子自
傷歌群左注考―編者の挽歌観と意図―/第三節 山上
憶良「日本挽歌」の表現 第二章 万葉挽歌の方法 第
一節 天智挽歌群 姓氏未詳婦人作歌考/第二節 柿
本人麻呂「日並皇子殯宮挽歌」の方法―反歌をめぐって
―/第三節 柿本人麻呂「高市皇子殯宮挽歌」の方法
/第四節 柿本人麻呂「吉備津采女挽歌」の方法―「秋
山の したへる妹 なよ竹の とをよる子ら」考― 第
三章 万葉挽歌の周辺 第一節 巻八夏雑歌 大伴旅
人の望遊唱和歌考/第二節 ホトトギスと死者追慕の
歌―万葉歌から中古哀傷歌へ―/《補論》東歌のホトト
ギス詠―巻十四・三三五二番歌の考察―/第三節 倭建
命の喪葬物語―『古事記』と鎮魂― 終章 万葉挽歌の
実体と課題―挽歌とは何か―
『枕草子』の章段の順序は置き換えられているのではな
いか ?! ―複数回にわたって成立した形跡が見られる『枕
草子』を、幾度かにわたって成立したことを前提とし、
全章段の繋がりをたどることにより、これまで見落と
されていた章段の連続性(全章段の約三分の一に及ぶ
一〇〇余の事例)を掘り起こす。その連続性を手掛かり
に、新たな章段の順序に並び替える野心的な書。
【目次】基礎篇 第一章 章段の構成(一)―接続関係
からの検証 第一節 章段前後の接続関係(一)―一
本全二七段と跋文を含む全章段の検証/第二節 章段
前後の接続関係(二)―章段群の整理 第二章 章段
の構成(二)―跋文を踏まえての検証 第一節 『枕草
子』の発表時期―跋文の検証/第二節 『枕草子』の構
成―総合的検証 考究篇 第一章 連想の文芸―見落
とされていた章段の連続性 第一節 連想のパターン
(一)―章段の繋がり方の基本的特徴/第二節 連想の
パターン(二)―前段と次段の接続関係/第三節 見落
とされていた連続性(一)―三巻本の前後章段において
/第四節 見落とされていた連続性(二)―四期構成か
ら浮かび上がる連続章段において/第五節 連想の文
芸 第二章 四期構成の特性 第一節 第一期 原初
『枕草子』の章段群/第二節 第二期 日記回想的章段
初出の章段群/第三節 第三期 跋文の章段群/第四
節 第四期①~③―跋文後の章段群/第五節 四期構
成の特性 第三章 三巻本の実態と能因本の位置づけ
第一節 一本全二七段の実態/第二節 三巻本の実
態/第三節 能因本の位置づけ 付・枕草子全章段表
144
◎ 2016 年 5 月刊行
萬葉写本学入門
【目次】
萬葉写本学への招待―文学作品における本文とは何か
(小川靖彦)
Ⅰ 実践!萬葉写本学
『校本萬葉集』の理念と方法(小川靖彦)
1 『校本萬葉集』の成立過程
2 『校本萬葉集』の理念
3 『校本萬葉集』の方法
小川靖彦編
4 『校本萬葉集』が投げかける課題
万葉集仙覚校訂本のはじまり―仙覚寛元本の復元に挑
[執筆]
む(田中大士)
小川靖彦/田中大士/城﨑陽子/新谷秀夫/景井詳雅/池原
1 寛元本の姿は見えない
陽斉/新沢典子/樋口百合子/大石真由香/舟木勇治/李敬
2 寛元本の底本
美/安井絢子/岩田芳子/小田芳寿/嘉村雅江/茂野智大
3 寛元本の訓の二本立て構造
4 寛元本はどんな姿だったのか
万葉集享受の歴史―写本から版本へ(城﨑陽子)
〈読む〉楽しみは、ここから始まる!
1 はじめに―写本から版本へ
2 テキストによって学ぶ
文学作品を読むためには、まず本文のあり方を知っておく必
3 近世期の万葉集享受―テキストと注釈
要があります。今、目の前にある萬葉集はどれだけ「原文」
4 おわりに―「万葉集享受の歴史」にむけて
に近いのか遠いのか。どこまで解明され、何が課題となって
*
いるのか。
写本を実際に見てみよう(新谷秀夫)
基本研究文献、萬葉集の伝本一覧、複製・画像、写本・刊本 1 『萬葉集』の三つのすがた
所蔵機関の情報も掲載。知っておくべき、知識と技術の基本 2 『萬葉集』写本を実際に見る意義
を紹介します。
『万葉集』研究における「写本学」とは何か(景井詳雅)
1 はじめに
【……『萬葉集』に限らず、
『古今和歌集』
『源氏物語』
『平家 2 『校本萬葉集』
物語』
『奥の細道』
、さらには近現代の小説や詩など、文学作 3 『万葉集』と写本
品は音楽作品に似ています。音楽作品は作曲家が創作したも 4 写本から見えてくるもの
のですが、演奏されることで初めて姿を現します。演奏者の 5 「萬葉写本学」と受容研究
解読・解釈によって、同じ作品が全く異なる表情を見せます。 6 「萬葉写本学」とは
" 唯一の正しい作品 " がどこかに抽象的に存在しているわけで
はないのです。それぞれの演奏が
「作品」と言えます。しかし、 Ⅱ 現在の研究状況はどうなっているのか
それは演奏家による創作ではなく、あくまでも作者は作曲家 [本文校訂]
『萬葉集』伝本と本文の問題―本文異同の
です。
実例から(池原陽斉)
文学作品も書写・出版されるたびに、解読・解釈されなが [平安・仮名萬葉と本文研究]本文批評における仮名万
ら、新しい姿に生まれ変わってゆくものと考えられます。紙
葉の価値(新沢典子)
などの物質的な素材や装丁、文字・絵・図、さらにレイアウ [中世・歌書と萬葉集]中世名所歌集所収万葉歌の価値
トとともに、文学作品の本文は、その都度新たに立ち現れる (樋口百合子)
のです。しかし、それぞれの写本・刊本・近代的印刷本、今 [近世・本文系統]禁裏御本書入本の系統関係再考―近
日ではさらにコンピュータ上
世初期の書写活動(大石真由香)
のデジタル情報として現れた
作品は、それぞれの製作者の
コラム 書物、そして人に出会う旅(小川靖彦)
創作ではないのです。それは、
コラム " 掘り出し物 " を求めて(池原陽斉)
『萬葉集』ならば『萬葉集』の
一つの姿であることに変わり
Ⅲ 知っておくべき基本研究文献・伝本・基礎資料
ないのです。】……「萬葉写本
基本研究文献紹介(景井詳雅・舟木勇治・李敬美・安
学への招待―文学作品におけ
井絢子・岩田芳子・小田芳寿・池原陽斉・嘉村雅江・
る本文とは何か」より
大石真由香・小川靖彦・茂野智大)
上代文学研究法セミナー
ISBN978-4-305-70812-0 C0092
定価:本体 1,300 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・112 頁
口絵カラー 2 頁
145
伝本一覧―系統別時代順・全二十八本紹介(小川靖彦・
池原陽斉)
基礎資料紹介―複製・画像、および写本・刊本所蔵機
関についての情報(小川靖彦・池原陽斉)
新刊案内
◎ 2016 年 5 月刊行
【目次】●口絵
序 論 〈獄中〉と文学的想像力
なぜ〈獄中〉なのか/監獄制度と「近代」/本書での「
〈獄
中〉言説」
「
〈獄中〉表象」/「書くこと」の想像力と
歴史的に結びつく〈獄中〉/近代日本の〈獄中〉表象
夢想する近代日本文学
の展開/近代日本文学の〈獄中〉表象の特異性とは何
か/普遍的イメージ空間としての〈獄中〉をどう捉え
るか/本書での〈獄中〉言説のカテゴリーを定義する
第一章 明治期―〈獄中〉の主題化とその表象の展開
副田賢二
1 〈獄中〉言説の定義とその表象の系譜/ 2 近代監獄
制度の成立と浮上する〈獄中〉言説/ 3 北村透谷の「牢
獄」―孤立する〈獄中〉表象/ 4 「社会主義者」たち
〈獄中〉のことばが社会と文学のなかで特権的な意味を持ち による〈獄中〉言説の構造化/第一章・注
続けてきたのはなぜか。
第二章 大正期 1―メディア空間で記号化される
「言葉」
と「獄中記」
過剰な言葉あふれる〈獄中〉
。そのダイナミックな営みの歴 1 「大正的」言説の構造的特性をめぐって/ 2 メディ
史的記憶を明治期からたどる書。
ア空間としての『中央公論』―雑多な記号の交錯と流
通/ 3 松崎天民の流通と終焉―記号の駆使者として/
