こちらのPDF - NTTデータ経営研究所

No.
52
OCTOBER 2016
特集
デジタルコグニティブ
サイエンス
特 集レポート
萩原 一平
デジタルコグニティブサイエンスの時代
神田 武
人工知能の社会実装に向けたNTTデータ経営研究所の取組み
齊藤 三希子
AgTechがもたらす日本農業の産業化への期待
三治 信一朗
ロボット国際競技大会(仮称)の意義
木村 俊一
収益最大化に向けたデータの活用
高山 文博
人間の本質を理解することを目的とした「 人間情報データベース」の開発
山下 長幸
デジタルデータによるマーケティング革新はどのようにしたら良いか?
三治 信一朗
IoTの覇権争いを標準化動向から探る
竹内 敬治
IoT実現に必要となるエネルギーハーベスティング技術
茨木 拓也
脳・行動・心のセンシングと知的処理が生むビジネス競争力
連載
松岡 良和
~デジタルテクノロジーとコグニティブサイエンスが拓く未来~
~データインテリジェント化とデータインテグレーションマーケティング~
CIOへのメッセージ 第20回 ITの“飛躍的”進化とITマネジメントの“致命的”停滞
No.52 OCTOBER 2016
Info-Future® No.52 October 2016 │2
特集
デジタルコグニティブ
サイエンス
特 集 レ ポート
デジタルコグニティブサイエンスの時代
~デジタルテクノロジーとコグニティブサイエンスが拓く未来~
NTTデータ経営研究所 研究理事 情報未来研究センター長 デジタルコグニティブサイエンスセンター長 エグゼクティブコンサルタント 萩原 一平
人工知能の社会実装に向けたNTTデータ経営研究所の取組み
NTTデータ経営研究所 情報未来研究センター ニューロイノベーションユニット マネージャー 神田 武
AgTechがもたらす日本農業の産業化への期待
NTTデータ経営研究所 社会システムコンサルティング部門 社会・環境戦略コンサルティングユニット マネー
ジャー 齊藤 三希子
ロボット国際競技大会(仮称)の意義
NTTデータ経営研究所 法人戦略コンサルティング部門 事業戦略コンサルティングユニ
ット 産業戦略グループ長 アソシエイトパートナー 三治 信一朗
収益最大化に向けたデータの活用
NTTデータ経営研究所 法人戦略コンサルティング部門 情報戦略コンサルティ
ングユニット デジタルイノベーションコンサルティンググループ長
兼 デジタルコグニティブサイエンスセンター DCSマーケティング推進室長 アソシエイトパートナー 木村 俊一
人間の本質を理解することを目的とした「人間情報データベース」の開発
NTTデータ経営研究所 情報未来研究センター デジタルコグニティブサイエンスセンター シニアコンサルタント 高山 文博
デジタルデータによるマーケティング革新はどのようにしたら良いか?
~データインテリジェント化とデータインテグレーションマーケティング~
NTTデータ経営研究所 情報未来研究センター デジタルコグニティブサイエンスセンター デジタルテクノロ
ジー推進室長 エグゼクティブコンサルタント 山下 長幸
IoTの覇権争いを標準化動向から探る
NTTデータ経営研究所 法人戦略コンサルティング部門 事業戦略コンサルティングユニ
ット 産業戦略グループ長 アソシエイトパートナー 三治 信一朗
IoT実現に必要となるエネルギーハーベスティング技術
NTTデータ経営研究所 社会システムコンサルティング部門 社会・環境戦略コンサルティングユニット シニアマネージャー 竹内 敬治
脳・行動・心のセンシングと知的処理が生むビジネス競争力
NTTデータ経営研究所 情報未来研究センター ニューロイノベーションユニット マネージャー 茨木 拓也
連載
CIOへのメッセージ 第20回
ITの“飛躍的”進化とITマネジメントの“致命的”停滞
NTTデータ経営研究所 法人戦略コンサルティング部門 情報戦略コンサルティングユニット ビジネスソリューションコンサルティンググループ長 パートナー 松岡 良和
3│ Info-Future®
No.52 October 2016
04
10
18
22
25
29
33
37
40
44
50
電機メーカー、シンクタンクを経て、
1997年NTTデータ経営研究所。
横浜国立大学大学院環境情報学
府客員教授。専門分野は、ニュー
研究理事
トワーク、地域情報化。著書に
『ビ
デジタルコグニティブサイエンスセンター長
情報未来研究センター長
ジネスに活かす脳科学』
『
、脳科学
エグゼクティブコンサルタント
萩原 一平
HAGIWARA IPPEI
野全般、地域経営、コミュニティネッ
がビジネスを変える』
(いずれも日本
経済新聞出版社)
、共訳に
『ITアウ
デジタルコグニティブサイエンスの時代
球 上に存 在している哺 乳 類の中で人
あり、 人 間はそれを上 手に活 用して
戦 略 」であり、 生 き 残るための術で
~デジタルテクノロジーとコグニティブサイエンスが拓く未 来~
1 今なぜ人間中心なのか
億 もの
間 と 同 じ 以 上 の 大 き さで
地 球 の 歴 史 を 振 り 返 れ ば、 様々
いる。 これはなぜであろう。
考え方がビジネスの世 界で使われて
ド 」というように人 間 を 中 心に置 く
ンセントリック」、「ヒューマンセンター
最 近 、よく「 人 間 中 心 」、「ヒューマ
変 化に対 応できる 者であったという
ところ、たかだか数 百 万 年であるが
ないところはない。 人 間は今 までの
う。 世 界 中どこに行っても 人 間がい
ただ 唯一の例 外はおそらく 人 間 だろ
布 境 界 線 があり 生 息 限 界 があ る。
ないという。 あらゆる動 植 物には分
によって一気に加 速したという。 その
温 暖 化は人 間の存 在 、 技 術の進 化
る。一例が地 球 温 暖 化である。 地 球
を 与えるところまで発 展 を 遂 げてい
く、 もっと 広 く、 地 球 全 体 に 影 響
術 は 自 分 の 周 り の 環 境 だ けで は な
しかし、一方で 人 間が創 出した技
きた。
な 地 球 環 境 の 変 化 により、 死 滅 し
延 びるのでも ない。 唯一生 き 残 るの
残るのではなく、 最も賢い者が生き
として 知 られる「 最 も 強い者が生 き
物 もいる。 まさにダーウィンの名 言
グラーの言 う「 技 術は全 生 命 活 動の
め 対 応 してきた。 まさに、 シュペン
環境の間のギャップを技術によって埋
よって変え生き延びてきた。 人 間と
人 間 は 自 らの 生 存 環 境 を 技 術に
ではない。 農 耕 、畜 産 等も同じであ
工業に代 表される第二次 産 業だけ
とも言われている。
温 暖 化という現 象が急 激に加 速した
ていく 中 で、 産 業 革 命 を 境 に 地 球
※1
は、 変 化できる者である 」のだ。 地
結 果 、 人 間という種が生まれ存 続し
ことだろう。
個 体 を 有 するのは人 間 をおいて他に
71
た 生 物 もいれば、 生 き 残っている 生
トソーシング戦略』
(NTT出版)
等。
01
NTTデータ経営研究所
援、マーケティング戦略、環境分
特集レポート
ロコンサルティング、新規事業化支
※1 ダーウィンではなく哲学者ハーバード・スペンサーの言葉である
「適者生存」
に由来しているとも言われている
Info-Future® No.52 October 2016 │4
破壊してきた。それらの結果として、
を強 くしてきた。一方で自 然 環 境を
を技 術によって変え、 自らの生 存 力
遺 伝 子 操 作 等 、 人 間は自 らの環 境
倍 以 上いる
の豊かさ」を求める人の比 率が
「 物の
向 が強い。 しかし、 全 体 として「 心
若 年 層 は「 物 の 豊かさ 」を 求 める 傾
高 齢 者 層ほど「 心の豊かさ 」を求め、
上の数 字であり、 年 齢 別でみれば、
うに 快 、 不 快 の 情 動 反 応 を 引 き 起
報を脳がどのように処 理し、どのよ
な どの 感 覚 器 官から 入 力 される 情
よう という「 社 会 脳 」研 究 や、 五 感
会 的 行 動に伴 う 脳 の 反 応 を 理 解 し
最 新 の 脳 科 学 研 究 の 中 で、 人 の 社
分 野でも 大 き な 変 化が表 れている。
われるようになってきており、 新 た
より、 客 観 的 、 定 量 的 な 評 価が行
術や、 心 理 物 理 計 測 技 術の進 歩に
マである。 しかし、 最 近は脳 計 測 技
く く、 科 学 研 究としては難しいテー
は客 観 的かつ定 量 的 な 評 価が行いに
これらのキーワードに関 する 研 究
会のテーマは「モラル経 済 、経 済の倫
億 人 の 人 が埋 め 尽 く
という実態に着目すべきであろう。
こ すかを 明 らかにす る「 感 性 脳 」研
な 知 見が得 られるようになってきて
このよ う な 状 況 を 反 映 し、 研 究
技 術は、 産 業 革 命 以 降 、 同 質で
また、 内 閣 府の国 民 生 活 選 好 度
究 といわ れ る 分 野 の 研 究 が 活 発 に
いる。今まで経 験 知として我々が知っ
%である。 もちろん、これは統 計
安 価なモノを大 量に社 会に提 供し続
調 査 に よ れ ば、 19 8 0 年 代 か ら
なっている。
ていることが科 学 的に裏 付けられた
る。 温 室 栽 培 、 食 物 工 場 、 養 殖 、
け、 種 の 存 続 に 大 き く 貢 献 して き
生 活に満 足している層が減 少し、 何
経 済 分 野で も、 行 動 経 済 学 や 社
だけというようなものもあるが、我々
している。
理 性 」であった。
た。 しかし、 本 来 、 人 間 が 主 、 技
となく 不 満 、どちらともいえないと
会 経 済 学 など 人 間の経 済 活 動の不
地 球 全 体を
術 は 従の 関 係であったは ず だったの
いうような明 確な理 由がない無 意 識
が無 意 識に行っている
豊かさ 」を 求める 人の
が、いつのまにか、 技 術が主で 人 間
完 全 さに着 目 した 研 究 分 野 が台 頭
割の 意 思 決
の不 満 足 層が増 加する傾 向が続いて
とりわけ、これらの研 究 分 野で共
さらに最 近では、 I Tの進 化によ
定について、 多 くの新 たな、かつ意
これは、 様々なモノを 安 価に入 手
通 的 な キーワードは「 感 性 」
「共 感 」
り、インターネット等 を 活 用し、 大
いる。
できモノ余りになる一方 、 核 家 族 化 、
「信 頼 感 」
「倫 理 感 」
「 幸 福 感 」で あ
量のデータを蓄 積し、それを解 析す
しれない。
かは別にして、 そのこと を 感じてい
ネット社 会 化でリアル・コミュニケー
る。 実は、これらのキーワードは人
外な知 見が得られている。
るから、 改めて、 人 間 を 中 心におい
ションが減 少している 世 界の先 進 国
私たちは、 無 意 識か意 識している
て 考 え 直 そ う としているのではない
能になっており、データマイニング的
る、いわゆ るビッグデータ 処 理 が可
種として存 続し、拡 大してきた大き
な 手 法 で 新 たな 知 見 を 抽 出 す るこ
間だけが有するものであり、 人 間が
時代は、再び人間を中心において、
な 理 由であるともいわれている。 そ
いるのが、「 心の豊かさ」
への希 求であ
人間と技術 、経済環境 、社 会 環 境 、
年 代から「 物の豊か
とも可能になっている。
ろ う 。 日 本は
して、これらのキーワードは、そのまま
ただし、ここで 注 意しなければい
f
o
t
n
e
m
e
c
n
a
v
d
A
r
o
f
y
t
e
i
c
o
S
s
c
i
m
o
n
o
c
E
o
i
c
o
S
)
の20 1 6 年 大
だ。 P O Sデータ、 クレジットカー
の 行 動 結 果 情 報 で あ る というこ と
けないことは、 世の中でビッグデータ
(
にも共通している。 ちなみに、世界的
自 然 環 境 との関 係 性 を 見 直 すこと
31
と 呼 ばれている 多 くのデータは、 人
さ 」より「 心の豊かさ 」を 求める傾 向
2
な社会経済学の学会であるSASE
ビジネスや企業経営が抱えている課題
人間を科学する
を求めているのではないだろうか。
に共通の傾向であろう。
2
だろうか。 そのことを如 実に表して
してきている。
が従になってしまってきているのかも
3
2
が逆 転し、 年々
「 心の豊かさ」を求め
年度版世論調査
る人が増 加し、いまだに増 加 傾 向が
続いている。平成
28
%に 対 し、「 物 の 豊 かさ 」 ・
No.52 October 2016
5│ Info-Future®
9
71
80
の結 果ではその比 率は「 心の豊かさ」
・
60
うことだ。
違いによって売れるものは異なるとい
度によって、さまざまな 環 境 条 件の
ているのだ。
境の変 化に対 応して意 思 決 定を行っ
身 体 外 も 環 境 で あり、 脳 はその 環
報である。 脳にとっては、 身 体 内も
トである。
統 合し、 解 析するかが重 要なポイン
ろ、それらの情 報をどのように収集・
に保 有しているわけではない。 むし
いえ ば、 のどが渇いていて 周 辺 の 温
決 定は人によって異 なる。 先の例で
含 む )、 ⑵ 行 動 結 果 情 報 、 ⑶ 環 境
情 報は⑴ 人 間 情 報( 身 体 内の環 境を
このように、 私たちが活 用できる
知 見を創 出することができる。 その
ことによって、人間を科学し、新たな
これらの情 報を統 合して活 用する
さらに、 同 じ 環 境 条 件 で も 意 思
℃でも、コーラを 飲みたいと
鍵を握る つの科学技術が、①コグニ
感じる 人がいれば、 麦 茶 を 飲みたい
度が
情 報( 身 体 外の環 境 )
の三つがあり、
ドの利 用データ、 貯 蓄データ等は全
り 精 緻に人 の 意 思 決 定 や 行 動 を 予
これらを上 手に活 用することで、よ
(
ティブサイエンス
(認知科学)
、②AI
e
c
n
e
g
i
l
l
e
t
n
I
l
a
i
c
i
f
i
t
r
A
、人工知 能)、
s
g
n
i
h
T
f
o
t
e
n
r
e
t
n
I
解 明しようとする脳 科 学 、 言 語 学 、
)
(遺 伝 的 )、 後 天 的(経 験 、 学 習 等 )
⑴ 人 間 情 報 : 脳 科 学、 心 理 学、
①「コグニティブサイエンス
(認知科
そして③IoT
(
観 的には気づかなかったさま ざまな
に人それぞれ異なる情 報が蓄 積され
行 動 科 学、 医 学、 健 康 科 学 等 の
学 )」とは、 人 間が有する知 識 獲 得 、
参 照 )。
相 関 関 係 が 見 え て く る。 し かし、
ているからで、 脳は五感 を 中 心に人
知 見 を 活 かし て 定 量 的・ 定 性 的
測することができる
(図
相 関 関 係 だけでは、 意 思 決 定 の 理
間に備わっているさまざまなセンサー
報 を 入 手 す る。 そして、 環 境 の 変
⑵行動結果情報 : 前述のように多
人 類 学 、心理 学 、哲 学 、計 算機 科 学 、
である。
由 、 例 え ば、 なぜその 商 品 を 購 入
知 識 表 現 、 記 憶 、 概 念 形 成 などの
化 情 報 に 対 し て、 自 ら を そ の 環 境
く の 企 業が 有 す る 行 動 の 結 果 を
したのかはわからない。
のどが渇いたときに飲みたいもの
の変 化に適 応させるために、 脳 内に
蓄積した情報
℃の時では異なるだろう。 同じ
ある。
社 会 科 学 などの学 際 的 研 究 領 域で
知 的 な 働 きや知 的システムを 理 解 、
は、 自分の周辺の温度が ℃のとき
蓄 積されている情 報と比 較して意 思
と
のどが渇いているという 状 態において
⑶環境情報 : 身体外の空間に関す
決定を行っている。
前述の つの情報を解析し意味の
創 出できる。 例えば、ビルの中にあ
報を組 合わせることで新たな知 見を
要である。 行 動 結 果 情 報 と 環 境 情
したがって、 環 境 情 報は非 常に重
れば、 人 間 関 係 など 心 理 的 環 境 情
温 湿 度 などの物 理 的 環 境 情 報 もあ
る。 身 体 外の環 境 情 報 というのは、
は身 体 外と身 体 内の二つに分けられ
詳しく述べる。 脳から観ると、環 境
している。 ただし、 ⑴ 人 間 情 報と⑶
小 売り、 金 融 機 関 等が大 量に保 有
う な ウェブ販 売 ビジ ネスを 筆 頭に、
な 検 索ビジ ネス企 業やアマゾンのよ
⑵ 行 動 結 果 情 報はグーグルのよう
理的情報
まだ知らない意 思 決 定に関する知 見
まな 研 究が行われており、 私たちが
無 意 識 の 意 思 決 定 に 関 す るさま ざ
の広い学 際 的 な 研 究 分 野であるが、
要である。 認 知 科 学は非 常に領 域
客 観 的・定量 的に科学することが重
ある知 見を抽 出するためには人 間を
る 物 理 的 情 報 や 人 間 関 係 等 の心
る自 販 機とビルの外にある自 販 機で
報 も ある。 身 体 内の環 境 情 報 とは
環 境 情 報は必 ずしも 彼 らが独 占 的
響を及ぼすということである。
は 売 れ 筋 は 異 な る 可 能 性 が あ る。
空 腹 感 や 痛 みな ど 身 体 内からの 情
3
30
場 所によって、 時 間によって、 温 湿
ここでいう 環 境について も う 少 し
も 周 囲 の 環 境 状 況 が意 思 決 定 に 影
まな情報
に 得 ら れ る 人 にかか わ る さ ま ざ
何 故 な ら ば、 人 の 脳 には 先 天 的
と思う人もいる。
30
て人の行動結果の情報である。この
萩原 一平
データを 解 析 することによって、 主
3
01
(感 覚 器 官 )
から 身 体 内 外の環 境 情
1
特集レポート
20
Info-Future® No.52 October 2016 │6
を提供してくれる。
場 で 初 めて 登 場 した。 この 会 議 は
である。
を 迎 え、 今 やA Iは き わ めて 身 近
ン グ が 行 わ れ た と い う。 こ れ は
よってAIに関するブレインストーミ
を 清 掃 するお掃 除ロボット。 会 話っ
急 速に高まっている。 自 動 的に部 屋
の飛 躍 的 発 展によって、 その知 能が
かってもできなかったことがA Iを使
なるといわれている。 専 門 家が一日か
り効 率 的により正 確に、そして楽に
AIによって、 私たちの仕 事はよ
な存 在になっている。
1946 年 にEN I A Cとい う 世
ぽいことができるヒト型のロボット。
えば瞬 時にできてしまう。 A Iをど
A Iは、 半 導 体 技 術 と 情 報 技 術
は ② AIの 活 用 が 必 須 で あ る。 ま
界 最 初の汎 用 電 子 式 計 算 機が開 発
囲 碁 、将 棋などのゲームでプロに勝っ
う 活 用 するかによって、 ビジ ネスは
人の科 学 者に
た、 ③ Io Tは 環 境 情 報 、 人 間 情
されてからわずか 年 後であった。一
てしまうA I 。スマートフォンでイン
大きく変 化するといえる。
ヶ月 間にわたり、
報を効 率 的に安 価に収 集するために
言でいえば、 A Iとは、 学 習をはじ
ターネットにつな げれば、 S N Sで
一方で、 A Iが進 化 すると、 私た
さらに、 解 析を迅 速に行うために
は欠くことのできない技術である。
め 人 間 や 動 物 が有 す る 知 能 を 模 倣
女 子 高 生 風 のA Iと 会 話 を 楽 しむ
ち 人 間の仕 事が奪われるのではない
図2| 3層構造のネットワークが実現する社会基盤
大きな人工知能(クラウド)、中間的な人工知能(ネットワーク)、小さな人工知能(エッジ)同士
の連携により、人工知能が相互進化し、
より高度な学習やアクションが可能になる。
デジタルテクノロジーとコグニティブサイエンスで人、
モノ、環境を融合し、
一つのシステムとして個々人が満足できる
(快適、安心・安全)価値を提供
新たなバリューチェーンの創出
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
10
異なる専門領域の複数の大き
な人工知能が融合することで
より高度な学習・アクションが
可能になる
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
進化を続ける人工知能
する機械を意味し、そのレベルは様々
ことができる。 すべての
Edge AI
(小さなAI)
「 A I(人工知 能 )」という 言 葉は
自動車や冷蔵庫、部屋、生産
ラインなど、より人間の活動
(仕事⇔移動⇔家庭)に密着
したレベルで情報をリアルタ
イムで処理する
オフィス街
レベルのAI
ま で は ない。 デ ジ
たち 人 間 も 今のま
進 化 している。 私
進 化 するが人 間 も
う。 また、 A Iも
ういう こ と で あ ろ
のはある 意 味でそ
る。 進 化 という も
仕 事はた く さんあ
り 縮 小 したりした
科 学 技 術の進 化により、 無 くなった
かという 心 配 をしている 人 たち もい
図3| デジタルコグニティブサイエンスの活用
ものがインターネットに
家庭
レベル
のAI
1956 年にダートマス会 議 という
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
る。 し かし、 過 去 を 振 り 返 れ ば、
10
つ な が るI o Tの 時 代
工場
レベル
のAI
コミュニティ、工場、ビル、など
一定の空間内で人工知能が
情報を処理し、クラウド上のグ
ローバル、ナショナルな情報
と処理結果情報を比較する
産業集積地
レベルのAI
住宅街
レベルのAI
オフィス街
レベルのAI
Network AI
(中間的なAI)
企業サプライチェーンAI
統合医療AI
統合法律AI
統合ビジネス事例AI
タルキッズと言われ
る子 供たちが大 人
に な る 時 代 に は、
私たちが電 卓や電
No.52 October 2016
7│ Info-Future®
2
Di
g
i
ta
lTechnology + Cogn
i
t
i
veSc
i
ence
3
図1| デジタルコグニティブサイエンスとは
は
年 代 後 半 から あった という が、
当 時 と 今ではインターネットの普 及
交 換 を 自 由 に 行 え る よ う に し た。
今の情 報 社 会はインターネットの普
度 合いも 、センサーの小 型 化・高 性
ば、FRONTEO(旧 U B I C )
と
いう 会 社はA Iを 活 用してメールの
及によってもたらされている。
今 起こっているAI 技 術 研 究のス
なってくると 、今までにはできなかっ
インターネットに接 続 されるように
小 型で 安 価 なセンサーが開 発 され、
間 環 境 を より 細 か く 精 緻 に 制 御
A Iにフィードバック す ることで 空
度 、 C O 2濃 度 等 を 常 時 計 測 し、
例 え ば、 室 内 各 部の 温 湿 度 、 照
能 化の度 合いも 全 く 異 なる。
年 間に起
たさま ざまな 情 報 を 大 量に入 手
さ ら に、 さ ま ざ ま な 高 精 度 かつ
きるAIの進化は今の私たちの予測
ピードを鑑みると、 今 後
子 辞 書 を 使いこなしているのと 同じ
るが、 今 起 こっているAIブームの
最 近バズワードになっている感があ
し、 使いこなすことが求められる。
に 乗 り 遅 れ ないよ う にA Iを 理 解
とすれば、 私たちには、 進 化の波
た余 力を何に使うか振り向けるかを
る。 次に、 AIの導 入により得られ
常に情 報 収 集をして考えることであ
るのか、 ど う 利 用 すればいいのかを
ば問 題ない。 まず、どんなA Iがあ
しかし、 以 下の二つを 考 えておけ
を 変 えていくことができる。 このよ
手に活 用 し 、 環 境 を 制 御 し 、 環 境
でき る。 空 間 環 境からの 情 報 を 上
人 と 環 境 との 関 係 を 変 え ることが
そこから 吸い上 げた 情 報 を も とに、
境にさま ざ ま なセンサーを 設 置 し、
病 院 、 販 売 店 等 、 あら ゆ る 空 間 環
健 康 管 理 等 を 行 う こ と がで き る。
バック す るこ と で 、 ストレス 管 理 、
モニターし、 本 人に情 報 をフィード
る人のストレスの状 態や健 康 状 態 を
で、
心 拍 計 、 脈 波 計 等 を 活 用 すること
さらに、ウェアラブルの活 動 量 計 、
変えるというのは部 分 的ではあるが
立 役 者 で も あ る「ディープラーニン
考えることである。 特に後 者は重 要
うに、 情 報 技 術 を 活 用し、 意 識 す
また、 必 要に応 じて 空 間 環 境 を 変
住 宅 、オフィス、生 産 現 場 、農 場 、
グ 」とは、 A Iのアルゴリズム
(計 算
である。 A Iを 単 な るコストカット
ること な く 人 がより 快 適 で 効 率 的
る。
手法)
の一種であり、 画 像 認 識 、 音
の 道 具 と し て しか 見 ない 企 業 に 発
時 間 連 続 的 にそ の 空 間 にい
すでに行われている。
声 認 識 等 の 精 度 を 飛 躍 的に向 上 さ
えることも 可 能である。
化 」によって省 力 化 、 自 動 化が可 能
)」という 。
「環 境 知 能
ロボットで 作 業 を 支 援 する、 または
農 場 にさ ま ざ ま なセンサーをつけ、
援 等 も ある 。 例 え ば 、 生 産 現 場 や
t
n
e
i
b
m
A
になり、 人 間が意 識 することな く 、
空 間 環 境 を 変 え 、 より 生 産 効 率 を
公 共 施 設 に 各 種 センサーを 設 置 す
さらに橋 梁 、トンネル、焼 却 炉 等 、
または余 計 なエネルギーを 費やすこ
この「 環 境 知 能 化 」の考 え 方 自 体
上させることを 可 能にする。
向 上させることも 可 能である。
それ以 外にロボットによる 作 業 支
24
と な く 、 生 活の質 、 仕 事の質 を 向
e
c
n
e
g
i
l
l
e
t
n
I
IoT
に進 化し、スマートフォンやタブレッ
インターネットの普 及が加 速 度 的
ディープラーニング以外のさまざまな
ト の 普 及 と 相 まって 情 報 の 伝 達 、
せること を「 環 境 知 能 化(
に 活 動 で き るよ うに 環 境 を 変 化 さ
ニューラルネットワークというアルゴリ
ズ ム の一種 で あ る。 マスコ ミ 等 で
「ディープラーニング 」が再 三 登 場 す
るので、 A I=ディープラーニングの
よう な 印 象 を 持っている 方 もいるか
環境知能化を実現する
展・成長する未来はない。
10
アルゴリズムが活 用されている。 例え
もしれないが、 応 用 分 野によっては
4
せた。 人 間 の 神 経 構 造 を 模 倣 した
ろう。
し、 快 適 で 作 業 効 率 のいい 環 境 に
テムを開発している。
リスク管 理や営 業 支 援ができるシス
内容を分析することで、さまざまな
90
し、 活 用 することができる。
萩原 一平
を 超 え る 可 能 性 が 高いと 考 え ら れ
01
ようにAIを 使いこなしているであ
特集レポート
Info-Future® No.52 October 2016 │8
イノベーティブな 価 値 を 提 供 する 時
官 と 脳 の 関 係に関 す る 研 究 も 重 要
いるかわかるだろう。 まだまだAI
がいかに省エネ 型の「 脳 力 」を 持って
