資料4-1 個別品目の関税率の見直し 平成28年10 月 20日 関税・外国為替等審議会 関 税 分 科 会 財 務 省 関 税 局 企業主導型保育事業を促進するための脱脂粉乳 に対する関税減税措置 1 1.経 緯 (1)企業主導型保育事業 企業主導型保育事業とは、多様な就労形態に対応する保育サービスの拡 大を行い、保育所待機児童の解消を図り、仕事と子育てとの両立に資する ことを目的とする制度である。平成 28 年4月より、政府は、事業所内保育 業務を目的とする施設等の設置者に対し、認可保育施設(小規模保育事業 等)に準じた助成及び援助を行う事業を行うことができるとされている。 (2)学校等給食用脱脂粉乳に係る関税減税措置 現行制度において、小学校、中学校、幼稚園等の学校及び児童福祉施設 の児童等並びに児童福祉法に規定する小規模保育事業、事業所内保育事業 等による保育を受ける児童の給食に用いられる脱脂粉乳については、関税 の減税措置が講じられている。 具体的には、関税定率法において、通常の脱脂粉乳より低い関税率が設 定されていることに加え、関税暫定措置法において、関税割当制度が設け られ、割当数量内の税率は無税とされている 脱脂粉乳の関税率(無糖・脂肪分 1.5%以下のもの) 一般 (給食用・飼料用以外) 給食用 基本税率 (定率法) 暫定税率 (暫定法) 25%+466円/kg 21.3%+92 円/kg(注1) 466 円/kg (関税割当) 無税 (注1)関税に加え、加 工 原 料 乳 生 産 者 補 給 金 等 暫 定 措 置 法 に 基 づ き 農 畜 産 業 振 興 機 構 に よ り 売 買 差 額 ( 304 円 /kg) が 徴 収 さ れ る 。 政府は、「待機児童解消加速化プラン」に基づき、平成 29 年度末までの 待機児童の解消に向けて、同年度末までの保育の受け皿の整備目標を上積 みし、企業主導型保育事業により、最大5万人分の受け皿を確保すること としている。 -1- 同事業の促進を図るため、認可保育施設等の児童と同様に、同事業によ る保育を受ける児童の給食用脱脂粉乳についても、関税の減税措置の対象 とするよう、内閣府及び厚生労働省から要望がなされている。 2.検 討 企業主導型保育事業による保育施設は、認可外の保育施設であるという点 で児童福祉法に規定する事業所内保育事業による保育施設とは異なる。 他方、企業主導型保育事業は、児童福祉法に規定する保育施設のうち、事 業所内保育事業と同一の保育業務を目的とする施設の設置者に対して政府が 助成及び援助を行うことができるものとして、子ども・子育て支援法上に位 置付けられているものである。また、同法に基づき内閣総理大臣が定める基 本的な指針において、企業主導型保育事業による保育の質を確保するため、 小規模保育事業や事業所内保育事業の職員配置及び設備等の認可基準を踏ま え、施設の助成等の対象を定めるなどの対応を行うこととされている。 こうした企業主導型保育事業の法律上の位置付けや保育施設の水準、並び に発育途上にある生徒・児童等の心身の健全な発達を図るとの給食用脱脂粉 乳に係る関税減税措置の趣旨に鑑み、同事業による保育を受ける児童につい ても、他の用途への使用の防止が担保されることを前提として、認可保育施 設等の児童と同様の関税減税措置を講ずることが適当と考えられる。 3.改正の方向性 企業主導型保育事業による保育を受ける児童について、給食用脱脂粉乳に 係る関税減税措置の適用対象とすることが適当ではないか。 -2- パラ-ニトロクロロベンゼン及び 2 メタ-アラミドの関税率の見直し 1.パラ-ニトロクロロベンゼンの関税率の見直し (1)経 緯 パラ-ニトロクロロベンゼン(以下「PNCB」という。 )は、主にポリイ ミド(注2)の原料となる4・4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下「D PE」という。 )の製造に用いられているが、日本国内では、平成 15 年以降、 PNCBの生産は行われておらず、主に中国からの輸入に頼っている。 (注2)ポリイミドは、その絶縁性・耐熱性等の性質から、スマートフォン等のデバ イスや車載用電子機器で用いられる基板等に使用される。 DPEについては、現在、日本と中国において製造されており、これまで は、品質の高い日本製DPEは、価格の安い中国製DPEと、一定の棲み分 けができていた。しかしながら、最近の技術開発等により中国製DPEの品 質が向上し、近年、日本製DPEと競合するようになってきている。日本の DPE製造企業は、中国のDPE製造企業と比べ、人件費や環境対策に係る コスト等が高いほか、原料であるPNCBの関税を支払う必要があるため(注 3)、コスト面で不利な状況にある。国内のDPE製造企業は、DPEの製造 コストを抑え、国際競争力の維持を図る必要があるとして、PNCBに適用 される関税を無税とするよう要望している。 (注3)PNCB(実行税率 3.1%(協定税率) )については、特恵税率(無税)の適 用もあるが、中国に対しては、現在、国別・品目別特恵適用除外措置(国際競争 力が高いと認められる産品について、国及び品目を指定して特恵関税制度の適用 から除外する措置)により、特恵税率の適用はされていない。 (2)検 討 日本製DPEは、競合する中国製DPEの品質向上等により、市場におけ るシェアを失いつつある。また、DPEの原料となるPNCBについては、 国内生産者が存在せず、関税による保護の必要性は無いと考えられる。 したがって、日本のDPE製造企業の製造コストを軽減し、国際競争力を 保つ観点から、平成 29 年4月以降、PNCBに適用される関税を無税とする -3- ことが適当であると考えられる。なお、今後、日本国内でPNCBの生産が 再開される見込みがないことから、基本税率を無税とすることが適当である と考えられる。 (3)改正の方向性 PNCBに適用される関税(基本税率)を無税とすることが適当ではない か。 -4- 2.メタ-アラミドの関税率の見直し (1)経 緯 メタ-アラミドは、主に電気絶縁材料として使用されるアラミドペーパー (注4)の製造に用いられているが、アラミドペーパー用のメタ-アラミドに ついては、平成5年以降、国内生産者がおらず、米国からの輸入に頼ってい る。(なお、衣料等に用いられるメタ-アラミドについては、国内生産者が1 者存在する。 ) (注4)アラミドペーパーは、受配電設備、高速鉄道のトランス、ハイブリッド車の モーター等で電気絶縁材として使用される。 日本製アラミドペーパーは、その品質の高さから国際市場で優位性を保っ てきたが、近年、中国のアラミドペーパー製造企業が生産能力を増強させ、 低価格の中国製アラミドペーパーの販売を拡大してきている。また、品質も 徐々に向上させてきており、価格の高い日本製アラミドペーパーの国際競争 力の低下が懸念されている。このような状況において、国内のアラミドペー パー関連企業は、アラミドペーパーの製造コストを抑え、国際競争力の維持 を図る必要があるとして、メタ-アラミドに適用される関税(注5)を無税と するよう要望している。 (注5)アラミドペーパーの原料として使用されるメタ-アラミドについては、その 形状によって 3.7%(協定税率)又は 6.6%(協定税率)の税率が適用される。 (2)検 討 日本製アラミドペーパーは、中国製アラミドペーパーの品質向上等により、 市場におけるシェアの低下が懸念されている。メタ-アラミドについては、 国内生産者が1者存在するものの、同者が生産するメタ-アラミドは衣料等 に用いられており、輸入品(アラミドペーパー用)とは互換性が無く棲み分 けができているため、メタ-アラミドの関税を無税としても影響がないこと が確認されている。そのため、メタ-アラミドについて、関税による保護の 必要性は無いと考えられる。 したがって、日本製アラミドペーパーの製造コストを軽減し、国際競争力 を保つ観点から、平成 29 年4月以降、メタ-アラミドに適用される関税を無 税とすることが適当であると考えられる。なお、今後、日本国内でメタ-ア ラミドの生産に新規参入する者は見込まれないことから、基本税率を無税と することが適当であると考えられる。 -5- (3)改正の方向性 メタ-アラミドに適用される関税(基本税率)を無税とすることが適当で はないか。 -6- 3 その他の見直し検討事項 1.ナッツジュースの関税率の設定(税率の移し替え) (1)経 緯 ナッツジュースは、関税率表上、「その他のアルコールを含有しない飲 料」として第 2202.90 号(実行税率 9.6%又は 13.4%(協定税率) )に分類 されてきたが、平成 28 年3月のHS委員会(注6)において、飲料として 調製されていないナッツジュースについては、「その他の果実又は野菜の ジュース」として第 2009.89 号(実行税率 19.1%~29.8%又は 23 円/kg の うちいずれか高い税率(協定税率) )に分類することが決定された。 (注6)商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(以下「H S条約」という。)に基づき設置され、締約国で構成。条約の改正の提案や統一 システムの統一的な解釈及び適用を確保するための勧告の起案等を任務とする。 (2)検 討 飲料として調製されていないナッツジュースの分類について、単に第 2202.90 号から第 2009.89 号へ変更した場合には、関税率の引上げを必要と する事情が生じていない中、適用される関税率が、従来の 9.6%又は 13.4% から 19.1%~29.8%又は 23 円/kg のうちいずれか高い税率に引き上げられ ることとなり、輸入者、ひいては消費者に過度な税負担が生じることとな る。 これを防ぐため、 第 2009.89 号に分類変更されるナッツジュースに対し、 現行の第 2202.90 号の協定税率と同じ水準の税率を設定することが適当で あると考えられる。 -7- 〈現行〉 2009.89 その他のもの(果実又は野菜のジュース) 1 果汁:協定税率 14.4%~29.8%又は 23 円/kg の高い方 2 野菜ジュース:協定税率 7.2%~9% 2202.90 その他のもの(アルコールを含有しない飲料) 1 砂糖を加えたもの:協定税率 13.4% 2 その他のもの:協定税率 9.6% 2009.89 その他のもの(果実又は野菜のジュース) 〈改正イメージ〉 1 果汁:協定税率 14.4%~29.8%又は 23 円/kg の高い方 2 野菜ジュース:協定税率 7.2%~9% 3 その他のもの(ナッツジュース) (1) 砂糖を加えたもの: 協定税率等 13.4% (2) その他のもの:協定税率等 9.6% 2.玩具の関税率の見直し (1)経 緯 玩具の分類については、HS条約附属書の品目表(以下「HS品目表」 という。)の 2007 年改正において、それまで複数の税番に分類されていた ものが、第 9503.00 号に一本化された。その際、日本では、それまで複数 の税番に規定されていた税率(無税~3.9%)を維持するため、国内細分(品 目番号7桁目以降)を設けて対応することとした。 一方、玩具の輸入手続きにおいては、その分類等のため資料の提出が必 要となることが多く、輸入者・税関の双方において貿易手続き上の事務負 担となっている。 (2)検 討 近年の玩具の輸入実績としては、第 9503.00 号のうち実行税率が有税の 税番での輸入が約6割を占めているが、日本が署名済みの経済連携協定に おいては、これらについて全て無税で譲許がされている。また、日本企業 の玩具生産においては、海外へ生産拠点を移転し、生産した製品を日本に 輸入する形態が進んでおり、このような海外展開は今後も進んでいくこと -8- が見込まれている。 以上を勘案すれば、関税を無税としても特段の影響はないと思われるた め、貿易円滑化の観点からも、玩具(第 9503.00 号)の国内細分を統合し、 適用税率を無税(基本税率)とすることが適当であると考えられる。 〈2006 年以前〉 9501.00 車輪付きがん具:協定税率 無税 95.02 人形(人間を模したもの) 9502.10~9502.99:協定税率 無税~3.9% 95.03 その他のがん具、縮尺模型及びパズル 9503.10~9503.90:協定税率 無税~3.9% 9503.00 車輪付きがん具、人形、その他のがん具、縮尺模 〈2007 年~現行〉 型及びパズル 1 車輪付きがん具:協定税率 無税 2 人形(人間を模したもの):協定税率 無税~3.9% 3~7 その他のがん具、縮尺模型及びパズル :協定税率 無税~3.9% 〈改正イメージ〉 9503.00 車輪付きがん具、人形、その他のがん具、縮尺模 型及びパズル:基本税率 無税 3.衛生用品の関税率の見直し (1)経 緯 衛生用品(おむつ、生理用品等)の分類については、HS品目表の 2012 年改正において、それまで材質により複数の税番に分類されていたものが 第 9619.00 号に一本化された。その際、日本では、複数の税番に規定され ていた税率の一部(無税~6.5%)を維持するため、国内細分(品目番号7 桁目以降)を設けて対応することとした。 一方、衛生用品に用いる吸収剤の技術進歩等により、分類・分析が困難 な材質の開発が進むなど、その輸入手続きにおいて資料の提出が必要とな ることが多く、輸入者・税関の双方において貿易手続き上の事務負担とな っている。また、このような技術開発は今後も更に進んでいくことが見込 まれている。 -9- (2)検 討 近年の衛生用品の輸入実績としては、基本税率が既に無税となっている 税番での輸入が9割程度を占めており、また、日本の衛生用品は高い国際 競争力を有していると考えられる(輸出額は輸入額の約 10 倍)。 以上を勘案すれば、関税を無税としても特段の影響はないと思われるた め、貿易円滑化の観点からも、衛生用品(第 9619.00 号)の国内細分を統 合し、適用税率を無税(基本税率)とすることが適当であると考えられる。 〈2011 年以前〉 4818.40 生理用品、おむつ等の衛生用品(紙製等) :基本又は協定税率 無税 61~63 類 その他のもの(綿製の衣類) :協定税率 5.6%~6.5%等 39 類、61~63 類 その他のもの(その他の材質製の衣類) :協定税率 3.9%等 〈2012 年~現行〉 9619.00 生理用品、おむつ等の衛生用品 1 紙製等のもの:基本税率 無税 2 綿製のもの:基本又は協定税率 5.6%~6.5% 3 その他のもの:基本税率 3.9% 〈改正イメージ〉 9619.00 生理用品、おむつ等の衛生用品:基本税率 無税 4.改正の方向性 ナッツジュースについては、現行の第 2202.90 号の協定税率と同じ水準の 税率を第 2009.89 号に設定することが適当ではないか。 玩具及び衛生用品については、国内細分を統合し、適用税率を無税(基本 税率)とすることが適当ではないか。 -10-
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