かき混ぜるだけで創れる 高品質蛍光ナノ粒子 東京電機大学 工学部 電気電子工学科 准教授 佐藤 慶介 1 研究分野の概要 半導体ナノ粒子(量子ドット) http://j-net21.smrj.go.jp/develop/techno/entry/2010010701.html http://www.ifs.tohoku.ac.jp/samukawa/previous/shinbun110621.html 2 カドミウム系ナノ粒子 利点 蛍光波長が広い 蛍光量子収率が高い(∼50%) 問題点 生体への毒性が高い X. Michalet et al., Science, 307, 538 (2005). CdSe CdSe 細胞死滅 東京慈恵会医科大学との共同研究より K. Fujioka, K. Sato, K. Hirakuri et al., Nanotechnology, 19, 415102 (2008). http://www.max-plus.net 3 PL intensity ( arb.units ) シリコンナノ粒子 利点 蛍光波長が広い 各種環境下での光安定性が高い 生体安全性が高い 1 0.5 0 300 400 500 600 700 800 900 1000 Wavelength ( nm ) K. Sato, K. Hirakuri et al., Journal of Applied Physics, 100, 114303 (2006). Chemistry-An Asian Journal, 5, 50 (2010). 1.9 nm 2.1 nm 2.3 nm 2.5 nm 3 nm 5 Blue 1 nm Green 1 nm Yellow 1 nm Orange 1 nm Red K. Sato, K. Hirakuri et al., Chemistry-An Asian Journal, 5, 50 (2010). 300 4 400 3 500 600 700 800 2 1 2 4 6 8 Diameter ( nm ) Wavelength ( nm ) 1 nm Bandgap Energy ( eV ) Eg*=Eg+7.16/L2 10 4 従来技術 トップダウン法(化学エッチング手法) 使用する材料と装置 テフロン容器 シリコン粉末 (100 nm) 非蛍光材料 フッ化水素酸 硝酸 エッチング溶媒 超音波振動装置 5 超音波振動装置を用いた合成方法 凝集した シリコン粉末 シリコン粉末 の解離処理 シリコン粉末の エッチング処理 フッ化水素酸/ ナノ粒子を 硝酸溶媒 (エッチング溶媒)メンブレン フィルタで 回収 エタノール/ 純水溶媒 (分散溶媒) シリコンナノ粒子 蛍光材料 エッチング過程で起こる反応 酸化膜 シリコン ナノ粒子 超音波振動装置 シリコンコアの 縮小 溶解反応 溶解反応 酸化反応 酸化反応 SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O 3Si+4HNO3→3SiO2+4NO+2H2O K. Sato, K. Hirakuri et al., Chemistry Letters, 38, 558 (2009). Chemical Communications, 25, 3759 (2009). 6 従来技術で作製したシリコンナノ粒子の蛍光 30 Counts 20 10 0 10 100 1000 Diameter (nm) シリコン粉末の解離処理後 の粒子径分布 シリコン粉末のエッチング処理後の蛍光 ◎粒子径に依存した多色蛍光 ✕粒子径のばらつきによる不調和な蛍光色 7 従来技術とその問題点 •製造プロセス工程の簡素化を実現する一方、 均一な粒子径を得ることができない •粒子径を制御できないため、蛍光色が不均 一である(調和性のない発色) •不揃いな粒子の生成と表面欠陥の存在のた め、蛍光量子収率が低い 8 新技術 新規手法(化学エッチング手法) 使用する材料と装置 シリコン粉末 (100 nm) 非蛍光材料 フッ化水素酸 硝酸 攪拌装置 エッチング溶媒 http://www.primix.jp/products/labo/fm/02.html 9 新技術で作製したシリコンナノ粒子の蛍光 粒子径:1.5∼3.0 nm 蛍光量子収率:9.1∼12.6% 収量:0.8 mg/min 50 Sample A Sample A Sample B 40 Counts Sample A 30 Sample B 20 10 0 HRTEM写真 1 5 Diameter (nm) 10 シリコンナノ粒子の粒子径分布 シリコンナノ粒子の蛍光 ◎粒子径の均一化による均一な蛍光色 ◎表面修飾による蛍光量子収率の高効率化 10 新技術と従来技術との比較 攪拌装置 超音波振動装置 (新技術) (従来技術) Sample A 蛍光色 粒子径(nm) 粒度分布幅 蛍光量子収率 (%) 1 0.5 従来技術 不均一 284.2 狭い 広い 12.6 4.9 50 Sample A Sample A Ultrasonication Ultrasonication 40 Counts PL intensity (a.u.) 1.5 新技術 均一 3.0 30 20 10 0 400 500 600 700 800 900 Wavelength (nm) 0 1 10 100 Diameter (nm) 1000 11 新技術の特徴・従来技術との比較 •従来技術の問題点であった粒子径および蛍 光色を均一化し、蛍光量子収率を劇的に向 上させることに成功した •攪拌装置の使用により作業時間を劇的に短 縮できるため、製造コストを1/6程度まで 削減することが可能である •蛍光ナノ粒子の収量を向上でき、生産性を 大幅に高めることができる 12 想定される用途 • 蛍光機能を付加させた生体内 医療器具などのメディカル材 料として利用できる 蛍光チューブ • UV光照射により識別できる 塗装・インク材料として利用 できる 13 想定される用途 •太陽光の吸収帯域を変調できる光電変換材 料などの環境・エネルギー材料として利用 できる 表面電極 基板 http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20140707/nr20140707.html p型材料 n型シリコン ナノ粒子 裏面電極 14 実用化に向けた課題 • 現在、粒子径の制御技術を構築しており、 蛍光色の均一化までは達成できているが、 蛍光色の短波長化や輝度の更なる高効率化 が未解決である • 今後、蛍光色の短波長化や輝度の高効率化 に向けた実験データを取得し、粒子径の更 なる縮小技術や表面修飾技術などを構築し ていく 15 実用化に向けた課題 • 環境・エネルギー分野への利用に向けては、 ナノ粒子に導電性を付加させる技術の確立 が必要となる • 医工学分野への利用に向けては、生体組織 との適合性をもたせるための表面修飾技術 の構築も必要となる 16 企業への期待 • 未解決の蛍光色の短波長化や輝度の高効率 化については、合成条件の最適化や不純物 添加などにより克服できると考えている • 蛍光粉末の製造技術を持ち、材料創成や化 学合成を行っている企業との共同研究、も しくは連携を希望する 17 企業への期待 • 蛍光粉末に興味があり、医療器具、塗装な どの関連した企業には、本技術の導入が有 効であると思われる • 量子ドット系太陽電池を開発中の企業、環 境・エネルギー分野への展開を考えている 企業には、本技術の導入が有効であると思 われる 18 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :シリコンナノ粒子の 製造方法 • 出願番号 :特願2016-174578 • 出願人 :学校法人東京電機大学 • 発明者 :佐藤 慶介、平栗 健二、 井口 翼、加藤 桂太 19 産学連携の経歴 • • • • • • 2005年-2007年 S社と研究を実施 2006年-2007年 S社と共同研究を実施 2007年-2008年 T社と研究を実施 2008年-2009年 S社と研究を実施 2013年-2014年 K社と共同研究を実施 2016年JST研究成果展開事業 マッチングプランナープログラムに採択 20 お問い合わせ先 東京電機大学 研究コーディネーター 安江 準二 TEL 03−5284−5225 FAX 03−5284−5242 e-mail crc@jim.dendai.ac.jp 21
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