10月21日開催 第4期わかやま塾(第5回)の概要

平成28年11月2日
資 料 提 供
担当課
企業振興課
担当者
柏木、城(じょう)
電話
073-441-2760
10月21日開催
第4期わかやま塾(第5回)の概要
第4期わかやま塾(第 5 回)を中野塾頭(中野BC(株)代表取締役会長)、知原
師範(杏林大学 総合政策学部 教授)、角口師範((株)キナン 代表取締役会長)、
塾生 44 名が出席し、アバローム紀の国において開講しました。
つきましては、知識編講義、心掛け編講義の概要を報告します。
概
要
○知識編講義「租税について考える」
<杏林大学 総合政策学部 教授 知原 信良 師範>
・石油等の資源を豊富に産出する国々には税金がない国がある。税金がない国が
第 1 のテーマである。
・ ミ ク ロ ネ シ ア の 小 島 ナ ウ ル は か つ て 税 金 が な く 「天 国 の よ う な 国 家 」と い わ れ
た。豊富に採掘できるリン鉱石のお陰で、国営会社が掘削して膨大な収入を獲
得した。この収益は国民に還元され、一人あたり国民所得が世界2位の富裕国
にまで躍進した。教育、医療、電気は無料で、個人が納税の必要もない。リン
鉱石の採 掘も 他国か らの出稼 ぎ労 働者が やってく れる ので、 国民は何 一つ「労
働」の必要もなかった。しかし、1990 年代にリン鉱石が枯渇し、2001 年には国
家財政が破綻してしまった。
・ナウルを反面教師として、中東の資源国は将来のために熱心に基金を積立てて
いる。とりわけ、アラブ首長国連邦のアブダビでは 100 年でも掘り尽くせない
石油資源を保有するものの、石油利用を厳しく節約し、さらに発電コストを節
約するために原子力発電・再生可能エネルギーの開発・利用も積極的に推進し
ている。
・松下幸之助氏はかつて「無税国家論」を提唱したが、これは政府が毎年の無駄を
排していけば余剰がうまれ、それを蓄積して行けば、その運用益で政府の諸費
用をまかなうことができるというものである。税金をなくし、儲けのために働
くことを促すと同時に、所得格差の調整を目的とした富裕税も併せて設けるこ
とを提唱し、税徴収にかかる行政改革の必要性も説いた。
・これを実行する試みが始められたが、現実の世界では、遠い将来まで拘束する
政策を継続して実行していくことは容易でなく、無駄を排して余剰ができれば、
納税者からは減税や施策の要望が強くなるのは自然の流れである。ただ、無税
国家論の意義として、将来を意識して長期的に継続することの重要性と、行政
効率化や財政再建は早く着手するほど容易になることを示している。
・第 2 のテーマである納税者投票制度とは、納税者が関与して民主主義的な財政
運営をするために役立つ仕組みを目指すアイデアである。例えば所得税であれ
ば、納税者が所得税納税額の一定割合について、各省庁別の予算(または目的別
の大まかな区分)への配分を指定できるようにする仕組みである。 これにより、
予算の効率的な配分・使用を促すものである。納税者には納税する機会をとら
えて財政負担を意識してもらい、無駄を排するとともに使途決定過程でより民
意を反映させてもらうことにつながる。 小さな部分であるが納税者の直接的な
意向は、政治家や官僚を監視するとともに積極的に動かすメカニズムとして機
能する。ただこの仕組みはあくまで予算編成の補完であり、議会の予算配分過
程は維持するため極端な偏りは回避される。
・納税者投票制度に通じる仕組みは既に身近なところにあり、「ふるさと納税」、
東欧諸国での「パーセント法」(納税者が所得税のうちの 1%ないし 2%を自ら
が選択した公益機関に提供できる仕組み)、日本版パーセント法である「1%支
援制度」などである。
・第 3 のテーマは人も企業も政治や行政の良し悪しで容易に移動してしまうこと
である。投票用紙に自分の意思を表明する「手による投票」と異なり、自分にと
ってより好ましい行政サービスを提供してくれる地域への移住を通じて自分の
意思を表明するやり方を「足による投票」という。移住に伴うコストが発生す
るので簡単に進む話ではないが、EU域内などの国境をまたぐ移住が容易な地
域においては実際に富裕層が移住・国籍変更を行った例も出てきた。
・競争力とは、与えられた市場において、企業・業種・国全体が財やサービスを
売ったり供給したりする能力と売上げを比較するときに用いる概念である。米
国のマイケル・ポーター教授によれば、企業の競争力は、企業内部要因だけで
なく外部環境が与える要因を重視し、業界の中で他者と異なるどれだけよいポ
ジションを独自の選択で見つけられるかで決まるという。国の競争力というこ
とでは、一時的なコスト優位を考えるのでなく、国民が高い生活水準を維持し、
繁栄できることを意味するとしている。そのためにイノベーションが重要であ
り、それにより改善・向上を価値と効率の両面で図ることができるものと考え
られる。
・国の競争力を示す指標は様々な機関により、それぞれの基準により調査・発表
されている。スイスの国際経営開発研究所が毎年発表しているランキングでは