様々な意味やコンテクスト、そして同時代的な欲望が多様に 4 大杉栄『獄中記』の誕生―規範的ジャンルとしての
交錯し、化合することによって生み出されてきた、イメージ 「獄中記」/ 5 〈獄中〉の想像力のゆくえ―こぼれ落ち
と記号が重なり合う入れ子型の空間であった〈獄中〉。その る言葉/堕胎される身体/第二章・注
中で育まれた近代日本文学の想像力は、現代日本の言説空間 第三章 大正期 2―内的な自己超越のトポスに変貌す
にも、いまだ影響力を与え続けている。一体そこでは何が起 る〈獄中〉
こっていたのか。明治期から平成にいたるまで、検証してい 1 近代出版メディアと山中峯太郎(一)―変貌する自
く。付録「
〈獄中〉言説年表」
(明治期〜一九九〇年代まで)。 己記号性とその流通/ 2 近代出版メディアと山中峯太
郎(二)―〈獄中〉者と宗教者の融合/ 3 〈獄中〉に
【近代日本文学が抱え込んできた歴史性を示す言説として、 投影される内的変革のドラマ/ 4 ジャンル化される
一連の〈獄中〉言説とその表象の展開、そして消費形態を捉 〈獄中〉言説/制度化される想像力/第三章・注
え直し、そこに発動した想像力と「文学」との関係構造を検 第四章 大正期 3 〜昭和期 1―文学的トポスとしての
証することが、本書の目的である。出版ジャーナリズムと政 〈獄中〉と「闘争」のロマンティシズム
治体制との対立構造が生まれた明治初期から、一九三〇年代 1 プロレタリア文学の〈獄中〉と「闘争」をめぐる表
後半のいわゆる〈文芸復興〉期までの近代日本文学の歴史的 象/ 2 芥川龍之介と「獄中の俳人」和田久太郎/ 3 展開を中心に、
〈獄中〉言説とその表象がそこで果たした多 暴力性のゆくえと治安維持法/ 4 『新青年』における
元的機能を検証してゆきたい。そこでは、いわゆる「獄中記」〈獄中〉表象の消費/第四章・注
的言説に限らず、報道や娯楽記事、広告等をも含めた〈獄中〉 第五章 昭和期 2―プロレタリア文学から一九三〇年
に関する雑多な言説を、同時代の出版・雑誌メディアとの関 代の言説空間へ
係と相互作用という側面を重視して考察する。また、そのよ 1 昭和初期の〈獄中〉言説―メタ視線とニヒリズムの
うな〈獄中〉表象が、アジア・太平洋戦争の敗戦に伴う制度 浮上/ 2 〈獄中〉文学者・林房雄(一)―「文学」を
的転換と社会構造の変化を経由した戦後の言説空間において めぐる発信と受信/ 3 〈獄中〉文学者・林房雄(二)
どのように展開され、消費されるようになったのかについて ―氾濫するエクリチュール/ 4 「歴史」と「文学」の
も考察を加える。
】……「序論」より
接合と〈獄中〉表象/ 5 空白としての「言葉」の消費
―一九三〇年代から戦時下へ/第五章・注
第六章 昭和期 3 〜平成期―戦後日本のメディア空間
と消費される〈獄中〉
1 敗戦後の〈獄中〉表象をめぐる転換と連続/ 2 他
者性と実存の空間―椎名麟三の〈獄中〉表象/ 3 政治
性からの分離と「塀の中」のトピックス消費/ 4 見沢
知廉における〈獄中〉者の系譜とその断絶/第六章・注
終 章 〈獄中〉の想像力と「文学」のゆくえ
「監獄法」の終焉と〈獄中〉言説の歴史性/後藤慶二と
中野重治の「監獄」/「文学」のゆくえと〈獄中〉の
想像力/現代日本の文化消費における〈獄中〉
ISBN978-4-305-70806-9 C0095
定価:本体 2,200 円(税別)
あとがき
四六判・並製・カバー装・436 頁
付録○〈獄中〉言説年表(明治期〜一九九〇年代まで)
口絵 7 頁(カラー)
索引(人名/書名・作品名・記事名・絵画名)
〈獄中〉の文学史
新刊案内
146
クター化したものまで、様々に日本中に散らばる「西
行」は私たちに何を伝えるのか。渾身の一冊。
【目次】
はしがき
序論 「聖西行」の系譜
Ⅰ 地域・伝説の西行
猪苗代の西行戻り橋/阿蘇小国の西行伝承/吉崎御坊
の西行伝承
Ⅱ 昔話・歌謡の西行
「西行昔話」と西行咄/西行問答歌と「西行昔話」/西
花部英雄
行問答歌と民間歌謡
Ⅲ 旅と漂泊の西行
何が西行を変えていったのか。中世の歌人としての西行では
西行の旅と西行伝説の旅/芭蕉における旅と西行伝承
なく、
民間の西行は、
「遊行聖西行」や「旅僧の西行」
「俗聖西行」
/西行とサイギョウの伝承 「職人サイギョウ」など、修行者、はたまた狂惑の法師など
Ⅳ 信仰・民俗の西行
と多様な相貌をもって伝えられているが、その伝承の西行は
「西行泡子塚」と赤子塚/西行と親鸞の伝説/「田畑村
どのようにとらえていけばいいのだろうか。
西行庵」の顚末
本書は、西行の伝承地を直接に訪ねて、そこで調べ考えたこ
終論 西行伝承の研究史
とを、安易に史実の西行には結びつけず、
「大衆文化」を視座
西行伝承の研究史年表 初出一
におきながら伝承の西行をとらえていく。それぞれの伝承は、
覧 あとがき 索引 [ 和歌・俳句 ]
固有の生成と展開を持つ。そのすべてを、例えば西行の歌な
[ 語句・書名・人名 ]
どに安易に結びつけてしまうと、伝承の意義を過小評価して
しまうことになる。伝承のとらえかたに細心の注意をはらい
つつ、西行伝承がそれを享受する大衆によって形成されてき
たことの意味を、伝説、昔話・歌謡、旅、信仰・民俗という ISBN978-4-305-70805-2 C0095
四つ柱を立て論じていく。時代や文学ジャンルを超えて愛好 定価:本体 3,300 円(税別)
され、高度な歌とかかわるものからサブカルチャーやキャラ A5 判・並製・カバー装・272 頁
◎ 2016 年 7 月刊行
西行はどのように
作られたのか
伝承から探る大衆文化
本書の読み方について、一つの提案をしよう。これは
『源氏物語』をあいてにして、ぜんたいを小説となす
試みなのだ、と。―いや、『源氏物語』という物語
じたいが、そんな書き方をされているのではないか。
……[はしがき]より
【目次】
一 構造への序走
藤井貞和
二 比香流比古(小説)
三 源氏物語というテクスト―「夕顔」巻のうた
【……『構造主義のかなたへ』という本書の題はどう受け取
四 赤い糸のうた(小説)
られるのだろうか。もう古めかしいという感触に包まれてよ
五 性と暴力―「若菜」下巻
いし、反対に「方法に時効はない」という確信があってもよ
六 橋姫子(小説)
い。私は言語学的にも、また思想的にも、構造主義と格闘し
七 千年紀の物語成立―北山から、善見太子、常不軽
たのだと思う。一九六〇年代から七〇年代にかけての、日本
菩薩
社会でのある種の空白期、停滞期に、世界の中心の発光源の
八 源氏物語と精神分析
ようにしてフランス語圏から、
構造主義およびその周辺の〝便
九 物語史における王統
り〟が暴力的に訪れて、パリ・カルチェ
十 世界から見る源氏物語、物語から見る詩
ラタンのバリケードはあたかもアル
十一 源氏物語の分析批評
チュール・ランボオを襲ったパリ・コ
十二 物語論そして物語の再生―『宇津保物語』
ムミューンの再来のようにも思えてな
十三 『源氏物語の論』
『平安文学の論』書評
らなかった。なんと幼い日々の自分で
十四 国文学のさらなる混沌へ
あったことか。
】
十五 構造主義のかなたへ(講義録)
……「キーワード集―後ろ書きに代え
て」より
キーワード集―後ろ書きに代えて
ISBN978-4-305-70807-6 C0095
索引[総合・うた初句]
定価:本体 3,800 円(税別)
四六判・上製・カバー装・376 頁
◎ 2016 年 7 月刊行
構造主義のかなたへ
『源氏物語』追跡
147
新刊案内
◎ 2016 年 4 月刊行
戯曲を読む術(すべ)
戯曲・演劇史論
林 廣親
ISBN978-4-305-70801-4 C0093
定価 : 本体 3,700 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・296 頁