のとおり、 情 報 処 理の観 点から知 的
コグニティブサイエンスとは、 前 述
ルファ碁 」が 万 Wというから、 人 間
老 朽 化 の 状 況 を 常 時 モニタリング
になる。 身 体 感 覚に関 する 研 究 成
は人 間には総 合 力ではかなわない。
システムと知 能の性 質を理 解しよう
覚だけではなく、それ以外の感 覚 器
で 把 握 し 、 A Iで 解 析 し 異 常 検 出
果はAIに活 用され、 産 業 用ロボッ
今 後 は 脳 科 学、AI、ICTが
と す る 研 究 分 野 で あ り、 脳 科 学 、
るこ と で 、 疲 労 破 壊 が 起 こ る 前 に
を 行 う よ う に す れ ば、 修 繕 のイン
ト 分 野 だけではな く、コミュニケー
融 合 して 研 究 開 発 がす すみ巨 大 な
代になっているということだ。
タ ー バル を 広 げ る こ と が で き る。
ション分 野 、 家 庭 用 、 医 療 機 関 用
的な研究 領 域である。このコグニティ
A Iにデータ解 析 を 委 ねることで 、
や 代 替が当たり 前のように起こって
ブサイエンスがデジタルテクノロジー
心 理 学 、 計 算 機 科 学 、 言 語 学 など
人 間の持つ力にモノとコンピュータ
くる。 大きく分けると、今後は、ク
の加 速 的な進 化によって大きく 開 花
ネットワークがで き ていく 中、コン
これからはI o Tによって 、 あら
がつながることによって、 人 間 は 指
ラウド上の大きなAI、工場やコミュ
しようとしているといえる。
など様々な分 野でA Iを搭 載したロ
ゆ る ものがインターネットに接 続 さ
数 関 数 的 な 能 力 を 発 揮 す る 時 代に
ニティなどのようなネットワーク上の
その意味で、デジタルテクノロジー
人 が行 う 作 業 を 省 力 化 す ることが
れ、 大 量 の 情 報 が 容 易 に 入 手 で き
なっている。 情 報 量 、 伝 達 時 間 、エ
中 間 的 なAI、 そして 自 動 車 や 家
とコグニティブサイエンスの融 合 とい
の 研 究 分 野 を 横 断 する 極 めて 学 際
る よ う に な る。 そ し て 、 A I と
ネルギーという 観 点から、 脳の機 能
庭 用ロボットなど 端 末に搭 載される
うのは非 常に重 要なテーマとなってい
ピュータによる我々の意思決定の支援
I o Tの組 合せが「 環 境 知 能 化 」を
や ネットワークシステムを 模 倣 した
小 さなAI、 す なわちエッジAIの
ボットが進化していくであろう。
実 現 す る。 さらに複 数 のA I 同 士
IC Tのイノベーションが起こりつつ
ピュータをワンチップ化したI Cの実
フィックチップ といわ れ る 脳 型コン
それらのAI同 士 がネットワークを
といわれている
(図2参 照 )
。 さらに、
有するAIが活 用されるようになる
合することで新たな行 動モデルを獲
間 に 関 す る 環 境 情 報 、これら を 統
情 報 、 結 果 としての行 動 情 報 、 空
が連 携 することによって 、より複 雑
く だ ろ う。 脳 や 身 体に関 す る 人 間
用 化 に 向 けた 研 究 開 発 も 進 んでい
あり、 A Iはもちろん、ニューロモー
る。
「デジタルコグニティブサイ
ン、 新たなバリューチェーンを 創 出で
得し、 イノベーティブなソリューショ
り 人 間に近い知 見 を 我々に提 供し、
きると考える
( 図3参 照 )。
形 成することで、より専 門 的で、よ
人 間 の 脳 の 消 費エネルギーは 約
我々を支援してくれるようになる。
を 理 解 することが先 だといわれてい
うになるには、まずA Iが身 体 感 覚
本 当にコミュニケーションができるよ
しかし、 AIが言 語を扱い人 間と
消 費エネルギーが メガW 、 世 界一の
代 表 するスーパーコンピュータ「 京 」の
ギーはわずか+1 Wという。 日 本 を
状 態 で、 思 考 中 の 脳 の 消 費エネル
の電 源 を 入れたときのアイドリング
ニティブサイエンス
(日 本 語で認 知 科
ノロジーと人間の認知にかかわるコグ
に入っていると考える。 デジタルテク
ジタルコグニティブサイエンス」の時 代
このよう な 状 況で、 我々は今「デ
( 快 適 、 安 心・安 全 )価 値 を 提 供 す
一人ひとり、 個々の人が満 足できる
環 境 を 融 合し一つのシステムとして、
コグニティブサイエンスで 人 、 モノ、
これからはデジタルテクノロジーと
エンス」が拓く未来
Wといわれている。 これはパソコン
る。
な 環 境 を 制 御 す ること も 可 能 であ
層構造になり、それぞれに特徴を
できる。
25
る時 代が来る。
る。 そういう意 味では、 脳と運 動の
プロ棋士イ・セドルに勝ったA I 「ア
No.52 October 2016
3
学)
が融 合 することで、 我々人 間に
関 係 や 触 覚 や 温 覚 な ど、 視 覚 、 聴
13
【参考文献等】
進化論で有名なダーウィンの名言として広く知られているが、哲学者ハーバート・スペンサーの言葉である
「適者生存」に由来しているとも言われている
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A9%E8%80%85%E7%94%9F%E5%AD%98他
http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/trend_keyword/2015020501.html
脳科学がビジネスを変える、萩原一平、日本経済新聞出版社
9│ Info-Future®
20
5
大手シンクタンク、大手WEBサービス企
業を経て、2014年より現 職。 情 報 通
信分野における先進技術動向・社会動
情報未来研究センター
コンサルティング・情報発信を中心に活
ニューロイノベーションユニット
動。 人工知能技術を中心とする情報技
マネージャー
術全般、技術・市場観点での新規事業
立案支援、シナリオプランニング、研究
神田 武
企画等を得意とする。
特集レポート
向の分析と構想、人工知能技術やエー
日に 公 表 さ
本 稿 では 人 工 知 能 の 現 時 点 の 実
人工知 能の社 会 実 装に向けた
NTTデータ経営研究所の取組み
月
体 と 可 能 性 、 事 業 活 用の際の留 意
※1
れた2 0 1 7 年 度 政 府 概 算 要 求で
点を説 明したい。 これまでも人工知
資 が進 行 す る 。
機と捉えるベンダー/話につい
も 特 別 枠 として三 省 連 携 での 次 世
期待と不安ー 人工知能を商
て行けないユーザー
次 産 業 革 命を牽
発 参 入 が連 日 報 道 されると と も
業 界 大 手 による「 人 工 知 能 」
への 開
知 能 」や、 トヨタやリクルート な ど
グーグルの 開 発した 最 先 端の「 人 工
も 注 目されるキーワードである。 米
I o T と 並んで 情 報 通 信 分 野で 最
2016年 現 在、 人 工 知 能 は
う な 高 度 な システムを 構 築 して も
の 違いは 何 な のか 」
「 人 工 知 能 のよ
ができ るのか、 I o T とロボットと
から ない 」
「そ も そ も 人工知 能で 何
いるが何から 手 を 付 けていいのか分
ついて 検 討 を 進めてくれと 言われて
い。
「 経 営 層 から 人 工 知 能 の 導 入 に
戸 惑いや 不 安 の 声 を 聞 く ことが 多
一方 で 、一般 の 企 業 の 方々からは
の活 用 を 検 討 する 際の考 え 方や 心
限り利 用 者の目 線に立って人工知 能
の 問 題 意 識 の も と 本 稿 ではで き る
を 向けたものは驚 くほど少 ない。 こ
かっただろ うか。 手 順 やリスクに目
説 す るこ と に 終 始 し た も ので は な
可 能 性( 理 想 論 )
や 技 術の利 点 を 解
や 自 社 の 販 路 開 拓 を 目 的に研 究 の
どは、 発 信 者が自 身の研 究 費 獲 得
数 多 存 在 す る。 しかし そ れらの 殆
あ ま た
ムベンダー)が 解 説 を 行った も の は
引 す る 最 重 要 技 術 との 認 識 の 下 で
そ れ を 使いこ な す 人 材 がい ない 」
に、 政 府でも 第
総 務 省、 文 部 科 学 省、 経 済 産 業
構えをお示しするよう心 掛けた。
等々。
ころである。
能の専 門 家( 主に大 学 教 員やシステ
31
代 人 工 知 能 研 究 等 が計 上 されたと
8
省による三 省 を 挙 げた 研 究 開 発 投
4
02
NTTデータ経営研究所
ジェント技術の社会実装に向けた実証や
KANDA TAKESHI
※1 省庁横断での人工知能研究の取組については国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「AIポータル」に情報が集約されている。
http://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP2_100064.html
Info-Future® No.52 October 2016 │10
図1| 人工知能技術の構成
探索/数理計画問題
•木探索
•ヒューリスティック探索
•敵対探索
(ゲーム木探索)
•制約充足問題
•線形計画問題
知識表現・推論
•意味ネットワーク
•プロダクションシステム
•述語論理
•ベイジアンネットワーク
•カルマンフィルタ
•隠れマルコフモデル
•ファジー推論
•サポートベクタマシン
•遺伝的プログラミング
•クラスタリング
確率・統計的な手法
•文字認識
•一般物体認識
•顔認識
•ジェスチャー認識
•形態素解析
•構文解析
•意味解析
•テキスト要約
•機械翻訳
画像処理
自然言語処理
自動運転
実環境の制御・M2M
可能性と現状ー 混同して語
と する 。
「 人 工 知 能 とは、 人 間の認 識( 見
学 、言 語 学 、哲 学 、統 計 学 、ロボッ
の一分 野に位 置づけられるが、 心 理
人工知 能はコンピュータサイエンス
識」
「画 像 認 識 」
「自 然 言 語 処 理 」
た システムの 総 称 で あ る。
「音 声 認
術 群 、 及 びそれら 技 術 群 を 実 装し
ピュータを 用いて 再 現 す るための 技
られる「研究」と「技術」
る・聞 く・読む)
や思 考( 探 す・学ぶ・
ト 工 学 等 と の 境 界 領 域 で も あ り、
「探索」
「 知 識 表 現・推 論 」
「機械学
判 断 する )
に類 似 する 機 能 を 、コン
その 定 義 は 専 門 家 の 間 で も 見 解 が
習 」等 の 要 素 技 術 か ら 構 成 さ れ、
※2
一致していない。そもそも 人 間の「 知
すでに 様々な 産 業 で 基 盤 技 術 とし
層学習)
は機 械 学 習の一手 法である。
昨 今 話 題のディープラーニング
(深
ての活 用がされている 」
能 」の原 理や 振 る 舞いが解 明 されて
おら ず 様々な 解 釈があり 得 る 上に、
それを「 人 工 」的に再 現 する 方 法 論
も一つに定められないからだ。
ま た 囲 碁 の トップ プロ を 破った 米
ボット 」といったサイエンスフィクショ
し 適 切 にコミュニケーションす るロ
ミュレーション」や「 人の感 情 を 理 解
ロボットの
米
センターや医 療 診 断への応 用が進 む
グーグルの
その意 味では「 脳 全 体の働 きのシ
ンの題 材 となるよう なテーマも 人工
く 先 述 した 技 術 の 組 み 合 わせか 発
、コミュニケーション
、 企 業 のコール
知 能 研 究 の 範 疇 ではある。 人 工 知
展 形として説 明できる。( 図1)
r
e
p
p
e
P
ビジネスの潮流ー 人工知能は
、これらは例 外な
る人には得 体の知れない不 安を感じ
のただ 中にある。 その実 態 を一言で
度 目の世 界 的ブーム
すでに社会に浸透した技術
一方で 人工知 能はすでに実 現した
技 術 の 集 合 体 としての 側 面 も あ
る。 本 稿 ではこの 立 場 に 立 ち 以 下
の 定 義 で 人 工 知 能 を と ら え ること
人工知 能は
させる一因となってしまっている。
あ る 人 には 過 大 な 期 待 を、 またあ
能 研 究の潜 在 的な可 能 性の広さは、
o
G
a
h
p
l
A
)
3
機械学習
•決定木
•ニューラルネットワーク
(ディープラーニング含む)
ルールベースの手法
人
工
知
能
基
盤
技
術
n
o
s
t
a
W
M
B
I
(
No.52 October 2016
11│ Info-Future®
マーケティング・
ロジスティクス
•需要予測
音声処理
•環境認識
•ユーザインタフェース
•対話アルゴリズム
•コンピュータゲーム
•チェス・将棋・囲碁
•クイズ・試験
•ソフトウェアオンチップ
•ニューロモーフィックチップ
•検索アルゴリズム
•WEBオントロジー
•セキュリティ (マルウェ
ア対策、不正利用検知)
•オンライン広告最適化
(配信アルゴリズム等)
•EC(リコメンデーション)
•評判分析
•株価予測
•金融商品の自動取引
•クレジットカード
不正検知
•特徴抽出
•音声モデル
•言語モデル
•音声対話
人
工
知
能
応
用
技
術
知能ロボット・
対話エージェント
ゲーム・クイズ
ハードウェア
•走行環境認知
•走行判断
•BEMS/HEMS
•産業機械の稼働制御
•電力網の制御
医療診断・
バイオテクノロジー
•診断支援システム
•遺伝子解析
•創薬
WEB
金融
応
用
シ
ス
テ
ム
代
表
例
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
※2 書籍「人工知能とは 」(監修:人工知能学会) ISBN: 978-4764904897
特集レポート
02
神田 武
図2| 産業別の人工知能活用例
WEB/Mobile
機械学習
・
データマイニング
EMAILの
スパムフィルタリング
ECサイトでの商品推薦
不正取引の検出
WEBサイトでの
画像の自動分類
画像認識
金融
コーポレート
融資判断の審査
最適な
投資タイミング判定
顧客分析
(クラスタリング)
過去の採用傾向に
基づいた
適正人材の抽出
ATMの紙幣増減予測
取引先の信用審査
不正送金の検出
健康・医療
創薬の候補物質探索
薬剤の薬効・副作用
の予測
PHRによる健康管理
医用画像からの
病変部位検出
印影の確認
指紋認証
スマホの
音声入力機能
音声認識
自然言語処理
・
対話
会議録の自動作成
動画サイトの字幕付与
外国人との
ビジネス会議システム
パーソナルアシスタント
(Siri, GoogleNOW)
メール分析による
不正検知
窓口でのQ&A支援
その他
・
複合システム
SNS情報からの
事件・事故の検出
ニュース記事の生成
金融商品の
自動取引
交通・物流
バラ積み部品の
ピッキング
産業ロボットの
繰返し行動の改善
工業製品の
不良品検出
インフラ
交通量の予測
犯罪予測
日配品配送予測
電力需要予測
タクシー需要予測
観光客の移動予測
顔認証(防犯)
出荷検品
微動作の識別による
感情認識(防犯)
運転集中度の
センシング
論文画像からの
不正検出
太陽光の発電予測
製造工程での
ハンディターミナル代替
カーナビの音声
応答
音声認識と
機械翻訳による
訪日外国人への
インフォメーション業務
過去の設計図からの
設計ノウハウ抽出
自動運転(Level2)
電力・ガス・空調の
自動制御
介護施設用の
コミュニケーション
ロボット
英作文・スピーチの
自動添削
文章間の因果関係
抽出(経営判断支援)
対話ボットの制御
電子カルテ音声入力
製造
コールセンター支援
カルテ情報に基づいた
転倒リスク予測
感染症の問診支援
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
とにより、 集 約したデータから規 則
ジタルデータを 取 得 可 能 と なったこ
入ってインターネット経由で大量のデ
の
選 択 す る 役 割 を 担 う。 動 画サイト
に増 大 す る 情 報 を 人 間 の 為に取 捨
今 日の 人 工 知 能は、 指 数 関 数 的
の拡大
データに対する
機械学習アルゴ
リズムの適用
を 中 心に研 究 開 発 投 資 の 流 れが本
や意 味 合いを 抽 出し、 分 類 、 予 測 、
される 動 画コンテンツ、 購 買サイト
キャッシュフロー
表 現すると「ビッグデータへの機 械 学
発 見に生かすアプローチが機 能 する
の
4
1
格 的に開始したところである。
ようになった。 規 則や意 味 合いを 抽
庫 情報 、求 人サイト上で日々更 新さ
データ収集
習の適 用 」となる。 2 0 00 年 代に
出するために利 用できるのが機 械 学
4
ユーザーの拡大
2
n
o
z
a
m
A
上 で 刻々と 変 動 す る 在
e
b
u
t
u
o
Y
サービス(顧客接
点・オペレーション)
の改善
上で 毎 秒 のように公 開
れる求 人 情 報・・・これらの情 報 を
すべて表 示することは不 可 能だ。 必
3
然 的に情 報 を 選 別 す るための 方 法
論 が必 要 と な る。 膨 大に発 生 す る
音 声・画 像・動 画・時 系 列数 値デー
タを選 別 、加工するために機 械学 習
データ活 用への要 請はWE Bサー
質問応答システムを用いた取扱い物件の
問い合わせへの自動回答
機械学習を軸とした競争優位確立のサイクル
3
が有 効に機能するのだ。
ビスの業 界に留まらない。 日々蓄 積
される監 視カメラの画 像 情 報 、 産 業
機 械の稼 働 情 報 、倉 庫の在 庫情 報 、
気 象 情 報、 遺 伝 子 と 疾 患 の 情 報
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
等々。 すでにこれらのデータを 機 械
学 習によって自 動 的に処 理する動き
は着々と進んでいる。 人工知 能はす
でに社 会に浸 透した技 術であり、 直
情報提供
過去の取引データや物件情報を学習する
ことで、物件の適正な取引価格を推計
習 技 術である。
物件の査定
過 去 のブームとの 違いはふたつあ
過去に入社試験を受けた志望者の履歴書
データと合否結果を学習し、新規希望者
が自社に合致するか判定
る。 ひとつは分 類や予 測のために利
学習者の学習履歴や理解度に合わせ、問
題の自動作成から自動採点まで実施
用 される 技 術 が従 来 の 論 理・ 言 語
書類選考
学習者の学習履歴やカリキュラム間の依
存関係をもとに適切な講座を提案
的 手 法から 統 計 解 析 的 手 法に移 行
問題作成・採点の
自動化
支払履歴等から通常行動と逸脱行動を区
別して不正送金などを警告
したことである。 機 械 学 習において
アダプティブラー
ニング
機械学習の利用例
審査対象者のオンライン購入履歴から融
資可否を判断
は重 回 帰 分 析 、ベイズ推 計 、ニュー
不正行動の検知
接・間 接 的に我々は恩 恵を受けなが
ら生 活を営んでいるのだ。( 図2)
ReTech
(不動産)
ビジネス類型
ローン等の審査
ラルネットワークといった統 計 解 析 的
HRTech
(人材)
X-Techにおける機械学習の利用例
な手 法が通 常 用いられる。 もうひと
EdTech
(教育)
つは技 術 開 発の担い手が大 学 等の研
FinTech
(金融)
究機関から民間企業に移行したこと
である。 2 0 1 2 年のディープラー
ニングの衝撃以降 、米グーグル、米フェ
イスブック、 中 国 バイドゥな ど 世 界
的 W E B 企 業 が人 工 知 能 研 究 所 を
設 立 するなど 技 術 開 発 や 人 材 獲 得
を 強 力 に 推 進 してき た。 日 本 で も
数 年 遅 れではあるがリクルート、ト
ヨタ、ドワンゴといった各 業界の大 手
図3| 人工知能活用による新規事業創出の留意点
Info-Future® No.52 October 2016 │12
図3| 人工知能活用による新規事業創出の留意点
2
サービス(顧客接
点・オペレーション)
の改善
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
データ収集
ビジネス活用の類型と留意点
事業を創出する際の考え方
人工知能技術を活用して新規
性を考えると、データ集 積 、データ
上させることができる。 事 業の永 続
への 機 械 学 習アルゴリ ズムの 適 用 、
術の活 用 を 検 討 する際にはどういっ
と 呼 ばれる 事 業 群である。
討 を 始 め る 際、 参 考 に な る の は
機 械 学 習 を 用いた 新 規 事 業 の 検
る。(図3)
業 務 の 設 計 を 行 うことが 肝 要 で あ
収 集といった一連のフローを 意 識して
ローの拡 大 、 追 加 投 資によるデータ
サービス改 善 、ユーザーやキャッシュフ
た手 順を踏む必 要があるのか。 まず
と はI T 技 術 に よ る 既 存
では、 機 械 学 習 等 の 人 工 知 能 技
とはど ういうことか」を 考 える 必 要
事 業の再 定 義の流れを示すキーワー
「 自 社において 人工知 能 を 活 用 する
がある。 筆 者としては大きく3つの
ドであり、現 時 点では
人工知能技術やそれを用いた
融 )、
( 教 育 )、
( 人 材 )、
(金
①はソリューションベンダーやシステ
既存の人工知能技術を活用し
て新規事業を創出する
味 合いを 抽 出 し、 分 類 、 予 測 、 発
習を組み込み、データから規 則や意
それぞれの業 界でどのように機 械 学
を 推 進 す る 先 進 企 業 が、
ら機 械 学 習を用いていることが多い。
多くはI Tを用いた効 率 化の観 点か
に取り組む企 業の
状況を踏まえて精査する。ここで人
適 用 すべきか、 現 状のシステム化の
た上でどの業務プロセスにどの技術を
おける一連の業 務プロセスを洗い出し
することが有 効である。 通 常 業 務に
トと同様に現行業務の棚卸から開始
いても、一般 的な業 務 改 善プロジェク
人工知能を活用した業務改善にお
業務を改善する際の考え方
人工知能技術を活用して既存
可能性があると考えている。
①
パッケージを開発しソリューショ
に注 目を集めている。
( 不 動産)等が特
ンとして提供する
ムインテグレーターが取 組むビジネス
見に生かしているかを 把 握しておく
工知能を適用すべき業務は、①現状
これら
であり、 殆どの非 I T 企 業において
ことは自 社で新たに検 討を進める際
システム化されておらず 人 手で業 務
既存の人工知能技術を活用し
h
c
e
h T
c R
e H
T
n
i
F
質問応答システムを用いた取扱い物件の
問い合わせへの自動回答
h
c
e
T
X
情報提供
h
c
e
T
e
R
過去の取引データや物件情報を学習する
ことで、物件の適正な取引価格を推計
h
c
e
T
d
E
物件の査定
h
c
e
T
X
ReTech
(不動産)
h
c
e
T
X
過去に入社試験を受けた志望者の履歴書
データと合否結果を学習し、新規希望者
が自社に合致するか判定
加えて、機 械 学 習を軸にどのよう
が機械学習の課題として定義できる
を遂 行しており、 ②その業 務の内 容
h
c
e
T
X
とは、 ②と③のどちらかが該 当する
に競 合 企 業 との競 争 優 位 を 確 立 す
程度に非定型的である業務となる。
て既存の業務を改善する
書類選考
HRTech
(人材)
学習者の学習履歴や理解度に合わせ、問
題の自動作成から自動採点まで実施
3
問題作成・採点の
自動化
②
は直 接 関 係がない。ユーザーの立 場
にも有 用である。
ことになる。それぞれのケースにおい
るかも考えなければならない。 機 械
定 型 業 務 / 非 定 型 業 務 の 切り 分
③
から見ると人工知 能のビジネス活 用
て考 慮 すべきポイントを以 下に説 明
学 習は学 習に利 用するデータの種 類
けについては、 業 務の難 易 度に応じ
する。
や量が増えることで、その精 度を向
No.52 October 2016
13│ Info-Future®
の拡大
学習者の学習履歴やカリキュラム間の依
存関係をもとに適切な講座を提案
3
データに対する
機械学習アルゴ
リズムの適用
キャッシュフロー
アダプティブラー
ニング
4
支払履歴等から通常行動と逸脱行動を区
別して不正送金などを警告
ユーザーの拡大
1
不正行動の検知
EdTech
(教育)
機械学習の利用例
ビジネス類型
4
審査対象者のオンライン購入履歴から融
資可否を判断
ローン等の審査
FinTech
(金融)
機械学習を軸とした競争優位確立のサイクル
X-Techにおける機械学習の利用例
特集レポート
02
図4| 人工知能を用いた業務分析の考え方
神田 武
NO:処理不可能
て 以 下 のレベル1〜4に 整 理 す るこ
入 店 数 を 予 測 する 業 務や、 電 話 対
レベル の業 務は過 去の事 例だけ
が該 当する。
応における単 純な質 問への回 答など
レベル (定型業務):
とが有 効である。
行
では成 功 例を学 習できない本 来 的に
熟 練した美 容 師は、お客さんの服 装
イレギュラーな 業 務である。 例 え ば
業 務マニュアル等 、 明 文 化 された
やコミュニケーションの取り方から性
レベル (定型業務):
単 純 なルールに従って 指 示 通り 遂
•
•
知 識やルールに従って遂行
格や嗜 好を把 握し、お客さんごとの
嗜 好にあった髪 型 を 提 案し、さらに
ルール化は困 難であるが、 過 去の
は顔つきや頭の形に合わせて微 調 整
レベル (非定型業務):
事 例から成 功パターンを 学 習 する
を 行いながら髪 を 切るという 極めて
個 別 性 が高 く 難 易 度 の 高い業 務 を
行っている。 このよう な 業 務 を 人工
レベル (非定型業務):
過 去 事 例 だけでは 適 切 に 対 応 で
知 能やロボットにそのまま 代 替 する
定 型 業 務に位 置 付けられるのがレ
定 するためには現 場の担 当 者へのイ
人 工 知 能 で 支 援 すべき 業 務 を 選
ているよう な 業 務 と 捉 えるとイメー
マクロやE R Pパッケージで実 現され
力結果 」
「データや処 理のシステム化
業 務 の「 入 力 情 報 」
「処 理 内 容 」
「出
ンタビューや業 務 見 学 を 通して、 各
l
e
c
x
E
ジしやすいかもしれない。 このレベル
状 況 」といった情 報 処 理 的 な 面 を 詳
である。 すでに
の業 務は機 械 学 習を用いずともシス
細に整 理しておく必 要がある。 その
学 習 の 問 題 として 定 義 でき る。 曜
非 正 解 データの 特 定 を 行 え ば 機 械
基づいて 学 習 すべき データと 正 解・
料や画 面(いずれも入 力 情 報 )
だけで
業 務を進める際に、目の前にある資
準・判 断 材 料 」である。 我々人 間は
て 暗 黙 知 的 に 参 照 している 判 断 基
際に見落としがちなのが
「 業務におい
日・天 気・時 間 帯 などから店 舗への
レベル の業 務は、 過 去の事 例に
テム化が可 能である。
ベル ~
の
ことは当 面難しい。
きない
( 状 況や概 念の理解が必 要)
•
ことで対 応 可 能
•
4
1
2
3
1
対応パターンが
複雑になる/
Level3/
level4かを判定
4
2
3
検討対象外
YES:システム化済
システム化
されているか?
定型業務
指示通り動く
LV.
