2735 ワッツ - 日本ベル投資研究所

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Independent Research Analyst Report
2735 ワッツ
~ワッツブランドの本格展開による事業再構築が進展~
2016 年 10 月 26 日
東証 1 部
ポイント
・主力の 100 円ショップは、2 年間の構造改革がこれから成果を上げてこよう。ファッシ
ョン性を考慮した店舗づくり、プロダクトミックスの見直し、生産性の向上に向けた POS
の活用などが効果を上げ、業績は今 2017 年 8 月期から増益に転じ、経常利益で 1350 百万
円(前年度比+13.2%)が達成できよう
・2015 年 2 月にスタートした‘ワッツ’ブランドの 100 円ショップは、白を基調にした
きれいな店で、新店とリニューアルを含めて 2016 年 8 月末までに 115 店を出店した。比
較的低コストで展開できる Watts with(ワッツウィズ)というブランドで、収益を確保す
る目途も立った。一定の競争力を確保できるので、新規と改装を合わせて今期も 100 店以
上出店してこよう。
・ナチュラル系のファッション雑貨、ブォーナ・ビィータの収益性改善も見えてきた。今
期から黒字に転じてこよう。均一価格ショップの海外事業にも弾みがついている。タイは
現地のオペレーションに改善を要するが、手は打っているので早晩戻ってこよう。中南米
ではペルーに続いて、メキシコが動き出そう。日本から現地への卸売も、次第にボリュー
ムが増え、収益性は好転している。
・さらに、新たなオープンイノベーションとして、デンマークのソストレーネ・グレーネ
と組んで、北欧雑貨のスペシャリティストアに参入する。10 月末に表参道で 1 号店がオ
ープンする。注目度は高く、今期 4 店、来期以降 6 店ペースで出店する。2 年目からは利
益貢献が見込めよう。
・①新店の継続的な積極出店、②ワッツブランドの再構築による既存店の底上げ、③海外
事業・新業態の黒字化が効果を発揮してくれば、経常利益で 20 億円に戻すことができよ
う。ここ 2 年は先行投資の影響で業績が低迷したが、今期は増益基調に復帰しよう。3 ヵ
年計画では、経常利益 20.7 億円、ROE12%への回復を目指しているが、その力は十分有し
ている。攻めに入っている新ブランドの波及効果に注目したい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目 次
1.特色
規模では業界 4 位ながら、低コスト経営で小回りがきく存在
2.強み
迅速な出退店と独自の店舗オペレーションで収益力を発揮
3.中期計画
4.当面の業績
5.企業評価
ワッツブランドによる店舗フォーマットの転換が本格化
今 2017 年 8 月期より増益に転換
収益源の多様化に挑戦~ソストレーネ・グレーネに期待
企業レーティング B
株価(16 年 10 月 25 日) 1088 円
PBR 1.59 倍
ROE 9.8%
時価総額
PER 16.2 倍
152 億円(13.96 百万株)
配当利回り 1.4%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2009.8
33074
1116
911
564
45.6
5.0
2010.8
34634
1325
1542
726
58.7
10.0
2011.8
38188
1817
1985
1018
81.9
12.5
2012.8
40759
2056
2055
1177
93.3
15.0
2013.8
41725
2074
2075
1123
88.6
17.0
2014.8
43573
1784
1799
948
70.0
17.0
2015.8
44462
1257
1263
700
51.7
17.0
2016.8
46176
1205
1193
718
53.0
15.0
2017.8(予)
48000
1370
1350
910
67.2
15.0
2018.8(予)
51000
1760
1720
1100
81.2
17.0
(16.8 ベース)
総資本 18485 百万円
純資産 9265 百万円
自己資本比率
50.1%
BPS 683.9 円
(注)ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。2013 年 3 月 1 日で 1:2 の株式分割。それ
以前の EPS、配当は修正ベース。2013.8 期、2014.8 期の配当は、東証 2 部、1 部への変更記
念配 2 円、2015.8 期の配当は創業 20 周年の記念配 2 円を含む。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の可
能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要する、
D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
規模では業界 4 位ながら、低コスト経営で小回りがきく存在
100 円ショップが 1000 店を超える
ワッツは 100 円ショップを全国に展開している。規模ではダイソー(大創産業)、セリア、
キャンドゥに次いで、業界 4 位である。ダイソーが圧倒的なガリバーで品揃えも豊富、海外
展開も積極的である。セリアはおしゃれな店作りで、ショッピングセンター(SC)への展開に
力を発揮している。これに対して、当社は品揃えを絞り、生活に役立つものを割安で提供し
ている。店作りも居抜きをできるだけそのまま活用する。割安になる仕組みを作って、小回
りを利かせ機動力がある。
その機動力を活かしつつ、2015 年 2 月から新しい店舗展開をスタートさせた。ワッツ
(Watts)ブランドの白を基調としたきれいな店舗である。主力の従来型店舗は、平均売り
場面積 230 ㎡、商品アイテム数は 6000~7000 である。
「ミーツ(meets.)」、
「シルク」という
店名で店を出し、定番商品と季節商品を組み合わせている。これに対して、ワッツ店は従来
の店舗が 70~80 坪とすれば、100 坪を超えるやや大きい店として展開している。
実生活に役立つ定番商品では食卓、台所、家庭用品、事務文具用品(ステーショナリー)
の雑貨などがある。季節商品としては、夏の季節では涼を演出する扇子・すだれ・風鈴や、
夏休みを彩る海・プール用品、虫取りアミ・虫カゴなど、冬の季節では鍋物商品、ふわふわ
手袋やひざ掛けの冬物衣料などでアクセントをつけている。
当社は 1995 年に設立され、100 円ショップで急成長を遂げてきた。2006 年に大黒天物産
と合弁でバリュー100 を設立、2007 年に同業のオースリーを M&A、2010 年に輸入インテリ
アと生活雑貨を扱うあまの(AMANO)を、2013 年には中国地方の同業の大専を買収し、事業
を広げてきた。海外においても、2009 年にタイ、2012 年中国、2013 年マレーシア、2014 年
ベトナム、2015 年ペルーと、着実に販路を拡大している。
100円ショップ大手4社比較
業界順位
売上高(億円) 店舗数(国内)
特 長
ワッツ
4位
460
1030
・小規模店舗
・実生活雑貨
・スーパー、SCに
テナント出店
・低コスト経営
・海外出店を積極化
上 場
東証1部
(注)数字は最近の概数
ダイソー
1位
3950
3000
(海外1500)
セリア
2位
1400
1350
キャンドゥ
3位
680
940
・大型店舗
・100円均一商材
にこだわらず、豊
富なバラエティ感
・新興国にも多店
舗展開
非上場
・ファッション性の
高いカラーザデイズ
を多店舗展開
・SC出店好調
・商品開発にPOS
を徹底活用
ジャスダック
・取引先の絞り込
みで、スケールメリ
ットを活かし、100
円均一へ回帰
・大型店を出店、
海外FC展開
東証1部
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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実質 2 代目の平岡社長がリーダーシップを発揮
ワッツは 2015 年 8 月期に創業 20 周年を迎えた。平岡史生社長(55 歳)は、創業者である
平岡亮三氏の娘婿である。中学校の社会科の教師を 12 年ほど勤めていたが、38 歳の時、教
師から転身し、会社創立 3 年目の当社に移った。そして、5 年後に社長に就任した。
100 円ショップはもともと催事から始まった。食品スーパーやショッピングセンターの空
きスペースや軒下に期間限定で店を出して、そこで商品を売るというパターンである。創業
者の平岡亮三氏(2006 年死去)は 60 歳でこのビジネスを始めた。それまでは小さい会社の財
務担当であったが、独立し、新しい仕事として当時伸び始めていた 100 円ショップを始め
た。人材をうまく集めて立ち上げに成功したが、大きく発展させるに当たって、娘婿の平岡
社長をスカウトした。平岡社長は上場後間もなく社長になり、そこから着実に会社を成長に
導いてきた。
業界 4 位ながら差別化を追求
店舗数を最近の概数でみると、ダイソー3000 店(外に海外 1500 店)、セリア 1350 店、キ
ャンドゥ 940 店、ワッツ 1030 店である。ワッツは 1 店当たりの規模が小さいので、売上ベ
ースでは業界 4 位である。
ダイソーは大型店を主力に、ファッション性も高めている。ブラジル、中国などへの展開
にも力を入れている。国内物流を強化しつつ、SPA(製造小売業)志向も強めようとしている。
セリアはファッション性を軸に好調である。キャンドゥは大手に対応して、新しいブランデ
