Morningstar Equity Research Report 2016.11.1 安定性重視し宿泊主体・特化型ホテルに集中投資 投資判断(10/31) いちごホテルリート投資法人(3463・東証REIT) 投資口価格 投資単位 119,500円 時価総額 307.8億円 1口 (10/31) 年初来高値 年初来安値 199,800円 (10/31) 新規 Neutral 分配金利回り (予) 116,000円 (16/5/31) 4.8% (16/10/27) (10/31) 資産規模倍増、 「心築 (しんちく) 」 のノウハウが軸 ■16年7月期はRevPAR上昇し変動賃料増大 16 年 7 月期(16 年 2 - 7 月)決算は、営業収益 774 百万円、営業利益 472 百万円だった。当 REIT(不動産 投資信託)は 15 年 11 月に上場し、前 16 年 1 月期は実 質的な資産運用期間が約 2 カ月間にとどまるため単純 比較はできない。16 年 3 月に修正した予想に対しては、 営業収益で 44 百万円、営業利益で 49 百万円それぞれ 上回り、一口当たり分配金は 2,825 円と予想を 370 円 上回った。ホテルの GOP(注1) または売上高に連動する変 動賃料が押し上げられた他、修繕費の削減が寄与した。 ホテル運営面では、保有物件全体で客室稼働率が 90 %を超え頭打ち傾向が見られる中、ADR(注2)向上を重 視。客室改装などの投資も進めた結果、重要な KPI であ る RevPAR(注3) は前年同期比 4.8%増、変動賃料の導入 物件に限れば同 10.0%増と 2 ケタの伸びを示した。 ■資産規模倍増、 いちごグループの 「心築」 のノウハウ活用 当 REIT の当面の主要投資対象は、市況変動に比較的 強く安定収益が見込める宿泊主体・特化型ホテル。リゾ ートホテルなどにも投資する他のホテル特化型の上場 REIT とは、やや性格が異なる。スポンサーであるいち ご(2337)グループによる「心築(しんちく)(注4)」の ノウハウを活用できる点が強み。投資対象物件の賃料形 態では、ホテル業績に連動する変動賃料を部分的に導入 しており、ポートフォリオ全体に占める変動賃料の割 合は約 4 割を目途にしている。ホテルオペレーター(注5) との協働によるコスト削減やレジャー需要の取り込み強 化に加え、客室改装や倉庫など非収益スペースの客室化 を進めホテルの収益力を高めることで、着実な内部成長 による賃料収入の上積みを狙う。 16 年 8 月に、 公募増資(170 億円規模) 、 新規借入(110 億円)による調達資金を原資にホテル 10 物件を取得し、 保有物件数が合計 19 物件まで拡大。資産規模(注6)は 上場時の 204 億円から 476 億円へと 2.3 倍に増加(鑑定 (円) 220,000 199,800 200,000 180,000 160,000 140,000 120,000 100,000 25日線 (千口) 5日線 4 5 6 10 出来高 25日平均線 3 20 116,000 7 8 9 0 10 5日移動平均線 25日移動平均線 出来高 (25日平均) 117,480円 127,100円 1,892口 NOI(注7)を取得価格で除した、平均鑑定 NOI 利回りは 5.7%)した。資産規模 1,000 億円の早期実現を目指し、 当 REIT に投資する機関投資家層の拡充や格付け取得に つなげていく考え。スポンサーパイプライン(注8)として、 いちごから取得可能な物件が現状でも約 300 億円規模 控え、外部成長を加速させる用意が整う。 運用見通しを一口当たり分配金から見ると、17 年 1 月 期(16 年 8 月 - 17 年 1 月 ) は 2,917 円( 前 期 は 2,825 円)と前期から増額。17 年 7 月期(17 年 2 - 7 月) は、追加取得物件にかかる固定資産税が費用化されるこ とから、 対前期比では 2,838 円に鈍化する見込み。ただ、 17 年 7 月期予想は直近決算発表時に前回予想から 229 円増額したものの、前年同期実績を基準にホテル運営の 前提を反映(ADR は前年同期比横ばい、稼働率の調整 に伴い RevPAR は同 3.5%増)するにとどまり、ホテル 市況の上昇などは織り込んでいない保守的なものであ る。