豪ドルは上昇 (PDF/514KB)

2016/
為替トピックス
10/28
投資情報部
FX ストラテジスト
五十嵐 聡
物価指標発表を受け利下げ観測後退、豪ドルは上昇
 10/26に発表された豪州7-9月期の消費者物価指数は前年比+1.3%と予想(同+1.1%)を上
回った。基調インフレ率は同+1.5%と前四半期からほぼ横ばいとなり、豪州準備銀行(RBA)
の見通しに一致。これを受けて追加利下げ観測は一段と後退、豪ドル相場は上昇した。
 ロウRBA総裁は10/18の講演で、インフレ目標政策の柔軟な運用を改めて表明。目標からの
逸脱が許容される要因として雇用と金融システムの安定性を挙げた。総裁は今回のCPIの結
果を注視する姿勢を示していたが、インフレ期待が一段と低下する兆しはみられなかった。
 豪ドルの対ドル相場は8月以降、狭いレンジ内で方向感が出ない動きが続いている。追加利
下げ観測の後退に加え、リスクセンチメントの改善による高金利志向や、鉄鉱石価格の上昇
が下支えに。一方、米国や欧州の政治リスク等が上値を抑え、レンジ相場が続く見込み。
7-9月期消費者物価
指数は市場予想、
RBA見通しに沿った
結果に
10/26に発表された7-9月期の消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前期比
+0.7%、前年比+1.3%と事前予想(それぞれ同+0.5%、同+1.1%)を上回った。
注目のコアインフレ指標であるトリム平均値は前期比+0.4%、前年比+1.7%
に、加重中央値は前期比+0.3%、前年比+1.3%となり、両者の平均値で計算す
る基調インフレ率は前期比+0.35%、前年比+1.5%となった。前年比伸び率は前
四半期からほぼ横ばいとなり、豪州準備銀行(RBA)が8月の金融政策報告(SMP)
で示したインフレ見通し(前年比+1.5%)にも一致したものとなった。
この結果、市場の追加利下げ観測は一段と後退する動きとなり、発表後に豪
ドル相場は一時対ドルで1豪ドル=0.77ドル台まで上昇する場面があった。
(1豪ドル=円)
98
豪ドルの推移
(日次:2015/7/1~2016/10/26)
(1豪ドル=ドル)
0.80
対円(左目盛)
94
0.78
対ドル(右目盛)
0.76
86
0.74
82
0.72
78
0.70
15/10
16/1
(日次:2014/7/1~2017/12/31)
2.4
16/4
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
16/7
16/10
0.68
(年/月)
豪
ド
ル
安
(1豪ドル=ドル)
1.00
豪ドル為替相場と政策金利
政策金利(左目盛)
30日物銀行間金利先物利回り(左目盛)
豪ドル(右目盛)
2.2
90
74
15/7
(%)
2.6
豪
ド
ル
高
0.90
2.0
0.85
1.8
0.80
1.6
0.75
1.4
0.70
1.2
0.65
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
17/1
17/7
(注) 30日物銀行間金利先物の利回りは2016/10/26現在の各限月の数
値、豪ドルと政策金利は2016/10/26時点まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
1
0.95
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(年/月)
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為替トピックス
2014/19/18
インフレ 率が上向く
兆しはないが、ディス
インフレ圧力の高ま
りも見えず
CPIの内容を項目別に見ると、食料・非アルコール飲料(前期比+1.7%)
、アル
コール飲料・タバコ(同+1.1%)
、住居費(同+1.0%)
、等が上昇に寄与した。悪
天候や洪水等による果実や野菜の価格上昇、供給抑制やコスト上昇による電
気料金の引き上げ、9月からのタバコ税引き上げ等が影響している。
一方、下落した項目では通信費(同▲2.3%)や交通費(同▲0.5%)等の下落
が目立つ。7~8月の原油安にともなうガソリン価格の下落や、情報通信機器
の下落が続いていること等が影響している。
貿易財は前期比+1.0%、前年比+0.7%と前四半期から上昇幅が拡大したが、前
述の通り天候要因等が影響した面もある。非貿易財は前期比+0.5%、前年比
+1.7%となり、ここ3四半期は同程度の伸びとなる等、下げ止まり感は出つつ
あるが、上向きに転じる兆しはまだみられない。
今回の結果は総じてみれば予想を若干ながら上回っており、ディスインフレ
圧力が一段と強まっているような状況はうかがえなかった。また、総合指数
が上昇したことは、後述するように実際のインフレ率の低下がインフレ期待
を一段と押し下げる可能性が低下したという点では、明るい材料と言える。
今後については、賃金上昇圧力の弱さ等を考慮すれば、インフレ率はしばら
くの間は低水準で推移する公算が大きいが、こうした見方はRBAの見通しとも
整合的でもあり、11月の理事会でRBAがあえて追加利下げを実施する必要性は
薄れたとみられる。10-12月期の消費者物価指数が発表された後の2017年最初