1~2
所定のマニュアル・ルール
に基づけば、作業者の個性
・能力・解釈が介入すること
YES:処理可能
なく、処理が可能か?
成功パターンを
自動的に学習
過去の事例(入出力・判
断根拠)のみをもとに
出力結果をほぼ(9割方) YES:
生成可能
生成可能か?
LV.3
非定型業務
||
AIを適用させる
べき業務
状況や概念の
理解が必要
NO:生成不可能
LV.4
定型/非定型
かを判定
業務のAI適用可能性の判定結果
業務のAI適用可能性の判定ロジック
NO:システム化されていない
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
Info-Future® No.52 October 2016 │14
図5| 日米での企業連携パターンの比較
日本はベンダー同士の協業が多く、ベンダー企業とユーザー企業間での
協業が進んでいない
人工知能ベンダーによる:協業パターンの比較
はな く 、 過 去 の 経 験 や 研 修 を 通 じ
求められる企業間連携の姿と
人工知 能 技 術を保 有するベンダー企
いない。弊 社は2 01 6年の初頭に、
業が他の企 業と協 業 する際のパター
日本企業の課題
浮かべて業 務を行っている。 そういっ
ンをニュース記 事にもとづいて日 米 間
て 身につけたノウハウや 知 識 を 思い
たブラックボックスとなっている「 判 断
る。(図4)
題として定 義し直すことが求められ
容 を 抽 出・整 理し、 機 械 学 習の 問
材 料・判 断 基 準 」も含めて業 務の内
考 え られる。 そ の 過 程 では 人 工 知
であった業 界にも 技 術 導 入が進むと
れて、 今 後はこれまでITとは無 縁
人工知 能の活 用 用 途が広がるにつ
は %に留まった。一方で、米 国では、
ダー企 業 とユーザー企 業 間 の 協 業 」
過 半 数 を 占 め た のに 対 し て、「ベン
本では「ベンダー企 業 同 士の協 業 」が
で定 量 的に比 較したことがある。 日
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
能 技 術 の 提 供 者 と、 そ れぞ れの 業
33.3%
51.5%
AI技術企業が他社技術の強みを
組合わせて製品競争力を強化
(ベンダー企業同士の協業)
米国
日本
20.0%
その他
6.1%
界 で 事 業 を 営 む 事 業 者 との 協 力 が
業 」が
「ベンダー企 業 同 士の協 業 」と
「ベンダー企 業とユーザー企 業 間の協
%)
に上った。
能 分 野での共 同 研 究 、 また 企 業 間
や、ホンダとソフトバンクとの人工知
リファード ネットワークスと の 提 携
屈 指の人 工 知 能ベンチャーであるプ
業 用ロボット大 手のファナックと国 内
わる企 業 間 連 携が急 増している。 産
意 義が十 分に浸 透していない現 状が
果 としてユーザー企 業にIT投 資の
やメーカーに偏在することや、その結
のおよそ
考える背景として、国内のIT人材
ユーザー企業間の協業が進みづらいと
特に日 本においてベンダー企 業 と
同 割 合(
ではないが
「 産 総 研ーN E C 人工知
ある。 またシステムベンダーによる課
か。そう、
いずれも既に技術的なシー
点があることに気づかれないだろ う
ただしこれらの事 例には共 通 する
進まないことが人工知能に留まらず、
ザー・ベンダー間での連 携がなかなか
勢 も 現 場で 感じることが多い。ユー
となるだろう。(図5)
を 促 進していくかが我が国では重 要
産業のIT化の妨げになっていること
3
ズを持ったベンダー同 士の協 業という
4
は間 違いなく、 今 後どのように協 創
※3
分の がシステムベンダー
能 連 携 研 究 室 」等がすでに始 まって
題解決能力の不足、リスク回避の姿
33
いる。
昨 年 来 、 日 本 で も 人 工 知 能に関
不 可 欠となる。
15
点である。
実 は日 本 ではベンダー企 業 とユー
ザー企 業 間での連 携が十 分に進んで
No.52 October 2016
15│ Info-Future®
13.3%
AI技術企業が販売力のある企業と協業
15.2%
33.3%
AI技術企業が事業会社等と協業して
事業会社のサービスとして展開
(ベンダー企業とユーザー企業間の協業)
27.3%
データの収集条件国内外の複数のニュースサイ
トより、キーワード検索によって機械学習や対話エージェント関連の記事を重点的に抽出(国内55件、米国49件)
(記事の対象期間は2014年6月1日から2015年12月31日まで)
※3 I
T人材を巡る現状について」
(経済産業省資料)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/it_jinzai_wg/pdf/001_04_01.pdf
特集レポート
02
神田 武
図6|「corevo」
を構成する4種のAI
組み
企業間連携に向けた弊社の取
2016年 時 点 で、 各 産 業 分 野 の
と し て2010年 に 組 成 さ れ た。
る 学 術 界 と 産 業 界の橋 渡しを 目 的
ス、適 切な対 話のシナリオ、利用 者
ビジネスモデル、サービスのユースケー
エージェントA Iを 活 用 す るための
内 環 境 を 実 験 のフィールドとして、
以上の問題意識のもと、弊社では
に参画いただいている。 当初は脳科学
どを検証する予 定である。
への働きかけのためのデバイス構成な
NTTメディアインテリジェンス研究
分 野での検 討が中 心であったが、 昨
た。 本 稿では特に
「エージェントAI
所ワークショップ
人工知能に関する様々な取組みを推
本稿では取組みの一例として「 応用
と環 境 知 能 研 究 会 」「NTTメディア
年度より人工知能分野を強化してき
脳 科 学コンソーシアム」における近 年
インテリジェンス研究所ワークショップ」
※4・5
の活 動 を 紹 介したい 。
「応 用 脳 科 学
NT Tメディアインテリジェンス研
コンソーシアム」は脳 科 学 分 野におけ
究 所の研 究 領 域である「 人工知 能 」
「 超 高 臨 場 映 像 通 信 」に関 する最 新
研究内容を紹介しながら、領域にと
最 近 話 題になることの多いコミュニ
設ワークショップで あ る。 当ワーク
研 究 の 事 業 化 模 索 を 行 うための 新
らわれず 社 会 実 装に向けたメディア
ケーションロボットやチャットボットと
ショップではN TTが
月に報 道 発
いった音 声 対 話 型の人工知 能を広 く
エージェントAIと環境知能研究会
「応 用 脳 科 学アカデミー 人工知 能
コース」
の3つを紹介する。
進する。
40
今 年 度 は 家 庭 やオフィスといった 屋
なって 事 業 活 用 の 可 能 性 を 探 る。
を 有 す る「 研 究 者 」の3 者 が一体 と
する「ベンダー企 業 」、学 術的な知 見
話やセンシングなどの要 素 技 術 を 有
を検 討する「ユーザー企 業 」、音 声 対
ある。 エージェントA Iの事 業 活 用
験を通じて検 討するための取 組みで
その 事 業 活 用 の 可 能 性 を 議 論 や 実
「エージェントA I 」と し て と ら え、
に限 ら ず、 住 宅メーカーや 飲 食 業 、
カーな どのいわゆ る「ベンダー企 業 」
である。参 画 企業としては、電機メー
レーションの可 能 性 を 議 論 する予 定
参 画 企 業に説 明し、 各 社とのコラボ
介 する。 研 究 所の保 有 する 技 術 を
超 高 臨 場 映 像 通 信 技 術 を 中 心に紹
ピック等に向けて技 術 検 証 を 進める
「
表した人工知 能 関 連 技 術のブランド
5
(コレボ)」や、 東 京オリン
o
v
e
r
o
c
※6
Info-Future ® No.52 October 2016 │16
※6 NTTグループのAI技術「corevo™(コレボ)
」
によるコラボレーションを展開 http://www.ntt.co.jp/news2016/1605/160530b.html
大手企業を中心に 社超の民間企業
出所| NTTによる報道発表資料 http://www.ntt.co.jp/news2016/1605/160530b.html
※4 応用脳科学コンソーシアム http://www.keieiken.co.jp/can/
※5 応用脳科学コンソーシアム 研究会・ワークショップ 一覧 http://www.keieiken.co.jp/can/consortium/rd.html
建 設 業 など 多 様 な 業 界 を 予 定して
いる。(図6)
きないのは当 然である。
向や現 在の課 題 、およびビジ ネスへ
を 新 設し、 人 工 知 能の最 新 研 究 動
いる。 今 年 度より「 人工知 能コース」
「 応用脳科学アカデミー」を提供して
一線 で 活 躍 す る 研 究 者 によ る 講 義
応用脳科学コンソーシアムでは、第
することである。 そもそも 論 文レベ
る 上に新 規 事 業 としての 側 面 も 有
としては、人工知 能が先 端 技術であ
にわたってより本 質 的に重 要 な 観 点
れは 早 晩 落 ち 着 くであ ろ う。 将 来
に陥っている 現 状がある。 ただ、こ
関係者全体がコミュニケ―ション不全
究・開 発・ビジネスの話が混同され、
知 能 がバズワード 化 す る 過 程 で 研
これまで 述べてきたように、 人工
ないかと考えている。
ムが貢 献できる 余 地が大 きいのでは
進 技 術に強いコンサルティングファー
す る 役 割 と し て、 弊 社 のよ う な 先
のプロセスを企 画し、コーディネート
だろう。 筆 者としてはこういった一連
とが、 今 後は筋の良い進め方となる
に提 示して くれるベンダーと 組 むこ
証を行い、検 証結 果を迅 速かつ安価
を判 断し、 小 規 模であっても技 術 検
て、その技 術の事 業への適 用 可 能 性
まとめ
ユーザー企 業 の 立 場 から す る と、
の 活 用 状 況 等 の 知 識 を 習 得 す るた
ルでしか発 表 されていない先 端 技 術
技 術そのものの目 利きを 行ってくれ
めの講 義 を 開 始 する。 人 工 知 能 学
の実装可能性
(フィージビリティ)
やパ
応用脳科学アカデミー
会 前 会 長の松 原 仁 先 生や、 現 会 長
フォーマンスを目 利きすることが難し
人工知能コース
の山田誠二先 生をはじめとして国 内
い上に、 それを 取り入れる場 合には
※7
名を講 師として招
事 業 としてのリスクも 大 き く なる。
第一線の研 究 者
聘 し、 人 工 知 能 を 構 成 す る そ れぞ
例えばディープラーニングの可 能 性が
ただきたい。 個 人 会 員として入 会い
が記 載 されているため、ぜひ参 照い
以 下UR Lの後 段にプログラム構 成
間かけて 講 義いただ く ものである。
か、さらには研 究 開 発や人 材 獲 得の
した場 合にどれだけの効 果があるの
いった最 新 技 術を自 社に導 入し運 用
取り上 げられることが多いが、 そう
大 学 教 員やシステムベンダーによって
また中 長 期にわたって他 社との競 争
ただき 当コースのみを 受 講いただ く
4
投 資に見 合 う 利 益 貢 献があるのか、
れの技 術の基 礎から応 用までを
日
8
万円からの受 講が可 能で
場合は、
ある。
優 位をどう確 保するのか。 これらの
/
p
j
.
o
c
.
n
e
k
i
e
i
e
k
.
w
w
w
/
/
:
p
t
t
h
ことを見 通せなければ経 営 判 断をで
No.52 October 2016
17│ Info-Future®
12
※7 応用脳科学アカデミー 人工知能コース シラバス http://www.keieiken.co.jp/can/academy/index.html
l
m
t
h
.
x
e
d
n
i
/
y
m
e
d
a
c
a
/
n
a
c
システムインテグレーター、シンクタン
クを経て2014年より現職。 低炭素
社会の構築支援、再生可能・未利
社会システムコンサルティング部門
社会・環境戦略コンサルティングユニット
マネージャー
齊藤 三希子
実現を通した地域再生に取り組む。
SAITO MIKIKO
がもたらす
元年 』、
元年 』
てきている。 また、 金 融 業 界だけで
を上 回ったそうだ。
h
c
e
T
g
A
』は 既 に
』ビジ ネスに 大 き な 注 目
の会 長
』
h
c
e
T
e
g l
A g
o
o
h
c
G
e
T
g
t A
d
i
m
h
c
S
c
i
r
E
への注 目の高 さは、
と 投 資 が集 まっている 。
『
『
h
c
e
T
g
A
』
は、
発 展 期 に 入 って お り 、 現 在 は、
アメリ カで は『
る。
一方 、アメリカは
『
であった。
『
h
c
e
T
n
i
F e
r
u
t
l
u
h c
c i
r
e g
T
y
g A g
o
A
l
o
n
h
c
e
T
同 様 、 農 業(
)と 技 術
元年 』
はなく、 様々な 業 界にも 波 及してい
日本 農 業の産 業 化への期 待
日本は
『
アメリカは
『
2015年、 日 本 は ま さ に
元 年 』だった。 2 0 1 6
h
c
e
T
n
i
F
な地域モデル創出、スマート農業の
農業、文化等)
を活用した持続可能
h
c
e
T
g
A
源
(再生可能・未利用エネルギー、
h
c
e
T
n
i
F
農業の構築等に多数従事。地域資
h
c
e
T
n
i
F
み構築、ICTを活用した高付加価値
h
c
e
T
g
A
政策支援、再生可能・未利用エネ
03
NTTデータ経営研究所
ルギーを活用した地域活性化の仕組
『
(
2 0 1 4 年に
0
5
0
2
m
r
a
F
e
c
n
a
n
i
F
h
c
e
T
n
i
F
h
c
e
T
g
A
』も こ れ ま で も 存 在
同
』を 立 ち 上 げ
たことから も 窺 え る 。
様、
『
スタートアッ
氏が発 起 人 と なり 、
年はフィンテック企 業への投 資がさら
である。 人工知能や情報科学、ロボ
プを 資 金 や 技 術 面で 支 援 する 集 団
)を 融 合 させた 造 語
に急 増しており、 世 界で2 4 0 億ド
ティクスをはじめとした先 端 技 術 を
※1
』
h
h
c
c
e
e
T
T
g
r g
A e
d A
n
u
F
g
A
※2
の調 査に
と し て『
ルと 過 去 最 高 を 更 新 す る 見 通 しと
と呼んでいる。
農業に応用させることを『
)と 技 術
(
なっている。
金融
(
ビ
y
g
o
l
o
n
h
c h
e c
T e
T
n
i
F
していた 市 場 が新 たなテクノロジー
よ る と、 2 0 1 5 年 の
ジ ネスに 対 す る 投 資 額 が 急 速 に 増
の 出 現 及 び 実 用 化 によって 、 イノ
』
は、 企 業 活 動 や 消 費 行 動 、 お金に
加 し て おり、 2 0 1 4 年 と 比 べて
ベーション を 引 き 起 こ す 可 能 性 が
)を 融 合 させた『
対 す る 価 値 観に大 き な 影 響 を 与 え
億 U Sドル を 記 録 し、
倍の
約
46
h
c
e
T
n
i
F
や
h
c
e
T
n
a
e
l
C
の投 資 額
高 まっている 。
ており、 金 融 業 界におけるイノベー
ションが一段 と 加 速 する 可 能 性が出
2
特集レポート
用エネルギー分野の事業化支援・
※1 日本経済新聞 朝刊
(2016/9/8付)
※2 AgTech Investing Report 2015
(https://agfunder.com/research 2016/9/8現在)
Info-Future® No.52 October 2016 │18
『
』
は、 日本でも注 目され
る 労 働 力 不 足への 解 決 策 と し て
なっている。 日 本では、 高 齢 化によ
『
ている。 2013年より
「スマート農業
h
c
e
T
g
A
』
が注目を集
h
c
e
T
g
A
』
が注目される理由
アメリカで『
h
c
e
T
g
A
用する取組みが進められてきた。「日本
情報技術やロボット技術等を農業に応
の実現に向けた研究会 」を立ち上げ、
2016年 度 の 補 正 予 算 に
AIの 活 用 を 促 進 さ せ る た め、
農 水 省 は、 技 能 伝 承 に お け る
の普及に期 待をしている。
h
c
e
T
g
A
めている 理 由 としては、 主に次の3
閣議決
再 興 戦 略2016
(H ・
h
c
e
T
n
i
F
テクノロジーの 発 展により、 様々な
的に改善するため、具体的施策とし
定)
」
では、農業分野の生産性を抜本
A I 等の最 新 技 術 を 活 用し、 習 得
同 様、
展 開の可 能 性が広がったことも 大き
て人工知 能
(AI)
やIoTの活 用を
に数 十 年かかった技 術 を 若 者 などが
つ が 考 え ら れ る。
いが、アメリカでは、 世 界の食 料 危
位置付け、「人工知能未来農業創造プ
短 期 間で身に付けられるシステム等
h
c
e
T
g
A
』に 注 目 す る
億 円 の 予 算 を 盛 り 込 んで おり、
の構 築を目 指している。
アメリカと日 本で着 目 する観 点は
日 本 の 農 業 は、 T P P 妥 結 や 高 齢
は、 社 会 問 題 解 決 策のひとつとして
異 なるが、いずれにせよ、
h
c
e
T
g
A
化による 大 量 離 農による 労 働 力 不
期 待されている点は、 同じである。
迎えている。 2 0 4 0 年には 万人
足 という、 戦 後 以 来 の 大 転 換 期 を
理 由は、アメリカと 大 き く 異 なる。
年 度 概 算 要 求に
機に対 する 解 決 策のひとつとして、
ロジェクト
(仮 称 )
」に取 組み始めてい
117億 円、
農 業 技 術そのものを発 展させる狙い
対する解決策
2050 年 には 世 界 人 口が
17
の労 働 力 不 足が見 込まれており、 後
いために
をブームで終わらせな
h
c
e
T
g
A
題となっているが、いまだ人 手に頼っ
継 者 不 足が他 産 業 よりも 深 刻 な 問
環 境 配 慮 や 健 康 志 向 の 高 まりに
h
c
e
T
n
i
F
なったのは、スマートフォンの普 及 と
た重 労 働が行われている。 新 規 就 農
達 成 するためには、 さらなるコスト
言われている。スマートフォンの普 及
より、 農 薬 な どの 化 学 物 質 の 使
削 減 及 び 農 作 物の高 付 加 価 値 化 を
により消 費 者行 動が変わり、消 費 者
が 発 展 す る きっかけ と
図 る と と もに、 現 在 の 篤 農 家 の 経
ニーズに合わせて金 融サービスのオン
者 を 増やし、 安 定 的 な 食 料 生 産 を
テ ク ノ ロ ジ ー の 発 展 に よ り、
験 と 勘に頼った 栽 培 方 法からロボッ
ライン化が一気に加 速した。金 融サー
③テクノロジーの発展
I oTやドローン、人工知 能 等が、
ト 技 術 やI C Tを 活 用 した 新 規 就
とくのうか
農 業 の 現 場 にも 適 用 可 能 と なっ
が高まっている。
52
ビスのオンライン化 が進 むことによ
用量が少ない農作物に対する需要
②環境配慮や健康志向の高まり
%増産する必要がある。
に 達 し、 食 糧 生 産 量 を 現 在 より
億
①世 界 の 爆 発 的 な 食 料 需 要 増 加 に
る。 しかし、『
28
の方が大きい。
6
20
96
農 者への 円 滑 な 技 術 伝 承 が急 務 と
た。
No.52 October 2016
19│ Info-Future®
70
特集レポート
03
齊藤 三希子
るデータ分 析が可 能となり、 従 来と
われ、 ビッグデータや 人 工 知 能によ
り、データの生 成・収 集・蓄 積が行
能となる。( 図1)
農 業 ビジ ネスを 展 開 す ることが 可
値 あ る 農 業 情 報 を 抽 出 し、 新 しい
成されることにより、 その中から価
じている農業 経 営者は多くない。
られているが、このことに危 機 を 感
タ を 生 成 し、 収 集・ 蓄 積 がで き る
のカギはいうまでもなく 、いかにデー
農 業も金 融 業 界 同 様 、 市 場 成 長
さに農 業 分 野にテクノロジーを 融 合
や作 物 栽 培に役 立てられている。 ま
サルタントらと共 有され、 経 営 改 善
産 者グループや協 力 企 業 、 農 業コン
た 様々なデータは、 オンラインで 生
みを構 築している。 収 集・蓄 積され
とでさらなる技 術 革 新に繋がる仕 組
式 を 取っており、 情 報 を 公 開するこ
進 農 業は、オープンイノベーション方
日 本が目 指しているオランダの先
げら れる。 また、 全 国 の 圃 場 デー
に対する投 資 対 効 果が低いことが挙
割 を 占めているため、 システム導 入
ひとつに、 日 本は中 小 規 模 農 家が8
の構 築に時 間が掛かっている 要 因の
「 農 業 共 通 情 報 プラットフォーム」
ある。
ドラインの作 成 等 、 基 盤の整 備 中で
済みであるが、 日 本では、まだガイ
業 共 通 情 報プラットフォーム」を構 築
状況である。オランダは数年 前に「 農
タとしてほとんど 蓄 積 されていない
現在日本は、農業 関 連情 報がデー
は異 なるサービスが次々と 登 場して
か否かである。 環 境 情 報 、 生 体 情
することにより、 既 存 情 報・サービ
タの収 集には、 費 用 だけではな く 、
いる。
報 、 農 作 業 情 報 な どのデータが 生
スに付 加 価 値 をつけて 新しい農 業ビ
膨 大な時 間と労 力がかかる。 データ
社、
オランダの 施 設 園 芸 用 複 合 環 境
とのメリットを 大きくするためには、
を 収 集・蓄 積 、 分 析 、 活 用 す るこ
制 御 装 置 メー カ で あ る
コストと手 間を最 小 限とする必 要が
a
v
i
r
P
社、
x
a
m
i
t
r
o
H
n
r
o
o
d
n
e
g
o
o
H
ステムを 導 入している日 本の施 設 園
社 等の 制 御 シ
が大 き な 強みと なっている。 こうし
データを 収 集・蓄 積しており、これ
導 入することにより、 全 世 界の栽 培
センサなど、 異 分 野の知 識・先 進 技
技 術を活 用した使い捨てできる紙の
最 近では、ペーパーエレクトロニクス
シング技 術の普 及が不 可 欠である。
を占める日 本の場 合は、 安 価なセン
そ のため、 中 小 規 模 農 家 が8 割
等は、 世 界 中に環 境 制 御システムを
芸ハウスは、 制 御 システムを 介して
術 を 農 業 に 応 用 した 農 業 技 術 イノ
ている間にも、
貴 重な栽 培データを無 償で吸い上 げ
ある。
社
ほ じ ょ う ※3
ジネスを創 造している。
図1| 価値情報の創出イメージ
出所| 経済産業省資料
※3 農産物を育てる場所
Info-Future® No.52 October 2016 │20
a
v
i
r
P
図2| 農作業のワークスタイル変革イメージ
ベーションが創 出されている。 この技
〈農業経営体向けの収入補償保険
世 界 で 注 目 と 投 資 を 集 めている
h
c
e
T
g
A
可能となる。
価にセンサを作 成し圃 場 環 境を計 測
インクジェットプリンタを 使って、 安
⇒
(気 象データ等 )
を活 用することに
収 穫 量 等 )と 既 存 オープンデータ
関連情報
(栽培環境、土壌データ、
・ 収集・蓄積した全国の様々な農業
参 入 す る 企 業 が増 え たよ うに、 農
規 制の影 響を受けない分 野から新 規
し、 金 融 業 界 が 技 術 革 新 に より、
規 参 入が難しいとされてきた。 しか
』。 金 融 業 界も農 業 同 様
また、 周りの環 境から微 小なエネ
より、農作物の収穫リスクを分析。
業 もA IやI oT 等 の 技 術 革 新 に
『
ルギーを 収 穫 するエネルギーハーベス
これにより、農 業 経 営 体に対して、
より同じ変 遷を歩みつつある。
サービス〉
ト 技 術 と 組み合 わせることにより、
作 物 や 農 地 ごとに最 適 な 収 入 補
術 が普 及 すれば、 農 家 は、 家 庭 用
紙のセンサに無 線で電 力を供 給する
償 保 険サービスを提 供 。
〈 農 業 経 営 体への融 資 評 価 情 報の
年 ぶり の 農 協 改 革 な ど 、
農 業は、 戦 後 以 来の大 転 換 期 を 迎
改 正、
日 本 で は、 20 1 5年 の 農 地 法
に規 制 産 業であるため、これまで新
ことができる。つまり、 土に還る紙
のセンサを用いて、 農 業 情 報 を 収 集
することが可 能となる。 データが収
⇒
・ 農 作 物の収 穫 量 予 測 情 報や、 全
潮 流 の 中 、 緑 の 革 命 以 降 、 新 たな
えており、 農 政 の 抜 本 的 な 改 革 と
国から収集した栽培環境情報等を
イノベーションが生 まれていなかった
構築〉
データを分析・解析することにより、
解析したリスクを分析。
農 業 分 野において、『
集・蓄 積されれば、そのような収 集
例 え ば、 次のよう な 新しいサービス
これにより、 成 長・収 益 予 測を加
りどのよう なビジ ネスモデルのイノ
規 制 緩 和が進んでいる。 このような
を提供可能となる。
味した与信スコアリングモデルを構
ベーションが創 出されるのか。
h
c
e
T
n
i
F
』の登 場により 金 融の
』によ
h
c
e
T
g
A
『
技 術と体 系 的に利 用されることに
栽 培 環 境や作 物 状 況 、ノウハウ
などのデータ化・形 式 知化が進み、
れ、 知 を 価 値に転 換 す る 時 代 が到
新 しいサービス・ビジ ネスが創 出 さ
農 業 が抱 え る 課 題 解 決 に 貢 献 す る
h
c
e
T
g
A
より、 農 業 は 高 度 な 知 識 産 業・
来するだろう。このチャンスをつかみ、
活用。
ビジネス変革がもたらされたように、
情 報 産 業へと脱 皮する。 これによ
『
』の 普 及 により、 日 本 の
り、 農 作 業のワークスタイルが変
もたらすことに期 待したい。
『
革される。( 図2)
h
c
e
T
g
A
』が日 本 農 業の産 業 化 を
No.52 October 2016
21│ Info-Future®
60
築し、 農業経営体への融資評価に
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
より現 職。 官民 連 携を旗 印に、
大手シンクタンクを経て、2015年
ロボットをはじめとしたものづくり分
法人戦略コンサルティング部門
を手掛ける。ロボット、再生医療
事業戦略コンサルティングユニット
関連の講演会、委員会、執筆活
産業戦略グループ長 アソシエイトパートナー
動等を通じた業界活動を積極的
に行っている。
三治 信一朗
センセーショナルに語られたが、 内 実
な く なったといえ 、ち 密に積み上 げ
位 という 結 果
ていった結 果 ともいえる 。
日 本 勢 は、 最 高
を 行 うための事 務 局 を 当 社が担い、
2 0 2 0 年 に 行 わ れる。 そ の 準 備
で あり、 政 策 として も 日 本 追 従 型
Tを 中 心 としたロボット研 究が中 心
韓 国 のロボット 開 発 は、KAIS
標への適 用 勝 負に負けたのである。
という より も 、 評 価 尺 度 と な る 指
といえよう 。 技 術そのものが負けた
も あったがそ れはやや 早 まった 見 方
で あり、 日 本 そ の ものの 技 術 水 準
検 討 を 進めてきた。
で あったとみられていたが、 この 結
ロボットという 総 合 技 術の活 用の
ロボットの機 能 向 上が図 られたもの
ち 評 価ポイントを 見 極 めたう えで、
は、 競 技で勝つための条 件 、すなわ
ロボット国際競技大会( 仮称 )
の意 義
はじめに
ロボットの 国 際 競 技 大 会( 仮 称 )
ロボットの 関 連 す る 競 技 大 会 は、
果によりかなり 活 気づいている。 も
場では、 何に使えるかとか、その現
が 落 ちたのではないかといった 指 摘
これまでにも行われてきた。 代 表 的
う 少 し 分 析 し てみる と 、 2 0 0 9
であったと考えられる。
な も のは 例 え ばアメリカの
A
P
R
A
D 5
1
0
2
e
g
n
e
l
l
a
h
C
s
c
i
t
o
b
o
R
、
ト技 術の差があったが、 201 1 年
備しつくしているかといったことが勝
年 、 2 0 1 3 年で
番であることの意 味 合い
敗を分けることが指 摘される。 その
で
2 0 1 5 年 のD A R P Aの 結 果 を
見 れ ば、 す で に そ の 差 は ほ と んど
は、 開 発 、 競 争 の 促 進 の 観 点から
意 味で、
年となり、
年 時 点 でアメリカとは
場 を 知り尽 くしている、 あるいは準
が、 経 済 産 業 省 とNEDO 主 催 で
10
年 のロボッ
であろ
、 ド イツ
4
1.8
う。 参 加チームは チーム
(アメリカ
、韓国
2
)
で、 韓 国チームが優 勝し
、日本
その 他
2.4
25
3
た。 韓 国チームの優 勝はその当 時も
1
5
4
11
特集レポート
野と再生医療を中心としたライフ