ィングによる店作りを行いつつ挑戦を続けている。その中で当社は基本的に上位 3 社とは
できるだけ競争をしない差別化戦略をとっている。
事業部門別売上高構成比
(億円、%)
2014.8
(構成比)
売上高
100円ショップ 直営(ワッツ、ミーツ、シルク)
卸売(FC向け)
小計
海外事業
直営
卸売
小計
国内事業
2015.8
売上高
2016.8
(構成比)
売上高
(構成比)
370
40
410
85.0
9.3
94.2
375
38
413
84.2
8.6
92.8
387
35
422
83.8
7.6
91.4
1
4
5
0.3
0.9
1.2
4
7
11
0.8
1.5
2.4
7
12
19
1.5
2.5
4.1
20
4.6
21
4.8
21
4.5
合 計
435
100.0
445
100.0
461
(注)海外事業のうち、タイワッツは合弁事業化により、2014.8期より直営から卸売に変更。
100.0
おしゃれ雑貨(ブォーナ・ビィータ)
食品スーパーとの合弁(バリュー100)
輸入雑貨卸(あまの)など
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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M&A を通して規模を拡大
ワッツの 100 円ショップは小規模である。標準的店舗の商品点数は他社の半分以下であ
り、パート、アルバイトで運営できるようにしてある。店舗は 2016 年 8 月末現在、国内で
1028 店、大阪からスタートして全国に展開している。
同業の買収を何度か実施している。2005 年の三栄商事(埼玉)に次いで、2007 年に大手
のオースリー(埼玉)を買収し、売上規模を倍増させると共に、仕入れコストの低減を実現
させた。同時に店舗運営の統一により運営コストの節減を果たし、収益性の改善に成功した。
ミーツという店名はもともとワッツのショップであり、シルクはオースリーのショップで
あった。現在は一体化が進み、100 坪(330 ㎡)以上の売り場サイズをシルク、それ以下をミ
ーツと、規模で分けてきた。
2011 年に北海道へ展開した。当社のビジネスモデル(フォーマット)は、①出店にコス
トをかけない、②店舗運営にコストをかけない、ということなので、小さい売上高でも利益
が十分出せる仕組みをもっている。大阪に本社がある音通(おんつう、コード 7647)の 100
円ショップ、
「FLET'S」
(フレッツ)北海道の 7 店舗を営業譲受した。これを軸に多店舗化
を図った。
また、2013 年に大専を買収した。大専は岡山県、広島県を中心に 100 円ショップ(「100
円ランド」
、
「Randez100」)を 20 店ほど展開し、年商は 10 億円程度であった。その後、2014
年には 100 円ショップを担当するワッツオースリー販売の中国、四国エリアを分社化し、大
専に承継させた。販社が一体となった経営の効率化を図った。
100 円ショップの販売子会社を再編 ~ ワッツ東日本、ワッツ西日本の体制へ
100 円ショップの運営主体を 2016 年 9 月より再編した。北海道エリアの黒字化、大専と
の統合ができたことで、次の展開に向けた再編を行った。
従来のワッツオースリー販売、その子会社のワッツオースリー北海道、中四国を担ってい
るワッツオースリー中四国を 2 つに再編して、ワッツ東日本販売、ワッツ西日本販売と分け
た。東は北海道から東海まで、西は近畿地区から九州までを分担している。
これまでいくつもの会社を合併しており、その特性を活かしてきたが、スピードと効率の
向上を目指して、東日本と西日本に集約して収益性の向上を図ることにした。ワッツ東日本
および西日本の社長は、現在のワッツオースリー販売の社長である勝田取締役が兼務する。
ワッツは 100 円ショップ以外の業態にも展開 ~ ファッション雑貨へ
ワッツ(Watts)の社名の由来は、
“面白いことを「ワッ」とやろう”にある。いろんな事業
に挑戦していく社風をもっており、100 円ショップ以外も育てていこうと挑戦している。
ナチュラル雑貨販売のブォーナ・ビィータ(Buona Vita)は、心地よい生活をテーマに少
しプライスの高い雑貨を 21 店展開(2016 年 8 月末現在)している。ブォーナ・ビィータは、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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オースリーのファッション雑貨が発展したものである。100 円でのファッション雑貨は難し
かったので、もう少し高額な商品の店作りをした。ここのナチュラルテイストは今うけてい
る。ファッション雑貨は食器などをはじめ、より専門的なものを扱う方向にある。他の専門
店よりは安く、1000 円内外のものをベースにしている。
2010 年に、高額のファッション雑貨の輸入卸を手掛ける「あまの」を買収した。あまの
は、創業社長が高齢で引退し、黒字企業であったが、これを引き受けることにした。あまの
は取扱商品を増やしており、海外展開を拡大する時にはあまのがもつ輸入雑貨機能を活か
せよう。輸入型なので、ここ数年の円安でやや苦戦してきたが、ようやく好転しつつある。
生鮮スーパーとのコラボ(協業)であるバリュー100 は、大黒天物産(コード 2791)との合
弁(大黒天物産 60%、ワッツ 40%の出資)で、安定的に収益を上げている。
海外事業は直営、合弁及び FC 店舗合わせてタイ、マレーシア、ベトナム、中国、ペルー
に 2016 年 8 月末現在 59 店展開している。この内、タイのセントラルグループと組み、合弁
及び FC 事業で KOMONOYA(
「こものや」
)として 29 店出しているタイと、FC 事業で 10 店出し
ているベトナムがコアとなっているが、南米にも広がりが出ている。
新規事業の主な店舗数
国内
(店)
2008.8 2009.8 2010.8 2011.8 2012.8 2013.8 2014.8 2015.8 2016.8
11
12
15
14
14
18
29
24
22
ブォーナ・ビィータ
バリュー100
10
1
11
1
14
1
13
1
13
1
17
1
28
1
23
1
21
1
海外
0
1
4
6
8
10
20
35
59
1
4
6
8
8
15
3
2
22
4
4
3
2
29
6
9
10
5
こものや(タイ)
こものや(マレーシア)
小物家园(中国)
こものや(ベトナム)
こものや(ペルー)
2
合 計
22
22
31
23
24
28
49
59
81
(注)2008.8期~2012.8期の合計にはかつて展開した花祭り(花)やほろよい党(立ち飲み)を含む。
ブォーナ・ビィータの事業を子会社として独立 ~ ワッツ・コネクション
2016 年 3 月にブォーナ・ビィータ事業を本体から独立させ、100%子会社ワッツ・コネク
ションを設立した。ワッツ・コネクションの年商はまだ 9 億円程度であるが、これが 20 億
円レベルに上がってくれば、利益貢献もかなり期待できる。ファッション雑貨なので、ブラ
ンド作りと立地に合った商品戦略が鍵を握る。子会社に独立させた効果が 1~2 年でスムー
ズに立ち上がってくるかどうかが注目される。
ワッツ・コネクションの社長は、ワッツ本体の衣笠副社長が担当する。衣笠副社長は、オ
ースリーの創業者であり、ワッツと経営統合した後もブォーナ・ビィータを始め、新規事業
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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のマネジメントを担当してきた。
コーポレートガバナンスへの対応 ~ 監査等委員会設置会社へ
2014 年 3 月に東証 1 部へ指定替えした。1 部上場企業になって以来、知名度は上がって
いる。ビジネスの案件提案の持ち込みも増えている。
2013 年 3 月に 1:2 の株式分割を行い、個人株主の獲得に向けて、株主優待制度を導入し
た。3 年前の株主数は約 1800 人だったが、自社株の売り出しで 8.9 億円ほどファイナンス
した効果もあり、2014 年 8 月末の株主数は約 4800 人、その後も 2015 年 8 月期末で 6200
人、2016 年 8 月末で 8100 人へと順調に増えている。
コーポレートガバナンスについては、2016 年 8 月期より監査等委員会設置会社へ移行し
た。これによって、取締役会における社外役員の発言はこれまでにも増して活発になってい
る。小売業界出身、銀行出身、会計士の 3 名が監査等委員を務めている。
2.強み
迅速な出退店と独自の店舗オペレーションで収益力を発揮
100 円均一ショップの優位性
100 円ショップとファッション雑貨のビジネスモデルは全く違うので、直接競合するとい
うことはない。
国内の経済情勢が厳しい時、100 円ショップ業態にはそれがプラスに働いた。所得が伸び
ない中で、お買い得な生活雑貨は顧客に受け入れられる。国内の経営環境が厳しいと、撤退
する小売業が出てくるので、居抜き出店のチャンスも増える。
当社の 100 円ショップはパート、アルバイトで運営されている。正社員 1 人で 7~8 店を
担当するので、店が年間 50 店純増しても、社員は 6~7 人で十分対応していける。一方、近
年 FC は減っており、3 年前の 122 店が現在は半分以下の 47 店になった。当社にとっては、
直営の方が収益性は高くコントロールも利くので、直営に力を入れている。
また、かつての円高は仕入れコストの抑制という点でプラスに働いた。一方、円安になる
