【相談 71】医療 ADR について教えてください。 キーワード: ADR、裁判外紛争解決手続、調停、あっせん、仲裁、和解、日本弁護士連合会、日弁連、紛争解決センター、国 民生活センター、美容整形、医療契約、診療契約 患者です。 美容整形で手術しましたが、以前より醜くなり、周囲の反応からも明らかに失敗と言えます。クリニッ クに抗議しましたが返金には応じられないとの一点張りでろくに話も聞いてもらえません。訴えようかと 思ってネットで調べたら、美容整形は裁判では賠償額が少なく弁護士費用の方が高くつくこともあるので、 裁判ではなく「医療 ADR」を利用するのもよいという情報がありましたが、 「医療 ADR」がよくわかりませ ん。どこに申し込めば良いのか、費用はどの程度かかるのかなど「医療 ADR」について教えてください。 【回答】 ADR(Alternative Dispute Resolution、裁判外紛争解決手続)とは、訴訟手続によらずに民事上の紛争 の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続(裁判外紛争 解決手続の利用の促進に関する法律(ADR 促進法)第 1 条)をいいます。医療紛争の解決のために利用で きる ADR をいくつか紹介します。 ①民事調停制度 まず、裁判所の民事調停制度があります。これは、調停委員会が間に入り、当事者の互譲によって解決 をしていく制度です。医療問題については、通常医師等の医療側委員と法律家(弁護士や法学者)も含めた 豊富な社会経験を有する人、及び裁判官(または調停官)の三人による調停委員会が間に入って、当事者の 納得の行く解決を図ります。手続には法的知識は必要でなく、簡易裁判所の窓口に申立用紙と記入方法の 説明が備えてあります。手数料は、例えば訴える額が 10 万円なら 500 円と訴訟に比べて安いです。詳細な 手続きについては裁判所のウェブサイトをご覧ください。 ②日弁連が運営する紛争解決センター/医療 ADR 次に、日本弁護士連合会(日弁連)が運営する紛争解決センターがあります(名称は「紛争解決センタ ー」 「示談・あっせんセンター」 「仲裁センター」など様々です) 。ここでは、弁護士が調停人となり、当事 者双方の話し合いや交渉を促進して、解決に導きます。中でも札幌、仙台、東京、第一東京、第二東京、 愛知、大阪、岡山、広島、愛媛、福岡の各弁護士会では、専門性が高い医療紛争を適切に解決できるよう な体制を整え医療を専門に扱う医療 ADR の活動を行なっております。これらの紛争センターでは、調停人 には医療事件を手がけている弁護士がその任に当たることが多いようです。費用等については、各弁護士 会で異なっておりますので、相談されたい紛争解決センターのウェブサイトをごらんください。 ③NPO 法人医事紛争研究会による医療紛争相談センター 最後に、千葉県に特定非営利活動法人医事紛争研究会が行なっている医療紛争相談センターがあります。 同センターは、法務大臣の認証を取得した「かいけつサポート」機関であり、医行為または歯科医療行為に 1 Medical-Legal Network Newsletter Vol.70, 2016, Oct. Kyoto Comparative Law Center 起因した、医師や医療関係者と患者(その家族)との間の民事上の医事紛争の解決をあっせんします。前記 の弁護士会の ADR は、弁護士のみによる和解手続を行うシステムですが、この医療紛争相談センターは、 医師または歯科医師 1 名と弁護士等 1 名の計 2 名により構成される調停委員会による解決が図られていま す。手続は、相談の申し込みを行い(無料)、そこで一定の医学的な知識を有している相談委員が相談、説 明を行い、患者側は 2 万円+消費税、医療側は 4 万円+消費税を払って調停の申立をし、調停期日が開か れると当事者双方は期日ごとに各 1 万円をセンターに納付し、和解が成立すると成立手数料をセンターに 納付するというシステムです。1 億円を超える和解のケースもあります。 以上が医療紛争の解決のために利用できる主な ADR です。なお、美容整形術は自由診療で、脱毛やレー ザーなどの施術が雑誌等で活発な広告もなされていることも多く、消費者問題としても把握されています。 したがって、明らかな「施術不良」と考えられるのであれば、裁判や ADR を考える前に、国民生活センター に相談することも考えられると良いでしょう。 (回答者:寺沢知子 京都産業大学法学部客員教授) (2016 年 10 月執筆) *会員用ウェブサイトの「知恵袋(相談コーナー)」には、もう少し詳しい説明を掲載しております。 2 Medical-Legal Network Newsletter Vol.70, 2016, Oct. Kyoto Comparative Law Center
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