◎ 2016 年 4 月刊行
対校 水鏡〈改訂版〉
戯曲のことばを前に「なす術を知らない」思いにとらわ
れてこそ読みへの意欲は動き出す──。技術や方法では
得がたい作品の読みを模索した、記録の集積。
〈劇文学〉
という言葉が生きていた時代、戯曲は文学的感受をもっ
て読まれていた。舞台・劇評にこだわる今日の読みを離
れ、
「戯曲の読み」を柱とした戯曲論。文学・演劇に関
心を持つすべての人へ。
【目次】
はじめに
第Ⅰ部●読みによる戯曲研究の射程
第一章 森鷗外「仮面」論―〈伯林はもつと寒い……併し
設備が違ふ〉/第二章 岡田八千代「黄楊の櫛」論―鷗外・
杢太郎の影/第三章 岸田國士「沢氏の二人娘」論―菊池
寛「父帰る」を補助線として/第四章 井上ひさし「紙屋
町さくらホテル」論―〈歴史離れ〉のドラマトゥルギー
第Ⅱ部●読みのア・ラ・カルト
第一章 谷崎潤一郎「お国と五平」/第二章 横光利
一「愛の挨拶」/第三章 矢代静一「絵姿女房―ぼく
のアルト・ハイデルベルク」/第四章 田中千禾夫「マ
リアの首―幻に長崎を想う曲」/第五章 渋谷天外「わ
てらの年輪」/第六章 恩田陸「猫と針」
第Ⅲ部●演劇史・戯曲史への視界
第一章 近現代演劇史早分かり 上・下/第二章 演
劇と〈作者〉―山本有三の場合/第三章 〈演劇の近代〉
と戯曲のことば―木下杢太郎「和泉屋染物店」
・久保田
万太郎「かどで」を視座として 索引[書名・人名・事項]
現存する『水鏡』の最古抄本で鎌倉時代中期を下らぬ専
修寺本『水鏡』を底本に、
応永頃の書写といわれる善本、
蓬左本『水鏡』を対校する書。
私家版で刊行してきた
『対校水鏡上』
(昭和 62 年 2 月)
『対
校水鏡中』
(平成元年 12 月)
『対校水鏡下』
(平成 3 年 12 月)
を改訂したもの。専修寺本『水鏡』声点語彙一覧付き。
また新たに、蓬左本『水鏡』傍訓総索引を備える。
『水鏡』及び、その時代の語彙・語法の研究に必携の書。
小久保崇明・山田裕次編
【目次】
凡例
水鏡上巻
水鏡中巻
水鏡下巻
専修寺本『水鏡』声点語彙一覧
「つけたま□らん」考
蓬左本『水鏡』傍訓総索引
あとがき
ISBN978-4-305-70778-9 C0095
定価 : 本体 12,000 円(税別)
B5 判・上製・カバー装・322 頁
新刊案内
148
◎ 2016 年 5 月刊行
【目次】
序 章●医学書のなかの「文学」
第 1 章●それは「医学書」なのか、
「読み物」なのか
はじめに
第 1 節●愉快な書物―「読み物」としての医学書
江戸の医学と文学が作り上げた世界
第 2 節●『医者談義』談義―人文学と自然科学という
対立を無化する書物
第 3 節●医学書に擬態する文学作品たち、さまざま
1 売らんかなのための医書擬態―『神農花合戦』
『加
福田安典
2 題名のみの擬態―本草綱目物
3 医家書生の戯作 1―『瓢軽雑病論』
4 医家書生の戯作 2―『本朝色鑑』
5 本草書に擬態した漢詩文の傑作―柏木如亭『詩本草』
それは「医学書」なのか、
「読み物」なのか。理系×文系と 第 4 節●江戸のカルテ、医案の世界―『武道伝来記』
いう対立構造のなかでは読み解けない、面白い江戸の本の世
にみる西鶴のねらい
界!
1 医道のまじはり、医師のドラマ
第 5 節●江戸以前の医学の文芸―御伽草子『不老不死』
江戸時代には医学書や本草書の知識無しには理解できない作 1 漢方医学を装わせて描く『不老不死』―耆婆の伝
品や文化交流が存在していた。それは現代風に医学と文学と 2 医学知識は新趣向のスパイス―読者層を考える
にジャンル分けして論じていては、そのありようを把握でき 第 6 節●「医学書」と「読み物」の間にある幻想
るはずもないものである。
第 1 章・注
第 2 章●江戸期を通じて愛されたヤブ医者、竹斎
本書は、医学書に通じていなければ読み解けない作品、逆に はじめに
言えば医学書に通じていれば簡単に読み解くことのできる作 第 1 節●『竹斎』のモデルは誰か―曲直瀬流医学と関
品を紹介、また、江戸期を通じて愛されたヤブ医者竹斎(ち
わって
くさい)の周辺を詳しくたどりながら、医学と文学が手を携 1 知苦斎と竹斎
えて作り上げた豊かな世界をつぶさに検証する。本書により、 2 東下り、京見物について
いままでとはまったく違ったもう一つの「江戸時代」が導き 3 曲直瀬の落ちこぼれとしての竹斎
出される。
4 「道三ばなし」の流行
第 2 節●『竹斎』作者・富山道冶の家―仮名草子のふ
【……医学書と読み物がそれぞれの必要性から、接近あるいは
るさと
越境する現象が近世にはあったのである。というよりは、そ 1 富山家について
の当たり前の現象を、現代の学問体系から勝手に理系/文系 2 『竹斎』と富山道冶
の対立構造を押しつけて、別の領域として存在しているがご 3 富山家とその後の文芸
とくの共同幻想を抱く側にそもそもの問題があるのかもしれ 4 現存する富山家屋敷
ない。医学書と読み物との間には実は何もなく、ただ現代の 第 3 節●「芸能者」としてのヤブ医者―唄われた竹斎
学問が作り上げた「異領域」という幻想があるだけなのかも 1 唄われた『竹斎』
2 『竹斎』亜流作品と芸能
しれない。
】……第 1 章第 6 節より
第 4 節●『竹斎』と文化圏が重なる『恨の介』―戦国
1 木村常陸介の娘
本書所収▼医学書メモ一覧
『本草備要』/『歴代名医伝略』/『黄帝内経素問』/『衆方規矩』 2 医家、竹田家について
3 『恨の介』と芸能
『万病回春』/『傷寒論』/
4 『恨の介』の作者が竹田家周辺にいたと想定してみ
『神農本草経』/『本草綱目』/
る
『金匱要略』/『本朝食鑑』/
5 読者は『恨の介』に何を見ていたのか
『大和本草』/『医学正伝』/
第 5 節●江戸文芸の発展を映し出す、御伽の医師の「書
『医学天正記』/『医案類語』/
いた物」
『啓廸集』
第 2 章・注
結 章●近世文学の新領域
コラム●医学書のある文学部研究室から―いかなる手
順で医学書を操ったか
・書名索引/人名索引/事項索引
・中醫經典被「另類改編」成娛樂刊物 !?[陳羿秀]
ISBN978-4-305-70804-5 C0095
・Breaking boundaries between literature and medicine
定価:本体 2,200 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・280 頁
[ボグダン真理愛]
医学書のなかの
「文学」
149
新刊案内
◎ 2016 年 3 月刊行
為家千首(ためいえせんしゅ)
全注釈
【目次】
はじめに
凡例
入道民部卿千首
詠千首和歌
春二百首
夏百首
秋二百首
為家の和歌は決して一般に理解されているような平明温雅な古 冬百首
恋二百首
典主義のみではない―。
俊成・定家と父祖の跡を継ぎ、三代にわたり勅撰集の撰者となっ 雑二百首
た歌人、藤原為家が 26 歳で詠んだ『為家千首』初の全注釈。 補遺
『為家千首』は貞応二年(1223)八月中、五日間に詠出した現
存最古の千首和歌、しかも個人による速詠というただ一つの作 解説
であり、同時に、慈円の諫めによって出家を思い止まった 26 一 成立
歳の為家が、はじめて父定家に認められ、歌道家第三代宗匠の 二 本文と詠出実況
1 一首詠出時間
自信を得た記念すべき作品である。
藤原為家の出発点の大作の意義をも押え、俊成とも定家とも異 2 無歌題千首の意義
三 内容考察
なる、為家という人物と詠作のあり方に迫る。
「稽古」―「證歌」活用能力
本文は冷泉家時雨亭文庫蔵「入道民部卿千首」により、注釈は 1 2 万葉語摂取
【現代語訳】
【参考】
【他出】
【語釈】