と、商品や価格の見直しが必要になっている。その時でも当社はローコストなので他社に比
べて一定の競争力を発揮している。円ドルレートについては、100~110 円で落ち着いてい
ると好ましい。
ファッション性のあるホビー商品、DIY 商品も人気
100 円ショップでは、ホビー商品も手軽に手に入る。手芸などの材料も 100 円でいろいろ
揃う。若い女性や主婦が自分で作り上げるファッション性のある DIY 商品も人気が高い。生
活雑貨と共に、おしゃれで、ちょっとした創作や装飾ができるようなものをいかに揃えるか
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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が集客のカギとなっている。
規模は小さいが一定の収益は確保
当社の 100 円ショップの顧客 1 人当たり購入金額は 360 円程度である。また、1 店当たり
の月商は平均すると 400 万円を下回り、規模は小さい。居抜きで行う出店は基本的に内装に
はあまり手を入れないので、自社で用意するのは商品、什器、看板と少なく、1000 万円も
かからず店がすぐ出来る。出店コストが安くすむ分は、商品のよさにお金をかけている。
大手とはボリュームが違うので仕入れコストが必ずしも安くなるわけではないが、店舗
運営コストが安いので、十分カバーすることができる。顧客にとっては、実際の生活に役に
立つ商品が、お得に手に入るので、店舗ロイヤルティが高くなる。
100円ショップ直営店の地域別販売
期末店舗数
2015.8 2016.8
北海道
51
56
東北
44
50
関東
251
254
中部
152
159
近畿
191
196
中四国
144
141
九州
125
125
直営合計
958
981
純増数
2015.8 2016.8
6
5
6
6
20
3
7
7
-5
5
5
-3
11
0
50
23
販売額
2015.8 2016.8
1337
1499
1227
1406
11806
12056
5763
6045
9171
9317
4327
4430
3815
3949
37450
38704
(店、百万円)
1店当たり月商
2015.8 2016.8
2.18
2.23
2.32
2.35
3.92
3.96
3.16
3.17
4.00
3.96
2.50
2.62
2.54
2.63
3.26
3.29
(注)期末の店舗数、純増数は同期間の出店数-閉店数。
店舗の標準化が決め手
出店費用も安いが、退店費用も安い。赤字が 3 ヶ月続いた段階で退店を視野に入れて検
討し、改善の見込みがなければ機動的に撤退する。アルバイトやパートで店舗運営(オペ
レーション)ができるように、店の標準化に力を入れた。
2002 年のジャスダック上場後、店舗数が 200 店を越えてきた。数の増加で、従来のよう
にきめ細かく店舗をみることができなくなった。そこで、平岡社長は店舗の標準化に取り組
み、これが多店舗経営の基本となった。チェーンストア理論を勉強したが、そのまま当ては
めるのではなく、自社に合うように理論のいいとこ取りをした。3 年を要して、現在の形が
できた。
当社の目標は、いい商品を安く売る仕組み作りにある。常に改善を続けており、3 つの点
に力を入れている。①商品アイテムを絞り込み、単品当たりの販売量を増やすことで商品調
達力を上げ、消耗雑貨のカテゴリーキラーになる。②ローコストオペレーションを作る。パ
ート、アルバイトで総てを運営できるように標準化、マニュアル化し、店舗の運営費を下げ
る。③ローコストの出退店を迅速に行う。建物は造らず、出店コストを安くし、スピードを
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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速める。
この仕組みを他の業態へも応用しようとしている。市場の成熟が進み、大型店で利益を稼
げるような余地は少なくなっている。しかし、当社のような小型店での出店は十分可能であ
る。そこで利益を出すには、相対的に小ロットでの仕入れ原価が高くなる分、運営費を下げ
ることによって、トータルの原価を抑える必要がある。このやり方は、他の物販、飲食でも
通用するはずであると考え、いろいろトライしてきた。
100 円ショップにおけるポジショニング
当社は 100 円ショップで業界 4 位であるが、これまでは小型店舗で実用性の高い生活雑
貨を中心として、徹底したローコストオペレーションで、一定の収益を確保しつつ成長を遂
げてきた。今後はどのようにポジショニングをしていくのか。ダイソー、セリア、キャンド
ゥといかに差別化していくのかが改めて問われている。
当社は 3 つの戦略をとっている。第 1 は、新規出店に当たって、ファッション性を取り入
れたきれいな店作りのフォーマットを作り、Watts 店として展開している。これは、大手に
真っ向から勝負するという作戦ではないものの、攻めるべき立地は取りに行く。立地競争に
あたって、このフォーマットを持つことで、既存店の契約更新やリニューアルにもノウハウ
を活かしていくことができる。
第 2 は、既存店の競争力強化である。国内小売市場の回復の遅れなどにより、若干苦戦す
る既存店について、店舗改装や POS システムの導入などのハード面、パート・アルバイトの
働き方の見直し、接客力の向上などのソフト面の両面から改善を図っていく。
第 3 は、ファッションテイストを入れていくとしても、ローコストオペレーションは守っ
ていく。当社は規模の小さい分店舗にお金をかけないという仕組みで、独自の収益構造を確
保してきた。この路線は崩さずに堅持する。
ワッツ100円ショップの出退店数
(店、百万円/月)
2016.8 2017.8(予)
2009.8
2010.8
2011.8
2012.8
2013.8
2014.8
2015.8
直営
出店
退店
期末店舗数
98
45
574
102
49
627
99
42
684
120
39
765
131
48
848
123
63
908
113
64
958
102
79
981
97
63
1015
FC
出店
退店
期末店舗数
5
26
193
4
33
164
1
43
122
0
65
57
1
5
53
0
2
51
0
1
50
0
3
47
0
1
46
全店舗数
767
791
806
822
901
959
1008
1028
1061
直営1店当たり
売上高
3.67
3.62
3.71
3.64
3.51
3.40
3.26
3.29
3.22
(注)直営1店当たり売上高は期末店舗数ベース
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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POS を導入して効率改善
POS レジは 2016 年 8 月末で 342 店 552 台(前期末 113 店)まで増えており、2017 年 8 月
末で 409 店 631 台まで入れていく。
ファッション性を上げていくと、売れ筋商品の的確かつ迅速な把握が求められる。かつて
は IT にコストをかけるよりも、現場のパートにまかせて十分対応することができた。しか
し、オペレーションの効率アップや在庫削減を考えて、POS を導入した。
POS に関しては、2015 年 2 月以降順次導入している。POS レジ・本部システムを合わせて、
投資額は 3 年間で約 4 億円を見込んでいる。これによってデータを活かして、店舗の商品
陳列のレベルを上げ、在庫を削減し、パート、アルバイトの仕事の効率と接客レベルを上げ
ることに活かす。
季節商品や定番商品の中のファッション性のあるものについて、今までよりもマネジメ
ントのレベルを上げることができよう。おしゃれな生活を提案する商品の開発という点で
は、企画機能を高めてデータ分析の活用が求められよう。
POS の導入が遅いという見方もあろうが、当社は常に実利主義で本当に使い勝手を納得し
てから手を打つ。形から入らないところが当社のローコストオペレーションの強みである。
100円ショップ上場企業比較(3社)
社名
コード
市場
ワッツ
2735
セリア
2782
キャンドゥ
2698
東1
JQ
東1
業界順位
店舗数 (店)
売上高 (億円)
経常利益(億円)
売上高経常利益率 (%)
4位
1028
462
12
2.6
2位
1323
1310
121
9.2
3位
927
652
15
2.3
株価 (10/25) (円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
1088
152
1.59
9.8
16.2
1.4
8400
3186
7.68
21.2
32.8
0.4
1860
312
2.73
9.5
28.9
0.8
(注)売上、利益について、ワッツは2016.8期、セリアは2016.3期、
キャンドゥは2015.11期ベース。ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
3.中期計画
ワッツブランドによる店舗フォーマットの転換が本格化
「3 カ年計画」が攻めに転換
毎年ローリングしている 3 カ年計画は、今回攻めに変わってきた。2017 年 8 月期売上高
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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480 億円、営業利益 13.7 億円、2018 年 8 月期同 510 億円、同 17.6 億円、2019 年 8 月期同