となる2月会合までは、金利を据え置く公算が大きいだろう。
(%)
6
(%)
8
豪州消費者物価指数(前年比)とRBA予想
(四半期:2005/3~2018/12)
豪州の消費者物価指数(前年比)
(四半期:2005/3~2016/9)
7
RBAインフレ目標(2~3%)
消費者物価指数(前年比)
RBA予想(16/8時点)
基調インフレ率(前年比)
RBA予想(16/8時点)
5
4
RBAインフレ目標(2~3%)
消費者物価指数
貿易財価格
非貿易財価格
6
5
4
3
3
2
1
2
0
▲1
1
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
(注) 消費者物価指数は2016/9まで、RBA予想は予想レンジの中間値で
表示
出所:ブルームバーグ、RBAのデータよりみずほ証券作成
ロ ウ RBA総 裁は 改
めてインフレ目標の
柔軟運営を表明
▲2
18
05
(年)
06
07
08
09
10
11
12
13
14
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
15
16
(年)
ロウRBA総裁は10/18に「インフレと金融政策」と題して講演を行ったが、今
回の7-9月期CPIの結果はこの内容ともほぼ整合的なものであった。
講演では、世界的に多くの先進国で低インフレが続いている理由について分
析し、①需給の緩み、②商品価格の下落、③価格決定能力の低下、を挙げた。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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為替トピックス
2014/19/18
そして、豪州経済に関しては、①については失業率が依然として完全雇用の
水準を上回っていることや、最近の雇用増がパートタイム中心で実質的な労
働需給が高まっていないこと、等を挙げている。②については、鉄鉱石等の
輸出商品価格の下落による所得や交易条件の悪化を挙げ、③については、グ
ローバル化にともなう小売業等での競争の激化を挙げている。
また、近年豪州で賃金上昇率が低下している理由として、賃上げの頻度と規
模が数年前と比較して大きく減少しているといった構造的な要因を挙げると
ともに、インフレ期待の低下についても指摘している。ただ、豪州経済は資
源投資の減少が終わりに近づくにつれて、内需が緩やかに拡大し、需給の緩
みが改善するとともに、賃金やインフレ率は上向くとして、今後については
前向きな見通しを維持している。
ロウ総裁は金融政策については、9/22の議会証言に続いて、柔軟で中期的な
インフレ目標政策の枠組みの正当性に対して改めて理解を求めた。
具体的には「インフレ率の一時的な目標レンジの逸脱は許容される」として、
足元のインフレ率の低さがすぐに追加緩和につながるわけではないことを改
めて強調した。また、どの程度の変動が受け入れ可能かについては、
「何が公
共の関心か」が問われると述べ、特に顕著な要因として雇用と金融システム
の安定性を挙げた点は注目される。
「金利水準はすでに非常に低い」とも述べ
ており、
「理事会は家計のバランスシートや住宅市場に注意を払ってきた」と
していることからも、住宅市場の状況を示す指標として知られる主要都市の
住宅入札処分率が足元で上昇する等、住宅市場の過熱が再び懸念され始める
なかで、追加利下げについては慎重に判断する姿勢を示したとも受け取れる。
また、インフレ期待に与える一つの重要な要素として実際のインフレ率の結
果に注目する姿勢を示していたが、今回の消費者物価指数の結果をみる限り
では、インフレ期待が一段と低下する兆しはうかがえなかった。
(%)
20
豪州の住宅価格と住宅入札処分率
(月次:2009/1~2016/10)
(%)
90
15
80
10
70
5
60
0
50
(%)
2.6
豪州のインフレ率とインフレ期待
(日次:2015/1/1~2017/12/31)
総合インフレ率(左目盛)
基調インフレ率(左目盛)
RBA見通し(16/8時点)(左目盛)
長期インフレ期待(右目盛)
2.4
2.2
中古住宅価格(前年比)(左目盛)
▲5
2.0
40
住宅入札処分率(右目盛)
▲ 10
10
11
12
13
14
15
16
(注) 住宅入札処分率は月末時点の数値、直近値は10/23時点まで、住
宅価格は四半期ベースで2016/6まで
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(年)
2.9
2.8
2.7
1.8
2.6
1.6
2.5
1.4
2.4
1.2
2.3
1.0
15/1
30
09
(%)
3.0
2.2
15/7
16/1
16/7
17/1
17/7
(注) 総合インフレ率、基調インフレ率は四半期ベースで2016/9まで、
RBA見通しは予想レンジの中間値で表示、長期インフレ期待はイン
フレ連動債10年と5年で計算、政策金利は2016/10/26まで
出所:RBA、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(年/月)
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2016/10/28
為替トピックス
2014/19/18
