2016 年度

2016 年度
阪大 世界史
■概要
(1)出題・解答の形式
・大問2~4題程度の構成であり,論述問題が中心。例年,単答問題(空欄補充・記号選択問題含む)
も数問出題される。
・1題当たりの論述字数は 40~300 字程度。制限字数は「~字程度」という形で示される。
・総論述字数は 700 字程度から 970 字程度と年度によって変動がある。
(2)分量/難易度の変化(昨年度比)
分量:増加 / 難易度:変化なし
(3)特記事項
・大問構成:例年3題出題されることが多く,2013 年度・2015 年度は2題であったが,2016 年度は
3題であった。
・2016 年度は(Ⅱ)で地図問題が出題された。
・総論述字数は 2015 年度の 790 字程度から 820 字程度にやや増加した。1問当たりの論述字数は 100
字程度のものが多かった。
・単答問題の出題は,2015 年度は2問であったが 2016 年度は7問に増加した。
■各問の分析
大問
出題形式・テーマ
(90 分)
問題の内容・分析
難易度
中国の歴代王朝と周辺地域の関係が問われた。論述問題はいずれも
基本的な知識で解答が可能であったが,解答の構成を丁寧に検討し
中国の歴代王朝の版図
(Ⅰ)
(空欄補充,論述 100
字程度,150 字程度)
なければ制限字数内に解答をまとめることは難しかっただろう。
問2は,問題の要求である「他国からの独立と他国への服属」に絞
って簡潔にまとめるよう心掛けたい。
標準
問3は 19 世紀後半のロシアの中国への進出が問われた。想起でき
る事項が多いだけに,解答に必須となる要素の見落としや,具体的
な条約名や地名を挙げる際の史実誤認に注意してほしい。
単答問題が6問出題され,地図問題も見られた。問8は戦後史から
の出題であり,時事的な問題に対する関心が求められた。それ以外
地中海沿岸地域の歴史
(Ⅱ)
(空欄補充,単答,論述
50 字程度,100 字程度,
120 字程度/地図)
はいずれも標準的な内容なので失点は最小限に抑えたい。
問1はローマ社会の変化についての基本的な問題。指定語句を手掛
かりに解答を組み立てればよい。
標準
問6は制限字数内に収まる範囲で,人物名・目的・影響などに触れ
つつ,完成度の高い解答に仕上げたい。
問7はオスマン帝国とヨーロッパ諸国の関係を説明する上では基
本的な事項なので,確実に得点しておきたい。
問1の南シナ海諸地域とアメリカ大陸の交易関係については,標準
的な問題なので失点は最小限に抑えたい。
問2は指定語句にやや細かい事項が含まれていた。さらに,ポルト
(Ⅲ)
大航海時代
(論述 100 字程度×3)
ガルの交易活動についてやや珍しい切り口で問われたため,とまど
った受験生も多かっただろう。リード文や指定語句を手掛かりにし
標準
つつ解答をまとめたい。
問3は文化史の出題であり,苦戦した受験生は多かっただろう。科
学革命の根底にあった思潮,および具体的な事例を挙げつつ説明す
る必要があり,差がついた問題であったと推測される。
※難易度は阪大受験生を母集団とする基準で判定しています。
■合否の分かれ目
設問数が多いため,手早い処理が求められる。
(Ⅰ)の論述問題では標準的な内容が問われたが,制限字
数内にまとめるためには解答の構成を丁寧に検討し,扱う事項を取捨選択する必要があった。
(Ⅱ)は単答
問題・論述問題ともに概ね標準的な内容であった。
(Ⅲ)は問2・問3がやや細かく,使い方を迷う指定語
句も提示された。文化史やアフリカ史などの学習が手薄になりやすい分野の対策が十分に取れていたかど
うかで差がついただろう。
■阪大世界史に求められる力
⇒教科書レベルの知識を土台に,世界史を俯瞰するグローバルな視点を養おう!
要求① 教科書全範囲にわたる正確な知識
阪大世界史では,全時代・全地域について教科書レベルの知識が幅広く問われる。どの時代・地域につ
いて問われても解答できるよう,教科書レベルの知識は偏りなく固めておく必要がある。
要求② 世界史上の意義や影響を考察するグローバルな視点
阪大世界史では,人・モノの移動や交流史といったグローバルな視点から歴史事象を論じさせる問題が
頻出である。歴史事象を個別に丸暗記するだけでなく,世界史上でどのような意義を持つのかといった点
も意識しながら,広い視野を養っておくことが重要である。
要求③ 設問要求を把握する読解力と解答を構成する論理的思考力
論述問題では,知っていることを書き並べるのではなく,題意に沿って盛り込むべき内容を取捨選択し,
制限字数内で過不足がないようにまとめる必要がある。このため,設問要求を見抜く力,解答の構成を考
える力,さらにはそれを文章で簡潔に表現する力の養成が必須である。
■阪大世界史攻略のために
知識の定着と論述対策の両面から早期に対策を!
基礎力の完成
まずは,要求①を満たすために,通史の完成を急ごう。受験生の夏までには,通史を一通り学習してお
くことが理想である。教科書の全範囲の基礎的な内容を網羅し,問題演習にも取り組もう。また,既習範
囲は積極的に論述問題にもチャレンジし,知識を文章でまとめることに慣れていこう。
論述演習の積み重ね
一通り通史を学習したら,できるだけ早く阪大入試レベルの論述問題の演習を主軸に据えた学習に切り
替えていこう。まずは 100 字未満の短い字数の論述問題に繰り返し取り組んで,論述問題への対応力を高
めていこう。その際,展開・経過,背景・理由,結果・影響・意義などに注意し,要求②・③に対応する
力を習得しよう。
阪大レベルの実戦演習
受験生の冬以降は,時間を意識した演習も行おう。1題にかける時間配分を検討し,制限時間内に
書き切る練習を積んでおくことが,本番で力を出し切るための鍵となる。Z会の通信教育などで論述
問題に数多く取り組み,知識の抜けがないかもチェックしよう。