540 億円、同 21.0 億円と、営業利益で 20 億円に戻していく方向である。
ワッツブランドの再構築、ブォーナ・ビィータやソストレーネ・グレーネのようなナチュ
ラルテイストのファッション雑貨の収益化、海外均一ショップの売り上げ拡大が功を奏し
てくれば、十分達成できる目標である。
100 円ショップの出店純増ペースは 30 店ペースと、かつてよりは鈍ってくる。一方で、
ソストレーネ・グレーネやブォーナ・ビィータのファッション雑貨が伸びてくる。海外の売
上高も拡大してくる。これらの貢献によって、収益性を回復できる見通しが持てるようにな
ってきた。
中期3ヵ年計画とKPI(重要業績指標)
(百万円、%、店)
2015.8 2016.8 2017.8 (計) 2018.8 (計) 2019.8 (計)
44462 46176
48000
51000
54000
1257
1205
1370
1760
2100
2.8
2.6
2.9
3.5
3.9
1263
1193
1350
1720
2070
700
718
910
1100
1360
2012.8
40759
2056
5.0
2055
1177
2013.8
41725
2074
5.0
2075
1123
2014.8
43573
1784
4.1
1799
948
ROE
22.2
16.6
11.8
8.1
7.9
9.4
10.6
12.0
100円ショップ増店数
期末店舗数
16
822
79
901
58
959
49
1008
20
1028
33
1061
33
1094
33
1127
国内新規事業期末店舗数
新規事業売上比率
16
5.9
18
5.6
28
4.6
24
4.8
22
4.5
29
6.1
39
7.9
48
9.2
海外事業期末店舗数
海外事業売上比率
(注)(計)は会社計画
8
0.6
10
0.9
21
1.2
35
2.4
59
4.1
76
4.7
87
5.4
102
6.2
売上高
営業利益
売上高営業利益率
経常利益
当期純利益
100 円ショップの存在
100 円ショップ業態は大丈夫か。デフレ、円高時代が終わり、マイルドインフレ、円安時
代に入ると、100 円ショップという業態は特色を失っていくのではないか、という見方があ
った。この問いに対して、収益性を改善しつつ成長していける、と平岡社長は考えている。
ワッツブランドの再構築というビジネスモデルへの転換で、成果が出てこよう。その動きが
本格化しつつある。
大手はファッション性を活かし、立地とボリュームでこれを乗り切ろうとしている。もし
100 円という均一価格のもつ訴求力が、コストと商品の魅力のバランスから離れていくなら
ば、業界は衰退に向かおう。
しかし、ここからが工夫のしどころである。ファッション性を付加しつつも、消耗品を軸
とした生活雑貨という領域で特色を出し続けることは十分できよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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出店は順調ながら小型化
新規出店は順調であるが、退店も増えている。2015 年 8 月期は出店 113、退店 64、純増
49 店、2016 年 8 月期は出店 102 店、退店 82 店、純増 20 店であった。
スーパーマーケット業界は厳しい局面にある。店舗を閉めるというところもあるので、そ
こに出店していると、当社の委託販売も影響を受ける。一方で、生活雑貨についてはアウト
ソーシングするという動きも活発である。この委託販売型 100 円ショップでは当社のロー
コスト経営が活きており、当社への出店要請も強い。この分野に関しては業界でトップクラ
スなので、出店は十分できよう。現在 100 円ショップ 1000 店のうち、ミーツ、シルクを中
心とする委託販売は約半数を占める。
‘ワッツ’ブランドによるきれいな店舗の出店を本格化
2015 年 2 月からワッツブランドによる店舗の展開をスタートし、2016 年 8 月までに改装、
新規で計 115 店を出店した。改装後の売上は大きく伸びており、概ね好調である。
ワッツブランドの 100 円ショップは、新しいタイプのきれいな店であるが、その狙いは 3
つある。1 つは、契約更新期がくる既存の大型店舗を守ることである。2 つ目は、新規出店
に当って、大手と正面から戦うことはしないが、当社の存在を示して一定のポジションを確
保できるようにする。3 つ目は、新しい店舗で扱う商品は従来よりも趣味、嗜好品のウエイ
トが上がるので、こうした商品のマーチャンダイジングに POS を活かして、既存店も含めた
100 円ショップ全体の品揃えを改善することである。
ワッツブランドの店舗のコンセプトは「
“いつも”によりそう 100 円ショップ」である。
実生活に役立つ雑貨が当社の強みであるから、ここははずさない。
新しい発注支援システムも導入していく。棚を埋めるのではなく、売れないものは減らし、
店舗オペレーションの負荷を下げて、顧客へのサービスに時間を振り向けていく。
Watts 店に加えて、Watts with(ワッツウィズ)店も展開
Watts with 店は、2016 年 8 月期の 3Q までは委託販売の方で用いるフォーマットであっ
たが、4Q よりこれをテナント型にも応用し始めた。4Q でみると、Watts 店の 1 店、(新規 2
店、退店 1 店)
、委託型の Watts with 店 19 店(新規 18 店、改装 1 店)
、テナント型の Watts
with 店 4 店(新規 2 店、改装 2 店)という内訳であった。
当社の直営店は、テナント型と委託販売型に分けられる。委託販売型とは、例えばスーパ
ーの中の衣料品の脇に当社の雑貨が一定の店舗コーナーを構えているという形である。当
社が在庫を負担する店舗なので直営店ではあるが、レジや現金管理などの販売業務をその
スーパーに委託している形である。
この委託販売型の直営店についても、少しきれいな店に変えつつある。その店舗名をミー
ツではなく、ワッツウィズ(Watts with)と名付けた。Watts with 店が、今後かなり増え
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ていこう。品揃えも変化していくので、売れ行きへのプラス効果が期待される。
Watts店の店舗数
(店)
2015.8
2Q
3Q
1
7
1
1
6
1Q
4Q
Watts店
15
改装
8
新規
7
閉店
Watts with店(委託販売型)
改装
新規
Watts with店(テナント型)
改装
新規
合計
1
7
15
(注)期末店舗数。Watts with店はワッツタイプの低コスト店舗。
4
2016.8
2Q
3Q
47
58
29
33
18
26
1
10
33
1
6
9
27
47
57
1Q
43
26
17
4
91
4Q
59
33
28
2
52
7
45
4
2
2
115
ワッツタイプの出店ペース
2016 年 8 月期末で、ワッツ店は改装で 33 店、新規で 28 店、閉店 2 店で合計 59 店となっ
た。また、ワッツウィズ店は改装で 9 店、新規で 47 店、合計 56 店と、急ピッチで増えてい
る。両者を合わせて、ワッツタイプの店舗は 115 店となった。
ショッピングモールや駅ビルに 100 円ショップが普通に店舗をおけるようになった。当
社も今まで以上にここへ入っていくことができる。今後どんなペースになるかは、状況を見
ながら決めていく方針であるが、加速する方向にある。
委託販売タイプの場合は順次ワッツウィズ(Watts with)というブランドに切り替えてい
く。さらに、テナントタイプの出店の時にもワッツウィズ店を出していく方向である。ワッ
ツ店もフォーマットを進化させて、それぞれの立地状況にあった店作りを行っていく。全体
として、1000 店に対してワッツタイプの店は 400~500 店という水準になることが想定され
よう。
商品開発や店舗投資も変化 ~ ワッツ店の進化を図る
ワッツ店に合った商品開発も進めていく。1.5 万アイテムだった取扱品目に加え、2000 ア
イテム程度の新しい嗜好品、趣味の商品を導入した。
店舗への投資は従来タイプが 1 店 1000 万円以下とすれば、ワッツ店の出店コストは上が
っている。そこで、仕様の変更等によってコストを抑制した出店モデルの構築も実践してい
る。店作りに複数のグレードを持たせ、立地の状況を見て判断して行く。100 円ショップの
ブランディングとローコスト経営のバランスをどう図るか。当社の腕の見せ所である。
Watts 店については、2015 年 2 月に 1 号店をオープンしたが、当社は店舗の作りが高コ
ストであった。これを改良し、工夫を重ねてきた。Watts 店はフルリニューアルであるが、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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Watts with 店は部分リニューアルである。つまり、床、天井、壁は従来店舗のままを活用
する。Watts 店の出店投資は新規で当初 40 百万円かかっていたものが、20 百万円まで抑え
られるようになり、それが Watts with 店のテナント型では 10 百万円で済むようなところ
まできた。
委託販売でないテナント型でも、その Watts with 型を応用していく。店舗のきれいさは
保ちながら、コストは抑制していく。このローコスト店の形ができてきたので、収益性の改
善もみえてきた。ワッツブランドの底上げができるので、出店ペースを上げていくことがで
きよう。
