2016 年度 国 語 ■ 大学・学部(日程):東北大学 文・教育・法・経済学部(前期) ■ 出題構成(時間/配点):120 分 / 文 400 点,教・法 300 点,経 200 点 大問 一 二 三 四 形 式 評論 小説 古文 漢文 分野・内容 等 藤田省三『全体主義の時代経験』 宮下奈都『終わらない歌』 阿仏尼『うたたね』 劉廷璣「在園雑志」 字 数 約 2400 字 約 4100 字 約 1000 字 216 字 難易度 標準 標準 標準 やや易 変化 ↑ → ↑ → ※難易度変化…↑難化/→昨年並み/↓易化 ※難易度は東北大受験生を母集団とする基準で判定しています。 ■ 出題傾向 ・現代文は,例年評論1題と小説または随筆1題,計2題の組み合わせ。問題文の分量は例年国公立 大学としては標準~やや多め。字数制限がある記述問題を中心に出題される。設問は各大問で概ね 5題出題される。問題ごとの記述の分量は少なめだが,その分解答の内容を絞り込むのに苦労する。 ・古文は,口語訳・内容説明が中心となり,文法の単独の問題,文学史などの知識問題はほとんど出 題されない。古文でも,説明問題には字数制限がつくことが多い。 ・漢文も,口語訳・書き下し・内容説明が中心で,説明問題には 30~50 字程度の字数制限がつく。 また,書き下しおよび口語訳の傍線部に訓点がつかない(白文の読解を要求する)ことが多い。な お,問題文は例年かなりの長文(200~350 字超)である。 ・問題文の難易度は年度でばらつきがあり,難度が高い年度は問題に比して試験時間が短いと言える。 ■ 2016 年度入試の特記事項 ・2016 年度は評論の大問で漢字書き取り問題が5問出題され,語句の意味説明問題は出題されなか った。 ・現代文の評論は,市場経済における「擬制商品」をもとに現代社会や人間について考察的に論じた 文章。「現代社会における人間疎外」は入試頻出論点の一つである。解答字数は 2015 年度と同程 度で,例年通り解答要素をまとめるのが難しい。設問については,硬質な文章でありやや読みにく いものの,論旨は明快なので問(二)~問(四)の部分読解問題での失点はできる限り押さえたい。 問(五)は「今日の『市場経済』における人間の状況」についての説明であるが,どのようにまと めるかの判断が難しく,表現力も問われる出題であった。 ・大問二では,2015 年度と同様小説の出題。主人公と同じような状況にある友人との共感や,夢に 向かって努力している友人からの触発などを通じて,自分のあり方を内省している文章である。分 量は 2015 年度に比べて大幅に増えたが,読みにくさはない。全体としてどこまでふみこんで解答 すべきかに悩む出題が多いため,あまり問題の検討に時間を割きすぎて時間が足りなくなってしま わないよう注意したい。問(五)は比喩表現の説明問題だが,問題文末の唐突な表現に対する説明 であるため,問題文全体の内容から推測して解答を作成する必要がある難題。 ・古文は,2015 年度は江戸時代の戯作者,浮世絵師である八島定岡による評伝であったが,2016 年 度は阿仏尼による鎌倉時代の日記「うたたね」からの出題。出題形式はほぼ例年通りで,和歌を解 釈する問題がある。主語などの省略が多く読み取りにくい箇所もあるが,展開としてはオーソドッ クスなものであり,また和歌に関連した出題(問(三),問(四))も頻出の読解パターンのもの であったため,日ごろの演習経験の差がそのまま得点の差につながりやすい出題であったと言える。 ・漢文は, 2015 年度は評論文からの出題であったが,2016 年度は随筆からの出題であった。問題文 はやや短くなり,内容も平易であるため,基礎的な読解力の有無が差を分ける出題である。書き下 し文の問題はすべての設問が返り点のない白文で出題された。重要句形のほか,傍線部にある漢字 の細かな字義を問う出題が多いのも,同大学の傾向どおり。説明問題では問題文全体の論旨を踏ま えて解答する必要があるが,文章把握が容易になった分,解答作成能力が得点に直結する出題であ ったといえる。 ■ 求められる力とその養成 ・現代文・古文・漢文ともに,東北大向けに特化するというのではなく,標準的な国立大の個別試験 対策を十分に心がける(北大などの問題も参考になる)。 ・字数制限のある記述問題対策として,短い字数制限内で答案を要領よくまとめる作業に慣れておく ことが必要である。最初は分量を気にせずに内容をまとめる練習をし,慣れてくるに従って,答案 のポイントを絞りつつ,かつ短時間でまとめられるように,読解力と表現力を磨いてほしい。 なお,これらの要素を独学で身につけていくことは難しいので,Z会の通信添削などを通じて解答 作成能力を養っていくことをすすめる。 ・評論では,抽象度の高い文章に慣れておきたい。まずは,『現代文 キーワード読解』(Z会出版) などで頻出テーマの基本概念を理解した上で読解演習を積むことをすすめる。また,問題文の論の 展開や論旨を 60~80 字程度でまとめる練習もしておくと有効である。 ・例年大問二では小説が出題されているが,2014 年度のように随筆が出題される可能性も念頭にお いて,小説・随筆の文章に数多くあたり,そこで表されている人物の心情を的確に把握・表現する 練習をしておきたい。小説・随筆の演習はおろそかにされがちであるため,他に個別試験で小説が 課される大学の問題(大阪大文学部など)の演習が有効である。 ・古文は基本語彙と文法をしっかり身につけて,文章の正確な読解を心がけたい。また,平素から分 野にこだわらず一定の長文を読み,口語訳の練習を徹底すること。その上で,内容把握問題に備え て,問題文全体を 50~60 字程度でまとめる練習をするとよいだろう。 ・漢文でも重要句法, 漢語といった基礎を確実に固めて, 正確な読解ができるようにしておく。 特に, 漢字や熟語自体の解釈が読解のポイントとなる場合が多く,他の大学ではルビや注があるような語 句の訓読や解釈を求められることがあるので,普段の学習から漢和辞典を引くなどして,その語が 持っている本来の意味や複数の意味を確認するよう心がけてほしい。また,読解においては,白文 の書き下しや口語訳・解釈が問われるということを念頭に置いて,白文を見て,そこで問われてい る句法が何なのかにすぐ気づけるように準備しておく必要がある。東北大の漢文は比較的難度が高 いので,平素からジャンルを問わず長文に取り組み,書き下し・口語訳の練習を徹底すること。問 題文全体を 50~60 字程度でまとめる練習も古文同様に必須である。 6
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