1 都 3 県への転入超過、依然として続く

2016/10/27
東京支社
情報部
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL:03-5919-9342
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:1 都 3 県・本社移転企業調査(2016 年 1 月~9 月)
1 都 3 県への転入超過、依然として続く
移転元・移転先ともに特定地域への集中進む
はじめに
安倍内閣は 2015 年度を「地方創生元年」と位置づけ、人口急減・超高齢化という今後日本が直
面する課題に対し各種施策を打ち出しはじめた。他方、本社の 1 都 3 県(埼玉県、千葉県、東京
都、神奈川県)への転入がいわゆる地方への転出を上回る傾向が続いている。
帝国データバンクでは、1 都 3 県から本店所在地の転出が判明した企業や 1 都 3 県への転入が
判明した企業を、自社データベース・企業概要ファイル「COSMOS2」
(146 万社収録)から抽出。移
転年別や転入企業の移転元・転出企業の移転先の分析を行った。
調査結果(要旨)
・2016 年 1 月から 9 月までに他の道府県から 1 都 3 県へ転入した企業は 225 件。一方、1 都 3
県から他の道府県に転出した企業は 164 件判明。6 年連続で転入が転出を上回り、東京圏に
企業が本社を移す転入超過傾向が続いている。前年の同時期と比較すると、転入、転出とも
に減少
・2016 年 9 月までの移転元は「大阪府」
、移転先は「茨城県」がトップ。1 都 3 県からの移転
先は上位 5 府県で全体の 45.7%を占める
1都3県
転入転出企業推移
400
350
転出
人材不足
政権交代
300
250
ITバブル
崩壊
200
消費税率8%へ
引き上げ
リーマン・ショック
転入
150
消費税率5%へ
引き上げ
100
バブル崩壊
50
0
92
93
94
95
96
97
1991年
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98
99
01
2000
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
15
16
(1月~9月)
1
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特別企画:1 都 3 県・本社移転企業調査(2016 年 1 月~9 月)
1.年別推移
~ 6 年連続で 1 都 3 県への転入が転出を上回る見込み
1 都 3 県転入転出件数
1 都 3 県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)から
移転した企業の 1991 年以降の推移をみると、1 都 3 県
判明年
への転入企業は 90 年代を通じて増加傾向で推移、2003
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
年以降は概ね 300 件前後で続き、2016 年(1 月~9 月)
は他の道府県から 1 都 3 県に 225 件移転していること
が判明した。
一方、1 都 3 県から転出した企業について 1991 年か
らの推移をみると、1 都 3 県から転出する企業数は景
気の波など景気変動に影響を受けていることが判明。
景況感が悪化すると 1 都 3 県から転出する企業数が多
くなっている。主に、1992 年~94 年にかけての転出企
業の増加時には「バブル崩壊」
、2001 年~2002 年の増
加時は「IT バブル崩壊」
、そして 2008 年~2009 年は
「リーマン・ショック」などと、景況感の悪化と転出
企業数の増加がリンクしていることが読み取れる。そ
うしたなか、2016 年 9 月までの転出企業は 164 件で前
年の同時期と比較して 18 件(9.9%)減少しており、
年間でもピークだった 2001 年の概ね 3 分の 2 の水準
にとどまるとみられる。
また、1 都 3 県への転入企業は、2003 年からほぼ一
(1月~9月)
2016年
貫して転出企業を上回っていた(2009 年・2010 年を除
(1月~9月)
く)
。とりわけ、2015 年は転入企業 335 件、転出企業
計
転入
転出
転入-転出
112
126
145
167
177
174
174
160
217
234
224
256
311
282
295
326
294
281
294
259
276
311
279
297
335
221
292
234
328
275
283
227
272
302
255
316
311
281
273
268
269
209
254
295
279
263
287
255
268
231
△ 109
△ 166
△ 89
△ 161
△ 98
△ 109
△ 53
△ 112
△ 85
△ 21
△ 92
△ 55
30
9
27
57
85
27
△1
△ 20
13
24
24
29
104
267
182
85
225
164
61
6,231
6,912
△ 681
231 件となり、1991 年以降で最大となる 104 件の転入超過となった。2016 年においても、1 月~9
月は転入企業が転出企業を上回る状況が続いており、6 年連続で転入超過になると見込まれる。
安倍政権への交代以降、景況感はアベノミクス効果でいったん好転するも、消費税8%への引
き上げ以降、再び低調な状況で推移している。2016 年も転入超過が継続するとみられる背景には、