いずれブランドは統一化
創業の頃を辿ると、店名は「百円村」、次に「安價堂」(あんかどう)
、その後ミーツとな
った。将来に向け、時間をかけてミーツ、シルクをワッツに替えて、ブランドの統一を図っ
ていく。
店(ショップ)のデザインとロゴマークを一新し、新商品の投入を図り、接客サービスの
向上にも努めている。POS レジを入れて、生活雑貨を中心としつつもファッション性を高め
ておしゃれな生活を提案するアイテムを増やしていく。
収益力・資本効率の比較
(%、回、倍)
ROE
ROS
自己資本利益率 売上高純利益率
総資本回転率
レバレッジ
売上高
売上高
総資本/自己資本 営業利益率 粗利益率
売上高
販管比率
セリア
24.8
25.4
22.2
4.89
5.66
5.68
2.39
2.47
2.43
2.13
1.81
1.61
8.5
9.3
8.9
42.2
42.2
42.4
33.7
32.9
33.5
16.6
11.8
8.1
2.69
2.18
1.57
2.53
2.35
2.41
2.44
2.31
2.12
5.0
4.1
2.8
38.3
38.1
37.6
33.3
34.0
34.8
2013.11期
6.3
0.98
2.58
2.47
2.4
36.5
2014.11期
7.1
1.14
2.40
2.59
2.7
36.7
2015.11期
5.3
0.86
2.50
2.46
2.0
36.9
(注)ROE=ROS×回転率×レバレッジ、 売上高営業利益率=売上高粗利率-売上高販管費率
34.1
34.0
34.9
2013.3期
2014.3期
2015.3期
ワッツ
2013.8期
2014.8期
2015.8期
キャンドゥ
新しいポジショニングの中で、基本は変わらず
大手 3 社は、大型店、SC への出店、ファッショナブルなきれいな店を志向しているが、
当社はスーパーの中の 100 円ショップという枠からはみ出さないようにしている。もちろ
ん当社もきれいな店で出られるところには出ていくが、基本的に大手と競合するやり方は
とらない。
100 円ショップの大手 3 社をみると、セリアに対するディベロッパーの評価は高い。ダイ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ソーはセリアに負けないように対抗している。キャンドゥのブランド再構築のレベルは上
がってきている。3 社は好立地の競争をしているが、当社はこの競争に真っ向から入ってい
くものではない。
100 円ショップの M&A はありうるが、大型のものについては今のところ可能性は低い。業
界 5~7 位くらいの 100 円ショップはいずれも食品のウエイトが高いので、当社と組むにし
てもさほどシナジーが出しにくいといえる。
当社の 100 円ショップの食料品の売上比率は、
前年度の 8%から、2016 年 8 月期は 7%以下に下がっている。これは継続的に下げていく。
今後とも低コスト路線は変わらないが、おしゃれな店作りには対応していく。ローカルな
スーパーの中の店舗でも少しおしゃれにするという工夫は追求していく。
中小型店の出店は、1 店当たりの売上高、利益額が減るので、効率はよくない。しかし、
当社はもともと小回りのきく経営を展開してきたので、大手とは一線を画した低コスト経
営に慣れている。同時に小型店舗でも一段と効率が追求できるように、オペレーションのシ
ステム化も進める方向にある。資本効率を比較しても、ポイントは利益率の差にある。どこ
で差別化を強めるか。もう一段の工夫が求められるところである。
バランスシート
(百万円、%)
2011.8
2012.8
2013.8
2014.8
2015.8
2016.8
流動資産
現預金
受取手形・売掛金
商品・製品
9930
3039
1951
4363
11247
4086
1812
4633
14281
6280
2320
4961
14862
6714
2318
5225
13467
5149
2052
5634
13908
5030
2163
6110
固定資産
有形固定資産
差入保証金
3545
793
2441
3557
777
2450
3895
1001
2474
4115
1120
2536
4409
1225
2532
4577
1421
2539
13476
14805
18177
18977
17877
18485
流動負債
支払手形・買掛金
短期借入金
長期借入金(1年内)
7004
4225
140
1318
7438
4433
140
1267
9323
6578
140
957
9645
7170
100
679
7925
5842
100
565
8142
6129
100
626
固定負債
長期借入金
1680
1243
1550
1102
1158
644
912
403
984
468
1077
534
資産合計
純資産
4791
5816
7695
8420
8966
9265
(自己資本比率)
35.5
39.3
42.3
44.4
50.2
50.1
(注)2014.8期、2013.8期は期末日が休日であったため、現預金、買入債務が膨らんでいる。
2015.8期が平常ベースの水準。
ワッツセレクトでメリハリ、PB ブランドも強化
ワッツセレクトは現在 100 品目ほどである。かなり絞り込んでいるが、一方で自社の PB
商品は 300 品目を越える水準まで増えている。2014 年 8 月期 120 品目、2015 年 8 月期 170
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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品目から急ピッチで増加させている。生活雑貨で PB を増やし、全体の商品ミックスに工夫
を加え、採算の向上を図ろうとしている。
商品の品揃えは、生活に役立つ雑貨に絞り、その分野でカテゴリーキラーを目指している。
同じような商品でもコストパフォーマンスがよいものを並べて、他社の商品に打ち勝とう
という作戦である。
2010 年から始めたワッツセレクトがその目玉商品で、お買い得な商品を提供している。
同じ商品でも、量が 1.5 倍入っているとか、品質が良いとか、消費者に十分訴求できるよう
に分かり易くしている。これを 2013 年 8 月期は 211 品目に上げた。しかし、2014 年 8 月期
からは、ワッツセレクトの品目数を減らしている。2015 年 8 月期では 140 品目を切る水準
まで減少した。円安の影響により調達コストは上がってきたので、商品を見直してメリハリ
をつけているからである。
このメリハリを上手くやれるかどうかによって、消費者の反応が異なり、既存店への売上
げにも影響が出てこよう。輸入品の原価は上がっているが、当社は 100 円の中でお買い得感
を出していく。そのノウハウはもっている。商品の見直しも進めていく。コストアップへの
対応として、ボリュームやサイズが小さくなっていくということは避けられないが、他社と
比較した時の相対的な「お買い得感」を追求し、競争力を維持する考えである。
キャッシュ・フロー計算書
2012.8
営業キャッシュ・フロー
1927
税引後当期純利益
1226
減価償却
278
のれん償却額
89
売上債権・棚卸資産・買入債務
93
(百万円)
2016.8 2017.8 (予)
728
1010
762
910
376
400
0
0
-359
-300
2013.8
2769
817
237
61
1384
2014.8
1808
1052
255
0
380
2015.8
-621
516
281
0
-1549
-542
-256
-81
0
-240
-256
-44
42
-596
-393
-136
0
-687
-507
-180
0
-702
-672
-44
0
-900
-800
-100
0
フリー・キャッシュ・フロー
1385
2529
1211
-1309
25
110
財務キャッシュ・フロー
長短借入金
自己株式
配当金
-335
-192
13
-156
-367
-1069
891
-189
-788
-558
0
-229
-279
-49
0
-229
-93
127
0
-229
-30
200
0
-230
現金・同等物の期末残高
3039
4086
6280
6714
5030
5110
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産取得
敷金保証金の差入(ネット)
子会社株式の取得
リニューアルに注力
バランスシートとキャッシュ・フロー計算書では、2013 年 8 期、2014 年 8 期の期末が休
日であったことで、買い入れ債務の決済が翌月にずれ込んだため現預金が膨らんだが、2015
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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年 8 月期はそれが正常化した。そのために、一時的に営業キャッシュ・フローがマイナスと
なったが、特に問題はない。2015 年 8 期末のバランスシートが平常状態であるとみてよい。
2016 年 8 月期には、かなりワッツタイプの出店に力を入れたが、それでもフリーキャッシ
ュ・フローはプラスを確保した。
今後 3 カ年の計画では、出店は年間 90 店ベース、閉店は 60 店として、純増 30 店を基本
とする。無理な出店はしない計画を組んでいる。リニューアルのコストは一定程度かかるが、
さほど大きいわけではない。今後の投資額については、大型の M&A がなければ、通常のキャ
ッシュ・フローで十分賄えるので、ファイナンス上の問題は特にない。
人材の確保と生産性の向上をいかに図るか