【補説】の順に示す。
代表歌をもたぬ大歌人の真実に迫ることが出来る、格好の藤原 3 三代集以下摂取
4 定家・家隆・慈円継承
為家入門でもある書です。
5 新発想・新用語
6 誹諧性
[本書の特色]
7 語彙に見る言語能力
1・初の全文現代語訳付きの注釈書。
2・
【現代語訳】
【参考】
【他出】
【語釈】
【補説】の順に示し説明。 8 創作力の根源
「詠歌一躰」への進展
3・成立、本文と詠出実況、内容等を詳細に示した解説付き。 四 1 稽古
4・1000 首を自在に行き来できる、別冊各句索引付き。
2 百首詠法
【…一度は細部にこだわらず、千首を通読する事をおすすめする。 3 「新」の奨励
(中略)全体を虚心に読んでいただけばいろいろな意味で実に面 4 「制詞」の意味するもの
白い歌が多数あり、平淡な古典主義と一括し去る事は到底でき 五 結語
ないと理解されよう。そしてまた、春部では緊張し、謹直であっ
た歌風が、詠み進むにつれて次第に自在の度を増して、万葉語 参考文献
や独自句、独自発想を多用、雑部に至って楽しい誹諧性を発揮 あとがき
するまでに至る様相が、まざまざと味わい得られるであろう。
千首に見る為家歌風は、決して平淡温雅な古典主義ではない。 ※別冊各句索引付き。
そこには宗匠家後嗣なればこその、豊富な和歌資料を精読記憶活
用し得る「稽古照今」の精進と、それを生かしつつ自詠を独自の
物とする才気・誹諧性が明らかに示されている。それらは抽象的
常識的な「習練」
「練磨」のみで到達し得る性格のものではなく、
為家にとっては当然、かつ必須の修学方法であったにもかかわら
ず、以後の後進歌人らの動向が彼の真意に反して、伝統と権威に
寄りかかった二条派歌風に堕して行ったのは、まことに已むを得
ぬ所であった。けれども為家の作品、殊にもその出発点なる千首
と、到達点なる「詠歌一躰」との子細な検討無くして、彼を軽々
に論断する事はできない。今後の和歌研究者は、俊成・定家に比
し余りにも過小評価されて来た従来の為家観にとらわれず、虚心
に彼の和歌・歌論に向き合い、前掲為家関係小著・小論(省略) ISBN978-4-305-70794-9 C0092
をも併せ読み、忌憚のない吟味・批判を加えられた上で、万葉か 定価 : 本体 13,000 円(税別)
ら近世まで一千年の和歌史の中の正当な位置に、彼を据え直し、 A5 判・上製・函入・464 頁、
別冊索引・52 頁
評価していただきたいと、切に願う。
】…解説より
岩佐美代子
新刊案内
150
JunCture(ジャンクチャー)、第 7 号の特集は「国境
未満の異文化接触/衝突/浸潤」です。
【掲げたテー
マ文言の核心は「浸潤」である。接触や衝突について
(ジャンクチャー)
はこれまでも再々議論が重ねられてきたが、異文化の
浸潤が問題とされることは多くない。】
超域的日本文化研究
【目次】特集 西郷隆盛伝と「奄美」●高江洲昌哉/
敗戦後における昭和天皇の「日本」意識●河西秀哉/
特集 : 国境未満の異文化接触/衝突/浸潤
韓国・欝陵島現地調査報告 :「国境」との関わりで●
名古屋大学「アジアの中の日本文化」研究センター 福原裕二/近世・近代移行期における韓海出漁の展開
過程●木部和昭/樺太における日本人書店史ノート─
─戦前外地の書物流通 (3) ●日比嘉高/細井肇の和訳
『海游録』──大正期日本人の朝鮮観分析をめぐる断
代行販売しています
章●池内敏/柵の中で──日系人強制収容所の中の書
記空間●坪井秀人 研究論文 「彼」のデカダンとは
何か──佐藤春夫「田園の憂鬱」再考●暢雁/金史良
の日本語文学が生成された批評空間──植民地出身作
家の交流の場としての『文芸首都』●高橋梓/国家と
戦争と疑惑──太宰治『新ハムレツト』論●金ヨンロ
ン/立ち上がる団地の母親たち──『彼女と彼』にお
ける直子の曖昧な身体●今井瞳良/作者としての出演
女性──ドキュメンタリー映画『極私的エロス・恋歌
1974』とウーマン・リブ●中根若恵/『ねじまき鳥ク
ロニクル』から見る村上春樹の歴史認識──「真実」
と「事実」をめぐって●王静/連想文学の生態──カ
ISBN978-4-305-00297-6 C0095
ンブリアンゲームにおける作品創出の構造●寺尾麻里
定価 : 本体 1,800 円(税別)
ほか レヴュー等掲載。
B5 判・並製・232 頁
◎ 2016 年 4 月刊行
JunCture
◎ 2016 年 3 月刊行
昭和文学研究
第 72 集
昭和文学会編
ISBN978-4-305-00372-0 C3393
定価 : 本体 4,200 円(税別)
A5 判・並製・238 頁
151
第7号
昭和期の文学を中心とする近現代文学の研究を対象と
した学会誌。従来、会員以外は入手困難でしたが、通
常の書籍同様、書店にてご注文いただけるようになり
ました。年 2 回刊行。定期ご購入をご希望の場合は入
会されると金額的にお得です(年会費 7000 円、入会
金 1000 円)。
【目次】特集 第三の新人 「第三の新人」論―核家
族・母・そして受験―●綾目広治/「第三の新人」と
高度経済成長下の〈文学〉―戦中派・太宰治・純文学
論争―●滝口明祥/馬になる小説―小島信夫『別れる
理由』における男性性からの逃走―●村上克尚/戦後
性、身体性、「第三の新人」―島尾敏雄と庄野潤三の
一九五〇年前後―●西尾宣明/劣等兵から見出される
「希望」―安岡章太郎『遁走』―●安藤陽平/決意の
旅―安岡章太郎『アメリカ感情旅行』―●金岡直子/
遠藤周作論―〈劇〉を生成するトポス―●長濵拓磨/
吉行淳之介の 「私」 ―昭和三〇年代の吉行淳之介―●
小嶋洋輔 自由論文 「××が始まつてから」―小林
多喜二「党生活者」論―●金ヨンロン/佐多稲子「灰
色の午後」論―〈同志的夫婦〉とは何者か―●谷口絹
枝/〈甘美〉な震災の記憶を語る―堀辰雄「麦藁帽子」
論―●宮村真紀/日系アメリカ人の日本語文学雑誌
「収穫」の世界―一九三〇年代におけるコミュニティ・
メディア・女性表象―●北川扶生子【資料紹介】織田
作之助新資料「俄法師」とその周辺●斎藤理生。他に
【研究動向】【研究展望】【書評】【新刊紹介】会務委
員会だより 編集後記
新刊案内
【目次】
◎ 2016 年 3 月刊行
SP 盤演説レコード
がひらく日本語研究
はじめに●相澤正夫/[資料解説]SP 盤レコードと
岡田コレクション●金澤裕之
I 音源資料がひらく音声・発話の研究
1 幕末〜明治前期のガ行鼻音を推定する●相澤正夫
/ 2 大正期演説のピッチ―ピッチレンジおよび大隈
Exploring 78rpm record archives in Japanese language research
演説の final lowering について●高田三枝子/ 3 大
正〜昭和前期の演説・講演における漢語の読みのゆれ
相澤正夫・金澤裕之編
●松田謙次郎/ 4 戦時中の広報―東京市情報課の「巻
[執筆]相澤正夫/金澤裕之/東照二/岡部嘉幸/小椋秀樹/尾崎喜光/高 き込み」手法●東 照二
II 文字化資料がひらく文法・形式の研究
田三枝子/田中牧郎/南部智史/松田謙次郎/丸山岳彦/矢島正浩
演説の言語は、近代日本語形成史において、どのような役割 1 大正〜昭和前期の演説・講演レコードに見る「テ
を果たしたのか。日本最古のまとまった音源である大正〜昭 おる/テいる」の実態●金澤裕之/ 2 大正〜昭和前
期における助動詞マスの終止・連体形について―マス
和戦前期のレコード音声と文字化資
ルの使用状況を中心に●岡部嘉幸/ 3 従属節の主語
料を対象に、方言を中心とする音声
表示「が」と「の」の変異●南部智史/ 4 大正〜昭
研究、変異理論や談話分析に基づく
和前期の丁寧語諸表現の動態●尾崎喜光
社会言語学的研究、文法・語彙を中