04
NTTデータ経営研究所
サイエンス分野のコンサルティング
SANJI SHINICHIRO
Info-Future® No.52 October 2016 │22
技の指 標づくりそのものから行 うこ
やはり重 要であるといえる。 その競
ある。
ト、システム)
を作ることに意 義が
(=長期に好影響を与えるモノ、コ
ていくことが求められる。
について も、 同 様 のレガシーを 残 し
しての一里塚になることもある。
誉を勝ち取ることがロボット研究者と
行うロボカップサッカー、ロボット技術
ロボカップは、ロボットがサッカーを
と ので き るロボット 国 際 競 技 大 会
)の例
p
u
C
o
b
o
R
を災 害 救 助に役立てるための競 技で
ロボカップ(
定 期 的 に 開 催 す ることで、 競
あるロボカップレスキュー、 日 常 生 活
・ アワード方 式の競 技 大 会として
技 手 法、 展 示 手 法、 人 材 育 成
(仮称)
は意 義があるだろう。
ロボット国際競技大会(仮称)を
種目
の 場 に 役 立 て る た め のロボ カップ
手 法 等の仕 組みを構 築する。
レガシーを残していくという観点で
通じてレガシー構築
種 目からなる。
p
u
C
o
b
o
R
の性格は異なるものの、エンタメ性と
@ホームの
で あ る。 ロボカップは、1992年
社 会に役 立てるための競 技の工夫が
)も 代 表 例
回世界
は、ロボカップ
(
フォームなど技 術 的な標 準 、 社
の構想から1997年の第
・ 競 技の実 施 を 通じて、 プラット
会 実 装にあたっての性 能 標 準 等
研 究 所の 北 野 宏 明 代 表 取 締 役 社 長
ンダーでソニーコンピュータサイエンス
ラット、ロボカップ国 際 委 員 会ファウ
高 経 営 責 任 者( C E O )の ギル・ プ
ヨタリサーチインスティテュート )最
金 出 武 雄 教 授 を 筆 頭に、TRI
(ト
いる。 カーネ ギーメロン大 学 教 授の
問 会 議を発 足させることを発 表して
大 会の 実 行 委 員 会 と 実 行 委 員 会 諮
を 通じて 残していこう という もので
そのレガシーをロボットの 競 技 大 会
れが、レガシーととらえられており、
大 き く 変 わるきっかけと なった。 こ
上 昇 す る 等 、 社 会 や 人々の 生 活 が
し、カラーテレビの普 及 率 も 急 激に
競 技 を 見 るための 旅 行 需 要 が拡 大
に対 する 建 設 投 資が増 加したほか、
首 都 高 速 道 路 、 新 幹 線 等 )の 整 備
は、 競 技 施 設 や 交 通 網( 地 下 鉄 、
1 9 6 4 年の東 京 オリンピックで
質 的な日 本の選 抜チームを決める予
と世界大会が行われ、日本大会が実
ト」のことである。 毎 年、 日 本 大 会
目 的 としたランドマーク・プロジェク
の基 礎 技 術として波 及させることを
学などの研究を推進し、様々な分野
う夢に向かって人工知 能やロボット工
自 律 型ロボットのチームを 作る 」とい
の世 界チャンピオンチームに勝てる、
された、「西暦2050年に
「サッカー
のロボット研究者が中心となって設立
し続けている競 技 大 会であり、 日 本
大会を経て現代もなお継続して拡大
うロボット と 、
れるという事例もある。
なスポンサーから研究費として援助さ
この競 技 大 会に勝つことで、 実 質 的
受け参加している海外参加者も多い。
世 界 戦に向けては、 国からの支 援を
関の技術力の指標となる。このため、
世界的な勝者となることは、研究機
そチャレンジのしがいもあり、ここで
参 加 者 も 多いと聞 く。 難しいからこ
ようにかなり難しく、ゼロ点 近 傍の
度は、 西 暦2050年の目 標が示す
随 所に施されている。 ただし、 難 易
経 済 産 業 省とNEDOが2 01 5
等 と 錚々たるメンバーが揃っている。
あ る。 2 0 1 5 年 のD A R P Aが
選 的な扱いであり、 世 界 大 会に向け
の
を生み出す。
そこでの 議 論 内 容 は、 現 時 点 で 大
何 をレガシーにしているかといえば、
ての切 磋 琢 磨が行われる。 チーム対
フォームロボットとして 採 用 された。
日 に、 ロボット 国 際 競 技
き く 語 ることはでき ないが、コンセ
ロボットの災 害 救 助のための標 準 的
抗 戦であり、このような競 技の場に
このプラットフォームロボットという考
※
プトとしては、 以下のことを重 要 視
な 評 価 方 法 を 確 立 す る ということ
出ることによる人 的ネットワークのつ
そうそう
している
( 諮 問 会 議 資 料より抜 粋 )。
そのものであった。 もちろん、 日 本
最 近 で は 、 トヨ タ の H S R とい
○技術を競う競技大会という意味だ
え方は、基準となるロボットそのもの
月
3
ながりと、 競 技に勝つことによる栄
年
3
で行うロボット国 際 競 技 大 会( 仮 称 )
25
1
けでなく、 大 会 を 通じてレガシー
s
c
i
t
o
b
o
R
k
n
a
b
t
f
o
S
がロ ボ カップ の プ ラット
No.52 October 2016
r
e
p
p
e
P
23│ Info-Future®
12
※ロボカップホームページ
http://www.robocup.or.jp/original/about.html
(2016年9月現在)
から、貴重な機会となる。
人材との交流といった側面もあること
つながっていくことや 優 秀 なチーム、
グの中身、使い方のノウハウの吸収に
ろんであるが、使い方、プログラミン
ンス向上につながるということはもち
採用されることで、業界内でのプレゼ
としては、プラットフォームロボットに
ロボットメーカーにとってのメリット
トフォームロボットが求められている。
障壁を乗り越えていくために、プラッ
とっては、障壁が大きい。このような
め、 新たに挑 戦しようという ものに
はなく、ソフト面での開 発 も 伴うた
である。ロボットは、ハード面だけで
工夫により、 競 技 を 行うというもの
は提供したうえで、ソフトウェア側の
と、様々である。 しかし、彼らの持
こと、 学 校 の 授 業 の一環 で あったり
親 の 影 響 、 L E G Oで 遊 び 始 めた
ロボットに夢 中になったきっかけは、
きだという 想いが強 く 伝わってきた。
の 目 は 輝いており、ロボットが大 好
られる環 境 下においても 、 子 供たち
と も あ る。 このよ う な 自 立 を 求 め
英 語 で あり、 上 手 く 伝 わ ら ないこ
る。 競 技 中 の 審 判 とのやり 取 りは
き 出 してほしいという 願いからで あ
分 たちで 問 題 解 決 方 法 を 考 え 、 導
者は一切 声 をかけてはならない。 自
た 競 技 時 間 内には、 保 護 者 や 指 導
りとして、メンテナンスな ど を 含 め
じさせた。 ロボカップジュニアの決ま
そ の 真 剣 な 眼 差 しはプロ意 識 を 感
ぎり ま でロボット を 調 整 し ていた。
作のロボットを 抱えて競 技 開 始 ぎり
各 国から 参 加 した。 会 場 では、 自
ロボットに情 熱 を 注 ぐ 若 手の精 鋭が
ロボカップ世 界 大 会ジュニア部 門に、
上 旬 、 ドイツ・ライプチヒにおいて
月
また、 も う一つ重 要 な 点 に、 ジュ
ト 産 業 の 更 な る 発 展に大 き く 作 用
心を 絶やさないことが、将 来のロボッ
ロボットへの情 熱 を 持 ち 続け、 探 究
学べることが広がる。 今 後 も 彼らが
の 小 さ な 興 味 や 素 直 な 疑 問 から、
促 進である。 ロボットに対 するほん
親 し める よ う な 環 境 作 り と 教 育 の
ニア世 代 を 対 象 とした、ロボットに
より一層 高まる。 必 要 なことは、ジュ
期 待が、 ジュニア大 会での様 子から
近に感じられる社 会 となることへの
一部としているように、ロボットを 身
マートフォンを 簡 単に操 作し 生 活の
に は、 現 代 人 がi P h o n eやス
彼 らが成 長し、 社 会 を 担 う 時 代
大きな 意 義 をなしていた。
あり、ロボットが彼ら家 族にとって、
から 家 族一丸で 応 援に来ている 姿 も
た 、 と 教 え て く れ た。 ま た 、 遠 方
で 自 身 もロボットを 見 るようになっ
がロボットに詳しく 、それがきっかけ
れる。 参 加 者の 父 親 は、 子 供の 方
の 面 白 さ や 素 晴 らし さ を 伝 え て く
な 若 手 世 代が、 親 世 代にもロボット
に溢 れていることである。 このよう
た 瞬 間 の 喜 びが、 その 表 情 や 笑 顔
学が連 携 することで次の世 代につな
旗 振 り の 下 で の 開 催 で あり 、 産 官
産 業 省 とNEDOが 主 催 の 国 家 の
盤 、 そ れがレガシーと な る。 経 済
する社 会 をより高めていくための基
にあるものは、ロボットと 人が共 存
ジュニア 競 技 を 行っていく 。 そ の 先
サービス 分 野 の そ れ ぞ れの 分 野 と
大 会が行われる。ものづくり、災 害 、
な る。 ま ず は、 2 0 1 8 年 に プレ
り、 解 決していくことを 競 うことに
界 最 先 端・最 高 峰 の 技 術 を も ちよ
な 課 題 を 競 技 として 体 系 化し、 世
り 身 近 な 社 会 問 題 を 解 決 するよう
ロボット国 際 競 技 大 会( 仮 称 )
は、よ
このようななか、日 本で行われる
的 支援が若 手 育成の鍵となろう。
ではな く、 企 業 、 金 融 機 関の 複 線
不 可 欠 で あり、 国 や 教 育 機 関 だけ
は、 産 学 官による継 続した取 組みは
する。 若 手 世 代へのロボット教 育に
ムのバックアップをしている例 を 耳に
ト強 豪 国では、金融 機 関が参 加チー
ニア 競 技 が あ る。 2 0 1 6 年
ロ ボ カップ にとってのレガシーと
つ共 通 点は、ロボットのこと を 考 え
すると考えられる。
げたい。
ロボットと人が共存する社会へ
は、 国 際 的 な 人 材 交 流 、 競 技 を す
ている 時 間や触れている 時 間の胸の
タイ、 中 国 、 イランな どのロボッ
ることのノウハウ そのもの、競 技 者
三治 信一朗
高 鳴りと 、 試 行 錯 誤 の 末 に 成 功 し
04
にとっての名 誉 等が挙 げられる 。
特集レポート
7
Info-Future® No.52 October 2016 │24
外資系コンサルティングファーム、
国内大手シンクタンク等を経て現
情報戦略コンサルティングユニット
兼 デジタルコグニティブサイエンスセンター アソシエイトパートナー
DCSマーケティング推進室長
木村 俊一
領域のコンサルティングや、官公
は、 最 大 限 の 収 益 を 得 るために 必
ている手 法であり、これらの業 界で
ることで収 益の最 大 化を狙う。レベ
グ、 価 格 、 販 売 量 をコントロールす
収益最大化に向けたデータの活用
成熟市場で収益向上 嗜 好 を 分 析で捉え、 最 適 なレコメン
ングの領 域においても、ターゲットの
な目 的で活 用されている。マーケティ
ビッグデータの時 代 、データは様々
要の取りこぼしをいかになくすかが、
本 来 な ら 取り 込 めたは ずの 潜 在 需
販 売の機 会 損 失 をなくすか、 更に、
向 上 を 目 指 すためには、いかにして
望 めない成 熟 市 場 で、 更 な る 収 益
日 本 のよ う に 大 き な 市 場 拡 大 が
入 し たのは、 1 9 8 0 年 代 、 現 在
最 初にレベニューマネジメントを 導
系 」と定 義している。
販 売 量 と 価 格 を 最 適 化 する 戦 術 体
で 消 費 者 の 行 動( 需 要 )を 予 測 し、
最 大 化に向け、セグメント等の単 位
は、これを「 収 益 向 上の
| 「レベニューマネ ジメント 」の可 能 性
ニューマ ネ ジ メン ト を 世 に 広 め た
デーションを 最 適 なタイミングで 提
大きな課 題となってくる。レベニュー
でいう ところのL C C(
※1 Robert G. Cross「Revenue Management - hard-core tactics for market domination」
05
デジタルイノベーションコンサルティンググループ長
庁の調査プロジェクトに従事する。
特集レポート
法人戦略コンサルティング部門
現在は民間企業に対する幅広い
s
s
o
r
C
.
G
.
R
職。 専門は新規事業企画、マー
要 不 可 欠な手 法となっている。
示する等の取 組みが盛んに行われて
マネジメントは、この課 題に対する一
※1
いる。
t
s
o
C
w
o
L
r
e
i
r
r
a
C
要に迫 られたアメリカン航 空 で あっ
)の 価 格 攻 勢 に 対 抗 す る 必
レベニューマネジメントでは、 自 社
た。 単 純に価 格 で 対 抗 すれば、 熾
つの解 決 策である。
の最 大 化に向けたデータ活 用として
の 市 場 を 細 かいセグメントに 分 け、
本 稿では、より広い範 囲での収 益
「レベニューマネジメント 」という 方 法
烈 な 価 格 競 争 に 突 入 す ることにな
ることは目に見 えている。いかに利
セグメント毎に異 なる需 要や価 格 弾
性を予 測した上で、 販 売のタイミン
を ご紹 介したい。一般 的には主に航
空 業 界やホテル業 界などで活 用され
No.52 October 2016
25│ Info-Future®
NTTデータ経営研究所
ケティング、CRM、営業改革など。
KIMURA SYUNICHI
↓販売価格2
(数量)
B
• 機会損失(もっと高
く売れた!)
↓販売価格
(数量)
B
C
価格
価格
↓販売価格3
A
C
木村 俊一
↓販売価格1
需
要
• 潜在需要の取損ね
(もっと安ければ売
れた!)
A
05
【右図】変動価格での販売
【左図】一定価格での販売
受容価格の異なるセグ
メントに応じて、販売
価格を変動させると、
全体収益は増加
需
要
特集レポート
図1| レベニュー最大化の基本的な考え方
一定の価格では、
以下が発生
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
ネジメントであった。
るか、 そのための方 法がレベニューマ
益 率 を 低 下 させること な く 競 争 す
てきた。 今 日の「ビッグデータ」の時
てプライシングのあり方 も 多 様 化し
またビジ ネスモデルも 多 様 化してき
ご紹介する。
益を増やすのか、基本的な考え方を
レベニューマネジメントで、いかに収
をご覧 頂きたい。
「【左 図 】
一定
で、 需 要 予 測 の 精 度 も 飛 躍 的 に 向
形に需要が減衰すると仮定した場合
価 格での販 売 」は、 価 格に応じて線
図
より 高 度 なレベニューマネジメントの
上しつつある。 従 来は、レベニューマ
の価 格 反 応 曲 線 上に、 仮に一定 価 格
代 、 多 様 な データ を 活 用 す ること
仕 組み導 入が進められている。一例
ネジメントの導 入に不 向きと思われ
近 年で も、 航 空 業 界においては、
を あ げ る と、 2 0 1 4 年 、 J A L
の領域は、販売価格が高すぎて販売
で販 売した場 合の収 益
(「A」の網 掛
実 際 、 航 空 業 界 や、 ホテル業 界
機会を逃してしまった需要である
(機
てきた 業 界 で も、 適 用 し 効 果 を 上
ネ ジメントシステムを 統 合 。 更 に、
と 同 様の商 品 特 性 、 市 場 構 造 を 持
会 損 失の発 生 )
。一方、Cの領 域は、
は 米 P R O S 社 の システ ム を 導 入
従 来 、 便 別の最 適 化に留まっていた
つ、 鉄 道 、 旅 行 、レンタカーや、 物
仮に販 売 価 格が、 もっと高めに設 定
け部)
が表されている。この図で、B
ものを、 ネットワーク全 体での最 適
流 等 の 業 界 は 当 然 のこ と 、 広 告 、
してあっても 販 売できた需 要である
げる可 能 性が出てきている。
化 を 可 能 と す る 仕 組 みに 進 化 させ
エネルギー、ヘルスケア、レストラン
※2
たという。
(取損ねの発生)
。
レベニューマネ ジメントは、 従 来 、
のある 価 格 体 系 がとれること
(ダイ
変 動 費より固 定 費が大きいこと、 幅
市 場(サービス財に多い)
であること、
グを 過 ぎ る と 価 値 を 喪 失 す る 財 の
いると 言 われてきた。 あるタイミン
る。 今 後 、 多 様な業 界において、レ
たいというニーズも 高 まって き てい
い販 売すべきかの計 画 精 度を向 上し
様 化し、 どのチャネルで、 どのくら
推 進により、 顧 客 接 点チャネルも多
また、 オムニチャネル化 の 取 組み
を向上させることが可能となる。
た収益を確実にとらえて、全体収益
価 格での販 売の際に、 逃してしまっ
たいセグメント
(C)を 取り込み、一定
ント
(B)
、及びより高い価格でも買い
うに、より安い価 格で買いたいセグメ
「【右図】変動価格での販売」
にあるよ
価格を変動させることが出来れば、
ナミックプライシングはその 顕 著 な
ベニューマネジメントの活 用が拡 大 す
次のような特 徴を持つ市 場に適して
例 )、 需 要 予 測の精 度が比 較 的 高い
「 機 会 損 失 」や「 取 損ね 」を
た。 しかし、 現 在はeコマースサイト
考えると二の足を踏まざるを得なかっ
上での販売であれば、価格を変更す
な くして 収 益アップ
させたくても、そのオペレーションを
かつては、 仮に最 適な価 格に変 動
ると思われる。
陳 腐 化 する 市 場が増 えてきており、
しかし 近 年 、 財 の 価 値 が 急 速 に
らの業界で発展を遂げたのである。
空 業 界や、ホテル業 界であり、これ
ことなどである。 この典 型 例が、 航
ある。
など多 様 な 市 場で活 用が広がりつつ
し、 国 内 線 、 国 際 線 のレベニューマ
1
※2 JALグループ プレスリリース
(2014年12月19日)
Info-Future® No.52 October 2016 │26
はかからない。 販売のタイミング、残
るオペレーション自 体にはさほど手 間
を変動させるダイナミックプライシン
もっとも、このように価格そのもの
トロールすることで、同様の効果を得
価 格 帯を設 定し、その販 売 量をコン
販 売チャネル、 プロモーションチャネ
でな く 、 商 品 そのものの最 適 化や、
すれば、スマートフォンなどへの配 信
考える必 要がある。
には、
セグメンテーションから、
マネジメントの考 え 方で 最 適 化 すれ
たセグメンテーションを行い、レベニュー
が、 更にこれに価 格 感 度の軸を加え
品のクーポンを 配 信 することが多い
好 などでセグメントをきり、 当 該 商
ことが可能である。 通常、顧客の嗜
を配信し、実売価格をコントールする
その 中 で 更に販 売 の 最 適 化 を 考 え
ティング ミックスの 最 適 化 を 行い、
ける適 用 を 考えると、まずはマーケ
点が置かれていた。 多 様 な 業 界にお
どちらかというと販 売の最 適 化に重
る。 従 来のレベニューマネジメントは、
という 典 型 的 な 流 れ を 図 示 してい
セグメント別に価 格 反 応 を 予 測 する
図
ば、 今以上に収益を拡大することが
の最 初、「セグメンテーション」
あると考えられる。
図
による市 場 理 解は、 極めて重 要なス
テップである。ここでは、商品・サー
ビスニーズと、 接 点チャネルニーズの
つのニーズでセグメンテーションを実
場 合 、 それだけでは十 分ではない。
え 方 で あ るが、 適 用 範 囲 を 広 げる
伝 統 的 なレベニューマネジメントの考
こ と で 収 益 の 最 大 化 を 狙 う の が、
や、規模を把握することができる。
ネルで 購 入 したいセグメントの 特 徴
ある商品・サービスを、ある接点チャ
施したと仮 定している。 これにより、
価 格や 販 売 量 をコントロールする
戦 略まで 、 幅 広い適 用 を
マーケ ティング 戦 略から 販 売
る、一連の流れを 組みあ げる 必 要が
2
可能となる。
で機 動 的に様々な 割 引 額のクーポン
マネジメントの枠 を 超 える 仕 組みを
ルな ど、マーケティングの4 Pも 含
•
TF
C
また、 近 年のデジタル技 術を活 用
ることが可 能である。 こちらの方 法
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
グが市 場に受け 入 れられる 商 品は、
ARIMA
Transfer Function、系のインプ
ットとアウトプットの関係を、伝達
関数形式で表現したモデル
り在 庫 数、 提 供オプションなどに応
C
• 上記のMAとARの双方を合わせた
モデル式
めた 最 適 化 を 図 ることが 必 要 で あ
AR
チャネルニーズ
•
MA
• Autoregressive、自己回帰モデル、
モデル式が、自身の過去を含む
であれば、たいていの商品には適応可
接点チャネルニーズ
セグメンテーション
Moving Average、モデル式が
移動平均を含む
そう 多 くはないだろう。 しかしその
商品・サービスニーズ
A
B
B
A
B
2.時系列予測モデル
C
A
販促
(Promotion)
市
場
反
応
関
数
需要
C
販売の最適化
(従来のレベニューマネジメント)
B
流通
(Place)
じて多 価の設 定が許 容される商 品で
商品・サービスニーズ
セグメンテーション
価格
(Price)
る。 そのためには、 通 常のレベニュー
1.市場反応関数モデル
能であろう。
マーケティングミックスの最適化
場 合でも、 同一商 品カテゴリで 複 数
セグメンテーション
製品
(Product)
セグメント毎の価格反応予測
A
2
続いて、これらを 組み合せた各セ
2
あ る 商 品 の 販 売 を 最 適 化 す る だけ
No.52 October 2016
27│ Info-Future®
価格反応予測(需要予測)
あれば、十分適用は可能であろう。
図2| レベニューマネジメントの拡大
05
木村 俊一
な施策につながりやすい点である。
もう つの方 法は、定まった商 品・
ネジメントであるが、 導 入 、 実 施に
あたっては、 つのポイントがある。
のである。
つ目のポイントは、 ある意 味 当
大 化することを狙う「 時 系 列 予 測モ
トロールすることで、レベニューを 最
売 量 や、 提 示 価 格 、 割 引 額 をコン
価 格 、チャネルで販 売 するために販
グメント毎に」という 点がポイントで
を 利 用 でき る 必 要 がある。
「 顧 客セ
販 売 実 績 や、 予 約 実 績 等 のデータ
である。 顧 客セグメント毎に過 去の
データ連 携・統 合が出 来ていること
オペレーション負 荷 を 増 すことなく 、
いるが、これらを積 極 的に活 用して、
在 、 顧 客 接 点のデジタル化が進んで
が反 映できなければ意 味がない。 現
かく 最 適 な 価 格 を 決 めて も、 そ れ
映 する手 段があることである。 せっ
たり 前 ではあ るが、 価 格 変 更 を 反
デル」の活 用である。
あり、 価 格 感 度の異 なるセグメント
リアルタイムに価 格 変 更が可 能 な 仕
ニューを 最 大 化 す ること を 狙 う「 市
グ 戦 略 を 精 緻 化 す る こ と で レベ
ングミックスを 決 定し、マーケティン
て、 次の波が決 定される。 これらの
い ず れにして も 過 去 の 影 響 を 受 け
波は、 様々な 周 期の合 成 となるが、
来 を 予 測 す る もので あ る。 需 要 の
に見 出 した 関 係 性 を 活 用 して、 将
売 機 能 の 目 的 達 成 が重 視 されがち
能 を 持つと、 ど う して も 実 際 の 販
組 織が、レベニューマネジメントの機
いることで あ る。 販 売 責 任 を 負 う
す る、 販 売 統 括 組 織 が設 置 されて
と、 販 売 量 を 集 中 的にコントロール
ネルも 浸 透 しつつあ る。 以 前 より、
蓄 積や、価 格 変 更の容 易な販 売チャ
タル化が進み、多 様なデータの収 集・
取 組 み を 通 じて 、 顧 客 接 点 の デ ジ
いる。 また、 オムニチャネルな どの
析 基 盤の導 入などが盛んに行われて
け、 統 合 データベースや、 データ 分
に示 す
への分 割が可 能 となるデータが利 用
場 反 応 関 数モデル」の活 用である。
影 響を包 含したモデルを構 築するこ
と な る。 販 売 の 目 標 は 通 常 、 売 上
レベニューマネジメントを 導 入し、 効
時 系 列 モ デ ル は、 図
MA、AR、ARIMA等、 様 々
組みがあることが望ましい。
需 要 に 影 響 を 与 え る と 想 定 され
とができるため、原 則 、時 系 列モデ
額 で あり 、 本 来 は 高 価 格 で 売 れ る
果 を 上 げるための 条 件 は 格 段 に 整
格 帯に応じた需 要 予 測 )
を行う。 こ
の予 測の方 法は、 目 的によって異 な
できる必 要がある。
る様々な 要 因( 4 Pの要 素や、 市 場
ルの 予 測 精 度 は 高いと 言 わ れ てい
タイミングを 待って 売 るべき 商 品が
現 在は、ビッグデータの活 用に向
の経 済 状 況 など )を 代 表 するデータ
る。これらの手 法は、通 常 、
ボックス・
つの方 法は、 最 適 なマーケティ
を 準 備して、 重 回 帰モデル
(市 場 反
ンデーションや、クーポン配 信という
備されてきている。 蓄 積されたデー
てしまうといったケースが発 生 する。
直 接 的 手 段 に 加 えて 、 計 画 的 に 全
あ るにも 関 わら ず、 早 期 に 売 上 を
セグメントに応じて、 価 格や販 売 量
体 収 益 の 最 大 化 を 図 るレベニューマ
ジェンキンスの分 析 手 続 きと 呼 ばれ
をコントロールして 全 体 最 適 を 狙 う
ネジメントにも 積 極 的に活 用されて
応 関 数 と 呼 ばれる)を 作 成し、これ
レベニューマネ ジメントの 実 現 には、
タや、 導 入した分 析 基 盤 を、レコメ
※3
実 施のた めのポイント
これまで 紹 介してきたレベニューマ
はいかがだろうか。
計 上 す るため、 低 価 格 で も 販 売 し
この方 式が優れているのは、 各 要
因が需 要に与える影 響が理 解しやす
く、マーケティングミックスにおいて
重 点 的 に 投 資 すべき 要 素 の 効 果 を
定 量 的 に 把 握 でき るため、 具 体 的
販 売 統 括 組 織の設 置が欠かせないも
る方 法に沿って適 用される。
2
2
を用いて予 測を行う。
つ目のポイントは、 販 売の価 格
なモデルが適 用 されるが、いずれの
つ 目 の ポ イント は、 最 低 限 の
3
り、 通 常 は2 通 りの 方 法 で、 実 施
サービスを 最 適 な 販 売 タイミング、
3
方 法も、過 去のデータの変 動との間
1
1
することが望ましい。
グメントにおける 価 格 反 応 予 測( 価
特集レポート
1
※3 「販売予測とマーケティング・モデルの選択」
(奥本勝彦著、多賀出版)
Info-Future® No.52 October 2016 │28
2011年NTTデータ経 営 研 究 所
入社。メーカー、小売・流通業、
金融機関などへのマーケティング
中心に活動。近年は、ソーシャル
デジタルコグニティブサイエンスセンター
情報未来研究センター
シニアコンサルタント
高山 文博
06
NTTデータ経営研究所
マーケティングの手法開発に取り
組む。 新規事業化支援、マーケ
マーケティング戦略、海外進出戦
ティング戦略、ソーシャルメディア
略等。
のが消費者に関する情報の収集で
現 在、 企 業 各 社 が 力 を 入 れ て い る
にする機会が増えてから久しいが、
「ビ ッ グ デ ー タ 」と い う 言 葉 を 耳
れ 年(1954年 )、 性 別(男 性 )
、
と 俳 優・ 石 田 純 一 氏 は、 同 じ 生 ま
え ば、 内 閣 総 理 大 臣・ 安 倍 晋 三 氏
ネ ス に 活 用 す る こ と が 難 し い。 例
集 め る こ と が 出 来 な け れ ば、 ビ ジ
一 方 で、 本 当 に 必 要 な デ ー タ を
人間の本質に迫るデータをビジネ
本当に必要なデータは何かを考え、
だ。 そ こ で、 ビ ッ グ デ ー タ 時 代 に
うリスクを孕んでいるということ
過って理解した施策を講じてしま
と が 出 来 な け れ ば、 人 間 の 本 質 を
必 要 な デ ー タ を 見 極 め、 集 め る こ
違 和 感 を お ぼ え る だ ろ う。 こ こ で
あ る。 日 本 に お い て も 小 売 業 を 中
出身地(東京生まれ)、婚姻
(既 婚 )
、
スに活用しようという着想で始
他社の顧客情報やツイッターデー
人間の本質を理解することを目的と
した「人間情報データベース」
の開発
1 ビッグデータ時代に求めら
心にポイント付きの会員カードを
趣 味(ゴ ル フ )と い う 特 徴 を 有 す る
ま っ た の が、「人 間 情 報 デ ー タ ベ ー
述 べ た か っ た の は、 マ ー ケ テ ィ ン
