2016 年度 一橋大 日本史 ■概要 (1)出題・解答の形式 大問3題。すべて 400 字の論述問題。 各大問は3~5問程度の小問で構成され,小問ごとの字数の配分は受験生に委ねられている。 例年,Ⅰは近世もしくは古代~近世,Ⅱは近代,Ⅲは近・現代からの出題という構成が多い。 例年,史料が出題される他,グラフ・統計資料類が提示されることもある。 (2)分量/難易度の変化(昨年度比) 分量 :変化なし / 難易度の変化 : 変化なし (3)特記事項 ・Ⅰは,2015 年度は近世単独の出題であったが,2016 年度は古代~近世の出題であった。 ・2015 年度に続き,2016 年度も政治,社会・経済を中心とした出題で,一橋大入試で過去に出題され たことがあるテーマに関する出題も散見された。 ・初めて,1990 年代からの出題が見られた。 ■各問の分析 大問 (120 分) 出題形式・テーマ 問題の内容・分析 難易度 問1 律令の法典としての内容と特徴を述べる問題。特徴について は,下線部の「中国の律令」との関連性について示せばよい。 問2 下線部⒝が何をさすのかを踏まえた上で,郡司の役割・地位 の変化について述べることがポイント。 Ⅰ 古代~近世の法と支配 (論述 400 字) 問3 御成敗式目について,その立法趣旨・内容・適用範囲をまと めればよい。基本知識で解ける問題である。 標準 問4 司法政策の特徴という,やや捉えづらい内容が問われた。相 対済し令・公事方御定書を出した目的は何か,ということを起点に 考えていくとよい。出された法令は裁判の効率化をはかるものであ るが,ではなぜ効率化をはかる必要があったのかを考えよう。 受験生が持っているであろう知識に比して,1問あたりに必要な字 数が多い。400 字を埋めるのに苦労すると思われる。 問1 『職工事情』の内容について説明する問題。知っている事柄 を確実に答えたい。 工場法制定の背景と問 Ⅱ 題点 (論述 400 字) 問2 工場法で定められた具体的規定を挙げつつ,適用範囲が限ら れていたこと,例外規定があったことなどを問題点として挙げてい けばよい。 標準 問3 産業構造について,当時の貿易構造も含めて考えられるかが ポイント。輸入超過の状況の中,低価格の生糸・綿糸が重要な外貨 獲得のための製品であったこと(=貿易構造) ,その低価格を支え たのが低賃金・長時間労働で働く労働者であったこと(=産業構造) と,工場法との関係を見抜きたい。 問2 松方財政の政策について述べる,基本的な問題である。 問3 治安維持法制定の目的を述べる,きわめて基本的な問題であ Ⅲ 近・現代の政党政治 (論述 400 字) る。問2含め,ここでの失点は最低限に抑える必要があるだろう。 問4 改憲阻止のための議席の確保を述べればよい。 やや易 問5 1990 年代の内容ではあるが,解答に困るような出題ではな い。一橋大志望者であれば解いてほしい問題である。 ※ 難易度は一橋大受験生を母集団とする基準で判定しています。 ■合否の分かれ目 2016 年度は,政治,社会・経済に関する出題が多く,一橋大日本史対策を進めてきた受験生にとっては, 解きやすい内容であったと思われる。Ⅰの問1・問3,Ⅲは,基本的な知識をベースに解答することがで きる。Ⅱの問1・問2は,やや細かくはあるが,知識があれば解ける問題である。一橋大日本史ではこう した知識を問う問題が多く出題される上,問われる知識も比較的細かい内容となっている。一橋大日本史 で問われるレベルの知識をしっかりと身につけておくことが,合格を勝ち取るための必須条件となる。 また,2016 年度はⅠの問4やⅡの問3で,何を聞かれているのかが読み取りにくい問題も出題された。 こうした問題に対して,設問の意図を読み取り,持っている知識を結びつけながら解答の要素を見極め, 解答を組み立てることができるかどうかが,差がつくポイントであった。 ■一橋大日本史の要求 ⇒一橋大日本史は,題意に沿って解答の要素を見極め,まとめることができるかがポイント。 要求① 日本史に対する正確な「知識・理解」 出題の中心となるのは,時代では近世と近・現代,分野では政治,社会・経済,外交である。但し,2014 年度のように文化史が多く出題される場合もあるので,全時代・全分野の基本事項を押さえておこう。さ らに近世と近・現代の政治,社会・経済,外交については,教科書だけでなく,参考書や概説書,資料集 なども用いて学習を進め,詳細かつ正確な知識と体系的な理解を身につけておく必要がある。 要求② 題意に沿って盛り込むべき内容を取捨選択し,解答をまとめる「表現力」 論述問題では,題意に沿って盛り込むべき内容を取捨選択し解答をまとめる必要がある。さらに,一橋 大日本史では,400 字の制限字数を自分で小問ごとに振り分けて解答しなければならない。必要な字数は 50~200 字程度と小問ごとに異なるため,設問要求を正確に把握し,解答として求められる要素を見極める 力と,それを的確にまとめる表現力を磨く必要がある。 ■一橋大日本史攻略のために 基礎力の完成 高3の夏休み終了までには一通りの通史学習を終わらせることを目標に,要求①を満たしていこう。ま た,早期から記述力を磨いていくことも重要である。Z会の通信教育などを利用して,基本的な論述の書 き方をマスターしよう。 論述演習の積み重ね 一橋大日本史の対策では,様々な字数・テーマの論述問題演習を行うのが効果的である。知識の定着・ 確認を行いながら,様々なパターンの論述問題に取り組み,要求②を身につけていこう。また,早めに過 去問に取り組み,一橋大型の出題形式の特徴と解き方に慣れよう。 一橋大型の実戦演習 一橋大日本史は,120 分で総字数 1200 字の論述問題を解き切ることが求められる。高3の冬休み以降は, 時間を意識した演習も行おう。Z会の通信教育で出題される 400 字型の論述問題と過去問を活用して,限 られた時間内で解答を作成する答案作成力も養っていこう。
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