円債投資ガイド

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2016/10/17 08:08
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総括"後 の政策の持続可能性=日 本総研 B河 村氏 (17日
)
河村小百合 口日本総合研究所上席主任研究員 =9月 20、 21日 の金融政策決定会合
での 「総括的な検証」を受け、日銀は これまで 2年 としていた 「 2%の 物価 目標」の達
成時期 をやや柔軟化 させた上で、 「イール ドカーブ ロコン トロール」 と「オーバー
シュー ト型 コ ミッ トメン ト」か ら成る新たな政策運営の枠組みを導入 した。 これは、
バーナンキ前 FRB議 長が 自身のブ ログで いみ じくも喝破 しているよ うに、 「政策の枠
組み」の変更 で あ つて、 「政策ス タンスそのもの」の変更 ではな い。すなわち、今、日
銀 として金融政策運営上 、行 つている ことを、少な くとも当面は大きく変える ことは し
な いものの、先行きの さまざまな事情 もにらみ つつ、 「その説明の仕方を変えてきた」
ものだ と理解 できそうだ。
従来の政策運営を継続する上での最大の制約は、国債買い入れの限界が近づきつつあ
ることなのだろう。市場ではあと 1年 くらいとも 2年 くらいともささやかれる。国際通
貨基金 (IMF)も 2015年 8月 に公表 したワーキング Bペ ーパーで、 17年 か 18
年 ごろにはテーパ リングが必要、と指摘する。日銀は今回の決定で、従来の 「年 80兆
円」という買い入れ規模の しばりを外 した。市場関係者の一部からは、 “steait
h tapering"(隠 れテーパ リング)な る見方がささやかれるゆえんだろう。
そ して、今後の買い入れ規模 については、毎月末に金融市場局が公表する運営方針で示
されることにな つた。要するに、金融政策決定会合での議決を必要とせず、事実上、執
行部の裁量で「隠れテーパ リング」の実施を可能とする枠組みができた、とみることも
できそうだ。
9月 30日 に公表 された、 この回の決定会合の 「主な意見」を見る と「イール ドカー
ブ ロコン トロール」へ の移行によ って 「政策の持続性が高まる」 との意見がいくつ も見
られ る。他方で日銀は、 「オーバーシュー ト型 コ ミッ トメン ト」 によって 「 CPI上 昇
率が安定的に 2%を 超えるまで、マネタ リーベースの拡大方針を継続する」 ともうたっ
ている。市場関係者 の間では、現執行部の任期中はもはや 「 2%の 物価 目標」の達成は
困難ではな いか という見方も強ま りつつ ある中で、 このような政策運営は今後、果た し
てどこまで持続可能なのだろうか。 「 20/0の 物価 目標」の達成まで、本当に持続可能な
のだろ うか。
ポイン トは、 「イール ドカー ブ ロコン トロール」なるものが 、果た してどこまで貫け
るものか、とい う点だろ う。金融調節を行 う上で、日標 としての 「金利」 と買 い入れ
「量」の二兎 (に と)は 本来、追えな い筋合 いだ。通常、中央銀行が恐れるのは、長期
金利を金融政策の目標 に採用すれば、市況が安定 している うちはよいが、ひ とたび市場
金利が上昇局面に入れば、債券市場は「売 りが売 りを呼ぶ」展開とな り、中央銀行は金
利上昇を抑えるため に債券を際限な く買わ ざるを得な くなる、とい う事態だろう。他
方、現在の日本の金融市場の状況においては、民間金融機関が保有する国債 の額 は、す
でに相当程度 に圧縮 され、担保需要等必要最小限の国債 しか保有 していない状態に近い
ようにも見受け られる。バーナ ンキ前議長は、 こうした状況下で民間金融機関に保有 さ
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れている日本の国債 は「極めて価格感応度が高いというわけではない」
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要するに、日本の国債市場で、多少動揺が生 じたとしても、国内の民間金融機関は国
債 をもはや手放せる状況にな く、 「売 りが売 りを呼ぶ」ような展開が起 こる ことはな
い、とい う指摘 とも解釈 できる。すでに相当程度にまで 「金融抑圧」、 「事実上の財政
ファイナ ンス」 に踏み込んできた 日銀も、同 じような見方 で高をくくっているのかも し
れな い。
しか しなが ら、 これもバーナ ンキ前議長が自身のブログの別の回で述べ ていることだ
が 、第 2次 大戦後の Fedは 、現在 とは異なる「統制経済」のもと、 9年 間も「金利