優秀な人材を確保するために労働力人口が集中する立地を選択する企業の経営戦略があると考え
られ、近年課題となっている「人材不足」問題が企業移転トレンドに影響を及ぼしているとみら
れる。
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特別企画:1 都 3 県・本社移転企業調査(2016 年 1 月~9 月)
2.転入元は「大阪府」、転出先は「茨城県」がトップ
2016 年 9 月までに 1 都 3 県へ移転した企業の転入元を道府県別にみると、大阪府が 53 件(構
成比 23.6%)で突出して最も多く、次いで、愛知県(20 件、同 8.9%)、北海道(17 件、同 7.6%)、
静岡県(16 件、同 7.1%)
、福岡県(12 件、同 5.3%)が上位 5 位となった。大都市を抱える地域
や近接地など、上位 5 道府県からの移転が半数以上を占めた。2015 年と比較すると、1 位の大阪
府から 4 位の静岡県まで構成比が増加するなど、1 都 3 県に転入する地域が前年より集中してい
る様子がうかがえる。
一方、2016 年 9 月までに 1 都 3 県から転出した先で最も多かった地域は茨城県の 22 件(同
13.4%)
。以下、静岡県(16 件、同 9.8%)、大阪府(15 件、同 9.1%)
、群馬県(12 件、同 7.3%)
、
愛知県(10 件、同 6.1%)と続き、上位 5 府県への転出が全体の 45.7%を占めた。大阪府や愛知
県などの大都市のほか、
北関東を含め近接地に移転している結果となった。2015 年と比較すると、
茨城県への転出が 2016 年 9 月までの 9 カ月間で前年を上回るなど、移転先の集中も進んでいる。
1 都 3 県への転入や他の道府県への転出においては、企業数が多くビジネスチャンスや労働人
口も集中する大都市や、周辺地域への移転にとどまっていることが改めて浮き彫りとなったが、
転入元と比較すると転出先は相対的に分散している様子がうかがえる。
2016 年(1 月~9 月) 転入元
2016年(1月~9月)
道府県
件数
構成比
(%)
2016 年(1 月~9 月)
2015年
構成比
順位
(%)
転出先
2016年(1月~9月)
道府県
件数
構成比
(%)
2015年
構成比
順位
(%)
1
大阪府
53
23.6
22.4
(1)
1
茨城県
22
13.4
9.1
(2)
2
愛知県
20
8.9
7.8
(3)
2
静岡県
16
9.8
6.9
(7)
3
北海道
17
7.6
3.9
(7)
3
大阪府
15
9.1
9.5
(1)
4
静岡県
16
7.1
5.1
(5)
4
群馬県
12
7.3
9.1
(2)
5
福岡県
12
5.3
5.4
(4)
5
愛知県
10
6.1
7.8
(4)
6
茨城県
11
4.9
8.7
(2)
6
栃木県
8
4.9
7.4
(5)
7
群馬県
10
4.4
4.5
(6)
6
兵庫県
8
4.9
5.2
(8)
7
兵庫県
10
4.4
1.8
(13)
8
北海道
6
3.7
3.9
(9)
9
宮城県
8
3.6
3.3
(9)
8
宮城県
6
3.7
2.2
(12)
9
岡山県
8
3.6
1.2
(21)
8
新潟県
6
3.7
1.7
(17)
※ゼロの県:2016年(1月~9月)=11、2015年=4
※ゼロの県:2016年1月~9月=10、2015年=8
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特別企画:1 都 3 県・本社移転企業調査(2016 年 1 月~9 月)
まとめ
2015 年度は安倍政権が「地方創生元年」と位置づけ、観光振興、移住・定住の促進や「地方に
しごとをつくり、安心して働けるようにする」との基本目標を掲げている。2015 年度は1兆 3000
億円、2016 年度は1兆 5000 億円規模の予算が組まれ、「まち・ひと・しごと創生本部」を中心に
地方創生への施策が講じられているほか、各地方自治体は独自で法人税の減税策を打ち出して企
業誘致に努めるなど、政・官ともに施策を講じている。
今回の調査では、企業の移転には慎重な経営判断を要するため政策効果がすぐに表れるもので
はないとはいえ、1 都 3 県への他道府県からの転入企業が転出企業を上回る状況が続いている実
態が浮き彫りとなった。
「2016 年度の雇用動向に関する企業の意識調査」
(2016 年3月調査、帝国
データバンク)では、
「地方の若者が都会に流れ、大企業が多くを採用しているため中小企業の採
用状況は非常に厳しい」
(製缶板金、宮崎県)との声も挙がるように、人材不足のなか、企業は法
人税のうま味よりも労働力の獲得を優先し、交通の利便性が高く人材が豊富に集まる 1 都 3 県に
とどまることを選択しており、いわゆる「地方」への移転はほとんど進んでいない様子がうかが
える。地方創生に向けた各種施策が有効に機能するためには、個別の企業を呼び込むだけでなく、
その商流へのプラス効果も踏まえた“取引創生”として進めていくことが肝要である。
文化庁などの公的機関の移転が実現すれば、企業移転にも一定の波及効果も見込まれようが、
今後も人口減少が懸念されるなか、企業はますます労働力のあるところに集中しかねない。引き
続き人口減少、国土論全体と合わせ、企業移転の動向には注目が必要だろう。
※本店所在地は本社機能を有する事業所の場所を指し、商業登記の本店所在地と異なるケースもある
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