III 文字化資料がひらく文体・表現の研究
心とする近世・近代語研究、話し言
1 条件表現の用法から見た近代演説の文体●矢島正
葉・書き言葉のコーパス言語学的研
浩/ 2 大正〜昭和前期における演説の文体●小椋秀
究、と多角的アプローチ。大正以前
樹/ 3 演説の文末表現の変遷―明治時代から昭和 10
の過去へ、そして現代へとつながる
年代まで●田中牧郎/ 4 大正〜昭和前期の演説に現
言語理論を切りひらく。
れる文末表現のバリエーション●丸山岳彦
ISBN978-4-305-70795-6 C0081
「あとがき」に代えて―文字化を巡るこぼればなし●
定価 : 本体 3,900 円(税別)
金澤裕之
A5 判・並製・カバー装・308 頁
◎ 2016 年 4 月刊行
【目次】
宮廷のみやびを伝える陽明文庫―序にかえて…名和修
はじめに―本書をお読みいただく方に…田島公
Ⅰ 近衞家と文庫の歴史
1 陽明文庫の沿革―成り立ちといまのありよう…名和
修/ 2 『摂関家旧記目録』の筆者は藤原忠実か―摂関
家再興の象徴…湯山賢一/ 3 禁裏文庫と近衞家―江
戸・明治期の様相…北 啓太
Ⅱ 世界記憶遺産『御堂関白記』の世界
1 『御堂関白記』の魅力あれこれ…名和修/ 2 藤原道
長『御堂関白記』が語る栄華の真実―三代の天皇を孫
で独占するまで…朧谷寿/ 3 『御堂関白記』と『枕草子』
…五味文彦
Ⅲ 朝廷を支えた近衞家―歴代当主と家司たち
1 『兵範記』紙背文書やその他の断簡からの発見…尾
上陽介/ 2 南北朝時代の公武関係―『後深心院関白記』
にみる足利義満の成長…本郷恵子/ 3 織豊期の近衞家
をめぐって―前久と信尹の武家的性格…藤井讓治
Ⅳ 書跡・漢籍・古地図の貴重書をさぐる
1 近衞家の書跡―その価値と魅力…島谷弘幸/ 2 陽
明文庫の漢籍―優品三十六点を厳選解説…芳村弘道/ 3
「宮城図」をめぐって―九条家本・陽明文庫本・東山
御文庫本への系譜…金田章裕
Ⅴ 陽明文庫の現在―未来へ向けて
1 公益財団法人陽明文庫の事業活動…名和知彦/ 2 「陽明文庫講座」実施記録…粕谷真里子/ 3 陽明文庫
と学術創成研究―目録学研究の進展と古典学の再生の
ために…田島公
近衞家名宝からたどる
宮廷文化史
陽明文庫が伝える千年のみやび 田島 公編
宮廷世界は何を生み、
守り伝えてきたの
だろうか。
陽明文庫から
その真髄を学ぶ。
ISBN978-4-305-70802-1 C0021
定価 : 本体 3,200 円(税別)
B5 変型判・並製・カバー装・
292 頁
カラー口絵 8 頁
新刊案内
152
◎ 2016 年 3 月刊行
万葉集の恋と語りの
文芸史
大谷歩
ISBN978-4-305-70796-3 C0092
定価 : 本体 5,800 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・292 頁
◎ 2016 年 3 月刊行
風土記研究 第 38号
風土記研究会編
ISBN978-4-305-00308-9 C3395
定価 : 本体 4,000 円(税別)
A5 判・並製・80 頁
153
日本人の恋の起源を解き明かす。
〈古物語り〉から〈今物語り〉へのラブヒストリー。
東アジア文学圏では特殊な、
「恋」という概念を文芸上
に成立させた日本。その源流を求め、万葉以前より語り
継がれた伝説
〈古物語り〉
から、
近時の現実性をもった
〈今
物語り〉へと至る物語り形成の系譜を辿る。明かされる
男女の恋の歴史。
【目次】
はじめに
愛のはじまりの物語り―序論
第一章 磐姫皇后と但馬皇女の恋歌の形成―〈類型〉と
〈引用〉の流通性をめぐって
第二章 桜児・縵児をめぐる〈由縁〉の物語り
第三章 真間手児名伝説歌の形成―歌の詠法を通して
第四章 嫉妬と怨情―古代日中文学の愛情詩と主題の
形成
第五章 怨恨歌の形成―〈棄婦〉という主題をめぐって
第六章 「係念」の恋―安貴王の歌と〈今物語り〉
第七章 「係恋」をめぐる恋物語りの形成―「夫の君に
恋ひたる歌」をめぐって
第八章 愚なる娘子―「児部女王の嗤へる歌」をめぐっ
て
初出論文一覧
おわりに
事項索引
学会誌として、従来、会員以外は入手困難だったものが、
通常の書籍同様、書店にてご注文いただけるようになり
ました。年一回刊行。会員には配布されるので定期購入
をご希望の場合は入会されると金額的にお得です(年会
費 3000 円)
。
【目次】
多変量解析をとおして見た九州風土記の性格―クラス
ター分析を使用して―●松田信彦
日向国風土記逸文知鋪郷考―籾を投げる行為について
―●大館真晴
豊後国風土記の漢語表現―景行紀「排草」
「車駕」との
対照をめぐって―●葛西太一
地誌と歌謡―『常陸国風土記』新治郡笠間村条について
―●衛藤恵理香
風土記関係書新刊・報告・予告
入会を希望される方は、下記の要領で事務局に申し込ん
でください。1、氏名・所属・住所・電話番号、入会希
望の旨を明記して、以下のアドレスにメールを送信する
か、あるいは事務局宛に郵送してください。
〒 880-0929 宮崎市まなび野 3-5-1 宮崎県立看護大学
大館真晴研究室内 風土記研究会
メール fudokikenkyu @ gmail.com
2、
折り返し、
事務局から振替用紙を郵送いたしますので、
年会費 3,000 円を納入願います。
会費振込先 : 郵便振替 01790-3-143187 風土記研究会
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新刊案内
◎ 2016 年 3 月刊行
誘惑する西鶴
浮世草子をどう読むか
平林香織
ISBN978-4-305-70799-4 C0095
定価 : 本体 10,000 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・428 頁
◎ 2016 年 2 月刊行
論集上代文学
第三十七冊
万葉七曜会編
ISBN978-4-305-00227-3 C3391
定価 : 本体 12,800 円(税別)
A5 判・上製・函入・248 頁
新刊案内
いたるところに施された西鶴の仕掛けは、どのように埋
め込まれているか。西鶴を「わかる作品」として読み直
すべく、その小説作法を解明し、どう読むべきかを問う。
短編なのに一人の長い人生を追ったドキュメンタリーの
ように人物を描きだす西鶴のリアリティとはどこにある
か。作品の仕掛けを掘りおこし読みの扉を次々に開く。
【目次】はじめに 第Ⅰ部 作品形成法―表象と仕掛け
第一章 『好色一代男』の方法 1 ●船に乗る「世之介」
は何を意味するか 2 ●「都のすがた人形」における「鶉
の焼鳥」は何を意味するか 第二章 『好色五人女』の
方法 1 ●「おなつ」をとりまく滑稽 2 ●「お七」の
母の小語 第三章 冒頭部の仕掛け 1 ●『男色大鑑』
「墨絵につらき剣菱の紋」を解く 2 ●『日本永代蔵』
「浪
風静に神通丸」の小さなエピソード群 第Ⅱ部 語り紡
ぐ仕組み 第一章 『西鶴諸国はなし』における伝承の
活用 1 ●「夢路の風車」における『邯鄲』
『松風』の
活用 2 ●「身を捨て油壺」と「姥が火」の伝説 第二
章 『懐硯』における語り紡ぐ仕組み 1 ●積層構造―
「伴山」の役割― 2 ●旅物語―『東海道名所記』と比
較して― 第三章 『新可笑記』巻一における反転の仕
掛け 1 ●「理非の命勝負」の理と非 2 ●「木末に驚
く猿の執心」の生と死 第Ⅲ部 〈はなし〉の広がり 第一章 〈こころ〉と〈からだ〉
1 ●西鶴浮世草子に描
かれる顔 2 ●顔の変貌―『武家義理物語』
「瘊子はむ
かしの面影」の姉と妹― 第二章 西鶴が描く愛の変奏
1 ●西鶴浮世草子における兄弟姉妹 2 ●男が女を背負