パート、アルバイトの人件費が上がっている。この人件費を吸収するには、どのように生
産性を高めるかが鍵であり、今後の大きな課題である。
当社の 100 円ショップの特長は、ローコストオペレーションにある。きれいな店作りは、
ワッツ店でモデルを確立した。一方で、日用雑貨のお買い得感、よりよい商品の提供は基本
である。この両者のバランスをいかに図って、収益性を追求するかが問われる。
オペレーションの再構築では、POS レジを入れて、次の発注支援システムに活かしていく。
また、ワッツ店のファッション性のある商品を従来のミーツ、シルクにも取り入れて、商品
の品揃えに工夫と変化をもたらしていく。この 2 つによって、既存店の生産性向上を図って
いく。
人手不足は構造的に続くので、人材の採用と働き易さの工夫、生産性の向上のための戦略
は一段と重要性を増やそう。地域限定正社員など人事制度の工夫も求められよう。
ファッション雑貨のブォーナ・ビィータの収益化に目途
ブォーナ・ビィータは、2016 年 8 月期で 4 店出店、6 店退店となった。既存店が+5%と
なっており、店舗のレベルは上がっている。2017 年 8 月期には黒字化するが、もう一段の
レベルアップを目指す。駅前のファッションビルに出店すると家賃が高いので、坪当たり売
上高の向上、粗利のアップが必要である。2018 年 8 月期のブォーナ・ビィータの出店は 3
店を計画している。
ブォーナ・ビィータは、2016 年 8 月期で不採算店の整理が完了した。2016 年 8 月期の赤
字も前期に比べれば縮小している。ブォーナ・ビィータは、2014 年 8 月期に 12 店出店して、
立地の多様性についてトライしたが、思わしくないところも出たので、見直しを進めた。
ブォーナ・ビィータの平均単価は、従来の 1300~1500 円から最近は 1500~1800 円へ上が
っている。ブォーナ・ビィータのフォーマットは次第に受け入れられている。高崎、水戸に
続いて、池袋の駅ビルに店舗を構えることができた。とりわけ 2015 年 3 月に出店した池袋
店は好調で、ディベロッパーにアピールできる存在となろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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今後の出店にいい影響があろう。新規出店のコストはかかるが、個店ベースでは、2 年目
からは黒字となってくる。ファッション雑貨なので、立地と商品力を高めて、個性をアピー
ルできれば一定の利益は十分確保できよう。
海外展開の加速 ~ アジアから中南米へ
海外事業が伸びている。2016 年 8 月期の海外売上高は 19 億円(前期 10 億円)
、海外事業
比率も 4.1(同 2.4%)に上昇した。海外の店舗数は 2016 年 8 月末で 59 店となった。海外
は、黒字化がみえている。タイに続きベトナムでの事業展開のフォーマットが固まった。中
国も好転している。海外ではダイソーが圧倒的であるが、当社も 6 年をかけて地盤を固めつ
つある。
海外国別の店舗数
(店)
2015.8
2016.8 2017.8(予)
タイ(セントラルグループ)
22
29
38
中国(直営、代理商)
4
9
11
マレーシア(直営)
4
6
6
ベトナム(セントラルグループ)
3
10
12
ペルー(直営)
2
5
9
合計
8
10
20
35
59
76
(注)期末ベース。海外事業は合弁を含むので、売上高は卸売となるケースもある。
2012.8
8
2013.8
8
2
2014.8
15
2
3
タイの「こものや」はジャパンテイストを活かしたファッショナブルな店
タイはセントラルグループのマネジメントのもとで出店が拡大している。5 年前にタイの
バンコクで 100 円ショップと同様の均一ショップ「こものや」を始めた。タイの均一ショッ
プは日本と同じではなく、タイの消費者にとって安いわけではない。むしろ高い。日本の製
品だからこそ、その雑貨が少し割高でも新鮮で面白いと受け入れられる。例え中国製であっ
ても、日本仕様・デザインであることで価値が高まっている。
タイの「こものや」はデパートモールに出店している。レベルの高いショッピングセンタ
ーであり、
「こものや」もおしゃれな店として位置付けられる。60 バーツ(現在のレートで
約 180 円)均一というと、現地ではかなり高い。
タイでセントラルデパートと組む
2013 年 5 月にタイワッツにセントラルデパートが 51%の資本参加を行い、当社は 49%の
出資となった。タイで小売業を本格的に展開するには、制度上現地企業がマジョリティを持
つ必要がある。セントラルが 51%所有し、役員も入ってきた。セントラルは立地情報を豊
富に有する。
タイのセントラルグループとの合弁(JV)については、2015 年 4 月からセントラルが出店
やオペレーションなどのマネジメントのリーダーシップを引き継いだ。これによって出店
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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は加速している。つれて当社の卸売も増えている。
また、セントラルグループのいくつかの業態への委託や卸売も増えてこよう。スーパーの
トップスマーケットにおけるコーナー、ロビンソンデパートでのテナントなどである。
タイでの店舗運営をサポート
2016 年 8 月期の後半に、タイのこものやのオペレーションに改善すべき点が発生したの
で、出店を抑えた。マネジメントを実行しているセントラルグループの本部と現場の店舗で
情報共有が進まず、店舗スタッフの訓練不足も目立った。欠品の発生などがあり、既存店が
-10%以上となったため、改善する必要があったことによる。タイ出店は 3Q で一時止めた。
マネジメントはセントラルが担当しているが、ワッツからも人を送って、当面の対応に手
を打っている。早晩正常に戻ってくるので、その後は出店ペースも戻ってこよう。
タイでも、日本と同じように店の入り口にはファッション性の高い商品を置いて、お客を
引きつけ、中では生活に必要な雑貨をきちんと揃えておくというのが基本である。それを、
売れ筋商品にだけ力を入れていけば、全体のバランスが崩れて、お客への訴求力はおちてし
まう。このあたりを見直していく。どうすればよいかは分かっているので、いずれ効果は出
てこよう。
また、日本で売れているものを持っていくのは当然だとしても、セントラルの担当者が、
それがタイで売れるかを実験してみなければ分からない。最初からタイには合わないと仕
入れなければ、店の鮮度は落ちてしまう。一方で、タイに合う商品の開発にも両社(セント
ラル、ワッツ)で取り組んでいく。
中国での小売は目途が立つ ~ これからは代理商に注力
中国は直営を増やしてきたが、これからは代理商をどのように増やしていくかがポイン
トである。中国は不採算店の整理で月次で黒字となった。現在直営店が上海、成都、天津に、
蘇州に代理商(中国版 FC)があるが、今後は代理商の増加に力を入れる。
中国については、3 店出店してみてビジネスモデルの方向がみえてきた。日本の商品であ
るということをアピールして、中国でもみられるようになった 10 元ショップに対して、15
元(230 円)ショップで十分対抗していける。顧客は別のものと考えているようで、日本テイ
ストの 15 元ショップでやっていけるということが分かった。
中国でのビジネスは難しい。中国では代理商を使った均一価格ショップがいくつか急拡
大している。
当社がそこと競争して代理商の FC 展開を一気に図ろうというわけではないが、
代理商を使って店舗拡大を目指す方向にある。
平岡社長は、中国市場は大きいので可能性はあるが、競争が激しい国なので、通常のやり
方ではうまくいかないと考えている。100 円ショップの店作りを中国に合ったように手直し
している。中国では手に入らないもの、テイストが違うもの、品質がよいもの、生活をちょ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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っと楽しくするもの、といった発想である。ワンランク上の生活を目指す人々が増えてくる
ので生活雑貨への嗜好も変化してくる。
ベトナム、マレーシア、ペルーへ展開
マレーシアは FC のライセンスがとれた。
しかし、マレーシア経済がさほどよくないので、
SC(ショッピングセンター)における小売業界が低調である。よって、FC 展開については
少し様子をみている。
ペルーは好調である。2016 年 8 月期に 3 店出して 5 店となった。ペルーでは FC を検討し
ていく。さらに中南米では、ペルー以外の国々にも展開していく予定である。メキシコ、コ
ロンビア、チリへの進出で交渉に入っている。中でも、メキシコはパートナー企業が決まっ
たので、2017 年 1 月から卸売がスタートしよう。
ベトナムは既に黒字化している。ベトナムはセントラルグループの子会社が FC のコアと
して、多店舗化を進めている。ハノイ、ホーチミンなどのモールに出ている。2014 年 1 月
にホーチミンで郊外のイオンモールに出店した 1 号店がうまくいっている。ベトナムの売
価は 4 万ドン(約 190 円)で、現地では安くない。むしろ高い価格帯であるが、ジャパンテ
イストがうけている。外国資本での複数出店は制度上難しいので、タイのセントラルグルー
プである地元企業と組んで FC 展開を図っており、現在 10 店舗を有する。
マレーシアは、2014 年 8 月期に 3 店出店し、基幹店となる 3 店舖目がクアラルンプール