発行し、消費者の購買履歴を元に、
が、 果 た し て こ れ ら の デ ー タ か ら
ス」の開発である。
タといった外部データの収集に取
顧客ロイヤリティを高めようとす
この二人が似た人物であると言え
グ や 商 品 開 発 に お い て も、 本 当 に
る 取 組 み が 活 発 に な っ て い る。 ま
る だ ろ う か。 安 倍 晋 三 氏 と 石 田 純
れるデータ
メディアマーケティングやニューロ
組む企業も現れ始めている。
た、 最 近 で は 企 業 が デ ー タ を 軸 に
一氏をテレビやインターネットで
拝 見 し た こ と が あ る 人 で あ れ ば、
競 争 優 位 性 を 見 出 す た め、 自 社 が
保有する内部データだけではなく、
No.52 October 2016
29│ Info-Future®
特集レポート
戦略構築、海外進出支援などを
TAKAYAMA FUMIHIRO
特集レポート
06
高山 文博
図1| 人間情報データベースとは
2 「人間情報データベース」の
情 報 データベース」には、約150
係 し て 分 泌 さ れ る。 例 え ば、 貯 蓄
万円もらう
が
性格、価値観、脳特性、購買行動等
性、ライフスタイル、趣味、嗜好、
25000人のWebモニターの属
この報酬予測誤差の大きさは、人、
は 相 当 違 う の で は な い だ ろ う か。
ら う の と で は、 そ の 価 値、 嬉 し さ
の と、 貯 蓄 が な い と き に
億円あるときに
問のアンケートによって得た約
合計700項目に及ぶデータを蓄積
よ り 正 確 に は 人 の 脳 に よ っ て、 ま
開発
している
(図1)
。合計700項目の
た周りの環境条件によって異なる。
万円も
理学などの研究者と共同で大規模
一 例 を 挙 げ る と、 人 間 の 脳 の 特 性
ま た、 そ の 人 が 意 思 決 定 を す る 瞬
NTTデ ー タ 経 営 研 究 所 で は、
調 査 を 行 い、 人 間 の 本 質 を 理 解 す
を理解することで計測ができる「報
間の身体的環境状況(おなかがすい
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
て傾向や度合が異なる結果が表れ
て も 人、 す な わ ち 個 々 の 脳 に よ っ
か ら は、 そ れ ぞ れ の 価 値 観 に つ い
徴 の 違 い で あ り、 ア ン ケ ー ト 結 果
言 わ れ て い る が、 こ れ ら は 脳 の 特
人 に よ っ て 異 な る、 特 徴 が あ る と
ている。また、セロトニンも関わっ
ノルアドレナリン)の分泌が関係し
思決定にはアドレナリン(正確には
不確かなことやリスクに対する意
的な確率の関係を示すものである。
的、 数 学 的 な 確 率 と 主 観 的、 心 理
「確 率 に 関 す る 価 値 観 」と は 客 観
に あ た る の は か な り 難 し い が、 人
て い る。 例 え ば、 宝 く じ で 一 等 賞
値 観 に つ い て 説 明 す る。「報 酬 に 対
によって確率どおりに判断する人
つの価
する価値観」を決めている脳のシス
も い れ ば、 心 理 的 に 確 率 よ り も 高
「時 間 割 引 に 関 す る 価 値 観 」と は
テムは価値関数システムといわれ、
ン が 深 く 関 わ っ て い る。 ド ー パ ミ
将来に対する価値を割り引く傾向
く 見 積 も る 人 も い れ ば、 逆 に 確 率
ン は 得 ら れ る 報 酬 へ の 期 待 値、 す
で あ り、 こ れ は 全 て の 人 に 当 て は
これは人のウォンツやニーズと関
なわち報酬予測誤差の大きさに関
よりも低く見積もる人もいる。
こ こ で、 簡 単 に 前 述 の
ている。
1
係 し、 神 経 伝 達 物 質 で は ド ー パ ミ
3
月 に 脳 科 学・ 認 知 心
る た め の 基 盤 で あ る「人 間 情 報
酬に対する価値観」、「確率に関する
ている、頭痛がするなど)によって
人間に関するデータ蓄積
2万5,000人
2016年
デ ー タ ベ ー ス 」を 構 築 し た。「人 間
価 値 観 」、「時 間 割 引 に 関 す る 価 値
1
も異なる。
1
観 」が あ る。 私 た ち の 意 思 決 定 は、
研究機関との共同研究で
全国のWebモニター
4
人間情報
データベース
大
規
模
調
査
Info-Future® No.52 October 2016 │30
図2| 人間情報の差別化要素
ま る が、 そ の 度 合 い は 人 に よ っ て
例えば、今日
週間後に
万円もらえるのと、
万100円 も ら え る
い無意識の特徴を知ることが重要
で あ る。 弊 社 で は、 こ の700項
の で は、 ど ち ら を 選 ぶ だ ろ う か。
目 に 及 ぶ デ ー タ を 活 用 し、 従 来 の
報酬系の一部である線条体の活動
1
な は ず だ が、 人 に よ っ て は 今 日 の
万円を選ぶ。
付加価値情報として提供している。
3 「人間情報データベース」の
差別化要素
めた人間情報を蓄積することに
よ っ て、 従 来 の「ペ ル ソ ナ 」と は 大
ニターから種々のデータを取得し
現 在、 弊 社 の み な ら ずWebモ
テ ー シ ョ ン を 作 る こ と が で き る。
て い る 企 業 は 存 在 し て い る。 そ の
サ ー ビ ス の 開 発 を 行 っ て き た。 と
ゲ ッ ト の「ペ ル ソ ナ 」と し て 商 品 や
は シ ョ ッ ピ ン グ に 行 く 人 」を タ ー
代 の 女 性 で 趣 味 は カ ラ オ ケ、 休 日
うした中で、弊社の「人間情報デー
タ を 取 得 し て い る 企 業 も あ る。 そ
購 買 行 動・ メ デ ィ ア 接 触 等 の デ ー
タ を 取 得 し て い る 企 業 も あ れ ば、
ラ イ フ ス タ イ ル・ 価 値 観 等 の デ ー
中 に は、Webモ ニ タ ー の 属 性・
こ ろ が、 同 じ 条 件 に 当 て は ま る 女
タベース」の差別化要素は大きく次
ンに住んでいるひとり暮らしの
性 で も、 内 向 的 か 外 向 的 か、 協 調
点である。(図2)
の
は「仮 面 」の 内 側 に 隠 さ れ た 性 格、
心 理 学 用 語 で「仮 面 」で あ り、 本 来
い。「ペルソナ」とは言うまでもなく
し た デ ー タ 項 目 の 信 頼 性 は、 研 究
「人 間 情 報 デ ー タ ベ ー ス 」の 取 得
① 科学的根拠の質
3
機関との共同研究によって支えら
するサービスは異なるかもしれな
性 が 高 い か 低 い か に よ っ て、 購 入
30
従来は、例えば、「首都圏のマンショ
きく異なるマーケットセグメン
「ペルソナ」とは異なる人間の心理、
銀行の定期預金の金利が年率
パ ー ソ ナ リ テ ィ、 脳 特 性 等 を 考 慮
1
%
と 相 関 性 が あ り、 神 経 伝 達 物 質 セ
にも満たない現在の状況を考えれ
週間後に
ロ ト ニ ン の 分 泌 が 関 係 し て い る。
ば、
し た モ デ ル を 構 築 し、 企 業 向 け に
異 な る。 将 来 の 価 値 へ の 評 価 は、
1
1
う の は か な り の 高 利 率 で あ り、 得
1
このような脳に関する情報を含
1
心 理 な ど 内 面 的、 本 人 も 気 づ か な
No.52 October 2016
31│ Info-Future®
1
万100円 も ら
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
高山 文博
割付け」
、「適当回答を排除するため
動 態 に 合 わ せ たWebモ ニ タ ー の
に 対 し て、 弊 社 で は、「日 本 の 人 口
事 象 が 見 ら れ る こ と が あ る。 そ れ
ニターが適当に回答する」といった
ている。
法的・社会的課題への取組みも行っ
守、 有 識 者 と の 協 議 等、 倫 理 的・
と、 国 の 定 め る ガ イ ド ラ イ ン の 遵
示および同意取得はもちろんのこ
Webモ ニ タ ー へ の 利 用 方 法 の 明
事、恋愛、等)のデータを取得・蓄
間の行動結果情報
(購買、お金、仕
(子 育 て 環 境、 人 間 関 係、 等 )や 人
な ら ず、 人 間 を 取 り 巻 く 環 境 情 報
脳 科 学・ 心 理 学 に 基 づ く 情 報 の み
重要であると考えている。更には、
積 す る こ と で、 人 間 の 本 質 に 迫 っ
ていきたいと考えている。
また、「データの量」という観点で
によって社会に役立つ研究成果が
り、「人間情報データベース」の活用
用していただくことを想定してお
取得したデータを積極的に学術利
研 究 機 関 に は、 共 同 研 究 を 通 じ て
け た 取 組 み を 行 っ て い る。 ま た、
頼性の高いデータ項目の取得に向
お 届 け す る た め の 体 制 を 整 え、 信
用 す る 等、 企 業 へ の 確 実 な 情 報 を
ナリティ把握に活用したい」といっ
用したい」
、「自社のお客様のパーソ
嗜好を需要予測のモデル作成に活
メント作成に活用したい」、「消費者
は、企業から
「広告出稿の際のセグ
情 報 提 供 を 行 っ て い る。 具 体 的 に
チ ー ム に て コ ン テ ン ツ を 作 成 し、
で弊社データサイエンティスト
企業からの課題を吸い上げたうえ
情報提供を目指している。現在は、
企業にとって正確でわかりやすい
させることを目指したい。
ら「人 間 情 報 デ ー タ ベ ー ス 」を 発 展
の 質 」、「デ ー タ の 量 」と い う 観 点 か
今 後 の 取 組 み と し て は、「デ ー タ
している。
用することを取組みの大きな柱と
術利用」や「企業への情報提供」に活
蓄積し、それを「研究機関による学
買 行 動 等 に 関 す る デ ー タ を 取 得・
嗜 好、 性 格、 価 値 観、 脳 特 性、 購
は、属性、ライフスタイル、趣味、
現在、「人間情報データベース」で
データベース」を活用いただきたい
実させられる場として
「人 間 情 報
自身を知ることで日々の生活を充
す こ と だ け が 目 的 で は な く、 自 分
た い。 こ れ は 単 純 に 参 加 者 を 増 や
分を発見する機会を提供していき
らも把握していなかった新たな自
す る 仕 組 み を 構 築 し、 参 加 者 が 自
データを参加者にフィードバック
え て い る。 具 体 的 に は、 取 得 し た
に参加者を増やしていきたいと考
モ ニ タ ー に 参 加 頂 い て い る が、 更
4 今後の取組み
のデータスクリーニング」といった
対応策を講じている。
③ 情報提供の質
万5000人 のWeb
生まれていくことを期待している。
た 様 々 な ご 要 望 を 頂 い て お り、「人
まずは、「データの質」という観点
最 後 に な る が、 私 た ち は 今 後 も
は、 現 状
② データの質
間 情 報 デ ー タ ベ ー ス 」を 活 用 し て
では、脳科学・心理学に基づくデー
「人 間 情 報 デ ー タ ベ ー ス 」で は、
「人 間 情 報 デ ー タ ベ ー ス 」で は、
個々の案件に合わせた情報提供を
「人間情報データベース」を通じて、
「Webモニター属性
(年齢・性別・
て 取 得 す る デ ー タ に つ い て は、
また、「人間情報データベース」に
変化データを取得していくことも
容を捉えることを目的として経年
ろ ん、 シ ン グ ル ソ ー ス パ ネ ル の 変
スに貢献してまいりたい。
研究およびデータドリブンビジネ
と考えている。
Webア ン ケ ー ト を 実 施 す る 際 に
タ項目を増やしていくことはもち
居 住 地 )に 偏 り が あ る 」
、「Webモ
い る。Webア ン ケ ー ト に は、
行っている。
の 参 画 や、 信 頼 性 の 高 い 研 究 を 採
門とする研究機関の当該取組みへ
れ て い る。 脳 科 学・ 心 理 学 等 を 専
06
問題となる事象への対応も行って
2
特集レポート
Info-Future® No.52 October 2016 │32
中央省庁にて観光・海運政策に
ルティング会社を経て、現在に至
従事したのち、米国系戦略コンサ
07
NTTデータ経営研究所
情報未来研究センター
デジタルコグニティブサイエンスセンター
エグゼクティブコンサルタント デジタルテクノロジー推進室長 山下 長幸
デジタルデータによるマーケティング
革新はどのようにしたら良いか?
~データインテリジェント化とデータインテグレーションマーケティング~
とが重 要 という 意 味 合いで「デジタ
用分析から、昨今は
「デジタライゼー
ストレンドであった「ビッグデータ」活
ここ数 年の産 業 界の大きなビジネ
)
が、今 後 、
れ て お り、 こ の よ う な I o T
全 世 界 で5 0 0 億 個 以 上 と も 言 わ
ジ タル 機 器 は、 2 0 2 0 年 ま で に
によりインターネットに接 続 す るデ
グルなどデジタルテクノロジーの進 化
Dプリンター、V R・A Rグラス・ゴー
をビジネスにどう 活かすか、 企 業に
ことになり、 膨 大 なデジタルデータ
に 幾 何 級 数 的 な 量 で 産 み 出 さ れる
と、 デジタルデータはこれまで以 上
あ る。 このよ う な 動 向 が 進 展 す る
というビジネストレンドが産まれつつ
ライゼーション
(
、3
)」という 言
(
よって巧 拙が大きく 出ることが予 想
コネ クティッドカー、
葉をよく耳にするようになってきた。
1 9 9 0 年 代 に 普 及 し た イ ンタ ー
される。
はじめに
「ビッグデータ 」は主 としてP Cやス
ネットに匹 敵 するよう な 大きなイン
n
o
i
t
a
z
i
l
a
t
i
g
i
D
意としている。
n
o
c
a
e
B
ケティング戦略、業務改革等を得
n
o
i
t
a
z
i
l
a
t
i
g
i
D
s
g
n
i
h
T
f
o
t
e
n
r
e
t
n
I
ち な みに
「デ ジ タ ラ イ ゼー ション
)」
マートフォンな どの 端 末 機 器 とイン
パクトを 社 会に与えるものと考えら
ション
(
ターネットという 通 信 網が産み出 す
れている。
n
o
i
t
a
z
i
l
a
t
i
g
i
D
)
」と似た用語に
「デ
)
」
n
o
i
t
a
z
i
t
i
g
i
D
があるが、こちらは単に各 種のビジ
ジ タ イ ゼー ション
(
発 、調 達 、製 造 、販 売 、アフターサー
味 合 い で「デ ジ タ ラ イ ゼ ー シ ョン
ネス機 能 をI T 化していくという 意
デジタル化 を 強 力に推 進していくこ
ビスな どのビジ ネス全 般にわたって
そのよう な 状 況 のも と、 商 品 開
(
巨 大 なデータをビジ ネスに活かすと
いう 側 面 が 強 く 、 そ の 重 要 性 は 現
在でも健 在である。
しかし、近 年 、ウェアラブル機 器 、
スマート家 電 、コネクティッドハウス、
No.52 October 2016
33│ Info-Future®
特集レポート
る。 金融業・サービス業等のマー
YAMASHITA NAGAYUKI
07
ケティングなどを 実 施し、 その広
新 規 顧 客 獲 得のためのW e bマー
客 向 けクロスセールス、 もし く は
か国
ある。 英 国 内では、3 5 0 0 店 舗 、
最 大 手 小 売チェーンストアの会 社が
T E S C O(テスコ)という 英 国
促に活かすことが可 能となる。 テス
その 結 果 を 品 揃 えや 商 品 企 画 、 販
ないかと 考 え た。 そ れがで き れば、
イフスタイルを 推 測 することができ
万
め、顧 客インサイトを理 解し、マー
分からない。 もっと顧 客 理 解を深
購 買に至ったのか、 そのゆ えんが
購 買 行 動 は 見 え るが、 なぜそ の
• 取 引 履 歴 を 分 析 すれば、 顧 客の
り口はなかなか期 待できない。
し 感 があり、 画 期 的 な 分 析 の 切
のものは殆ど 実 施して、やりつく
分 析の切り口として 思いつく 限り
購 入 金 額に応じてポイントを取 得す
るた びにポイントカード を 提 示 し、
性を登 録し、テスコの店 舗で購 入す
別、 住 所、 生 年 月 日 などの基 本 属
ド申し込み時に、 氏 名に加えて、 性
る。 ポイントプログラムとして、カー
3800万 人 の 顧 客 が 利 用 し てい
年 現 在、 世 界 の7300店 舗 で
イントプログラムを開始し、2016
(クラブカード)
というポ
そ の テ スコ で は、1996年 に
視 派 な ど 生 活 者 の 価 値 観( 顧 客
し、 健 康 志 向 派 、 美 食 派 、 価 格 重
を 購 入 す る 傾 向 にあ るのかを 分 析
客 の 購 買 履 歴からどのよう な 商 品
D N A )を 付 与 す る。 次 に、 各 顧
万 単 位 の 商 品 に 商 品 特 性( 商 品
データによる併 売 情 報から
性 を 初 期 品 目 に 設 定 す る。 次 に
級 品 、インスタント商 品 等の商 品 特
いる商 品 ごとに健 康に良い商 品 、 高
ず 、テスコの商 品 担 当 者が販 売して
n
o
i
t
a
z
i
l
a
t
i
g
i
D
最 近 、いくつかの金 融 機 関のマー
ケッターやデータ分 析 担 当 者のイ
る仕 組みとなっている。 テスコとして
DNA)
を生 成し、 見える化すると
千 人と
万 人 、 世 界では
従業員数
に展 開 し、 従 業 員 数
ケティング部 門のデータ分 析 担 当の
ンサイトを活かしたい。
は、この仕組みにより、いつ、どこで、
いうものである。この結 果をもとに、
D N Aという 手 法 を 開 発 し た。 ま
方々とお話 する機 会があった。 そこ
このよう なマーケティング 部 門 の
誰が、どのような物を購 入したかの
d
r
a
c
b
u
l
C
d
r
a
c
b
u
l
C
(クラ ブカード )による
行動を定量的に把握できる。しかし、
することが可 能となり、 顧 客の購 買
データを大 量に蓄 積・分 析
近では、 より 個 人 ごとにカスタマイ
するという 仕 組みになっている。 最
ンダイジング・マーケティングを実 施
各 店 舗の顧 客 特 性に応じたマーチャ
S
O
P
D
I
デ ジ タルデータによるマーケ
その顧 客がなぜその購 買 行 動を取っ
ズさせた広 告 宣 伝 も 実 施しているよ
S
O
P
D
I
ティング 革 新 技 術
たかの背 景や 理 由は分からないとい
•そ のた び ご と に そ の 商 品 の 既 契
依 頼が来る。
促のためのターゲット顧 客 分 析の
約 者の基 本 属 性 や 自 社 保 有の取
ント化
顧 客の購 買 履 歴データから顧 客のラ
そのため、 ポイントカードによる
産 販 売 業 、 自 動 車 販 売 業 など 顧 客
この 手 法 は、 銀 行 、 証 券 、 不 動
うである。
う課題を抱えていた。
ターゲット顧 客 像を明 確 化
•そのターゲット顧 客 像に、 既 存 顧
(1)自 社 保 有 データインテリジェ
引 履 歴データの相 関 性 を 分 析し、
データ 分 析 担 当 者の悩み
金融機関のマーケティング部門
うである。
動 的 な 意 味 合いで認 識されているよ
で共 通して聞かれた悩みは次のよう
データ分 析 担 当の方々の悩みを解 決
いう巨 大 流 通 企 業である。
コではこの課 題 を 解 決 するため顧 客
告 宣 伝の実 施 結 果の成 果 次 第で一
喜一憂
•このような感じで社 内 保 有データ
11
6
なものであった。
の分 析 を 十 数 年 実 施してきたが、
47
31
する方 法はないものであろうか。
)」の 方 がより 能
山下 長幸
• 個 別 商 品 担 当 部 署から 広 告・販
(
特集レポート
Info-Future® No.52 October 2016 │34
やマーケティングデータ 分 析 担 当 の
値 観 が見 える 化 され、マーケッター
り、 顧 客のライフスタイルや購 買 価
この よ う な 顧 客 D N A 手 法 によ
業の方はご相 談 頂きたい)。
施 例 があ るので、 ご 関 心 のあ る 企
することが可 能である
( 弊 社で も 実
を保 有している業 界で応 用して活 用
属 性 データと 顧 客 取 引 履 歴 データ
考えている。( 図1)
という 姿 勢が重 要 なのではないかと
がコンピュータを 主 体 的に活 用 す る
ピュータに使 われるのではな く 、 人
く 疲 弊 状 態 から 脱 却 し、 人 がコン
を 求めて、ひたすら分 析 解 明してい
者 が 各 種 データ 間 の 新 た な 相 関 性
られる。マーケティングデータ 担 当
ングセンスが発 揮できるものと 考 え
ログ データ やW e b 広 告 配 信 な ど
機 能 的 には 殆 ど 同 じ だが、 W e b
DWH(
)と
DMPは 従 来 か ら 存 在 し てい る
ム シ ス テ ム で あ る。 こ の よ う な
分 析・利 用 する 情 報 プラットフォー
ティングに関 連 す るデータを 収 集・
グ用 語 としては、 生 活 者へのマーケ
ム 」で あ る が、 W e bマーケ ティン
するケースがある。
会 社が提 供しているサービスを 利 用
ムを 構 築 す る ケースとW e b 広 告
用 するものであるが、 自 前のシステ
ベートD M Pは 事 業 会 社 主 体 で 利
を 実 施 す るこ と がで き る。 プラ イ
とで、 より 最 適 なW e b 広 告 配 信
る自 社 顧 客データを 組み合わせるこ
スデータと、 自 社のみで 保 有してい
VS
を理解でき、分析モチベーションが向上
e
s
u
o
H
e
r
a
W
a
t
a
D
金 融 機 関のマーケティング部 門の
クDMPは様々なWeb媒体が保持
DMPの2つに分類される。パブリッ
くはオープン)DMPとプライベート
DMPは、 大きくパブリック
(もし
法 でI D 連 携 す るか、 推 計 付 与 す
データと 外 部データとを 何らかの方
ことは難しい。 自 社が保 有する顧 客
なかマーケティングに有 効 活 用 する
データがばらばらの状 態では、 なか
データ分 析 担 当の方々とお話してい
するオーディエンスデータ
(Webペー
ることが必 要となる。
しかし、 単に様々な 外 部データを
ると、 自 社 保 有データの様々な切り
ジアクセスログなど)
を蓄 積して、 広
自 社データと外 部データとの連 携
W e bマーケティングに関 する 機 能
口での相 関 性 分 析はやりつくして限
告配信に利用するプラットフォームを
方 法に関して、パブリックD MP 事
収 集 し て 蓄 積 し て も 、 そ れ ぞ れの
界を感じており、 外 部データとの合
指 す。 主 としてWeb広 告 会 社 が
業 者で実 施している手 法が非 常に参
がメインというのがD M Pである。
わせ技で 分 析 することにより、パラ
運 営しているケースが多い。 事 業 会
考になる。パブリックD M P事 業 者
(2)データインテ グレーションマー
ダイムシフトを 起こしたいという 声
社 だ け で は 収 集 が 難 しい 様 々 な
ケ ティング
このよう なマーケティング 部 門 の
が多 く 聞かれるようになった。
会 社 が 存 在 し、 そ れぞ れ 特 徴・ 独
は、 大 手 広 告 代 理 店のグループ会 社
プ ラ イ ベ ー トD M Pは 様 々 な
自 性 を 出 す ために 様 々なWe b関
Web媒体にアクセスしたオーディエ
W e bメディアのオーディエンスデー
連 データを 取り 扱っているが、 多 く
データ 分 析 担 当 の 方々の 声 に 応 え
タと、 自 社の顧 客データを組み合わ
に購 入・利 用しているデータが、 様々
のパブリックD MP 事 業 者で 共 通 的
る。 W e b 媒 体 が持つオーディエン
せて管 理できるプラットフォームであ
とベンチャービジネスとして創 業した
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
ンスデータが活用できる。
マネジメント・プラットフォーム)」に
おけ る データ 分 析 手 法 で あ る。 用
語 の 単 純 な 意 味 合 い と し て は、
「 データ を 管 理 す る プラットフォー
No.52 October 2016
35│ Info-Future®
・拡大推計技術
・
・
・
・ID連携技術
事業会社
・データの背景にある顧客、商品価値観
・位置情報保有会社
・
・
・
・人がコンピュータを駆使
・人がコンピュータに使われている状況
・SNS運営会社
データインテグレーション技術
・商談履歴データ
・データ分析担当者が顧客購買行動の背景
・分析担当者はかなり疲弊
・ポイントカード会社
・取引履歴データ
の見える化
てターゲット顧客抽出
(ID-POSデータ)
・基本属性データ
・データの背景にある顧客価値観、商品特性
様々なデータ間の相関性をひたすら分析し
・小売業
の見える化
自社データインテリジェント化
(分析仮説は持つものの)既契約顧客の
・パブリックDMP
自社データインテリジェント化
自社保有
顧客データ
あるべきデジタルマーケティング
データ分析の姿
よくある伝統的なデジタル
マーケティングデータ分析の状況
他社保有データ
デジタルデータによる
主なマーケティング革新技術
るのが、 W e bマーケティング業 界
図2| デジタルデータによる主なマーケティング革新技術
で 創 り 出 さ れた「 D M P (データ・
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
方々の発 想が刺 激 され、マーケティ
図1| あるべきデジタルマーケティングデータ分析の姿
が、 W e b ブラ ウ ザ を 通 じ て 訪 問
的 な ど で、 W e bサイトの 提 供 者
識 別やセッション管 理 を 実 現 する目
とは、 P Cユーザ
するためのタグを 設 置していること
を発行
W e bメディア 及 び ネットリサーチ
パブリックD M P 事 業 者で 様々な
百 数 十 万 人レベルであるため、 ネッ
モニター数は数 十 万 人から多 くても
あるが、 ネットリサーチ会 社の登 録
クD M P 事 業 者 の 場 合 、 億 単 位 で
データ 量 は 大 規 模パブリッ
用いられている 。 W e bメディアの
ブ リック D M P 事 業 者 で は よ く
更 に 拡 大 推 計 とい う 方 法 が パ
ている。
人 工 知 能・機 械 学 習 技 術 を 活 用し
あ る。 弊 社 ではこの 類 似 性 判 定 に
ろ う と 推 計 付 与 す ることが可 能 で
タの自 社 顧 客の特 性を有しているだ
外 部データには、 類 似した教 師デー
と 推 計 付 与 したり、 逆 に 類 似 した
部データの特 性 を 有しているだろう
・拡大推計技術
が多い。
合 わせてインターネットアクセスユー
て得たW e bサイトの特 長データを
W e bメディアの閲 覧ログを 分 析し
( 個 人 情 報 は 含 ま ない )と 様 々 な
別・年 齢・職 業などの基 本 属 性 情 報
チ 会 社 から 得 た 登 録 モニターの 性
突 合 することにより、 ネットリサー
と ネットリサーチ 会 社 の
ング利 用 をしやす くし、マーケティ
の
を も とにしたマーケティ
ている。 これによりW e b 閲 覧 履 歴
に基 本 属 性 を 推 計 付 与し
件のもと、 億 単 位のW e bメディア
た 基 本 属 性 で あ ろ う という 前 提 条
Web閲 覧 履 歴 の
には 似
データ と し て、 教 師 データ と 似 た
た めI D 連 携 で き た データ を 教 師
るのは、 数 十 万 くらいである。 その
ケティング革 新 を 起こすことができ
き、デジタルデータによるリテールマー
購 買 動 機 な ど も 把 握 す ることがで
られなかった顧 客のライフスタイル、
り、 自社保有顧客データ分析では得
ングの実 現が可 能となる。 これによ
るデータインテグレーションマーケティ
より、 内 部 データ・外 部 データによ
タと外 部データとを 統 合 することに
事 業 者はW e bメディアの
ザーを 分 析 することができる。 この
ングへの利 用 価 値を高めている。
e
i
k
o
o
C
大 す る。 I D 連 携 の 方 法 と し て は
ことによって、 よりデータ 価 値 が増
の共 通データで突 合して連 携させる
統 合 的 に 分 析 す る 際 には、 何 らか
I D 連 携 し、 そ れ を 教 師 データ と
と 外 部 データ と を 何 らかの 方 法 で
可 能である。 自 社 顧 客データの一部
社 におけるマーケティングにも 利 用
この 推 計 付 与 の 手 法 は、 事 業 会
ケティングの更 なる 進 化に目が離せ
の生 成が見 込まれおり、デジタルマー
に、 様々かつ膨 大 な デジタルデータ
(
全 般 への「デ ジ タ ラ イ ゼ ー シ ョン