うことは何を意味するか 上代文学研究の最新成果を世に問う、年 1 冊刊行のシ
リーズ第 37 弾。
[執筆]山口佳紀/遠藤宏/新谷秀夫/谷口雅博/金
井清一/神野志隆光/林勉。
平成 25 年刊行の上代文学関係の単行本・雑誌論文を
網羅した文献目録付き。
【目次】
古代の歌における掛詞と「類音」●山口佳紀
万葉集の「孤語」(二)―予備的な調査―●遠藤宏
「あゆの風」異聞
―『萬葉集』伝来をめぐる臆見・余滴―●新谷秀夫
大国主神の「亦名」記載の意義●谷口雅博
古事記の「いたくさやぎてありなり」
―その再出の意義と構想について―●金井清一
『日本書紀』の「歴史」と「聖徳太子」
―いわゆる遣隋使をめぐって―●神野志隆光
兼右本敏達紀訓点の敬語表現―用言―●林勉
上代文学研究年報二○一三年(平成二十五年)単行本
等・雑誌論文等●万葉七曜会編
執筆者紹介
154
◎ 2016 年 2 月刊行
【目次】はじめに
第一章 散切物と古典
第一節 「於岩稲荷験玉櫛」と五代目尾上菊五郎―「四
谷怪談」大詰の演出をめぐって― はじめに/一、
「於
岩稲荷験玉櫛」/二、五代目菊五郎の怪談狂言における
敵討/ 三、
「祭礼の場」のその後/おわりに 第二節
黙阿弥「東京日新聞」考―鳥越甚内と景清― はじ
幕末・明治期歌舞伎史
めに/一、散切物の定義とその初作/二、
「東京日新聞」
/三、甚内と景清/おわりに 第三節 黙阿弥散切物
と古典 はじめに/一、初期作品における古典的イメー
ジの利用/二、西南戦争以降/三、筆売り幸兵衛の誕生
日置貴之
/おわりに 第四節 三遊亭円朝「英国孝子之伝」の歌
舞伎化 はじめに/一、円朝「英国孝子之伝」について
「飜訳西洋話」
「江戸の芝居」を見ることができないとすれば、いま私たちが /二、歌舞伎への脚色と従来の評価/三、
の内容/四、
「西洋噺日本写絵」の真の姿/五、団十郎
見ているものは何か。
現代に生きる私たちが歌舞伎を見る空間とは明治以降に形作ら の切腹の演技/おわりに
れたそれ以外にはあり得ず、そこで演じられる芝居も、そうし 第二章 戦争劇と災害劇
た空間で近代に形作られてきたものでしかあり得ない。では
「明 第一節 上野戦争の芝居―黙阿弥・其水の作品を中心に
― はじめに/一、
「狭間軍紀成海録」/二、
「明治年間
治の芝居」とは何なのか。
東日記」/三、
「皐月晴上野朝風」/四、その他の上野
「会津産明治組重」考
本書は日本の歴史上屈指の激動の時代の、幕末・明治期の歌舞 戦争物狂言/おわりに 第二節 伎の全貌を、あらためて捉えなおすべく編まれた。当時「正統」 ―其水の日清戦争劇にみる黙阿弥の影響― はじめに
派が読みなおしていた古典作品の様相や、
「正統」派だけでなく、 /一、日清戦争劇の上演と「会津産明治組重」/二、会
「組重」の意味/四、黙阿弥からの
「傍流」とされてきた上方劇壇、今日では忘れられた存在となっ 津戦争と騙り/三、
ている戦争劇や災害劇にも目を向け、今日の私たちが見ている 継承/おわりに 第三節 幕末・明治の芝居と災害 は
じめに/一、幕末・明治の芝居と現実の災害/二、災害
歌舞伎との新たなつながりを見い出す。
の演出/三、災害劇と戦争劇/四、戦争劇との共通性―
【……だが、
「明治の芝居」にしても、そうした、
「江戸時代の 「真に迫る」ということ―/おわりに
芝居」の次に現れて、今日の歌舞伎につながるもの、というよ 第三章 上方劇壇と「東京」
はじめ
うな図式でのみ捉えられるものではないのではないか。団十郎、 第一節 明治初期大阪劇壇における「東京風」
菊五郎が今日の歌舞伎の基礎を築いたことも、彼らの存在が従 に/一、新作狂言の増加/二、三栄、河竹能進・勝諺蔵
「東京風」か
来の演劇史の中で大きな位置を占めていることもわかるが、で 親子と黙阿弥受容/三、劇場と興行/四、
は、彼らの演じた芝居は同時代の他の人々のそれと何が違った ら東京への「還流」/おわりに 第二節 上方における
のか。あるいは、彼らの演じた芝居でも、今日まで残らなかっ 初期の散切物について―「娼妓誠開花夜桜」を中心に―
「娼
たものは無数にあるわけで、そういった作品はどういったもの はじめに/一、上方における散切物の始まり/二、
であったのか、また、なぜ残らなかったのか。明治期の東京以 妓誠開花夜桜」/三、古典の利用と描かれた東京/お
外の地域、たとえば大阪や京都、あるいはそういった大都市の わりに 第三節 狂言作者佐橋富三郎 はじめに/一、
役者が旅芝居で回ったような地方では、どういった芝居が演じ 佐橋富三郎の経歴/二、佐橋富三郎の作品/おわりに
られていたのか。こういった疑問について見ていくと、明治期 第四節 桜田門外の変の劇化について はじめに/一、
の歌舞伎が、日本の歴史上屈指の激動の時代にふさわしい、多 上方の明治維新物狂言/二、黙阿弥による「暗示」/
三、上方における劇化(一)―旅芝居から中芝居、そ
様な姿を持ったものであることが
して大芝居へ―/四、上方における劇化(二)―内容
わかってくる。と同時に、そうし
の変遷―/五、東京での上演/おわりに 第五節 明
た多様性の中から、ある方向への
治期大阪の歌舞伎と新聞―続き物脚色狂言の誕生― 「統一」の機運も現れてくる(そ
はじめに/一、明治期大阪の新聞と演芸/二、新聞続
れこそが私たちが漠然と思い描
き物の歌舞伎化/三、原作との距離/おわりに 第六
く、今日の芝居の礎となった「明
節 明治期上方板役者評判記とその周辺 はじめに/
治の芝居」である、といえるかも
一、明治期の役者評判記/二、明治期上方板役者評判
しれない)
。本書では、そうした
記(一)―櫓連系―/三、
明治期上方板役者評判記(二)
変わりゆく時代のなかの歌舞伎の
―中井恒次郎系―/おわりに 第七節 東京の中の「上
姿を描き出していきたい。
】……
方」―鳥熊芝居以降の春木座について― はじめに/
はじめにより
一、鳥熊芝居とその影響/二、鳥熊以後の春木座/三、
ISBN978-4-305-70798-7 C0095
「大阪風」と「東京風」/おわりに 定価 : 本体 6,500 円(税別)
附録 東京都立中央図書館加賀文庫蔵『合載袋』―明
A5 判・上製・カバー装・348 頁
治期狂言作者の手控え―
変貌する
時代のなかの歌舞伎
155
新刊案内
◎ 2016 年 4 月刊行
奈良・平安朝漢詩文と
中国文学
波戸岡旭
東アジアという漢字文化圏の中における日本文化をどうとらえ
るか。
政治外交史的な見方では知り得ないかたちの中にこそ、豊かな
文化交流の実態は見いだすことが可能である。全体を、第一篇
「
『懐風藻』と『万葉集』
」
、
第二篇「嵯峨天皇と空海」
、
第三篇「島
田忠臣・菅原道真」
、第四篇「白居易」
、第五篇「杜甫と芭蕉」
にわけ、文学世界の豊かさを論じ尽くす。
最古の漢詩集『懐風藻』
、そして平安初期の漢風謳歌の時代の
本質、ことに嵯峨天皇と三勅撰漢詩文集の研究、平安朝漢文学
最高峰の菅原道真『菅家文草』
『菅家後集』の研究、更に平安
朝漢文学が享受した白居易詩研究と続けてきた著者の第三冊目
の著作。
ISBN978-4-305-70800-7 C0095
定価 : 本体 8,500 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・374 頁
及び『懐風藻』の遣唐使関連詩歌/三 藤原宇合・吉
備真備・阿倍仲麻呂/四 空海/五 菅原清公/六 結
語 第二章 嵯峨御製の梵門詩 一 前言/二 桓武
天皇と梵釈寺/三 嵯峨天皇の仏教観と梵門詩/四 結語 第三章 渤海使節と三勅撰漢詩文集 ―『文華秀
麗集』と王孝廉・釈仁貞とを中心に― 一 前言/二 不刊の書『文華秀麗集』/三 渤海関連詩収載の意義
第四章 空海の詩文―その文学性と同時代への影響