近郊で最大のモールに出店できた。2016 年 8 月期には直営店を 6 店舗まで増やした。FC の
認可が取れたため、今後、直営を 10 数店、地方は FC でという展開になろう。しかし、リン
ギット安で、仕入れコストが高くなり、円換算の売上高が目減りしてしまうので、全体の採
算については見直していく必要がある。
南米ペルーは、リマで KOMONOYA を出店し、順調に推移している。当社は、2014 年 8 月に
ペルーに会社を設立した。
2015 年 3 月に 1 号店出店後、
2016 年 8 月までに 5 店舗を出した。
南米では、日本に対する親和性が高い国から入ることにした。日系移民の多い国がよいと判
断した。ペルーの通貨はソル(ヌエボ・ソル、PEN)
、1 ソルが約 32 円である。ペルーの 100
円ショップは 6 ソルのシングルプライスである。日本円で 190 円程度、現地では必ずしも
高いとは受け止められていない。日本の雑貨が 1 個 6 ソルというのは安くはないが、十分
受け入れられた。来客は盛況で、極めて好調である。
ペルーは、ファッションモールでのロケーション確保が難しいが、うまく出店できた。課
題は物流にあるが、そのベースを作っていく。中南米においては今後メキシコ、コロンビア、
チリなど太平洋側の国を対象としていく方針である。
それ以外の海外展開は、商品供給(卸売)も絡めて進める方向だ。卸売については、ミャン
マー、モンゴル、ニュージーランド、豪州、韓国にも拡大している。ミャンマーでは、ジャ
パンストアという店名で当社の商品だけが並んでいる。現地資本の店舗の中にワンプライ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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スコーナーがあり、そこへは純然たる商品供給である。
新たなオープンイノベーションに着手 ~ デンマーク雑貨のスペシャリティストアへ進出
「Søstrene Grene(ソストレーネ・グレーネ)」は、デンマークの会社で、北欧風のテイス
トである。日本で一歩先行しているフライングタイガーとはかなり趣が異なる。北欧風おも
しろグッズではなく、ナチュラル系のリピーター呼び寄せ型の商品を取り揃えている。
毎週新規商品を入れて、店頭を変えていく。いつ来ても新しい商品があるというファッシ
ョン系である。ソストレーネは、欧州でこれを売り切っていく力を持っている。日本では、
ソストレーネ・グレーネ・ホールディング社と組んで、
「Søstrene Grene(ソストレーネ・グ
レーネ)」という店名で展開する。
2016 年 5 月に、ワッツが 55%出資し、先方が 45%、株式会社元林が 5%出資して「株式
会社ヒルマー・ジャパン」を設立した。この会社の事業として、雑貨店ソストレーネ・グレ
ーネがスタートする。1 号店は 10 月末に表参道にオープンする。2017 年 8 月期に 4 店、そ
の後は年 6 店ペースで出店していく計画である。
商品の価格帯は 200 円~1500 円というところにあり、デンマークの値段とさして変わら
ない。すべて自社企画で北欧テイストであるが、生産の主力は中国にある。よって、商品の
デリバリー等ではコストアップにはならない。
ソストレーネ・グレーネの波及効果にも期待
ソストレーネの前評判は良い。店舗の差別化が効くので、都心の好立地に出店できそうで
ある。月商も通常の Watts 店比大幅な増加が見込める。収支については 1 年目は慎重にみ
ているが、2 年目からは利益貢献してこよう。ソストレーネが 10 店ほど出店して上手くい
くと、年商 20~30 億円、営業利益率も 5%以上は十分見込めそうなので、グループ全体に
かなりプラスで効いてこよう。
ソストレーネの出店は競争力があるので、ここをテコにブォーナ・ビィータや Watts 店の
出店にもシナジーを出すことができよう。つまり、従来なら出店しにくいところにも出やす
くなる。実際、そういう事例がでてきそうである。
ワッツ、ブォーナ・ビィータとは別に、ソストレーネ・グレーネを展開し、街の一等地に
出ることを狙っている。当社にとっては、オープンイノベーションとして、面白い試みであ
る。上手くいけばグループの立地出店戦略にプラスの効果が出てくるので、今後の展開に注
目したい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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4.当面の業績
今 2017 年 8 月期より増益に転換
環境変化への対応 ~ 為替変動への対応
円安によるコストアップに対しては、2 年かけて手を打ってきた。ここにきて、1 ドル 120
円から 105 円へ、円高が進んでいる。これは、仕入れ価格の見直しという点で、6 カ月単位
でみればプラスに働く。120 円の円安に対する対応はほぼ完了したので、現状では改善が見
込まれる。
ワッツ店の効果はこれから
ワッツブランド店(Watts、Watts with)の店舗数は 2015 年 8 月末の 15 店が、2016 年 8
月末には 115 店へと拡大した。店舗への投資内容は期中に何度も見直し、当初よりも期末の
投資額はかなり抑えられるようになった。きれいな店の作り方にも工夫を重ねてきた。
当社はセリアと競争するためにワッツ店を展開するわけではない。立地によっては店舗
を守るために、あるいは新しいロケーションを得るための 1 つの戦略としてワッツ店を用
意した。1 号店は相当な投資額だったが、今はそれより大分安価で改装できる。これで売上
高がアップすれば投資回収目途も立ってくる。
店舗の規模によって、幾つかのグレードを設定して行く。さらに委託販売型の店舗はミー
ツやシルクも残るが、ワッツウィズとして店を出していく。ワッツブランド店の狙いは、①
新規出店上の競争優位を保つ、②既存店の守りを固める、③売上増で収益性を高める、とい
う点にある。収益性の向上にはこれから貢献してこよう。
ブォーナ・ビィータはあと一歩で収益化
ブォーナ・ビィータは順調に伸びている。一部不採算の店舗を早めに閉めたので、赤字は
残ったが、2017 年 8 月期は黒字化できる。経営責任の明確化と意思決定の迅速化に向けて、
4 月に本体から分社化し、2016 年 8 月期は 4 店出店、6 店閉店したので、21 店となった。既
存店は順調であり、とりわけ池袋店は好調である。
海外は順調に拡大
海外売上高は、2016 年 8 月期で前期比+177.7%と大きく伸びた。海外売上比率も 4.1%
まで上がってきた。卸売りの粗利率は低いが、一定のボリュームになると、販管費比率が下
がってくるので、営業利益率は上がってくる。
海外は、2015 年 8 月末 35 店、2016 年 8 月末 59 店に対して、2017 年 8 月期には 76 店へ
拡大しよう。海外事業の売上比率も次第に上がってこよう。そうなると、本社費用も含めて
黒字化が見込め、次の目標である 10%に向けて前進することになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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事業部門別売上高と業績予想
2014.8
2015.8
2016.8
2017.8(予)
(億円、%)
2018.8(予)
売上高 (構成比) 売上高 (構成比) 売上高 (構成比) 売上高 (構成比) 売上高 (構成比)
100円ショップ 直営(ミーツ、シルク、ワッツ)
卸売(FC向け)
370
40
85.0
9.3
375
38
84.2
8.6
387
35
83.8
7.6
392
36
81.7
7.5
405
37
79.4
7.3
5
1.2
11
2.4
19
4.1
23
4.7
28
5.4
20
4.6
21
4.8
21
4.5
29
6.1
40
7.9
売上高合計
435
営業利益
17.8
売上高営業利益率
(注)2015.8期よりワッツ店がスタート。
100.0
445
12.6
100.0
461
12.0
100.0
480
13.7
100.0
510
17.6
100.0
海外事業
国内新規事業
おしゃれ雑貨(ブォーナ・ビィータ)
食品スーパーとの合弁(バリュー100)
輸入雑貨卸(あまの)など
4.1
2.8
2.6
2.9
3.5
ソストレーネ・グレーネが 10 月末スタート
ソフトレーネ・グレーネは 10 月 28 日に表参道に 1 号店を出すが、2016 年 8 月期はその
コストが先行した。注目度は高い。順調な立ち上げが見込めれば、来 2018 年 8 月期からは
利益貢献が見込めよう。
2016 年 8 月期は出店が集中、業績は横ばい圏にとどまった
2016 年 8 月期は、売上高 46176 百万円(前期比+3.9%)、営業利益 1205 百万円(同-
4.2%)
、経常利益 1193 百万円(同-5.6%)
、純利益 718 百万円(同+2.5%)となった。利
益面では当初計画に届かず、やや減益となった。
ワッツブランドへの店舗展開を進めてきたが、この期はコスト先行で、収益面でのプラス
効果は十分でなかった。ただ、EBITDA(償却前営業利益)でみれば、+2.8%となっている。
この期の出店は 102 店と計画(98 店)を上回ったが、閉店も計画の 49 店に対して 82 店
と予定より多かったので、純増は今一歩であった。スーパー業界の再編が続いており、当社
が出店しているスーパーが閉店になる影響が出ている。大部分は当方の理由ではなく、母店
の閉鎖や耐震工事のための立て替えに伴うものである。
