新連載 宗教学者・山折哲雄 日本の風を読む①

新連載
宗教学者・山折哲雄 日本の風を読む①
日本ならではの「見えざる手」、
それは、経済行為に融けこむ恩と感謝
山折哲雄
国際日本文化研究センター名誉教授
戦後、
日本は「経済」と「成長」をキーワードに発展してきたが、
日々
ら高度成長時代以降の「経済」と「成長」というキー
一体 どういうことかと考 えを 詰めていくと、どうや
対する支 持 率はというと、
これが非 常に高い。それは
原 因は、種々あるのでしょう 。ところが、そのよう
な 不 安 感 をもっているにもかかわら ず 、安 倍 政 権に
感じるようになりました。
「 日 本 人の多 くが不 安のなかで揺れている」と強 く
ところが、それでは国 民は政 治 家や企 業 家のトッ
ている根本の原因のように感じます。
もせずになんとかやってきた。それが、支 持 率を高め
二つのキーワードを 前 面に掲 げ、さほど 大 きな失 敗
ることが習い性になっている。だから安 倍 政 権もその
「 経 済 」と「 成 長 」というキーワードで暮らしを立て
ワードに突 きあたります 。日 本 人の多 くはこれまで
の生活や仕事の現場には、「恩」「感謝」 という江戸の昔から続く考
え方が今も息づいている。
日本人の多くが
不安のなかで揺れている
いろん
今回の参議院選挙と東京都知事選に際し、
なところから明らかにされた 世 論 調 査 を 見ていて、
やまおり・てつお ● 1931年生まれ。54年東北大学文
学部卒業。駒澤大学、
東北大学の文学部助教授等を経て
88年から国際日本文化研究センター教授。2001年から05
年まで同センターの所長を務めた
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理念と経営 11 / 2016