10/24 2016/ 為替トピックス 投資情報部 FX ストラテジスト 由井 謙二 政治不確実性の高まりが南アランドの上値を抑制 国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しにおいて、2017年の南アフリカの成長率を7 月時点の見通しから下方修正し、ごく緩やかな回復にとどまるとの見通しを示した。 また、IMFは論文において、金融危機後の南アランドの変動をもたらす主な要因として、① 商品価格の変動、②国際金融市場の変動、③政治の不確実性、の3つを指摘した。 このうち、③の同国の政治不確実性が懸念される状況となっている。南ア検察は10/11、 ゴーダン財務相に対して11/2に裁判所へ出頭するよう命じる召喚状を提出。一方で、ゴー ダン氏は公判において身の潔白を表明する姿勢を示している。 当面は、こうした政治の不確実性やそれにともなう格下げ懸念がリスク要因として意識さ れ、南アランドの上値を抑制すると見込まれる。 IMFは2017年の南ア フリカの成長はごく緩 やかな回復にとどま ると予想 国際通貨基金(IMF)は10/4に発表した最新の世界経済見通しにおいて、2016年 の南アフリカの実質GDP成長率見通しを前年比+0.1%と7月時点の見通しから据え 置く一方、17年は同+0.8%と7月(同+1.0%)から下方修正した。政策の不確実性が経 済の回復を阻害していると述べたうえで、17年は一次産品と干ばつのショックがなく なり、電力供給が改善するにつれ、ごく緩やかな回復になると指摘した。 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 ▲ 2.0 ▲ 4.0 ▲ 6.0 IMF世界経済見通し(GDP成長率、前年比、%) (2016年10月予測) 2015年 世界 2016年(予) 先進国 新興国 2017年(予) 米国 ユーロ圏 日本 インド 中国 2015年 3.2 2.1 4.0 2.6 2.0 0.5 ブラジル ロシア ▲ 3.8 ▲ 3.7 7.6 6.9 南ア 1.3 2016年(予) 3.1 1.6 4.2 1.6 1.7 0.5 ▲ 3.3 ▲ 0.8 7.6 6.6 0.1 2017年(予) 3.4 1.8 4.6 2.2 1.5 0.6 0.5 1.1 7.6 6.2 0.8 2 0 1 6 年7 月見通しから の変化幅(% ) 世界 先進国 新興国 米国 ユーロ圏 日本 インド 中国 2016年(予) 0.0 ▲ 0.2 0.1 ▲ 0.6 0.1 0.2 ブラジル ロシア 0.0 0.4 0.2 0.0 南ア 0.0 2017年(予) 0.0 0.0 0.0 ▲ 0.3 0.1 0.5 0.0 0.1 0.2 0.0 ▲ 0.2 2 0 1 6 年4 月見通しから の変化幅(% ) 世界 先進国 新興国 米国 ユーロ圏 日本 インド 中国 南ア 2016年(予) ▲ 0.1 ▲ 0.3 0.1 ▲ 0.8 0.2 0.0 ブラジル ロシア 0.5 1.0 0.1 0.1 ▲ 0.5 2017年(予) ▲ 0.1 ▲ 0.2 0.0 ▲ 0.3 ▲ 0.1 0.7 0.5 0.3 0.1 0.0 ▲ 0.4 出所:IMF「World Economic Outlook, October 2016」よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/10/24 為替トピックス 新興国全般でみると、ブラジルやロシア等の成長率見通しには好転の兆しがみられ る一方で、南アフリカでは見通しの悪化が続いている。見通し悪化の背景には、国 営電力会社の投資不足や発電施設の老朽化を背景とした慢性的な電力不足等、 成長のボトルネックがあり、政府当局にはこうしたボトルネックを着実に解消していく ことが求められる。 IMFは南アラン ドの 変動要因として、商 品価格の 変動や 政 治の不確実性を指摘 また、IMFは「南アフリカランド(以下ランド)の為替レートの変動に影響を与えたのは 何か?」との論文を公表。金融危機後のランドの変動をもたらす主な要因として、① 商品価格の変動(とりわけ金価格)、②国際金融市場の変動、③政治の不確実性、 の3つを指摘した。 このうち、①の商品価格や②の国際金融市場の変動には落ち着きがみられている。 金価格は年初から上昇基調を強め、夏場以降は1トロイオンス=1200ドル台で底堅 い値動きとなっている。南アフリカは多くの鉱物資源に恵まれており、鉱物関連は輸 出総額の5割程度を占める等、資源と経済の関係性は深い。そのため、主要輸出品 である金価格とランド相場に一定の連動性がみられると考えられる。 また、投資家心理を測る指標で「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数(S&P500株価指数 の変動性指数)は、英国のEU離脱決定直後こそ、不安心理が高まった状態とみな される20を上回る場面がみられた。しかしその後は、投資家の過度な不安心理は後 退し、VIX指数も10台前半から半ば程度での推移となっている。こうした低ボラティリ ティ環境が継続する場合には、内外金利差が意識され、投資家等が高金利通貨を 選好する傾向がみられる。 (1トロイオンス =ドル) 南アランドと金相場の推移 (日次:2010/1/4~2016/10/21) 南アランドとVIX指数の推移 (1ドル=ランド) 2,000 (日次:2015/1/2~2016/10/21) 6 70 8 60 11 ランド高 1,800 ランド安 1,600 10 1,400 12 1,200 14 30 1,000 800 金現物(左目盛) 南アランド(対ドル、右逆目盛) 10 11 12 13 14 15 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 VIX指数(左目盛) 南アランド(対ドル、右逆目盛) 12 50 40 金価格の上 昇をともな い南アラン ドも反発 (1ドル=ランド) 13 VIX指数が20を上回 ると投資家の不安 心理が高まっている 状況とされる 14 15 20 16 16 10 中国人民元 切り下げ 0 18 16 15/1 (年) 15/4 15/7 15/10 中国懸念、 原油安進行 16/1 17 ブレグジット 16/4 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 18 16/7 16/10 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/10/24 為替トピックス 政治不確実性や そ れにともなう格下げ 懸念はランドの上値 を抑制する要因に 現状では特に、③の同国の政治不確実性が懸念される状況となっている。南アフリ カ検察は10/11、ゴーダン財務相に対して、11/2に裁判所へ出頭するよう命じる召 喚状を提出した。検察当局は、ゴーダン氏が南ア国税庁長官時代に副長官の早期 退職とコンサルタントとしての再雇用を承認したことで、国家に110万ランド(約820万 円)の損害を与えた容疑があるとしている。 これに対して、野党等は、財政健全化を進める財務省に対するズマ大統領派の政 治介入として批判を展開。また、同国の国債格付けを投資適格級の最低水準とす る大手格付会社は、12/2に格付け見直しを控えて、同国の政治的混乱は「格付け にマイナスの影響を与える可能性がある」と指摘した。 南ア検察当局は10/12、ゴーダン財務相の異議申し立てを検討することに前向きな 見方を示したが、同財務相は10/18までを期限とした異議申し立てを提出せず、 11/2の初公判で身の潔白を表明するとみられる。公判で起訴が棄却となれば市場 で安心感が広がり、ランドが上昇する可能性もあろう。 もっとも、南ア検察はゴーダン財務相の南ア国税庁長官時代のスパイ容疑でも捜査 を進めている。財務相の辞任を求める圧力が高まる可能性には引き続き留意が必 要とみられる。実際に財務相が辞任に追い込まれた場合、資金流出が加速し、ラン ドが急落する可能性が高い。当面は、こうした政治の不確実性やそれにともなう格 下げ懸念はリスク要因として意識され、ランドの上値を抑制すると見込まれる。 (億ランド) 対内証券投資動向と南アランド (月次:2011/1~2016/9) 300 株式(左目盛) 債券(左目盛) 南アランド(対ドル、右逆目盛) 200 (1ランド=円) (1ドル=ランド) 6 南アランド円の推移 (日次:2015/1/2~2016/10/21) 11.0 10.5 8 10.0 100 10 0 12 ▲ 100 14 資金流入・ランド高 ▲ 200 9.5 9.0 8.5 8.0 16 7.5 18 ▲ 300 6.5 資金流出・ランド安 20 ▲ 400 11 12 13 ランド円 100日移動平均線 200日移動平均線 7.0 14 15 6.0 16 (注)対内証券投資ネット(株式・債券)は2016/8時点 出所:南ア中銀、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 15/1 (年) 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 16/7 16/10 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/10/24 為替トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手 数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)を ご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみを お支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあり ます。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅 滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふま えて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっ ては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目 論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-161024-15 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
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