― 一 前言/二 修辞と達意と/三 無常観と無常
感/四 山岳清浄と梵門詩 第五章 空海の山岳詩 一 前言/二 山岳修行僧/三 空海の山岳観/四 白雲の人/五 空海と良岑安世 第六章 空海の文学
観―『文鏡秘府論』を中心に― 一 前言/二 空海
の文学観と『文鏡秘府論』南巻「論文意」/三 『性霊
集』中に見える詩論/四 結語 (附)
『玉造小町子壮
衰書』の出典に就いて 一 前言(小町説話の生成と『玉
造小町子壮衰書』
)/二 白居易「秦中吟」の投影/三
張文成『遊仙窟』の影響/四 空海『三教指帰』の投
影/五 結語
第三篇 島田忠臣・菅原道真
第一章 島田忠臣の釈奠詩 一 前言/二 島田忠臣
の釈奠詩/三 文章生時代の作/四 兵部少輔時代の
作/五 典薬頭時代の作/六 結語 第二章 白居易
「閑適」詩と島田忠臣の詩境―島田忠臣詩に見える白居
易詩境からの禅の受容― 一 前言―白居易の詩境の
特長―/二 白詩渡来と島田忠臣/三 島田忠臣の白
詩讃仰/四 忠臣の閑適詩と禅―『荘子』語の多用の真
意―/五 結語 第三章 菅原道真「讃州客中詩」―「行
春詞」を中心に― 一 前言/二 若き日の道真が描い
た良吏像/三 讃岐守菅原道真の詩境/四 行春詞の
構造/五 「路遇白頭翁」と「藺笥翁問答詩」と/六 結語 第四章 菅原道真「秋湖賦」―感は事に因りて発
し、興は物に遇うて起こる― 一 前言/二 秋湖賦の
構造と典故/三 結語―秋湖賦の主題 第五章 白居
易詩と菅原道真詩と―湖上詩を中心として― 一 前
言/二 曲江と白居易詩/三 江州時代の白居易の湖
上詩/四 菅原道真の湖上詩/五 結語
【目次】
第一篇 『懐風藻』と『万葉集』
第一章 『懐風藻』の国際感覚 一 前言/二 日本の帝国意
識と中華思想/三 記紀の「神功皇后の三韓出兵」記事につい
て/四 『懐風藻』序文の作者の国際感覚/五 新羅使たちと
の応酬詩/六 結語 第二章 『懐風藻』序文の意味するとこ
ろ 一 前言/二 『懐風藻』編者の歴史観/三 天智天皇の
文治政策/四 『懐風藻』編纂者の文学観/五 『懐風藻』と平
安勅撰三詩文集 第三章 『懐風藻』の自然描写―長屋王邸宅
宴関連詩を中心に― 一 前言/二 大津皇子の自然描写の修
辞技法/三 宴詩と国際性/四 長屋王宅の詩宴における自然
描写/五 結語 第四章 大伴旅人「遊於松浦河」と『懐風藻』
吉野詩 一 前言/二 望郷・亡妻挽歌/三 遊於松浦河歌/
四 結語 第五章 大伴家持「越中三賦」の時空 一 前言/
二 大伴家持と中国文学/三 「越中三賦」について/四 結
語/講演資料
第四篇 白居易
第一章 白居易閑適詩序説 一 前言/二 白居易十
代の作/三 白居易二十代の作―省試及第以前―/四
省試及第頃の詩/五 結語 第二章 白居易閑適詩
と禅 一 前言/二 『孟子』
「尽心章句上」における「兼
善・独善」/三 閑適詩と行禅/四 結語
第五篇 杜甫と芭蕉
第一章 杜甫の近世俳人に及ぼした影響 一 前言/
二 深川時代の芭蕉と杜詩/三 杜甫の侘びと芭蕉の
侘び/四 芭蕉の紀行文に見える杜甫の影響/五 芭
蕉以後の俳人における杜甫の影響 第二章 杜甫「登岳
陽楼」と芭蕉『おくのほそ道』
「松嶋」と 一 前言/
二 「登岳陽楼」詩の解釈/三 『おくのほそ道』
「松嶋」
と杜甫「登岳陽楼」
第二篇 嵯峨天皇と空海
第一章 遣唐使節の人たちの文学 一 前言/二 『万葉集』 あとがき 初出一覧
新刊案内
156
◎ 2016 年 2 月刊行
【目次】
前書
総論
古代漢詩文の思想理念とその展開
一 はじめに/二 斉魯之学―二つの側面/三 皇猷―
文学と憲章法則/四 雕章麗筆―文学の自立/五 近江
風流/六 平城の詩風/七 むすびに
第一部 詩人論
第一章 大友皇子の伝と詩―近江風流を今に伝える詩
胡志昂
人―
一 はじめに/二 伝記/三 侍宴詩/四 述懐詩/
五 むすびに
古代日本漢詩文の魅力は、その豊かな国際性にある。
第二章 大津皇子の詩と歌―詩賦の興り、大津より始れ
り―
大規模な遣唐使船団が海原を行き来していた時代。
一 はじめに/二 古今集序の言質―大津皇子初めて
時代の先端を行く、異文化交流を担い、新しい時代文化の創造 詩賦を作った/三 伝記の吟味/四 五言詩・春苑言宴
に直接関わってきた人々の学識や人となり、彼らの遭遇した紆 /五 五言詩・遊獵/六 「述志」は幼時の習作か/七
余曲折及びその心中の喜怒哀楽といった感情の起伏と色彩は、 臨終の絶句/八 むすびに
文学研究からしか伝わってこない。
第三章 釈智藏の詩と老荘思想
本書はそのようなスタンスから、古代日本の文化、ひいては中 一 はじめに/二 生い立ち/三 遣唐留学の期間と
日交流が緊密で頻繁であった古代東アジア文化圏の一端を明ら 行状/四 五言詩二篇の趣向/五 仏教と玄学/六 かにする。
むすびに
第四章 大神氏と高市麻呂の従駕応詔詩
【……大規模な遣唐使船団が海原を行き来していた時代の異文 一 異色の従駕応詔詩/二 大神高市麻呂その人と評
化交流の様相は、当時の史料が豊富に現存しているため、すで 判/三 諫争事件/四 大神氏と三輪山信仰/五 三
に相当に確実に解明されてはいる。しかし、時代の先端を行く 輪氏と大和政権/六 むすびに
異文化交流を担い新しい時代文化の創造に直接関わってきた 第五章 最盛期の遣唐使を支えた詩僧・釈弁正
人々の学識や人となり、彼らの遭遇した紆余曲折及びその心中 一 はじめに/二 「滑稽」の意味/三 五言詩「与朝
の喜怒哀楽といった感情の起伏と色彩が歴史学的研究から伝 主人」
の制作背景/四 「朝主人」
と李隆基/五 絶句
「在
わってこない。これは文学研究の領域であり、文学作品を実際 唐憶本郷」に見る表現趣旨/六 むすびに
に読む楽しみでもある。言い換えれば、つまり詩賦や和歌の生 第六章 奈良王朝の「翰墨之宗」―藤原宇合
まれる時代社会背景を視野に入れつつ文学の作品を読めば、そ 一 はじめに/二 遣唐副使の収穫/三 東国総官の
の時代社会の様相を人々の感情の色彩も含めてもっと生動的に 活躍/四 長屋王時代/五 藤氏四子の時代/六 西
読み解くことができるのである。その意味で文学は歴史に肉付 海道節度使の苦悩/七 むすびに
け、感情を添える花とも言えるであろう。
】……「前書」より 第二部 主題論
第一章 藤原門流の饗宴詩と自然観
一 はじめに/二 不比等の「元日応詔」/三 房前の
侍宴詩と公宴詩/四 藤原家の私宴詩/五 むすびに
第二章 暮春三月曲水宴考
一 歳時上の春/二 暮春上巳の祓禊/三 漢代の上
巳と禊/四 三月三日と上巳/五 流觴曲水の宴/六
日本上代の曲水宴/七 歳時行事の移り変わり/八
むすびに
第三章 遊士と風流
一 はじめに/二 先秦遊士―その発生と活躍/三 秦漢遊士の変質/四 魏晋風流の展開/五 斉梁風流
の成立/六 むすびに
古代日本漢詩文と
中国文学
所収論文一覧 後書
ISBN978-4-305-70792-5 C0095
定価 : 本体 8,000 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・352 頁
157
第三部 国際学会論文
第一章 遣唐大使多治比广成的述怀诗―透视遣唐使最
盛期的政治与文学―
第二章 关于少女投水传说歌辞的几点探讨
第三章 《古今集》两序与中国诗文论
新刊案内
◎ 2016 年 2 月刊行
妖怪・憑依・擬人化
の文化史 伊藤慎吾編
[執筆]
伊藤慎吾/飯倉義之/伊藤信博/今井秀和/北林茉莉代
佐伯和香子/塩川和広/杉山和也/永島大輝/毛利恵太
古代から現代、『日本書紀』から『妖怪ウォッチ』まで
文学・絵画・民俗資料や、小説・マンガ等の中で
異類たちはどのように表現され、
背後にどのような文化的要素があったのか
異類の文化を解き明かす、初の入門書!