「企業の活動を支援する環境がどの程度整っているか」を基準に作成しており、
先進国や好景気の国が必ずしも上位になるとは限らない。最近の日本のランキ
ングも比較的好評価から厳しいものまでまちまちである。このように専門家で
さえどの国に競争力があるかについては意見が分かれる。
・したがって、単純に法人税率を引き下げさえすれば、企業が海外に出ていかず
国内に留まるとはいえない。企業の競争力や企業の業績は、企業活動を取り巻
く各種の要因が影響して決まってくる。政府による規制やサービスの改善だけ
でなく、ビジネス界の各方面での努力がなければ国内ビジネスの活性化に繋が
らない。また、政府は、法人税率だけでなく巨大な財政赤字など財政関連指標
もリスク要因にならないようにすることが重要となる。
○心掛け編講義「地方でも生き残る戦略」
<株式会社キナン 代表取締役会長
角口 賀敏 師範>
・今のやり方で良いのかを常に疑問・問題意識を持つことが、企業の改革のスタ
ートとなる。今やっていることに疑問を持って、改善に改善を重ねて工夫して
解決していく。
・計画を立てるのは問題解決の 10%。立てた計画を実行できるかが残りの 90%。
実行しないと意味がない。わかやま塾等でいくら良い話を聞いても、自分の会
社に持ち帰って、落とし込んで、何が出来るか、何をするかを考えなければ意
味がない。何かしようと思うなら、何か自分で仕掛けて、自分で行動を起こさ
なければ何も変わらない。
・幾ら知識や経験があっても実行出来なければ何の効果も出ない。経験が邪魔を
することもある。
・何が失敗かというと、途中でやめるから失敗なのである。途中で諦めて断念し
た時に初めて失敗となる。続けている限りは失敗ではない。
・本当の自分の強みは何かということを整理し、強みは伸ばしていき、弱いとこ
ろは克服していく。皆さんはその道のプロとして仕事をされている。弱いとこ
ろを克服しないとプロとしては残っていけない。そこを克服して強くなるほか
方法はない。弱いところを何もしないで放っておくことが一番悪い。改革のル
ールは聖域、タブー、制約を一切設けないということ。悪いところをどんどん
変えて、それでうまくいかなければ元に戻せばいいだけである。
・景気が悪いと言っても誰も助けてはくれない。自分自身で変える以外に方法は
ない。特に現状を変えるところからスタートする。捨てる勇気も持たなければ
ならない。
・会社のためになるお客様はコンスタントに利益を出して、支払いもしてくれる
お客様である。全てのお客様の要望を聞くのではなく、特定のお客様の要望の
みを聞く。すべてのお客様の要望を聞いていると、社員がどれだけいても足り
ない。お客様の見直しをすることも経営改善である。
・答えは全部現場にある。現場を見れば改善できるところがいくらでもある。現
場はお客様に一番近いところであり、現場を鍛えることで会社のレベルアップ
につながる。
・同じことでもすぐに分かる人もいるが、3 日かかる人もいる。しかし、覚えた
ら一緒であるので、そこまで教える気があるかどうかである。一人一人育てて、
任せて、信頼してやることによって社員は育つ。社員本人が自分の壁をやぶっ
て、自分の弱いところを徹底的に鍛えることが必要である。社員一人一人を見
て、見直して、育てなおして、優秀な社員を育てていってほしい。育てていか
なければ会社自体の力が残っていかない。
・現状維持では会社自体がなくなっていく。常に次の時代を読み取りながら、そ
の時代にあった経営をやっていかなければ生き残るのは難しい。業界の中で大
きなところに飲み込まれる傾向が出ているし、地方で生き残るのは難しいとは
思う。それぞれの特徴をだした商売を考えていかなければならない。
・「業界他社より売り上げの落ち込みが大きい」、「業界がよくなっているのに
自社が上がらない」というのは、何かが足りていないということ。弱いところ
を早く見つけて対応していかなければ、気が付けば倒産ということになる。
・価格競争に巻き込まれないようにすること。価格だけで勝負していると必ず大
きいところに飲み込まれて生き残っていけない。価格に飲み込まれないような
強みを整理し、弱いところを鍛える以外に商売で生き残ることはできない。
・太るのは簡単だが、やせるのは難しい。会社を本当に変えようと思ったら根本
的なことを変えないといけない。本当にそこにそれだけの人数の社員が必要な
のかと、いろいろ考えてもらったらいい。
・今までは真面目さだけで商売ができたが、今後は知恵と工夫が必要。社員人数、
会社の大きさは関係ない。いい人間を集めてくればいい会社となる。
・相手がほしがるような情報をもって営業に行けば、向こうから話をしてくる。
出来ない営業は安くしますと言うだけ。人と同じことをやっても無理である。
知恵を出して、いかに役に立てるか、いかに信頼してもらえるか、よきパート
ナーとして扱ってもらえるかどうかである。
・良い町は良い企業を育てる。地方の中で新たな企業を求めることは難しい。既
存の企業に頑張っていただいて、一人でも多く雇用できるような企業になって
いただくことが一番良い。地域活性化につながる。