足元の投資口価格は 16 年 7 月の増資発表以降に調 整局面が続くが、10 月 31 日終値基準での年間の予想分 配金利回りは 4.8%(分配金を単純合算)と、東証上場 REIT 全体の平均値である 3.5%前後の水準と比べて値ご ろ感も強まりつつある。投資判断は新規「Neutral」と する。 (松尾 繁) ( 注 1)GOP(Gross Operational Profit):売上高営業粗利益 ( 注 2)ADR(Average Daily Rate) :平均客室販売単価 ( 注 3)RevPAR(Revenue Per Available Room) :1 日当たり販売可能 客室数当たり宿泊売上高合計 ( 注 4) 心築(しんちく):いちごの技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心を込めた価値向上を図り、既存不動産に新しい価値を創造するこ とを示す造語 ( 注 5) ホテルオペレーター:オーナーからホテル資産を賃借し、ホテルの経営・運営を行う事業者 ( 注 6) 資産規模:資産取得価格の累計額 ( 注 7)NOI(Net Operational Income):営業純利益 ( 注 8) スポンサーパイプライン:REIT が他社に先駆けて取得することを目的に、スポンサーが購入・開発し準備している資産 運用状況(10/31時点) 営業収益 営業利益 経常利益 純利益 前期比(%) 前期比(%) 前期比(%) (百万円) (百万円) (百万円) (百万円) 前期比 (%) 1口当たり 純利益(円) 16 年 1 月期 実績 197 - 102 - 66 - 65 - 1,352 16 年 7 月期 実績 774 - 472 - 392 - 391 - 2,825 17 年 1 月期 会社予想 1,547 99.7 933 97.4 759 93.7 758 93.9 2,946 17 年 7 月期 会社予想 1,638 5.9 909 ▲ 2.6 732 ▲ 3.7 731 ▲ 3.7 2,838 ※ 16 年 1 月期の実質的な資産運用期間は 63 日間 本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載された意見 は作成日における判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載された意見・データは、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、安全性等について保障するものではあ りません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar.Inc に帰属しますので、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます。 (1/3) Morningstar Equity Research Report 2016.11.1 いちごホテルリート投資法人(3463・東証REIT) ■ REIT概要 いちごホテルリート投資法人(3463)はホテル特 化型の J-REIT(不動産投資信託) 。15 年 7 月設立、同 年 11 月 30 日付で東京証券取引所不動産投資信託証券 市場に上場した。不動産関連事業を多角展開するいち ご(2337)をスポンサーとし、いちごグループの不動 産価値向上ビジネス「心築(しんちく) 」を軸としたビ ジネスモデルを最大限活用しホテル用不動産に投資を行 う。いちごは、 物件の選定から遵法性不適合状態の改善、 ホテルの契約・運営面の見直しまで手を入れ、REIT の 投資に堪えるよう資産価値を高める。いちご傘下で当 REIT の運用会社であるいちご投資顧問は、いちごオフ ィスリート投資法人(8975)の運用も担うが、当 REIT とは運用チームが異なる。 上場から当面は安定需要が見込める宿泊主体・特化型 ホテルを中心に投資し、安定運用が軌道に乗った段階 で、より成長性を追求できるリゾートホテル、フルサー ビスホテルにも投資を行う方針。ポートフォリオ(16 年 8 月の資産取得後の全 19 物件、取得価格ベース)の 組入比率を地域別に見ると、上位は近畿 39.4%、北陸・ 東海 20.6%、東京 15.1%と適度な分散がなされている。 賃料契約形態では固定賃料収入 6 割、変動賃料収入 4 割 を目途に運用している。取得物件の価格帯は原則 5 億円 以上、客室 100 室規模を一つの目安と定める。 ■ 運用環境と展望 観光庁の宿泊旅行統計調査によると、16 年 8 月の延 べ宿泊者数は 5,513 万人泊となり、前年同月比 2.3%減。 外国人延べ宿泊者数では同 3.6%減と、43 カ月ぶりに マイナスだったが、9 月第 1 次速報は同 5.0%増に転じ ている。また、日本政府観光局(JNTO)が開示する訪 日外客統計によると、16 年 9 月の訪日外客数(推計値) は前年同月比 19.0%増の 191 万 8,000 人となり、9 月 として過去最高を記録した。日本が国策として観光立国 を掲げ、2020 年の東京オリンピック開催や、長期的に は周辺諸国の経済成長に伴う旅客者数増大が追い風とし て期待される中、当 REIT ではインバウンド(外国人旅 行者)需要の着実な増加に着目。ホテルマーケットの変 遷を捉えつつ重点投資を行う。 新規取得物件の一例 ←「ネストホテル 大阪心斎橋」客室 ↓「コンフォートホテル 中部国際空港」客室 ←「コンフォートホテル 中部国際空港」外観 ↑「ネストホテル 大阪心斎橋」外観 出所:会社資料 ポートフォリオ全体のホテル運営実績 100% 客室稼働率(左軸) ADR(右軸) (円) 12,000 RevPAR(右軸) 90% 10,000 80% 8,000 70% 6,000 60% 4,000 50% 2,000 40% 2015年 9月 8月 0 10月 11月 12月 2016年 2月 3月 4月 5月 6月 7月 1月 出所:会社資料からモーニングスター作成 ※ポートフォリオは16年8月の物件取得前の全9物件 リスク要因、財務ハイライト 投資対象を宿泊施設およびその付帯施設・設備に特 化しているため、ホテル業界の全体的な傾向に依存し やすい。国内外の政治・経済情勢やインバウンド需要 の動向には注意が必要。また、運用成績はホテル運営 事業者のオペレーションにも左右される側面がある。 一方、16 年 8 月の公募増資、借入の実施に伴い、財 務基盤が大きく強化された点は前向きに評価できる。 借入金残高は 16 年 7 月末の 85 億円から 195 億円(以 下、16 年 8 月 17 日現在)へと厚みを増した。一方で、 原則 60%を上限と定める LTV(借入金比率)は 37.7 %と 1.5 ポイントの上昇にとどまり、依然適切な水準 でコントロールされている。新規借入に伴い平均残存 年数が 3.6 年から 5 年へと伸びたことに加え、返済期 限の分散も図られた。また、 調達先に新規金融機関(福 岡銀行、西日本シティ銀行)が加わり、レンダー・フ ォーメーション(調達先金融機関の構成)の観点から も強化が図られている。 投資主還元(10/31時点) ■ 分配金の状況 ■ 投資主優待 分配金総額 (百万円) 16年1月期 1口当たり 分配金(円) 実績 65 471 16年7月期 実績 391 2,825 17年1月期 会社予想 - 2,917 17年7月期 会社予想 - 2,838 なし ※ 16 年 1 月期の実質的な資産運用期間は 63 日間 ※利益超過分配金は含まない 本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載された意見 は作成日における判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載された意見・データは、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、安全性等について保障するものではあ りません。著作権、知的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar.Inc に帰属しますので、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます。 (2/3) モーニングスター・エクイティ・リサーチレポートの読み方 特 徴 Overweight (オーバーウエート) 今後、半年間の株価推移が現値水準を 15%以上上回ると 予測される場合 Neutral (ニュートラル) 今後、半年間の株価推移が現値水準の- 15%~+ 15%に とどまると予測される場合 Underweight(アンダーウエート) 今後、半年間の株価推移が現値水準を 15%以上下回ると 予測される場合 (1)第三者機関として中立的な立場を重視 モーニングスター・エクイティ・リサーチレポートは、 モーニングスターが位置する中立的な第三者としての立場 を重要視し、客観的な比較・評価情報の提供に努めていま す。