【本書では人間に対する異類、人間に擬えられた異類を対象
としている。異類として表現された実在/非実在の動物は人
間から離れて存在しないのである。物理的に未踏の山奥や海
底に棲むとされるものといえども、目撃され、あるいは想像
されることで立ち現れるのだ。以下では日本の精神文化を映
し出す鏡として異類を見ていくことにしたい。】
…「異類文化学への誘い」より
ISBN978-4-305-70797-0 C0091
定価 : 本体 2,200 円(税別)
A5 判・並製・カバー装・362 頁
【目次】
異類の出現する時―本書の手引き●伊藤慎吾
総論 異類文化学への誘い●伊藤慎吾
Ⅰ妖怪
総 説
描かれる異類たち―妖怪画の変遷史●飯倉義之
前近代から現代へ
変貌するヌエ●杉山和也
コラム1「ねこまた」
ネコマタとその尻尾の描写の変遷●毛利恵太
新刊案内
コラム2「くだん」
「くだん」が何を言っているかわからない件
●永島大輝
現代から前近代へ
ゆるキャラとフォークロア
―ゆるキャラに擬人化される民間伝承―●飯倉義之
コラム3「妖怪ウォッチ」
『妖怪ウォッチ』と『ポケモン』の動物妖怪
●今井秀和
コラム4「東方キャラ」
東方プロジェクトの妖怪キャラクター●伊藤慎吾
Ⅱ憑依
総 説
憑依する霊獣たち―憑き物、神使、コックリさん―
●今井秀和
前近代から現代へ
狐憑き―近世の憑きもの・クダ狐を中心に―
●佐伯和香子
コラム5「狐憑き」
狐憑きと脳病●伊藤慎吾
コラム6「馬の神の託宣」
馬の神の託宣●伊藤慎吾
現代から前近代へ
ペットの憑霊―犬馬の口寄せからペットリーディン
グまで―●今井秀和
コラム7「犬神憑き」
犬神系の一族●永島大輝
コラム8「実話怪談・都市伝説」
動物霊が友達になるまで●飯倉義之
Ⅲ擬人化
総 説
擬人化された異類●伊藤慎吾
前近代から現代へ
擬人化された鼠のいる風景―お伽草子『隠れ里』再
考●塩川和広
コラム9「花月往来」
『花月往来』の魅力―花と月の合戦―●北林茉莉代
コラム 10「近世擬人物」
なぜ江戸時代に擬人化がひろがったのか●伊藤信博
現代から前近代へ
物語歌の擬人化表現―童謡とコミックソングのはざ
まで―●伊藤慎吾
コラム 11「妖怪擬人化」
妖怪の擬人化、そして人間化●飯倉義之
コラム 12「擬人化コスプレ」
擬人化コスプレの登場●伊藤慎吾
西欧の擬人化事情
西欧の擬人化表現と日本漫画の影響●伊藤信博
もっと知りたい人のために
参考文献ガイド
異類文化史年表
あとがき
執筆者一覧
索引【異類・人名・作品名】
158
◎ 2016 年 1 月刊行
上田秋成研究事典
【目次】
『雨月物語』とその作者を知るために
秋成研究会編
○執筆者
飯倉洋一/糸川武志/稲田篤信/井上泰至/加藤十握/木越 治
木越秀子/紅林健志/郷津 正/近衞典子/宍戸道子/高松亮太
長尾直茂/長島弘明/野澤真樹/丸井貴史/三浦一朗
泉鏡花、芥川龍之介、谷崎潤一郎、三島由紀夫、村上春樹。
名だたる作家たちが傑作だと評価した『雨月物語』の奥行
きを知るにはどうしたらいいのか。普通に読んで「なんと
なく面白かった」という感想をこえ、なぜその作品を「面
白い」と思ったのか、それを分析的に自分で解説していく
にはどうしたらいいのか。
本書は、文人秋成の業績を総体として捉え、あらゆる角度
から分析するために編まれた事典であり、また同時に、文
学作品を読んで「なんとなく面白かった」という地点から、
その作品の魅力や豊かさを自分のことばで最大限引き出し
ていく、
「研究」に向かうための入門書です。
『雨月物語』
『春雨物語』の両代表作は、重要な論点とそれ
を示した論文を整理・紹介しました。そこでは、ふつうの
読み方を超える、新しい「読み」の可能性に挑戦した論文
をたくさん取り上げています。それらの要点をわかりやす
く紹介しつつ、
『雨月物語』の各作品が、どのように読まれ
てきたかがわかるようにしました。また『雨月物語』につ
いては、作品分析のためのマニュアルと、分析の実例を挙げ、
作品を読んだ後、それを参照しつつ自分なりの分析に取り
かかれるよう配慮しています。
また秋成の浮世草子・和歌・俳諧・随筆・和文・学問的著作、
そして秋成自身の生涯についても、今日明らかになってい
る情報のレベルを呈示し、
「研究」のための一助としました。
その他、
『雨月物語』の典拠である中国の白話小説の原文・
書き下し文・語釈・日本語訳を掲載するほか、上田秋成を
研究していくうえで知っておきたい主要文献のガイドも収
録しています。
上田秋成を知るための手引であ
ると同時に、文学「研究の手引」
でもある、かつてない、文学を
今まで以上に楽しむヒントに満
ちた事典です。
ISBN978-4-305-70790-1 C0095
定価:本体 2,800 円(税別)
菊判・並製・カバー装・432 頁
159
序 古典を愛する若者にむけて―『雨月物語』のすすめ
1『雨月物語』
『雨月物語』作品別研究史について
作品分析のためのマニュアル
研究史概説
白峯/菊花の約/浅茅が宿/夢応の鯉魚/仏法僧/
吉備津の釜/蛇性の婬/青頭巾/貧福論
2『春雨物語』
研究史概説
血かたびら/天津処女/海賊/二世の縁/目ひとつ
の神/死首の咲顔/捨石丸/宮木が塚/歌のほまれ
「月の前」
「剣の舞」
「楠
/樊噲/その他の作品(「妖尼公」
公雨夜かたり」
「背振翁伝」
(
「茶神の物語」
)
)
コラム 卒業論文を書くまえに
3 浮世草子作品
4 『書初機嫌海』
5 『癇癖談』
6 和歌・俳諧・狂歌
7 『胆大小心録』
コラム 社会人のための「学問のすすめ」
―あるいは、「趣味・学問」と書けるようになる
ためのマニュアル
8 秋成の和文
9 秋成の伝記
10 秋成の学問
11 秋成と近代作家
コラム 現代語訳と研究―上田秋成から考える
12 典拠作品の世界―原文・書き下し文・語釈・日本語訳
1 愛卿伝『剪燈新話句解』【「浅茅が宿」の典拠】
2 牡丹燈記『剪燈新話句解』
【「吉備津の釜」の典拠】
3 魚服記 付 薛録事魚服証仙(抄)
【「夢応の鯉魚」の典拠】
4 范巨卿鶏黍死生交【「菊花の約」の典拠】
5 白娘子永鎮雷峰塔【「蛇性の婬」の典拠】
付録 文献ガイド
1 単行研究書
2 関連単行書
3 科学研究費による報告書
4 雑誌特集号
5 参考文献目録・索引・研究書復刻
6 本文・注釈・影印など
7 外国語に翻訳された秋成
付録 上田秋成略年譜
新刊案内
◎ 2016 年 1 月刊行
【目次】
凡例 はじめに
第一篇 周辺歌人と場と
第一章 始発期を中心に 第一節 大内の花見 ─最初
の詠歌をめぐって─/第二節 『仙洞十人歌合』の特
質と表現 ─判者の推定に及ぶ─/第三節 後鳥羽院の
野朋美
和歌活動初期と寂蓮
第二章 時空間の共有意識 第一節 「熊野懐紙」の
『新古今和歌集』成立前後、後鳥羽院と同時代の歌人たちは 和歌 ─後鳥羽院の熊野御幸途次当座歌会をめぐって
─/第二節 後鳥羽院御所の空間的特質(一)─水無
どのような和歌活動を展開したのか。
勅撰和歌集の歴史において特異な下命者である後鳥羽院の存 瀬をめぐって─/第三節 後鳥羽院御所の空間的特質
在和歌活動を中心に据えて眺めるとどのようなことが見えて (二)─最勝四天王院をめぐって─
第二篇 『新古今和歌集』とそれ以後
くるのか。
『新古今和歌集』成立前後のさまざまな問題点について、後 第一章 『新古今和歌集』の思想 第一節 『新古今和
鳥羽院をめぐる周辺の歌人たちと後鳥羽院自身の動向の二つ 歌集』と鎮魂 ─西行・慈円をめぐって─/第二節 伊
勢神宮と和歌 ─『新古今和歌集』神祇部神宮関連歌群
の観点を時代に即して考察する。
とその周辺─
第二章 『新古今和歌集』以後 第一節 建暦二年の
後鳥羽院/第二節 実朝懐柔と和歌 ─建保三年『院
四十五番歌合』の場合─
第三章 隠岐における和歌活動 第一節 『遠島百首』
の方法─改訂されなかった歌を通して─/第二節 神
仏への信仰 /第三節 後鳥羽院における源俊頼 ─『後
鳥羽院御口伝』から「俊頼影供」へ─
ISBN978-4-305-70791-8 C0092
むすびに 「置文」を契機として ─後世の後鳥羽院受
定価:本体 9,000 円(税別)
容・点描/初出一覧 あとがき 索引
A5 判・上製・カバー装・512 頁
後鳥羽院とその時代
◎ 2016 年 2 月刊行
中世釈教歌の研究
寂然・西行・慈円
山本章博
釈迦の教えの和歌(= 釈教歌)から、浄土を観る。
和歌は長い伝統の中でいつしか仏教と結びつき、仏教文化の
一つとしても意義づけられ存在し続けた。なぜ仏教の教義や
言葉と和歌はここまで接近し、同等と見なされるようになっ
たのか。平安末期から鎌倉初頭、寂然・西行・慈円が生きた
時代の釈教歌から考える。
ISBN978-4-305-70793-2 C0092
定価 : 本体 6,000 円(税別)
A5 判・上製・カバー装・280 頁
新刊案内
【目次】
はじめに 凡例
序 章 中世初期の和歌と仏教―その研究史
第一部 寂然
第一章 寂然『法門百首』の形成と受容
第二章 寂然『法門百首』と天台思想―浄土を観る 第三章 恋と仏道―寂然『法門百首』恋部を中心に
第二部 西行
第四章 『聞書集』
「法華経二十八品歌」の詠法をめぐって
第五章 西行「あみ」の歌をめぐって
第六章 西行と海浜の人々
第三部 慈円
第七章 慈円『法華要文百首』と法華法
第八章 慈円『法華要文百首』と後鳥羽院
第九章 慈円「金剛界五部」の歌をめぐって
終 章 宗教テクストとしての和歌 初出一覧 あとがき
和歌・歌謡・俳諧索引
書名索引
人名・仏名・事項索引 160