取り組み加 速 化によるビジネス機 能
e
i
k
o
o
C
以外にもデータ特 性に応じ
して、 自 社データでの類 似 性がある
ない状 況である。
を
ていくつか存 在 するので、 ご関 心の
顧 客 は、 類 似 した 教 師 データの 外
今 後 、 産 業 界におけるI o Tへの
るものと考えられる。(図2)
ように、 自 社データと外 部データを
ある企 業の方はご相 談 頂きたい。
e
i
k
o
o
C
・ID連携技術
e
i
k
o
o
C
・取引履歴データ
e
i
k
o
o
C
・データの背景にある顧客、商品価値観
e
i
k
o
o
C
自社データインテリジェント化
e
i
k
o
o
C
デジタルデータによる
主なマーケティング革新技術
e
i
k
o
o
C
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
会 社の調 査 画 面に
なWe bメディアにおける 閲 覧 履 歴
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
ID連 携と拡 大 推 計という2つの
・
・
・
ト リ サーチ 会 社 の 登 録 モニター と
・位置情報保有会社
者のコンピュータに一時 的に保 存 する
(ID-POSデータ)
( W ebログ)と ネットリサーチ 会 社
・SNS運営会社
データインテグレーション技術
・
・
・
事業会社
手段を活用して、自社保有顧客デー
・ポイントカード会社
・商談履歴データ
・パブリックDMP
W e b 閲 覧 ログ のI D 連 携 がで き
山下 長幸
・小売業
の見える化
・基本属性データ
他社保有データ
来 歴 情 報である。パブリックD M P
特集レポート
図2| デジタルデータによる主なマーケティング革新技術
からの登録モニターデータである。
07
自社保有
顧客データ
・人がコンピュータを駆使
を理解でき、分析モチベーションが向上
・人がコンピュータに使われている状況
n
o
i
t
a
z
i
l
a
t
i
g
i
D
)」の 動 き と と も
Info-Future® No.52 October 2016 │36
e
i
k
o
o
C
より現 職。 官民 連 携を旗 印に、
大手シンクタンクを経て、2015年
ロボットをはじめとしたものづくり分
法人戦略コンサルティング部門
事業戦略コンサルティングユニット
産業戦略グループ長 アソシエイトパートナー
動等を通じた業界活動を積極的
に行っている。
三治 信一朗
I oTの覇権争いを
り、 さ ら に そ れ ぞ れ の 団 体 か ら 多
標 準 化動向から探る
はじめに
くのワーキンググループやコン
ソ ー シ ア ム が 派 生 し て い る(図
位をひっくり返されないようにす
を 最 大 化 す る、 あ る い は、 競 争 優
戦 略 で あ る。 こ れ ら は 自 社 の 強 み
る の が、 標 準 化 戦 略 で あ り、 知 財
あ り、 今 後 ま す ま す 企 業、 政 府 機
100~200社 を 上 回 る も の も
る。 大 き な 団 体 で は 参 加 企 業 数 が
IoTを 広 げ る こ と が 可 能 と な
と に よ り、 様 々 な 産 業 分 野 へ と
戦 略「
目指す産官学一体のプロジェクト
報通信技術の製造分野への統合を
画 」の イ ニ シ ア テ ィ ブ と し て、 情
略「ハイテク戦略 2020 行動計
月にドイツ政府による高度技術戦
は、2011年
る た め の 企 業 戦 略 と し て、 欧 米 で
関、 大 学・ 研 究 機 関 等 の 参 加 が 予
1)。 コ ン ソ ー シ ア ム を 広 げ る こ
は 強 力 に 推 進 さ れ て い る。 最 近 で
し て い る も の で あ り、2014年
0
.
4
e
i
r
t
s
u
d
n
I
」を 採 択 し 推 進
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
ムの 最 高 責 任 者 に ド イ ツ 連 邦 経 済
プラットフォー
と、 日 本 の 取
月
想される。
本 稿 で は、 そ の な か で も 代 表 例
となる
を 支 援 す る 事 務 局、 運 営 委 員 会 と
構 成 と し て は、 理 事 会、 理 事 会
握 し た う え で、 次 の 打 ち 手 を 講 じ
向をさぐっていきたい。
エネルギー大臣が就任している。
が 活 発 化 し て お り、 そ の 状 況 を 把
は、IoT分 野 に お け る 覇 権 争 い
我が国日本において弱みとされ
0
.
4
y
r
t
u
s
d
n
I
関連の講演会、委員会、執筆活
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
を手掛ける。ロボット、再生医療
11
り 組 み を 紹 介 し な が ら、 標 準 化 動
4
る必要がある。
機関ほどあ
No.52 October 2016
37│ Info-Future®
IoTの 主 要 な ア ラ イ ア ン ス、
標準化団体はおよそ
20
特集レポート
野と再生医療を中心としたライフ
08
NTTデータ経営研究所
サイエンス分野のコンサルティング
SANJI SHINICHIRO
特集レポート
08
三治 信一朗
図1|I
oT関連の標準化団体の分類
トップ企業が主要メンバーとして参画し、規格の構築を目的とする団体
例)
ASA
(各分野の標準化を目指すアライアンス)
通信・
インターネット系
通信・インターネット関連企業が集まり、各種技術の標準化を行う団体
例)
OneM2M
家電・スマートデバイスの関連企業が集まり、各種技術の標準化を行う団体
例)
IEEE
電機・
産業制御系
電機・産業制御に関する企業・国家が集まり、、各種技術の標準化を行う団体
例)
OPC Foundation
そ れ に 紐 づ く 各 W G、 さ ら に は、
・
方針を策定する。
にお け る 規 格 統一は
RAMI(標準化モデル)
となって
運営委員会に紐づく科学諮問会議
が あ り、 専 門 家 委 員 会 を 合 わ せ て
い る。 大 規 模 企 業
(
k
c
e
t
a
c
a
z
n
e
B
s
e
d
e
c
r
e
M
など)
では既に
h
c
s
o
B
年 かか る。
(ド イ ツ 工
、
s
n
e
m
e
i
S
同業種の企業が集まり、業種内の標準化をすすめる団体
例)
PCHA
(ヘルスケア関連企業のアライアンス)
0
.
4
y
r
t
u
d
n
I
同業種チーム系
かなり大規模な構成となってい
る。 そ し て、
~
モデルとして 完 成しているが、 実
用 化 ま で には
などを中
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
作業グループを
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
・ 特に自動車や放送業界に導入され
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
プ
会であるAUTOMATICAに
われる欧州最大規模の自動化展示
ま た、 ド イ ツ の ミ ュ ン ヘ ン で 行
コード化による必 要 部 品の保 管 場
れている
(例 え ば、 各 国 の 部 品 の
医 学 業 界 で も 多 くの 興 味 を 持 た
く持っている部品供給企業が多い。
産に対 応 可 能 なため、 資 産 を 多
お い て の 取 材 で は、 中 心 的 な 役 割
所等。これにより、品質本位の立
至っている。
を果たしている企業にインタ
0
.
4
e
i
r
t
s
u
d
n
I
年後を本格運用と考えてい
思えばできる段階まで来ている。
るが、現時点でも実用化しようと
~
も利点の一つ)
。
場から組 立 産 業に入り込むことが
の
ビ ュ ー し た と こ ろ、 以 下 の よ う な
年 前から
可 能。 フィードバック 可 能 なこと
~
年前から生産側の
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
質向上、コスト低減、 効率性の向
のメインの目 的は品
ら も 技 術 面 を 検 討 す るよ う な 取
上の 点に絞ることができる。
子 会 社や関 連 機 関からユーザ側の
・ 他企業における
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
の取
り 組みでは、P&Gが生 産 プロセ
要 求 を 吸い 上 げ、 見 解 を 出 し、
3
・
コメントが得られた。
・
てきている。 その他にも、 大 量 生
格化している。
は 大 企 業 で のみ 本
3
学 ア カ デ ミ ー)、
心に
優先分野の
発 足 さ せ、 同 作 業 グ ル ー プ が 出 し
た勧告に提示された
2
ラ ッ ト フ ォ ー ム 」が 設 立 さ れ る に
取 り 組 み を 行 う「
8
先 駆 的 存 在 として 積 極 的に取り
組んでいる。
・ 企業として、
3
3
り 組 み を 実 施 。 世 界 各 国 にあ る
・
2
2
立 場だけでな く、ユーザの立 場か
1
家電・
スマートデバイス系
水平系技術
標準化機関
リーダー企業
中心系
アライアンス・
標準化団体
様々な業種の企業が競争力を上げて、産業をリードするための団体
例)
Industry4.0
(ドイツ国内の製造業の競争力を上げるアライアンス)
垂直型業界
アライアンス
異業種
エコシステム系
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
Info-Future® No.52 October 2016 │38
図2| RR
Iの戦略フレーム
3. 世界の IoT(Internet of Things)の潮流を睨んだロボットの国際戦略/体制整備
スの透明性の具体化に本格的に取
ISOの よ う な、
か国
票
の 制 度 で あ る 場 合、 欧 州 の 国 々
は、大企業向け
の 縄 張 り 争 い で あ っ て、 中 小 企 業
それぞれが
票の権利を持つた
がああいうものに取り組むのはな
材では「
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
り組んでいる。
・ 透 明 性、コミュニケーション、 生 産
である」との声であった。日本にい
か な か 難 し く、 ま た、 高 価 な も の
る。 ま た、 標 準 化 で の 会 合 で は、
め、 欧 州 に 地 の 利 が あ る と さ れ
0
.
4
y
r
t
s
u
d
n
I
を表すのではないか。
関係国の特定メンバーが議論し
Consortium(GE等)
日本での取り組みではロボット
されることもままある。
こうした標準化への取り組みと
し て、 埋 も れ て は い る が 実 は す ご
い の がORiNで あ る。ORiN
年 度NEDO「新 規 産 業
その競争優位を失わないことが必
多 様 な 産 業 機 器 を 扱 う 群 が あ り、
位 置 と し て は、 中 小 企 業 を 含 め た
ソ ー シ ア ム 等 が あ る。 日 本 の 立 ち
立ち上げられたIoT推進コン
り、 経 済 産 業 省 と 総 務 省 の 連 携 で
シアティブ協議会
(RRI)
であった
ラ ッ ト フ ォ ー ム で あ る。 国 家 プ ロ
ケーションソフトウェアの標準プ
製造業におけるロボットアプリ
を発行する日本が世界に誇るべき
在 し、 有 償 の み で
で あ り、 既 に
れ研究が開始されたプロジェクト
支援型国際標準開発事業」に採択さ
は平成
要 で あ り、 そ の 立 ち 位 置 を 明 確 に
ジ ェ ク ト か ら は じ ま っ て、 産 業 用
万ライセンス
年以上の実績が存
しておくことが必要となる。(図2)
ロボット分野で活用が進んできて
このような取り組みがあること
t
e
n
r
e
t
n
I
l
a
i
r
t
s
u
d
n
I
のようなものも含めて脅威論が取
も、 し っ か り と 周 知 し て い く こ と
いる。
り ざ た さ れ て い る が、 日 本 も 着 実
10
が必要だと考えている。
Eが主導する
このようにみていくと、米国のG
ベースでみると、ロボット革命イニ
で 尊 敬 さ れ、 そ の 発 言 力 に 左 右
る と、 な か な か わ か ら な い 現 状 で
米・韓
米
Industorial Internet
(Siemens等)
1
Open Interconnect
Consortium
(Intel,Samsung等)
独
Industory 4.0
日本における取り組み
このような先駆的に取り組む企
ロボット革命イニシアチブ協議会
◆ 欧米の中核企業の取り込み
◆ 1,000社以上の企業・研究機関の巻き込み
の目指す姿
1
て い る 関 係 上、 従 来 か ら 発 言 し
の つが
1
は あ る が、 ど こ も 同 じ 問 題 意 識 を
1
業 が あ る 一 方 で、 中 小 企 業 へ の 取
出所| 経済産業省資料
続けているメンバーがある意味
3
もつのだなという感触を得た。
ビッグデータの活用、世界の標準化獲得競争の激化
欧米の戦略
11
に帆を進めていることがわかる。
No.52 October 2016
39│ Info-Future®
日本の強みであるロボットを使って、
欧米の下請けとならないポジション確保を目指す。
日本の戦略
戦略Ⅰ :日本が優位なものづくり現場でロボット共通基盤(基本ソフト等)の国際標準を取得
戦略Ⅱ :介護、
インフラなど多様な分野で世界に先駆けたロボットの利活用とデータの蓄積(ビッグデータへ)
戦略Ⅲ :蓄積したデータから富を創出する人工知能(AI)技術を強化。世界最高水準を目指す
国内シンクタンクを経て、2010年
5月より現職。 通信分野では、欧
米・アジア・オセアニア諸国の規
特集レポート
制等調査、各種通信技術/市場
NTTデータ経営研究所
社会システムコンサルティング部門
シニアマネージャー
社会・環境戦略コンサルティングユニット
な 分 野 のプロジェクトに 従 事。
竹内 敬治
OR・統計解析手法にも詳しい。
TAKEUCHI KEIJI
09
の分析・予測、サービス戦略策定、
各種データ分析、各種システム
設計・開発、郵政省長期増分費
用モデル開発などに従事。その
他、エネルギー
(電力、ガス、石
油等)
、公共、e-ビジネスなど様々
I o T 実 現に必 要となる
エネルギーハーベスティング技 術
技 術がエネルギーハーベスティングで
技 術のひとつとして 注 目 されている
となっている。 そのような 代 替 電 源
で 普 遍 的 な 電 源 技 術 の 確 立 が急 務
い。 そのため、 代 替 となる 低コスト
どが必 ずしも容 易ではない場 所も多
電 源 配 線 、 電 池 交 換 、 充 電 操 作な
のモノに電 源が必 要となる。しかし、
に接 続されるためには、 それら全て
る。 あ ら ゆ るモノがインターネット
課 題 のひ とつが、 電 源 の 確 保 で あ
I o T を 実 現 す るための 重 要 な
す る ための キーテ クノロジ と し て、
無 線センサの 自 立 電 源 駆 動 を 実 現
などへの関 心が高まってきたことで、
ジ カルシステム、 トリリ オンセンサ
た。 と くに、 I o Tやサイバーフィ
の 進 歩 で、 利 用 用 途 が 広 がって き
ないが、 近 年 の 低 消 費 電 力 化 技 術
再 生 可 能エネルギーとしての意 味は
ダーであり、 量 的にもコスト的にも
量はマイクロワット~ 数ワットのオー
る。 環 境 発 電 とも 呼 ばれる。 発 電
ト)
して、 電 力に変 換 する技 術であ
希 薄 なエネルギーを「 収 穫 」(ハーベス
りの 環 境 に 様々な 形 態 で 存 在 す る
振 動 、 熱( 温 度 差 )、 電 波 など 、 周
エネルギーハーベスティングは、光 、
を 述べる。
きるシステム」の創 出に向 けた 提 言
満 足( 快 適 、 安 全・安 心 、 信 頼 )
で
ンソーシアムの活 動 を 紹 介し、「 人が
務 めるエネルギーハーベスティングコ
ングの 最 新 動 向 、 弊 社 が事 務 局 を
本 稿では、エネルギーハーベスティ
進 歩 も 著しい。
研 究 開 発 競 争 が起 きており、 技 術
源 技 術 には な ら ないが、 世 界 的 な
あらゆ る 場 所で 普 遍 的に使 える 電
ハーベスティング の 技 術 水 準 で は、
が高 まっている。 現 状 のエネルギー
エネルギーハーベスティングへの 期 待
はじめに
ある。
Info-Future® No.52 October 2016 │40
図1| 主なエネルギーハーベスティング技術と実用化事例
BLEビーコン など
電磁誘導、 静電誘導(エレクトレット、 電気活
腕時計、トイレ自動水栓、テニスラケット、 照明
等の無線スイッチ、 防火シャッター、 産業機械モ
歪発電
ニタリング、 列車車軸モニタリング など
油井・製油所設備モニタリング、 暖房ラジエータ
電、 熱音響発電、 焦電発電、 熱機関など
自動制御、カセットガスヒーター、 下水道氾濫検
腕時計、集蚊器、発電鍋、産業機械モニタリング、
知 など
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
その中には様々な 技 術が含まれてい
ルギーハーベスティング といって も 、
ある。 したがって、ひと く ちにエネ
ネルギーに 変 換 す る 技 術 も 多 様 で
ティング技 術 開 発への政 策 支 援が加
の高まりとともにエネルギーハーベス
発 化し、 特に欧 州では、 環 境 意 識
I o T 実 現 に 向 けた 政 策 支 援 が 活
で は、 2 0 0 0 年 代 後 半 か ら
速している。
に挙 げ
る。 具 体 的 には、 主 に 表
たよう な 技 術 が各 種 研 究 開 発 の 対
には 遅 れた も のの 、 よ う や く 政 府
我 が 国 では 、 諸 外 国 の 取 り 組 み
図1には、 実 用 化 事 例についても
も 動 き つつ あ る 。 第 五 期 科 学 技
象となっている。
併せて示した。1 9 7 0 年 代 以 降 、
日
腕 時 計 、 トイレ自 動 水 栓 な ど を 相
用 途が広がり、日 本のメーカが電 卓 、
もに、エネルギーハーベスティングの
ネルギーハーベスティング 技 術 開 発
I o T が 取 り 上 げら れ 、 複 数 のエ
会 実 現 のための 基 盤 技 術 と し て
閣 議 決 定 )において 、 超スマート 社
月
術 基 本 計 画( 平 成
次いで製 品 化した。 これらは、いず
プロジェクトが 始 まっている 。 た と
年
半 導 体 の 低 消 費 電 力 化 が進 む と と
れも 、スタンドアロンで 動 く 製 品で
え ば、 平 成
の 自 立 電 源 駆 動 が 可 能 と な り、
たことで、 無 線 ネットワークノード
無 線 技 術 の 低 消 費 電 力 化 が進 展 し
A |S T E P 戦 略テーマ重 点タイプ
な 環 境 発 電 技 術 の 創 出 」と
「 微 小エネルギーを 利 用した革 新 的
のC R E S T・さ き がけ 複 合 領 域
「 I o T 、 ウェアラブル・デバイスの
※
年 度 に は、
ための 環 境 発 電 の 実 現 化 技 術 の 創
成 」が 始 ま り、 平 成
米 国 で は、 軍 事 技 術 のひ とつと
し た。 こ れ ら の 技 術 開 発 の 成 果 が
横 断 技 術 開 発 プロジェクト 」が開 始
して、エネルギーハーベスティング技
実 用 化 す るのは2 0 2 0 年 代 で あ
N E D Oの「 I o T 推 進 の た め の
術 開 発への 政 策 支 援 が 古 くから 行
る。 諸 外 国 の 取り 組 みに 対 す る 遅
2 国内外の政策支援動向
I o Tへの応 用が広がりつつある。
年 度 か ら 、 JST
あった。 そ の 後 、 今 世 紀 に 入 り、
22
1 実用化が進むエネルギー
バイオ燃料電池、 微生物燃料電池など
服薬測定ツール、 僻地の環境センサ など
その他
1
ハーベスティング技術
鉱石ラジオ、 携帯ストラップ、 空気汚染センサ レクテナ
28
28
など
電波エネルギー
27
環 境 中のエネルギーの存 在 形 態が
有機薄膜太陽電池など)
様々であるために、 それらを 電 気エ
ゴミ箱、 屋外・屋内環境モニタリング、 室内用
1
われている。一方 、 欧 州や中 国 など
No.52 October 2016
41│ Info-Future®
熱電発電、 熱磁気発電、 熱電子発電、 熱光発
熱エネルギー
性ポリマー、 摩擦帯電など)、 圧電発電、 逆磁
力学的エネルギー
電卓、 腕時計、 雑貨、 美顔器、 電飾、スマート
色素増感太陽電池、 ペロブスカイト太陽電池、
室内光など)
各種太陽電池(アモルファスシリコン太陽電池、
可視光(太陽光、
実用化事例
主なエネルギーハーベスティング技術
環境中の
エネルギー
※ 科学技術振興機構
イドライン作 成 などの取り組みがな
構 築ノウハウに関しては、 後 述のガ
技 術 面 の 障 害 は 減っている。 また、
ルの入 手が容 易になったことにより、
のセンサやプロセッサ、 無 線モジュー
I Cや 蓄 電 デバイス、 低 消 費 電 力
ルギーハーベスティングに適した電 源
効 で あ ろ う 。 この 取 り 組 みの 初 期
業 創 出 を 促 す 支 援 を 行 うこと も 有
社 がリスク を と る 他 に、 国 が 新 事
が 必 要 で あ る。 そ のためには、 個
データを 集めてみるという 取り 組み
事 業 を 創 出 す るためには、 ま ず は
センサ を 設 置 して 付 加 価 値 の あ る
このギャップを 乗り 越 え 、 新 たな
に、 2 0 1 0 年
の 国 際 競 争 力 強 化 を 支 援 するため
ング技 術の早 期ビジネス化とわが国
弊 社では、エネルギーハーベスティ
コンソーシアムの活動
4 エネルギーハーベスティング
月 にエ ネ ルギ ー
されているところである。
れを 取り戻せるのか、予 断は許さな
い。
3 エネルギーハーベスティング
おいては大 企 業の取り 組みが多いた
事 業 面においては、 特にわが国に
く 、 電 池 や 電 源 配 線 でセンサ を 駆
ティング 技 術 は 必 ず し も 必 要 で な
段 階 では、 実 はエネルギーハーベス
員 数は
立した。 2 0 1 6 年
ハーベスティングコンソーシアムを 設
月 時 点の会
め、 技 術 は 完 成 して も 市 場 規 模 が
社である
( 図2)。 非 公 開
9
竹内 敬治
の 間にはギャップがあり、 世 界 的に
進みつつあるが、技 術 開 発と普 及と
ギーハーベスティング 技 術 の 開 発 は
前 述 の よ う に、 国 内 外 でエネル
面 もある。 今までは電 源がないため
でのビジ ネスが成 立しにくいという
ム・サービスであり、 電 源 技 術 単 体
価 値 を 生むのは上 位レイヤのシステ
ルギーハーベスティングで新たな 付 加
いうことがおきている。 また、エネ
見 込めないために製 品 化できないと
フォンや 自 動 車 、 家 電 、 産 業 機 器
今 後 、 I o Tの対 象が、スマート
ば、リスクはある程 度 回 避できる。
自 立 電 源 化 に 取 り 組 むことにす れ
が 付 け ら れる 見 込 みが 立ってから、
そ のデータ を 分 析 して、 付 加 価 値
動し 有 線でデータを 集 めて も 良い。
境 発 電 デ バイス実 装 事 業 」(平 成
ンサシステム普及拡大のための環
実装推進事業/省エネルギー化セ
●NEDO 「クリーンデバイス社 会
もに実 施している。
の国 家 プロジェクトを 会 員 企 業 とと
の活 動が多いが、 最 近では次の つ
月)
ま ず 、 技 術 面 では、 発 電 量 が外
きにくさが挙 げられる。
さ、 事 業 面ではビジ ネスモデルの描
としては、 技 術 面 では 利 用 の 難 し
の 普 及 は 限 定 的 で あ る。 そ の 理 由
どんな 付 加 価 値 が 得 られるかと 問
と で あ る。 しかし、 で は 具 体 的 に
るというのは、 概 念 的には言えるこ
加 価 値 を 持ったサービスを 提 供でき
集して分 析 すれば、今までにない付
新たにセンサを 設 置し、データを 収
まるであろう 。
ハーベスティングへの期 待はさらに高
に向き 合 う 必 要があり、エネルギー
拡 大していくためには、 電 源の問 題
ラブル・インプラントセンサなどへと
ケースは、 ① オフィスや工 場 の 省エ
こ と を 実 証 し た。 具 体 的 なユース
なセンサシステムが安 定 稼 動できる
ベスティングの技 術 水 準でも 実 用 的
業において、現 時 点のエネルギーハー
促 進 す るための 事 業 で あ る。 本 事
研 究 開 発 を 終 えた 技 術 の 普 及 を
年
部 環 境 に 依 存 して 不 確 定 で あ るこ
われても 、まだ誰 もデータを 見たこ
月~平成
などから、フィールドセンサやウェア
と を 前 提 と し た システムの、 要 素
ネ 推 進 、 ② 回 転 機の故 障 予 測によ
2
とがないのであるから、 明 確 な 答え
6
技 術 およ び 構 築ノウハウ が 未 熟 で
28
るロスの 削 減 、 ③ タ イ ヤ 空 気 圧 モ
8
を 示 すことは難しい。
26
あった。 しかしながら、 近 年 、エネ
年
にセンサを 設 置でき なかった 場 所に
普及の課題
5
09
もいまだエネルギーハーベスティング
44
特集レポート
Info-Future® No.52 October 2016 │42
上 と し た。 ま た、
「 環 境 発 電 デバ
ニタ リン グ シ ステ ムに よ る 燃 費 向
IEC TC47/WG7国 内 小 委
標 準 化 を め ざし、 J E I T A 内に
発 を 行っている。 消 費 電 力 は、 既
でき る 超 低 消 費 電 力 無 線 技 術 の 開
エネルギーハーベスティングで 駆 動
ためには、フィールドセンサによるき
信 頼 )で き る システム 」を 実 現 す る
「 人 が 満 足( 快 適 、 安 全・ 安 心 、
アプリの開発・普及にはユーザ企業や政府機関との連携が必要
エネルギーハーベスティングの早期実用化を目指し、2010年5月に12社で設立(現在44社)
アルプス電気
竹中工務店
リニアテクノロジー
地球快適化インスティ
テュート
東洋インキSC
ホールディングス
富士アイティ
エヌ・ティ・ティ・データ
フジクラ
ローム
2016年9月末時点
ミネベア
村田製作所
東海ゴム工業
日本電気
パナソニック
(以上 、50音順)
住友ゴム工業
日本ガイシ
本田技術研究所
デバイス&システムプラッ
トフォーム開発センター
スター精密
ナブテスコ
富士フイルム
凸版印刷
テセラ・テクノロジー
サイプレス・イノベイツ
TDK
シチズン時計
東レ
富士電機
DIC
KDDI研究所
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
E
E
E
I
1社では必要な技術の全てはカバーできない
な ど )と 比 較 して1 0 0 0
以 下 で あ る。 通 信 距 離 は
5
個 程 度 のセンサから 時 刻 同
もに、 人 間 の 身 体 反 応 としての 生
体 情 報 を ウェアラ ブル・インプラン
トセンサによって 計 測 し、フィード
バック 制 御 を 行 え る こ と が 望 ま れ
る。 これ ら の 情 報 を 計 測 す る ため
I o Tの入り口の無 線 通 信が盗 聴・
タ 伝 送 を 行 う こ と が で き る。
ムの初期検討段階ではエネルギーハー
及の課 題 」で 前 述のとおり、 システ
「3.エネルギーハーベスティング普
のセンサへの 電 源 供 給 技 術 として、
成りすまし自 由 自 在というわけには
ベスティング技 術は必 ずしも 必 要 な
期 がと れた 計 測 データ を 数 十 ミリ
いかないので、セキュリティの確 保は
いが、 実 用 化して社 会 実 装していく
エネルギーハーベスティングに期 待が
必 須 であるが、 低 消 費 電 力 化 との
にあたっては、エネルギーハーベスティ
秒 以 下で収 集でき 、一往 復の通 信で
両 立は困 難である。 本 技 術は、 超
ング技 術 との摺り 合 わせによるシス
かかる。
低 消 費 電 力 でセキュアな 無 線 通 信
テム構 築 が必 要 と な ろ う。 人 工 知
能やデータサイエンス、 脳 科 学 など
しく なっているが、ハードウェアの最
上 位レイヤについては国 際 競 争が激
おわりに
イヤを一気 通 貫したシステム構 築の
る領 域であり、 物 理レイヤ~上 位レ
適 化はわが国 製 造 業の強みを生かせ
信頼)できるシステム」の創出
「人が満足(快適、 安全・安心、
くことが期 待される。
を 実 現 す る 技 術 として 普 及 してい
親 機・子 機の相 互 認 証と暗 号 化デー
が、
~ m 程 度と近 距 離でしか使えない
1
10
分の
y
g
r
e
n
E
優れた要素技術を有している日本企業が多い
w
o
L
h
t
o
o
t
e
u
l
B
,
4
.