ペ ッグ」を続けた。 これは、実態 としては、 9年 間も米国政府の戦費負担の軽減 のため
に「金融抑圧」を続 けたものではあったが、最終的 には維持 し切れず、金利ペ ッグの放
棄を余儀な くされた。そ して近年の FOMCも 2010年 10月 に「長期金利ターゲ ッ
ト」を選択肢の一つとして検討 しなが らも、実際に採用する ことはなかった。
日銀の場合、政策の持続可能性を左右する、さらなる リス ク要因は、 「海外」要因と
「日銀 自身の財務運営 と政府の財政運営」問題ではないか。
Fedの 金融 政策 正 常化 が 、 当初 の想 定 よ りもか な り後 ずれ して い るの は 、 日銀 が 現
在 の 政 策運 営 を さ らに続 けて い く上 で、結 果 と して好 都 合 といえ るだ ろ う。 も う しば ら
く先の こ とにな りそ うだ が 、 Fedが 本 気 で バ ラ ンス Bシ ー トの 縮 小 に着 手 し、財 務 省
証券 の満 期落 ちや MBSの 繰 り上 げ償 還 落 ち を開始 した ときに 、 日銀 の 「 イール ドカー
ブ ロコ ン トロー ル 」 は試 練 の 時 を迎 える公 算 が大 きい。
黒田総裁が 10月 8日 のブル ッキングス研究所での講演で述べ たよ うに、日銀が長期
金利のターゲ ッ ト水準を小まめに見直 し、 「市況の後追 い」的に引き上 げて いけば、国
債 の買 い入れ額を大き く上積みせずに済むかも しれな い。ただ し、今度はそうした市況
追認で形成 され る長期金利水準では、わが国の財政運営に支障を来す、とい う問題が い
ずれ出て くるだろ う。
か たや 米 国 内では、 Fedの 正常化 の取 り組 みが遅 延 して い る ことで、 国際金 融市場
の 安 定 が 脅 か され つつ ある、 との 指摘 も出始 めて い る。それ が 今後 、万 一 、 リス クオ フ
の 動 きが大 き くな つて世界 同時株 安 の よ うな事 態 につ なが り、株 式相場 の下 げ幅 が一 定
の 限度 を超 えれ ば 、 ETFや 」― REITと い った リス ク性 資産 を多額 に 買 い入れ 、株
式 も保有 して きた 日銀 は 、 巨額 の 減損処理 をせ ざるを得 な くな る事 態 もあ り得 る。
今回の 「総括」では、日銀は自らの財務運営の問題に一切触れ ようとしなかつた。ま
た世論 もそれ をとり立てて問題視 しなか った感があるが、 これは依然、最大の問題 と言
えるだろ う。すでに「量的 口質的金融緩和」を 3年 あま りも続 けてきた後で「マイナス
金利」や 「イール ドカー ブ ロコン ドロール」を導入 しても、 日銀が これまでに買い入れ
た超低金利の国債や、その裏側 にある巨額の超過準備が霧消するわ けではもちろんな
い。将来的な正常化の局面での深刻な 「逆 ざや E債 務超過転落およびその状態の長期
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化」 とい うリス クが1彰 張 しているだけではな く、 「マイナ ス金利」の導入以降は、日銀
が 日々行 つている国債の買い入れオペ レーシ ョン自体が、オーバーパー 買い入れが中心
で、すでに「逆 ざや」のものとな つて しまつている。
10年 国債 金 利 を 00/oに ペ ッグす る 「イール ドカー ブ・ コ ン トロール 」 の も とで も、
その状 況 は大 き くは変わ らな いだ ろ う。 当面 は 11月 末 に 日銀 が公 表す る 2016年 度
中間決算 が注 目だ 。果 た して どの程 度 の 期 間収 益 を計 上 で きて い るか 、昨年度 か ら開始
した 「債 券 取 引損 失 引 当金 」 を今 年度 も積 み立 て られ るのか 。 こ う した 問題 が 今後 、
徐 々 に表面化 して くれ ば、遠 か らず 、 日銀 の 財 務運 営 の レベ ル に とどま らず 、わ が 国 の
財 政 問題 と しての リス クが意 識 され て くる こと も十分 あ り得 よ う。
この ように考えると、今回示 された新たな 「枠組み」のもとでの金融政策運営が持続
可能なのは、うま くいつてもせいぜいあと 1年 半程度、現在 の執行部 の任期中 くらいな
のではないか 。わが 国の経済運営は、その後も、もちろん続 いていく。真 の意味で、中
長期的 に持続可能な政策運営 の方向性 と枠組み について、改めて間 い直す必要が あろ
う。 (了 )
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