モーニングスターがカバーする全銘柄に対し、アナリ スト個人の見解に加え、複数のアナリストから成る銘柄評 価委員会の意見を反映し、投資判断・想定株価レンジ・業 績予想を決定しています。 (2)カバー銘柄のユニバース カバー銘柄は下記対象銘柄から銘柄評価委員会が選出し ています。 【銘柄選定基準】 ●アナリストのカバー率が低い国内新興市場上場銘柄 ●個 人投資家からの人気が高い銘柄(各オンライン証券 のデータを参考) ●時価総額を考慮(50 億円程度以上を目安) ●整理、監理銘柄や継続疑義、債務超過銘柄を除く (3)3 段階の投資判断 カバー銘柄に対する投資判断は、モーニングスターの各 アナリストによる調査・取材・分析を基に銘柄評価委員会 の協議を経て決定しています。下記の基準を基に 3 段階(最 上位から「Overweight 」 (オーバーウエート) 、 「Neutral」 (ニュートラル) 、 「Underweight」 (アンダーウエート) ) で予測しています。 モーニングスターでは業績見通しや財務状況、株価の値 動きなどに関する見解の変更により、機動的に投資判断を 変更します。ただし、影響力のある、新しい情報が明らか となり、判断に時間を要する場合には投資判断を「Under Review」 (保留)とする場合があります。また、取引時間 中の投資判断の変更は行いません。アナリストが退職した 場合などは投資判断をいったん「Suspension」 (停止)と する可能性があります。 (4)中期的な想定株価レンジ 向こう半年間で想定される株価のレンジを示します。株 価指標などを用いた適正株価水準のほか、チャートのフシ 目や直近の高値・安値、トレンドライン、移動平均線など テクニカル面や価格帯別出来高なども考慮して、中期的な 上値メド、下値メドを決定しています。 項目説明 ■ アナリストコメント 直近の業績動向や事業環境につい て、取材に基づいた評価をコメント しています。投資判断の根拠や業績 予想に対する見方、今後の事業展望 などを記載し、株式投資をするうえ で最も重要な情報を掲載していま す。 また、 読みやすさを考慮してテー マごとに 2 ~ 4 つのパラグラフに まとめているほか、重要なポイント を太字で強調しております。 ■ 業績動向 通期決算の実績 2 期分と会社予 想、およびモーニングスターの独自 予想を今期、来期の 2 期分掲載し ております。 各銘柄への取材に加え、 四半期毎での過去の業績傾向やセグ メント毎での分析に基づいて業績数 値を予測しています。 ■ 会社概要 各銘柄がどのようなビジネスを展 開しているのか、どこに収益源があ るのかなどを詳しく解説するほか、 今後どの事業に力を入れていくの か、中期的にはどのような事業展開 を図っていくのかなどの中期的な見 通しも取材を踏まえて掲載します。 ■ リスク要因 各銘柄が有するリスクを解説しま す。事業面でのリスクに加え、業績 面や財務面、株式市場独自のリスク なども考慮して様々な角度から見た リスクを示します。 ■ 事業環境と展望 各銘柄が属する業界について、足 元の状況や将来の成長性などの観点 から解説します。競合他社への取材 も実施することで業界全体を多方面 から捉えるほか、業界団体のデータ など具体的な数値も掲載します。 本資料は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。銘柄の選択、投資判断の最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。本資料に掲載された意見は作成日に おける判断であり、予告なしに変更される場合があります。本資料に掲載された意見・データは、当社が信頼できると判断したデータ等により作成いたしましたが、その正確性、安全性等について保障するものではありません。著作権、知 的所有権等一切の権利はモーニングスター株式会社並びに Morningstar.Inc に帰属しますので、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます。
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