5
1
.
2
0
8
エネルギーハーベスティングアプリケーションの開発にはオープン・イノベーションが重要
め 細かい環 境 情 報 収 集 を 行 う と と
員会の新設を実現した。
月)
イス設 計 ・ 実 装 ガイドライン 」
「振
年
存 の 低 消 費 電 力 無 線 技 術(
ラピスセミコンダクタ
月~平成
3
● 総 務 省「スマート な インフラ 維 持
UL Japan
日立製作所
富士通研究所
30
に向けて
政 策支 援によって、国 際 競争 力 強化
と新 産 業 創出が可 能となろう。
No.52 October 2016
43│ Info-Future®
年
29
動 発 電 デ バイ ス 発 電 基 本 性 能 測
BASFジャパン
東芝
6
管理に向けたICT基盤の確立 」
東京応化工業
太陽誘電
東洋ゴム工業
26
定 ガ イ ド ラ イン 」を 作 成 す る と と
産総研、物材機構、理化学研究所 他
(平成
住友理工
アダマンド
エミック
事務局:NTTデータ経営研究所
連携
東京大学・京都大学・東北大学 他
他
旭化成エレクトロニクス
も に 、 後 者 の一部 について は 国 際
図2| エネルギーハーベスティングコンソーシアムの概要
2014年NTTデータ経営研究所
ムにおける研究開発の企画・運
入社。 応用脳科学コンソーシア
特集レポート
営や、製造業、不動産業、金融
NTTデータ経営研究所
術導入プロジェクト等を多数手掛
情報未来研究センター
ける。 専門はシステム神経科学、
ニューロイノベーションユニット
行動(神経)経済学。人を対象とし
マネージャー
茨木 拓也
神経科学関連技術のビジネス導
IBARAKI TAKUYA
ける各種計測系の構築からデータ
た製品・広告・空間評価等にお
脳・行動・心のセンシングと
多 種 多 様 な 種が生まれ、 消えていっ
りといった競 争が激 化し、 その中で
を 見つけたり、敵 を 発 見して逃 げた
とになる。 この中で生き残るために
紀 」を 我々は幸 運にも(?)生 きるこ
てい く だ ろ う 。
「 現 代 の カン ブリア
し、消えていき 、強いものが生き残っ
知 的 処理が生むビジネス競争 力
生命の歴史が物語るセンシ
た。
な 複 雑 な 生 命 体 は 地 球 上に存 在 し
し、 そ れ を きっかけに ネットワーク
センサーや 新 しい 計 測 技 術 が 登 場
て 示 唆に富 む。 今 、 小 型 で 便 利 な
2 0 1 6 年 現 在 の 企 業 経 営 にとっ
で は、 他 社 が 見 え ない 情 報 を ど
を 取ること以 外にないだろう 。
切 な 行 動( 制 御 、あるいは経 営 判 断 )
処 理し
(いわ ゆ るAIの 処 理 )、 適
グし
( 視 覚 の 獲 得 )、 そ れ を 知 的 に
は、 他 社が見 えない情 報 をセンシン
なかった。 そこに突 如 として多 様で
に 繋 がったり、 クラ ウ ドサーバーで
うセンシングすればよいのか。我々は、
億 年 前 の 出 来 事 は、
複 雑 な 生 命 が 次々に 生 ま れた。 カ
処 理 を し て 末 端 の 機 械 をアクチュ
「 人の脳 を 観 る 」ことが一つの解 だと
この
ンブリア 爆 発 と 呼 ばれ る 現 象 で あ
エートしたりす ることができるよう
考えている。
億 年 前に誕 生
る。 この 生 物 進 化の 実 験 期 と も 呼
になった。 IoTな ど と 呼 ばれるこ
原 始 生 命 がおよそ
ばれるカンブリア紀のトリガーの一つ
の社 会 現 象は、カンブリア紀の再 現
億 年 間 は、 今 のよ う
と考えられているのが「 目 」の獲 得で
にほか な ら ない。 今 後 数 年 で、 さ
してから 約
ある。
「 光 」という 外 界の物 理 現 象一
ま ざ ま な IoT 関 連 の 事 業 が 出 現
生 物 の 歴 史 を 紐 解いて み る と、
ングの意義と価値
1
つを 感 受 可 能となっただけで、 獲 物
35
40
5
解析・活用、マーケティング戦略、
10
業その他における脳科学関連技
入に取り組む。
Info-Future® No.52 October 2016 │44
まら ず 、 産 業へのインパクトを 多 分
測 定 技 術は基 礎 研 究の 分 野にとど
現 在 、 脳 科 学 関 連の知 見 並 びに
みで、 従 来 の 評 価 手 法 を 超 え る 精
え ら れる 脳 の 腹 側 線 条 体 の 活 動 の
か 比 較 し た と こ ろ 、 f M R Iで 捉
量に対 する需 要 増 加 )を 予 測できる
どちらがより動 画 広 告の効 果( 投 下
f M R I な どの 神 経 科 学 的 手 法の
ベース の ア ン ケ ー ト 評 価 手 法 と、
うプロジェクトの中で、 従 来の言 語
来のウェブ調 査 など 言 語ベースの調
説 明 力があるということである。 従
サンプルサイズの規 模が小 さ くても
も う一つの 定 量 的 価 値 としては、
的 感 覚として認 識されている。
ことは、 多 くのマーケッターの 現 場
ずしも 反 映 するものではないという
人 の 集 まりで あ る 市 場 の 動 き を 必
は、 実 際 の 個 人 の 行 動 、 そして 個
脳科学の発展、 脳を測る
に持 ち う る 科 学 分 野 として 進 化 を
度 で 予 測 で き たこ と を 報 告 し てい
意義、 事業への応用
続けている。
査 で は、 性 年 代 に 割 り 付 け て、
そ の 背 景 と して 、 特 に 広 告 の 世 界
開 発 や 広 告・ 宣 伝 の 分 野 で あ る。
て 脳 計 測 が従 来 手 法 を 凌 駕 で き る
広 告への 反 応 を 予 測 す る 手 法 とし
このよ うに 大 規 模 な 社 会 集 団 の
を 分 析 することが多い。
市 場( = 対 象 となる 母 集 団 )
の動 向
果 を 平 均 化 することにより、 狙った
1 0 0 0サンプル程 度 回 収 し た 結
※2
る。
では広 告 投 資 対 効 果 を 如 何に定 量
可 能 性 が基 礎 研 究 の 世 界から 日々
注 目 されている 分 野 の一つが製 品
評 価 で き るかという 広 告 主 の 長 年
発 信されている。
在の選 別 プロセスの変 革への期 待が
段 階における経 験と感 性に頼った現
す る 脳 計 測 には、 大 き く「 定 量 的
「 無 意 識の印 象 や 選 好 」を 明 らかに
時として消 費 者 自 身も気づかない
は、サンプリングやスクリーニングに
て も 予 測 力 を 持 ち 得 る ということ
タのサンプルでも 大 きな 集 団に対し
数 人 という 少 数 の 科 学 的「 脳 」デー
これ までの 研 究 が 示 して き た
にわたる 課 題 感 や 関 心 、 広 告 制 作
あ り、 こ れ らに 応 え ら れ る 可 能 性
つの 側
おけるマーケッターの 大 き な 悩 みを
価 値 」と「 定 性 的 価 値 」の
面が存 在 する。
解 決 する 有 力 な 手 法 として 期 待 さ
定 量 的 価 値に関しては二つある。
れる。
データ
( f M R I と 脳 波 )を 用 い
前 に 述べたように、一つは 従 来 の 広
定 性 的 価 値 と して 挙 げ ら れ るの
(1)脳計測の定量的価値
て 、 全 米の視 聴 率 や 広 告 評 価 、 さ
告 評 価 手 法 よりも 精 度 よく 広 告 効
は、いままで 見 え なかった 消 費 者の
数 人の脳 活 動
らにはシーンごとのツイート 数 まで
果 を 予 測 でき ることで あ る。 古 典
内 的 プロセスを 可 視 化できる「 新 た
(2)脳計測の定性的価値
も 予 測 で き るこ と が 報 告 さ れてい
的 なアンケートや グループ・インタ
※1
る 。 また、テンプル大 学 とニューヨー
な目 」としての価 値である。アンケー
テ ンツ 視 聴 中 の
最 近 の 海 外 の 報 告 で は 動 画コン
発 信されている。
を 秘 めた 研 究 成 果 が日々世 界 から
10
ビュー等 の 言 語・主 観ベースの 回 答
2
ク大 学が、 ” N e u r o 2 “とい
No.52 October 2016
10
※1 J. P. Dmochowski, M. a. Bezdek, B. P. Abelson, J. S. Johnson, E. H. Schumacher, and L. C. Parra, “Audience
preferences are predicted by temporal reliability of neural processing,” Nat. Commun., vol. 5, pp. 1–9, Jul. 2014.
※2 V. Venkatraman, A. Dimoka, P. A. Pavlou, K. Vo, W. Hampton, B. Bollinger, H. A. L. E. Hershfield, M. Ishihara, and R. S.
Winer, “Predicting Advertising Success Beyond Traditional Measures : New Insights from Neurophysiological Methods
and Market Response Modeling,” vol. LII, no. August, pp. 436–452, 2015.
45│ Info-Future®
2
特集レポート
10
茨木 拓也
トでは 捉 え ることが 困 難 な 動 画 広
が目 指したのは、これまでなかなか
(2)仕組み
動 画 広 告 視 聴 時の
~
代の男
女 4 人 の 脳 活 動 データ を f M R I
定 量 化でき なかった、「 広 告の質 」
つ
まりクリエイティブの側 面 を 脳 情 報
にて 取 得 した。 1 人 当 たり 約
告 視 聴 中のリアルタイムな 視 聴 者の
反 応 、 す な わ ち 視 聴 者 が 無 視 した
を 観ることで客 観 的に可 計 測 化し、
間に及ぶ脳 活 動 データ
(
時
場 面 を 探 索 したり、 あ る 場 面 にお
そ れに 基 づいた 改 善 や 次 期 宣 伝 戦
30
ける 無 意 識 の 反 応 を 取 得 で き る と
20
秒 ごとに
3
来 、 客 観 的 に 評 価 す ることが難 し
いうことである。 これによって、 従
ケティングコミュニケ ― ションのPD
略 の 立 案 を 行っていく という 、マー
定 する数 理モデル)を 作 成し、 評 価
モデル
( 脳 活 動から認 知 内 容 等 を 推
全 脳 を 撮 像 )を 基 にデコーディング
容 を 推 定 す る 技 術 で あ る。 特 に
から、 その 人 の 運 動 意 図 や 知 覚 内
ディング 」とも 呼 ばれ、 脳 活 動 情 報
脳 情 報 解 読とは「 ブレイン・デコー
量 的 なラべリング
(そのシーンが「 女
ともに、 訓 練 動 画のシーンごとに定
対 す る 脳 活 動 データを 記 録 す る と
訓 練 動 画 として 多 様 な 動 画 広 告に
モデルの作 成に当 たっては、 ま ず
行った。
対 象の動 画 広 告の印 象 等の解 読 を
CAサイクルの改 革である。
化 、 広 告 目 的 に 広 告 表 現 が正 し く
合 致しているか等が評 価できるよう
f M R I 計 測 により 多 様 で 複 雑 な
性 」なのか「 可 愛い」のか等 )を 行って
になる。 これは企 業にとって重 要 な
解読技術の事業化
人 間の知 覚 体 験 を 再 構 成 するよう
g
n
i
d
a
e
r
d
n
i
m
ションや 運 動 支 援 を 行 う ブレイン・
また、 麻 痺 患 者 な どのコミュニケー
技 術 として 近 年 注 目 を 集めている。
“
作 成される。 今 回 、認 知 内 容は「 名
応 させることができる 数 理モデルが
パターン」と「 知 覚・認 知 内 容 」を 対
合 わせと 機 械 学 習によって「 脳 活 動
いる。 大 量に用 意したこれらの組み
※4
ここからは、 当 社 が 情 報 通 信 研
マシン・インターフェース
(BMI)の
詞」
「動 詞 」
「 形 容 詞 」の
3 脳情報の可視化を超えた
利 点である。
~脳科学×AIによるNTTデー
なものは ”科学的な
究 機 構( N I C T )脳 情 報 通 信 融 合
基 礎 技 術 と して も 研 究 が 進 んでい
次 元 で、
研 究 センター
( C i N e t )の 西 本
※3
タグループの技術開発
(1)脳情報解読技術とは
かった 広 告 全 体 の 感 覚 体 験 の 可 視
2
み 合 わ せ る こ と に よって 実 現 し た
自 然 言 語 処 理 などの人工知 能 を 組
共 にf M R Iという 脳 計 測 技 術 と
伸 志 主 任 研 究 員 とNTTデータと
え 、 技 術 開 発 を 行った。
ケーションの分 野にも 適 用 可 能と考
推 定 など 、マーケティング・コミュニ
広 告 視 聴 中の視 聴 者の認 知 内 容の
る。 我々はこの 解 読 技 術 が、 動 画
れるという 仕 組みである。( 図1)
動 から 可 能 性 が 高い単 語 が 推 定 さ
る 動 画 広 告 シーンが 誘 発 した 脳 活
数 万 に 及 ぶ 候 補 の 中から 対 象 と な
の技 術 開 発について紹 介 する。 我々
「 脳 情 報 解 読による動 画 広 告 評 価 」
3
※3 S. Nishimoto, A. T. Vu, T. Naselaris, Y. Benjamini, B. Yu, and J. L. Gallant, “Reconstructing visual experiences from brain activity evoked by natural
movies,” Curr. Biol., vol. 21, no. 19, pp. 1641–1646, 2011.
※4 K. SMITH, “Reading minds,” Nature, vol. 502, no. 23, 2013.
Info-Future® No.52 October 2016 │46
図1| 脳情報解読技術の仕組み概念図
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
図2| 動画広告20素材におけるシーンごとの「可愛い」認知度解読例
動画広告番号
1
0
(a. u.)