豪ドルは当面、狭い
レンジ内での動きに
終始する公算
豪ドルの対米ドル相場は、8月以降は狭いレンジ内で方向感が出ないまま、
上下に激しい値動きが続いている。
9月下旬の石油輸出国機構(OPEC)臨時総会による約8年ぶりの原油減産合意
を受けて原油価格が上昇するなかで、豪ドル相場は1豪ドル=0.77ドル台の上
値を試したが、独銀の経営不安によるリスクオフや米指標の改善を受けた米
金利の上昇を受けて0.75ドル近くまで反落。その後、中国指標の改善や鉄鉱
石価格の上昇を受けて再び0.77ドル台半ばまで急反発したが、予想を下回る
豪雇用統計を受けて0.76ドル前後まで反落している。そして、今回のCPIの結
果を受けて一時0.77ドル台まで上昇、対円でも80円台に乗せる場面があった。
RBAによる今後の利下げ観測が大きく後退している状況のなかで、リスクセ
ンチメントの改善にともない相対的に高金利で安定した先進国通貨である豪
ドルへの投資家の選好が強まっていることや、鉄鉱石価格等の商品市況の上
昇が相場の下支え要因になっている。
その一方で、米指標の着実な進展を受けて、12月の米連邦公開市場委員会
(FOMC)における利上げ観測が次第に高まっていることや、11/8の米大統領
選挙をはじめ、12月のイタリアにおける憲法改正を問う国民投票等の政治イ
ベントを控えていることが上値を抑える要因になっている。
今回の豪州7-9月期消費者物価指数の結果を受けて、11月のRBA理事会では金
利据え置きが予想されるが、こうした見方はすでに市場で織り込みが進みつ
つある。また、インフレ率が底入れする兆しが依然として見えないなかでは、
RBAは当分の間は利下げバイアスを残しながらも、様子見姿勢を続けることが
予想される。このため、豪ドル相場は今後も底堅い動きのなかで、方向感の
出にくい展開が続くと予想される。
中期的には、豪州景気の緩やかな回復が続くなか、インフレ率が徐々に上向
くとともに、利下げ打ち止め感が強まれば、豪ドル相場は上昇基調に転じて
いくと想定している。
(%)
▲ 0.2
先進国平均金利と豪ドル
(日次:2016/1/1~2016/10/26)
(1豪ドル=ドル) (1トン=ドル)
0.80
75
▲ 0.1
0.78
0.0
0.76
0.1
0.74
0.2
0.72
主要先進国平均金利(左逆目盛)
0.3
0.4
16/1
豪ドル/米ドル(右目盛)
16/2
16/3
16/4
16/5
16/6
16/7
16/8
(日次:2016/1/1~2016/10/26)
(1豪ドル=ドル)
0.800
70
0.785
65
0.770
60
0.755
55
0.740
50
0.725
45
0.710
中国輸入鉄鉱石価格(左目盛)
0.70
40
豪ドル(右目盛)
0.695
35
16/1 16/2 16/3 16/4 16/5 16/6 16/7 16/8
(年/月) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
0.680
16/9 16/10 16/11
(年/月)
0.68
16/9 16/10 16/11
(注) 主要先進国平均金利は日本、ドイツ、英国、米国の2年国債利回り
の平均値
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
鉄鉱石価格と豪ドル相場
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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為替トピックス
2014/19/18
金融商品取引法に係る重要事項
 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定
の手数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費
用等)をご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入
対価のみをお支払いいただきます。
 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあ
ります。
 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの
遅滞・不履行が生じるおそれがあります。
 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向を
ふまえて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況
によっては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。
 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や
目論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。
商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-161028-14
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