既存店の伸びは+1.4%と、目標の 2%には届かなかったが、順調であった。売上高は予定
通りであるが、利益面では物足らないものとなった。要因は 2 つある。1 つは、ワッツ店の
出店を強化しているので、新規、リニューアルとも、従来に比べて初期の出店コストが嵩む。
この費用増が響いている。もう 1 つは、売れ筋である PB 商品の原価の低下スピードが弱か
ったためである。
100 円ショップの売上比率は、91.4%と 1.4%ポイントが下がった。全体の売上増(+3.9%)
のうち、半分弱は海外の伸びによるものである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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2017 年 8 月期からワッツブランド、ビジネスモデル再構築の効果が発揮されよう
2017 年 8 月期は、売上高 48000 百万円(前期比+4.0%)、営業利益 1370 百万円(同+
13.6%)
、経常利益 1350 百万円(同+13.2%)、当期純利益 910 百万円(同+26.7%)を、
会社サイドは計画している。
100%ショップの伸び、ブォーナ・ビィータの伸び、海外の拡大などによってバランスのと
れた展開を目指している。ワッツブランド効果が次第にウエイトを高めてくるので、2017 年
8 月期も既存店はプラスで推移しよう。
①ワッツブランドが効いてくる、②POS の活用、発注支援システムのレベルアップが進む、
③海外の売上高が伸びてくる、④ブォーナ・ビィータが黒字化してくる、などの要因によっ
て、人件費はアップしているが、二桁の増益が確保できよう。
ワッツブランドによるローコスト店舗作りも目途がたってきた。POS は前期末で 342 店に
入ったが、2017 年 8 月末には 409 店まで進む。これでテナント型の店はほぼ網羅した。委
託販売のところに自社の POS はいらないので、これでほぼ十分である。店舗では、季節毎の
マーチャンダイジングに加えて、月毎のコーナー展開を強化している。これもプラスに働い
てこよう。また、あまのの赤字は大幅に縮小した。今期は黒字化にもっていけよう。
2017 年 8 月期の海外の出店計画は、タイ+9 店、ペルー+4 店、ベトナム+2 店、中国+
2 店(代理商)の計+17 店である。2016 年 8 月期の 59 店が 2017 年 8 月期には 76 店となろ
う。海外売上比率も 4.1%から 4.7%へ高まってこよう。
ワッツ店では、月商 1000 万円レベルの店舗が出店できるようになってきたので、一定の
競争力は発揮してこよう。POS システムの活用も進んでくる。これによって、オペレーショ
ンの効率化が見込める。発注支援システムも導入するので、この負荷が下げられる分、店舗
での接客等への対応が進むことになろう。
国内の 100 円ショップは、ワッツ店の確立で、店舗展開がし易くなってきた。当社の平均
月商は 360 万円であるが、2016 年 8 月期の出店ではワッツ店で月商 1000 万円クラスが 3 店
ほど開設できた。今までは年に 1 店というレベルであるからピッチは上がっている。ディベ
ロッパーの評価が上がって、ワッツ店のチャンスは高まっている。
ブォーナ・ビィータの採算は店舗の入れ替えで進展してくる。ナチュラルエレガントのあ
まのの赤字も、円安に伴う輸入雑貨の採算低下をビジネスモデルの転換により好転しよう。
3 月よりワッツ・コネクションという社名で独立させた。自立の目途がたったので、今後は
出店の加速に向けて、経営の機動力を上げようという狙いである。ブォーナ・ビィータは、
2017 年 8 月期に黒字化してこよう。
この調子でいけば、3 か年計画にある売上高 540 億円、経常利益 20.7 億円はクリアする
ことができよう。業績の回復に停滞がするとあれば、為替が円安方向に急激にふれて、輸入
による仕入れコストがアップする、という外部要因に起因するものとなろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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5.企業評価
収益源の多様化に挑戦~ソストレーネ・グレーネに期待
差異化の追求
2 年かけてワッツブランドの再構築を進め、ようやく収益的にも攻めの展開に入れるとこ
ろまできた。
ワッツ店が効果を上げてくれば、
経常利益で 20 億円を出すことは十分できる。
次のステージに向けたフォーマットはできている。それをいかに迅速に仕上げていくかが
問われている。ソストレーネ・グレーネやブォーナ・ビィータの事業拡大、収益化もみえて
いるので、当社の独自性が今までよりも明確化してこよう。
当社の戦略は、日本の 100 円ショップではセリアやダイソーと違って、おしゃれ路線を全
面的に追求していないが、ワッツブランドで一定の対応はスタートさせた。小商圏の従来型
店舗は居抜きの実質本位で、生活雑貨中心の 100 円ショップであるという線は崩さない。お
しゃれな生活雑貨はブォーナ・ビィータやソストレーネ・グレーネで展開していく。
100 円ショップ業界では、セリアがファッション雑貨の店としてモデルを確立し、順調に
発展している。業界トップのダイソーはファッション的要素を取り入れてはいるが、セリア
ほどではない。キャンドゥは業務の効率化と大型店に力を入れており、新しいブランディン
グも効果を出し始めた。当社は、新しいワッツブランドの投入、小規模のローコストオペレ
ーションで立地、品揃えの差別化を図っていく。この方針に何ら変更はなく、それによって
独自の伸びる余地を作っていくことができよう。
新事業の人材の強化
更なる成長に向けての課題は 3 つあると、平岡社長は認識している。1 つは、海外ビジネ
スの拡大に伴い、そのマネジメントだけでなく、営業面で推進役となる人材の強化が必要で
ある。2 つ目は、100 円ショップ以外のファッション雑貨ビジネスが伸びてくる。ここを統
括していく次世代の人材が求められる。3 つ目は、POS 活用の進化である。データベースマ
ーチャンダイジングを一段と深めようとしている。
今後 3 カ年でワッツブランドの店舗展開が功を奏してくれば、利益率の改善が期待でき
よう。当社の狙いは、100 円ショップの新しいフォーマットで競争力を向上させ、同時に新
規事業の収益性を高めることである。7 年前からスタートさせた海外展開は、ビジネスモデ
ルをある程度作ってきたので、各国での展開によって、全社の 1 割に相当する売上高 40 億
円、税前利益 2 億円程度が見えてくれば、インパクトは出てくる。100 店規模が視野に入る
かどうかがポイントである。連結決算では、主に現地企業との合弁事業としていく戦略とな
るので、商品供給の卸売と持分法利益の貢献が見込めよう。
攻めの局面に入る
キャッシュ・フロー上の問題はない。営業キャッシュ・フローで 10~12 億円程度が見込
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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め、投資キャッシュ・フローは 8~9 億円程度なので、国内ビジネスにさほど資金は必要で
ない。海外事業も合弁で進めるので、大きな投資にはならない。
本業の 100 円ショップで新ブランドの構築に取り組み、今後の成長性を高めるという点
で、海外を含めた新規事業に取り組んでいる。これらの収益向上には一定の努力を要するの
で、当社全体の企業評価はBとする。(企業評価については表紙を参照)
現時点(10/25)の株価でみると、PBR 1.59 倍、ROE 9.8%、PER 16.2 倍、配当利回り 1.4 %
である。このところ ROE が低下傾向にあったが、業績の底入れで好転しよう。
配当に関しては、2013 年 8 月期は東証 2 部上場の記念配 2 円、2014 年 8 月期は 1 部上場
の記念配 2 円がついた。2015 年 8 月期の配当については、創立 20 周年記念配を含めて 17
円の配当となった。
2016 年 8 月期の配当については、2 円の記念配がなくなるので、15 円となった。配当性
向については、従来 15~20%を目途としてきたが、現在は 20~30%に変更した。配当性向
は 15 円で 22%、17 円として 25%である。
株主優待としては 100~1000 株の株主に対して、1000 円相当の当社商品(10 点詰め合わ
せ)を贈る。100 株の株主にとっては、株主優待 1000 円分も含めて実質配当は 25 円分に相
当する。配当利回りで 2.3%となる。また、1000 株以上もしくは 100~1000 株を 3 年以上保
有している長期的投資家には 20 点の詰め合わせを贈る。
これを含めると実質配当で 35 円、
配当利回りで 3.2%に相当するので魅力が増す。
国内市場の成熟、為替の変動、海外市場への展開など、経営のかじ取りには十分な目配り
が求められる。会社としては安定配当を志向しているが、局面によっては大型の M&A を視野
においており、そのための内部留保も必要である。
大手とは差別化した本業の 100 円ショップで収益力を持続し、新規事業の輪を広げてい
けば、業績は再び拡大できよう。配当性向を高めることで株価の魅力も向上してくるものと
期待される。新事業が業績のリード役になりうるか。ソストレーネ・グレーネのビジネスの
立ち上がり状況に注目したい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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