(3)広告のシーンごとの認知・印
ゆうど
素 材 におけ る「 可 愛
20
に示 す 。 様々な 広 告 主の
回 繰り 返 して 提 示 し、 その 脳 活
動 画 広 告 をランダムに並べ、 それを
ア)を 図
い」の解 読 例( 縦 軸は尤 度の相 対スコ
た動 画 広 告
ることが可 能となった。 今 回 評 価し
怖い、 可 愛い)」を 定 量 的 に 解 読 す
る、 飲 む )」
「 感 じ ている 印 象( 例 :
供 )」
「 認 知 し ている 動 き( 例 : 食 べ
「 認 知 している 対 象( 例 :女 性 、 子
のシーンごと
(時系列)
に、視 聴 者の
先 述のプロセスにより、 動 画 広 告
象の解読
2
「可愛い」推定認知度
2
動 を 平 均 化 することによって得られ
た も の で あ る。 あ る 動 画 広 告 が、
他の動 画 広 告よりも「 可 愛い」のスコ
アが 低いことが 見 て 取 れる。 また、
S 1 〜 S 4の 折 れ 線 は4 人 の 被 験
者 を 示 すが、 個 人 間の時 系 列 変 化
が共 通( 高い相 関 )
していることも 見
て 取 れる。 個 人 差・ 文 化 差 はあり
得 る も の の、 こ う し た 印 象 の 脳 内
表 象 も ある 程 度 被 験 者 間 で 共 通 し
ている、 ということを 反 映したもの
と解 釈している。
No.52 October 2016
47│ Info-Future®
4
S1
S2
S3
S4
12番の動画広告
のスコアが低い
3
(18) (19) (20)
(17)
(16)
(15)
(14)
(13)
(12)
(9) (10) (11)
(7) (8)
(6)
(5)
(4)
(3)
(2)
(1)
-1
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
-2
特集レポート
出 稿 前 、 次 期 広 告 制 作の 企 画 段 階
善が難しい場 合がある。 す なわち、
て、 単 な る 精 度 の 高い
「 評 価 」技 術
成 果 を 上 手 に 活 用 す るこ と によっ
このよ うに 脳 科 学 研 究 の 知 見 と
技 術 開 発 も 行っている。
これまで 述べたプロセスは、 あ く
で 広 告 主に消 費 者 の 無 意 識 な 印 象
から、 より 具 体 的にクリエイターを
ための技 術がないと、 少 なからず 改
まで 出 稿 した 動 画 広 告 を 定 量 的に
や 選 好 な どの 情 報 を 提 供 し 、 広 告
支 援 す るツールを 実 現 す るイノベー
(4)評価技術を超えてクリエイ
分 析・評 価 し、 その 投 資 の 妥 当 性
等 の 完 成 度 向 上に資 す る 技 術 を 実
ティブな技 術を開 発できると考えて
ティブ支援ツールへ
や 今 後のマーケティング戦 略の改 善
現 する必 要がある。
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
いる。
ることは、「 次 にどんな
重 要で、 今 後 求められ
しかし、 そ れ 以 上 に
を 示した。
る。 本 稿ではその概 要
活 動 を 行 うことができ
降 より 精 度 の 高い広 告
があって 初 めて 次 回 以
き ちんとした 効 果 検 証
評 価は大 変 意 義 深 く、
も ち ろん、 そのよう な
素 、 犬 、 女の子 などを 提 案 する)。
印 象 を 与える動 画 広 告の構 成 要
与えたい時 、最 も 脳 活 動に「 可 愛い」
う ものである
(例:
「 可 愛い」印 象 を
素や、イメージ 画 像 を 提 示 するとい
の具 体 的 なクリエイティブの構 成 要
に、 そ の 脳 活 動 を 引 き 起 こ す ため
想 的 な 脳 活 動 を 予 測 する 技 術 を 基
その原 理は、 広 告 主の狙いに近い理
を 提 案 する 技 術 開 発 を 行っている。
広 告に入れ込んで製 作 すればよいか
ために、一体どんな 構 成 要 素 を 動 画
時 期があったが、 我々はビジ ネス的
「ビッグデータ 」が盛んに叫 ばれた
ンシングの重 要 な 対 象である。
動 やストレスと 言った心 理 状 態 もセ
処 理 結 果 として 生 まれる 人 間 の 行
のは脳のデータだけではない。 脳の
絞ってきたが、 脳 科 学が対 象とする
そこで 我々は、 広 告 主が「 伝 えた
手 を 打つか 」に 関 す る
さらに、 絵コンテの段 階でも 同 様
な 価 値 を もたらす 情 報 というのは、
の広 告 分 野における脳 科 学 技 術は、
プランニング の 高 精 度
に、 その絵コンテがどのよう な 脳 活
単 純 な 量 だ けで は な く 、 そ の 質 に
かったけれど 伝えられなかった印 象 」
化 で あ る。いかに 着 弾
動パターンを 視 聴 者の脳に引き 起こ
も 注 目 すべきだと 考 え 、「ビッグパラ
このように「 広 告 評 価 」にフォーカス
観 測が精 緻にな ろ う
し、 それぞれの絵コンテ候 補のうち
メータデータ 」の 取 得 と 蓄 積に努 め
などを 次の制 作において実 現させる
人間と環境の同時センシン
グによる「ビッグ ”パラメー
と、 狙った とこ ろ に 届
ど れが最 も 広 告 意 図 と 近い脳 活 動
てきた。パラメータとは「 変 数 」のこ
こ れ ま で、「 脳 」の 計 測 に 焦 点 を
(1)ビッグパラメータの重要性
タ “データ」の利活用
か せ る た め にコ ミュニ
を 実 現 す るかを 定 量 的に予 測 す る
4
ケーションを 修 正 す る
されることが多かった。
を 支 援 す る も ので あ る 。 こ れ ま で
図3| ニューロアーキテクチャ研究会の取り組み
10
茨木 拓也
Info-Future® No.52 October 2016 │48
いった性 格を表す心 理 量も変 数であ
るし、「 神 経 質 傾 向 の 性 格 得 点 」と
あ るか 」も(カテゴリカル)変 数 で あ
とで、 例えば「 男 性であるか女 性で
ことを 目 的としている。
価 や 制 御・ 介 入 技 術へと 応 用 す る
かにし、 その 事 実 と 技 術 を 空 間 評
状 態 」につながるかを 統 計 的に明 ら
な る 空 間 要 素 」が「いかな る 人 間 の
到 達できない価 値 を 生む。
だけのビッグデータ 分 析 な ど では、
きる。 これは、 単にデータ量が多い
状 態 に 影 響 を 与 え ること を 分 析 で
環 境 変 数が、 思いもよらない人 間の
その中で 行っているデータ収 集 を
おわりに
る。 こうしたパラメータを 増 やすこ
とで、これまで予 測・説 明ができな
具 体 的に説 明 すると、一人一人の被
験 者に、 活 動 量 計 と 環 境センサー、
かった 現 象 を 数 理・ 統 計 的 に 説 明
可 能 と す ることは、 企 業 の 事 業 遂
並 びにスマートフォンを
時間携帯
行 上 の 競 争 力 にほかな ら ず 、 そこ
タ 」をセンシングしていくかというこ
ではいかに差 別 的で重 要な「パラメー
たり、 周 囲 の 照 度 や 湿 度 な ど を 同
態 をスマートフォンに入 力してもらっ
して も らい、 その 時々のストレス状
グし、 利 活 用 を す ることの 重 要 性
タ 」な ど を 他 社 に 先 んじてセンシン
本 稿では、「 脳 」や「ビッグパラメー
とが 課 題 と な る 。 以 降 、 当 社 が 運
を 述べた。 しかしながら、多 くの企
でにとりためてきたのは2 0 0 人×
センサー数の制 限 などで、これま
域 に 踏 み 込 むこ と を 躊 躇 し が ち で
うに知 識 不 足の問 題 もあってこの領
「 ど う 始 めれ ばいいのか 」といったよ
業 は「 人 間 計 測 に 意 味 はあ るのか 」
週 間 程 度のデータであるが、そこ
複 数 の 企 業 が 共 同 研 究 を 行ってい
数 の 研 究 機 関 と 住 宅メーカー 等 の
では、 東 京 大 学 を はじめと す る 複
「ニューロアーキテクチャ研 究 会 」
り組み
ロアーキテクチャ研究会 」の取
報の同時センシング~「ニュー
睡 眠 効 率 な どの心 理・生 体 状 態の
線 量 といった 環 境 情 報 、ストレスや
し ている 温 度・ 湿 度・ 照 度・ 紫 外
イフスタイル、 そして継 時 的に記 録
住 環 境 、 入 浴 行 動 といった日々のラ
の 性 別・ 年 代 等 の 基 本 属 性 から、
優 に1 0 0 を 超 え ている。 そ の 人
で 計 測している「パラメータ 」の 数は
一歩 踏み出 すことを 期 待したい。
あることを 忘れず 、生き残るために
報 取 得 と そ の 知 的 処 理 と 活 用 」で
企 業 も 競 争 力 の 源 泉 は「 優 位 な 情
あ るの も ま た 事 実 で あ る 。 生 物 も
る。 そ こ で は、 図 3 に 示 す 通 り、
センシングにより、 思いも よら ない
このような「ビッグ ”パラメータ“ 」
データを 取 得している。
(2)人の身体・心と周囲の環境情
研 究 会 」を 例に具 体 的に説 明 する。
におけ る「ニューロアーキテクチャー
時に計 測したりしている。
5
営 する「 応 用 脳 科 学コンソーシアム」
24
人 間 を と り ま く 建 築 空 間( 自 宅・
職 場 )の 情 報 と、 人 間 の 心 と 体 の
状 態 をセンシングすることで、「いか
No.52 October 2016
49│ Info-Future®
1
〈謝辞〉
本稿の執筆に当たり、情報通信研究機構の西本伸志先生ならびに西田知史先生には、データの解析、作図など多大なご支援をいただいた。
ITの
“飛躍的”
進化とITマネジメント
の
“致命的”
停滞
ンドの 変 遷 は、 確 固 たる 技 術 革 新
産業界へのビジネスインパクト
ITの進化・発展がもたらした
有 用 性が叫ばれて久しい。 歴 史 的に
「 ITの 戦 略 的 活 用 」の 重 要 性、
影 響 を 与 え 得 る 存 在へと 昇 華 し 、
I Tは 各 界 の 事 業 運 営に決 定 的 な
よ って 下 支 え さ れ て お り 、 今 や
なビジネスシーンに大きな 影 響 を 与
歩 を 果 たしており、 産 業 界 の 様々
前 述 の と おり、 I Tは 確 実 な 進
はじめに
の 積 み 重 ねと 価 格 及 び 使い勝 手 の
振り返ると、1980年代に台頭し
従 来 以 上に重 要 な 役 割 を 果 たして
側 面によるコモディティ化の 進 展に
たS I S
n
o
i
t
a
m
r
o
f
n
I
y
g
e
t
a
r
t
S
( )
m
e
t
s
y
S
として 認 識しなければならないのが
えることとなったが、 本 質 的 な 変 化
産 業 界 が 産 み 出 した I Tは 我々
いる 。
や1990 年 代 に一世 を
風 靡し、 現 在も企 業 情 報システムの
点である。
e
s
i
r
p
r
e
t
n
E )
( g
n
i
n
n
a
l
P
e
c
r
u
o
s
e
R
争 力に直 接 的 な 影 響 を 与 え 得 ると
されるI Tが 業 界 構 造 や 企 業 の 競
いった新 潮 流やI o TやA Iに代 表
と
に代 表 さ
や教
注 目 を 浴 び、 重 宝 されてきた。 近
を 超 えたビジ ネストピックスとして
トレンドが特 定の業 界や部 門・職 種
ティングの概 念 等 、 その時々のI T
年 代 に 登 場 したクラ ウドコンピュー
、2 0 0 0
相 対 的 な 関 係 性に着 目 し 、 日 本 企
運 用 す る 立 場 にあ る I T 部 門 と の
そ の ものと、 そ れ を 企 画 、 管 理 、
的 な 成 果 を 提 供 し 続 けている I T
か。 本 稿 で は、 企 業 において 具 体
の 成 長 を 果 たし ている ので あ ろ う
ト す る 立 場 にあ る 企 業 自 身 は 相 応
の発 展 と 比べて 、 I T をマネジメン
効 果 効 用 を 世に提 供 してきたI T
としたい。 飛 躍 的 な 成 長 と 様々な
I Tに対 峙 する立 場の ”組 織 “や
”経 営 システム に目 を 向けること
“
け だ が、 こ こ で 企 業 内 に おい て
燃 費・ 環 境 対 策 競 争 という そ の 都
でデザイン競 争 、ラインナップ競 争 、
グローバリゼーションを 進 める 過 程
ている。 自 動 車 業 界 を 例にとると、
競 争 優 位 を 決 定づける 例 も 存 在 し
し て き て おり、 I Tの 活 用 能 力 が
コアコンピタンスの 領 域 にまで 浸 透
きたが、 昨 今は活 躍シーンが各 界の
ションの標 準 化 を 目 的に進められて
領 域 におけるコスト 削 減 やオペレー
バックオフィスを 中 心 としたノンコア
次の
して熱い視 線が注がれており、 国 内
業 を 中 心 とした 産 業 界 サイドの 課
度 質 の 異 な る 戦いを 繰 り 広 げて き
の 期 待 以 上 の 成 長 を 遂 げている わ
外 におけるI Tのユーザーとサプラ
題 を 明 らかに す る と と も に、 I T
たが、 現 在 主 要メーカー 各 社 は 自
中 核 を 担 うE R P
イ ヤーの 双 方 で、 先 進 的 な プレー
部 門 を 中 心 とした 担い手 側 が 果 た
動 走 行や 次 世 代ナビゲーションサー
h
c
e
T
X
n
o
i
t
a
z
i
l
a
t
i
g
i
D
※2
h
c
e
T
n
i
F
h
c
e
T
d
E
/
育 業 界 におけ る
れる
※1
競争原理の変化
ヤーが革 新 的 事 業モデルを 確 立させ
すべき 本 質 的 な 役 割 と 具 備 すべき
年では、 金 融 業 界の
るに至っている。
ビスといった複 雑 なアルゴリズムや大
2
要 件について 考 察 を 行 う 。
( 図1)
この途 切 れることのないI Tトレ
従 来 、 I Tの 導 入 は 企 業 活 動 の
1
20
回
C I O へのメッセージ │ 第
※1 Internet of Things
※2 Artificial Intelligence
Info-Future® No.52 October 2016 │50
国内大手システムインテグレーター、
ファーム、欧州大手IT・戦略ファー
会 計 事 務 所 系コンサ ル ティング
ム、米国経営コンサルティング会社
シパルを経て、2012年11月より現
向けプラクティスの日本代表、プリン
職。全社・事業戦略立案、新規サー
ビジネスソリューション
ビス開発、グローバル化推進、組織・
コンサルティンググループ長
人事制度再構築等のコンサルティン
パートナー
グを数多く手がける。
松岡 良和
カーライフの実 現に向けて競 争 を 加
莫 大 な 投 資 を 行っており、 新 た な
規 模 データ 処 理 を 要 求 す る 分 野 に
で あ る。 I T そ の も のが 業 界 の 新
M & Aが 進 行 している 点 も 特 徴 的
枠 組 み を 超 え た ア ラ イ ア ンス や
優 位 獲 得に向 けて 従 来 的 な 業 界の
し、 高い顧 客 満 足 度 の 獲 得 と 解 約
手 厚いカスタマーサービスへと 還 元
みを 整 備 す ることで、 そ の 成 果 を
的キャリアビジ ネスとは異 なる仕 組
AI関連事業者 等
より、 企 業 の 戦 略 、 展 開 している
ものという 業 態が確 立されたことに
が企 業にとっての事 業 運 営 基 盤その
ネットビジネスの台 頭 を 契 機にI T
今 や 真 新 しい 存 在 で は ない が、
る。
味 を 持つのかを 考 えていくこととす
が、 日 本 企 業にとってどのような 意
で も 起 こり 得 る 確 かな 潮 流 な のだ
なイノベーションは 世 界 中 どの 業 界
す きっかけ と なっている。 このよ う
運 営 されるというビジ ネススタイル
確かな成長を遂げているのか?
日本企業のITマネジメントは
顧 客 満 足の獲 得といった成 果 を 生み
)
の実 現 、 高い
ネジメントは平 均 的にみると 成 長が
な 進 歩 に 対 して 日 本 企 業 のI Tマ
結 論 から 言 う と、 I Tの 飛 躍 的
t
e
k
r
a
M
o
t
e
m
i
T
出している。 海 外の例となるが、フ
e
g
n
a
r
O
年
追いつけていない状 況にある。 そ れ
ラ ンス の 通 信 事 業 者
2 0 1 1 年 の 時 点 で 若 年 層 向 けの
」
データとして も 裏 付 けられており、
度 の「 情 報 処 理 実 態 調 査 」において
h
s
o
S
を 立 ち 上 げ、 契 約 → サービス利 用
アンケ ート を 実 施 し た1 1 7 3 0
携 帯 電 話サービスブランド「
→カスタマーケアに至 る一連のプロセ
事 業 者 の う ち 、 C I O を 設 置 して
は 経 済 産 業 省 が 発 表 した 平 成
は、
(
し て 高 水 準 の 利 益 創 出 やT T M
的 な 組 織 運 営 が 志 向 され 、 結 果 と
が 登 場 し て き ている。 極 めて 合 理
組 織 機 構 まで もがI Tの 統 制 下 で
事 業 やビジ ネスプロセス、 さらには
を 与え 、新たな 競 争ルールを 生み出
のビジネスモデル変 革に大きな 影 響
I Tの 進 化 と 高 度 利 用は、 各 界
速 化 させている。 ま た 自 動 車 メー
図1| 産業界におけるITの進化・発展の歴史
る。
率の低 減 をなし得ている。
や
クラウドベンダー
事業構造の変化
秩 序 を 決 定づけつつある好 例 といえ
カー だ け で な く
出所| NTTデータ経営研究所にて作成
e
l
p
p
A
情報戦略コンサルティングユニット
e
l
g
o
o
G
NTTデータ経営研究所
等 のI T 系 プレーヤー も 競 争 に 加
X-Techベンチャー
ロボティックスメーカー
ERPベンダー
Amazon、Google、
大手SIer
業界構造の変革
の確保
グローバルスタンダード
への対応
競争優位の確立
Salesforce.com等の
NTTデータ等の
新たな事業モデル/
新サービスの確立
ITを活用した
SAP、Oracle等の
富士通、NEC、IBM、
ITの機動性・柔軟性
業務の標準化
2010年代前半~
わっており、 将 来 市 場における競 争
ERP
の時代
2
スを 1 0 0 % 自 動 化 させた。 伝 統
No.52 October 2016
51│ Info-Future®
26
SIS
の時代
2000年代~
1990年代中盤~
1980年代中盤~
デジタル
トランスフォーメーション
の時代
クラウドサービス
の時代
(Strategic Information System) (Enterprise Resource Planning)
の通信/IT/エレクトロニクス業界
法人戦略コンサルティング部門
MATSUOKA YOSHIKAZU
CIOへの
松岡 良和
回
5
機 関やメーカー等が専 門 性の集 積と
子 会 社 という 存 在 がある。 各 金 融
して、 各 事 業 会 社 が保 有 す るI T
また 日 本 の 産 業 界 固 有 の 文 化 と
とも 困 難といえる。
でしかるべき キャリアパスを 描 くこ
まう 。 優 秀 な 人 材 を 配 置 し 、 社 内
な 役 割しか担 えない存 在 となってし
だ。
るう えで 必 須 と なってきているから
縮 させることが競 争 優 位 を 確 立 す
確 にI Tに 反 映 させ、 T T M を 短
品・サービス等の特 性 を 迅 速かつ的
る 顧 客 に 関 す るノウハウ や 提 供 商
多 く 出 て きている。 現 場 が 保 有 す
I T を 整 備 、 運 営 していく 例 が 数
特 性に合 致したI Tマネジメントの
欠 で あり、 事 業 や 活 用 す るI Tの
いC I OやI T 部 門 の 存 在 が 不 可
る 。 故 に 今 後 は 今 まで 以 上 に 力 強
が 上 昇 しつつ あ る こ と は 確 かで あ
に伴い、 I Tマネジメントの難 易 度
環 境 は 様 々で あ る が、 I Tの 進 化
企 業 ごとにI T 活 用 を 取り 巻 く
「 通 信 利 用 動 向 調 査 」において も 、
年 度の
も 表 れている。 別の出 典 と なるが、
%という 数 字に
う ち 専 業 のC I O を 設 置 し ている
で、この独 特 な 文 化がI Tマネジメ
側にもI T 分 門が存 在しているわけ
I T 子 会 社 が存 在 し ながら も 本 社
して一元 管 理していくわけであるが、
開 発 、 運 用 機 能 等 を 子 会 社に移 管
コス ト 削 減 を 目 的 にI Tの 企 画 、
用 す るI Tのタイ プを 乗 り 越 え て
い方 を 採 択 で き るのは、 部 門 や 活
みがちになるのだが、このよう な 戦
自 ず と 現 場 主 導 でのI T 活 用 が進
い。 社 内のI T 部 門 も 同 様である。
I T 子 会 社 は 必 ず し も 得 意 とし な
こ の よ う な シ ー ンへの 対 応 を 、
えるITマネジメントの新潮流
ドイツテレコムの事例から垣間見
仕 組 みを 整 備 す ることが 強 く 求 め
億 円 以 上 の 大 企 業に限 定
ントにおける組 織 間の役 割 分 担をよ
全 体 最 適 として 機 能 す るI Tマネ
う こ と は、 そ の 企 業 の 中 でI T 部
I T を 所 管 する 役 員がいないとい
体 制が不 釣り合いな 状 況といえる。
響 力 と 比 して 企 業 側 の 対 応 方 針・
さ れ て おり、 昨 今 のI Tが 持つ 影
分 担 会 社は極めて 有 用 な 効 力 を 発
で 設 立 し たI T 子 会 社 という 機 能
とする限りにおいては、 当 初の目 的
テムや人 事・給 与システム等 を 対 象
自 社 利 用 を 目 的 と す る 会 計 シス
るI T 活 用 を 確 実 に 統 制 で き る 部
のポリシーを 確 立し、 各 部 門におけ
質 、コスト等の観 点から全 社として
レーヤーのみである。 採 用 技 術 、 品
ジメントの仕 組みを 保 有しているプ
じて 数 多 く の 外 資 系 企 業 における
れまでのコンサルティング 活 動 を 通
打 開 策 は 存 在 す るのか? 筆 者 はこ
I Tマネジメントに対して、 有 効 な
長に停 滞 感 を 覚 える日 本 企 業の
I Tの 飛 躍 的 な 発 展 と 比 して 成
代 表 す る 通 信 事 業 者 で あ るドイツ
組 織マネジメントの実 態に触れる機
場 主 導 による 部 分 最 適 を 進 めてい
テレコムの 取 り 組 みが 日 本 企 業 に
門 の 存 在 が大 前 提 だ。 この 確 固 た
しかし な がら 近 年 、 前 述 のよ う
ては、 早 晩 全 社 としてのI T 資 産
とって 参 考になるという 印 象 を 得て
揮 す る。 自 社 の 都 合 だけで 情 報 シ
けにあるというのと 同 義である。 こ
な I Tの高 度 化 、 進 化 発 展に伴い、
は肥 大 化し、 自 社でコントロールし
いる。 以 降 I Tマネジメントの観 点
門のステータスが他 部 門・他ビジ ネ
のよ う な 環 境 下 では、 I T 部 門 が
営 業 部 門 や 自 社 サービスの 提 供 部
きれないモンスターを 抱 え 込 むこと
から 同 社の 取り 組みを 紹 介したい。
会 を 有 して き たが、 中 で も 欧 州 を
イニシアティブを 取って 経 営・事 業
門 等の収 益 部 門が自ら外 部ベンダー
となる。
るリーダーシップ機 能 を 有 さ ずに現
に 貢 献 す ることは 期 待 で き ず 、 社
を 直 接コントロールし、 武 器 と なる
ステムの運 用が可 能だからだ。
内 において 自 ず と 他 部 門 の 下 請 的
スプロセスと比 較して一段 低い位 置づ
資本金
総 務 省 が実 施した 平 成
3
6
られるといえる。
し て も C I O を 設 置 し ている 事 業
り複 雑 なものにしてしまっている。
3
50
50
23
のはわ ずかに ・
者の割 合は ・ %という 数 値が出
29
20
第
いる事 業 者の割 合が ・ %、 その
メッセージ
Info-Future® No.52 October 2016 │52
図2| ドイツテレコムの企業概要
Europe
Systems
Solutions
Fixed-network
and mobile
communications
Mobile
communications
Fixed-network
and mobile
communications
T-Systems
設立
2000年
フランクフルト証券取引所上場
【企業向け】 : ICTソリューション
(2013年)
→ T-Systems
出 来た実 際の施 策 例である。( 図2、
スプレジデントから 直 接 聞 くことが
社を訪 問し、同 社の技 術担 当ヴァイ
及 び2 0 1 5 年にドイツテレコム本
後 述 す る 内 容 は 筆 者 が20 1 4 年
に定められており、 例 外が認められ
スを 活 用 して 良いのか)等 が全 社 的
システム/ 機 能であれば外 部サービ
シングの活 用 方 針(どの業 務 、 どの
の運 用は誰が行うのか)、アウトソー
定 義 されている 運 用 主 体(システム
〈グループIT会社の役割〉
ていない。
3)
〈CTOを頂点とする技術レイヤー
/分野別の組織運営〉
ドイツテレコムグループの 中には、
と す る 技 術レイヤー 別 組 織 の 中 で
て おり、 そ の 全 て がC T O を 頂 点
データセンター設 備 と 密 接に連 携し
一要 素 としてキャリアネットワークや
システムは、 巨 大 な 通 信インフラの
割 を 担っている。
I Tの開 発や 運 用 面で 中 核 的 な 役
しており、 グループ内で 活 用 される
サービスを 担 当 す る 事 業 体 が 存 在
グレーションや法 人 向けネットワーク
という システムインテ
ドイツテレコムにおける 各 種 情 報
戦 略 的に企 画 、 開 発 、 運 用がなさ
れている。
がグループ内 で 果 た
定められており、
すべきミッションは極めてシンプルに
〈ITの導入/運用に関する全社的
① ド イ ツ テ レコ ム グ ル ー プ 向 け
年 前 に 実 施 した 大 規 模 な 構
な共通ポリシー〉
約
造 改 革(コスト 削 減 プロジェクト )以
BSS
② ド イ ツ テ レコ ム グ ル ー プ 向 け
の開発
t
r
o
p
p
u
S
s
s
e
n
i
s
u
B
( )
m
e
t
s
y
S
降 、 導 入 するI Tの開 発 方 針 や 運
t
r
o
p
p
u
S
n
o
i
t
a
r
e
p
O
( )
m
e
t
s
y
S
の開発、運用
OSS
れている。 主 な ものとしては、パッ
③ ド イツ 国 内 他 通 信 事 業 者 向 け
用に関して厳 格 なポリシーが導 入さ
ケージ システムやクラ ウ ドサービス
BSS、OSSビジネスの推進
(営
業、開発、運用)
の 適 用(一からの 手 作 りは 許 さ れ な
い)、 情 報 システムのタイ プご とに
No.52 October 2016
53│ Info-Future®
10
【消費者向け】: 固定、モバイル通信、インターネット、
IPTV関連製品 → Telekom Deutschland
主な事業
s
m
e
t
s
y
S
T
United States
・50以上のグループ企業を傘下にもつ
概要
・世界50か国に展開
グループ
Deutsche Bundespost Telekomとして分割
1989年
s
m
e
t
s
y
S
T
Germany
228,596人(2013/12期 連結)
社員数
1995年
沿革
営業利益率
売上高
企業概要
売上高と営業利益率の推移
① 固定ネットワーク回線:3,100万回線
② 移動体通信:携帯電話加入者数1億4200万人
③ ブロードバンド回線:1700万回線
出所| ドイツテレコムグループホームページを基にNTTデータ経営研究所にて作成
図3| ドイツテレコムグループの事業運営体制
Deutsche Telekom Group
Group Headquarters & Group Services
出所| ドイツテレコムグループホームページを基にNTTデータ経営研究所にて作成
20
回
上につながっているという 。
に従 事 す る 人 材のモチベーション向
められており、この存 在がI T 部 門
全 社に対してコミットすることが求
テータス向 上にも 成 功している。
こ と で 社 内 におけ るI T 部 門 のス
な開 発 成 果を対 外 的にアピールする
社 的にアナウンスし、さらに具 体 的
競 争 優 位 の 確 立 を 図 るう えでの 必
たスキームで 推 進 していく こ と が、
トを より 強 化 し、 本 業 と 強 連 携 し
I T を 担 うにせよ、 I Tマネジメン
ループ全 体 の 事 業 戦 略 や 顧 客 満 足
ムの 開 発 」といったドイツテレコムグ
現 す る 全 自 動 オペレーションシステ
具 体 的 には「 世 界 初 、 ◯ ◯ を 実
がある例ではなかろうか。
して日 本 企 業にとっても 非 常に学び
ではないが、
IT部門の ”生き様 “と
すべての業種業態に適用出来る例
須 機 能となることは抗えない真 理と
④EU圏で 事 業 展 開しているフォー
の 向 上 に 直 結 す る 難 易 度 の 高い目
との
いない。 また、 目 標が達 成された際
特 有の閉 塞 感 、 蛸 壺 感は存 在して
も 存 在 し て おり、 そ このI T 部 門
とのアライアンスで 達 成 される 案 件
といった 新 興 系 プレーヤー
や
ま た、 歴 史 的 に 取 引 の あ るベン
多 く の 情 報 システム担 当 者 から 直
ジメントを 難しくさせていることは、
進 展が企 業サイドにおけるI Tマネ
功 罪 はと もかく 、 I Tの 飛 躍 的 な
させていただいたが、 企 業 サイドの
に対して 遅れをとっている 点 を 指 摘
ントがI Tそ の も のの 進 化 / 発 展
相 対 論として日 本のI Tマネジメ
る だ けで な く 、 I Tに 関 連 し た 組
択 した 施 策一つ一つの 有 用 性 を 論 じ
本 稿 を 通じてドイツテレコムが採
ている。
を 大 改 革し、現 在の成 果へとつなげ
た 技 術 全 般 に 関 わる 社 内 の 仕 組 み
展 をポジティブに捉え 、I T を 含め
ションの 加 速 化 、 I Tの 飛 躍 的 発
事 業 環 境の厳しさやグローバリゼー
元々国 営の通 信 事 業 者であ
得ることは非 常に有 用だ。
して、 海 外 の 先 進 事 例から 学 び を
これ を 実 現 す る う え で の 手 段 と
いえる。
チュングローバル500に名を連ね
標 で あり、 技 術 的 な 面 において も
り 、 ”変 革 “や ”機 動 性 “と は
役 割 分 担は明 確に定 義されており、
にはニュースリリース等でその成 果が
接 的 に 聞いた 事 実 から 判 断 して も
織 変 革の重 要 性 を 再 認 識して 頂 け
まとめ
る各 界 上 位プレーヤーへのシステム
業 界 内で 初チャレンジとなるよう な
I Tの企 画 と 全 体マネジメントはド
大 体 的 に 発 表 さ れており、 そ のこ
紛 うことない真 実であると 考 えてい
れば幸 甚である。
s
m
e
t
s
y
S
T
予 算 や 品 質 に 関 す るK P Iに 対 す
般 的 な 企 業 で 採 用 さ れているI T
ここが一番のポイントであるが、一
が、 I T 部 門 自らがテクノロジー面
が極めて高い業 界の例であるわけだ
コアコンピタンスとI Tとの 親 和 性
ドイツテレコムグループは、事 業の
どナンセンスであるが、 社 内で 誰が
経 営 の 良 し 悪 し を 判 断 す ること な
I Tの 側 面 だ け を 切 り 取って 企 業
営 課 題 で あ る 例 は 稀 有 な た め、
企 業 に とってI Tが 最 優 先 の 経
e
l
g
o
o
G
s
m
e
t
s
y
S
T
る 遵 守 率 のほかに、 部 門 ごとに 非
で 最 前 線 を 走 ることの 重 要 性 を 全
k
o
o
b
e
c
a
F
存 在しているが、
し、
専 念 する体 制が採られている。
〈IT部門の組織評価に関する考え
常にハイレベルな 定 性 目 標 を 掲 げて
方〉
ダ ー だ け で な く、
イツテレコム 内 の 技 術 部 門 が 担 当
とも 従 業 員のモチベーション向 上に一
る。
プ内 のI T を 担 当 す る 技 術 部 門 が
は開 発 と 運 用に
役 買っているとのことである。
ドイツテレコム内においてもグルー
インテグレーションサービス、ネット
松岡 良和
無 縁であったドイツテレコムですら、
第
厳しい要 件が課せられている。
CIOへの
ワークサービスの提供
メッセージ
Info-Future® No.52 October 2016 │54
No.52 OCTOBER 2016
No.52
発行日
2016年10月20日
発 行
株式会社NTTデータ経営研究所
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-9
JA共済ビル 10階
発行人
佐々木 康志
編集人
唐木 重典
編 集
井上 国広/伊達 雅之/松浦 米毅
情報未来、当社サービスに関するお問い合わせは、
NTTデータ経営研究所
コーポレート統括部 経営企画部 広報担当
Tel 03-5213-4016
Fax 03-3221-7022
[email protected]
まで お寄せください。
© 株式会社NTTデータ経営研究所2016
本紙掲載記事・写真の無断転載および複写を禁じます。
●情報未来、Info-Futureは、株式会社NTTデータ経営研究所の
商標登録です。
●この雑誌の中で言及している会社名、製品名はそれぞれ各社の
商標または登録商標です。
*社外からの寄稿や発言は必ずしも当社の見解を表明しているもの
ではございません。
55│ Info-Future®
No.52 October 2016
『情報未来』
は弊社Webサイトでもお読みいただけます。
http://www.keieiken.co.jp/pub/infofuture/
電子メールによる発行のお知らせをご希望の方は
下記URLページよりご登録ください。
https://www.keieiken.co.jp/forms/mirai/
情報未来10月号 No.52
株式会社NTTデータ経営研究所
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-9 JA共済ビル10階
Tel:03-5213-4016 Fax:03-3221-7022
http://www.keieiken.co.jp/