円借款 案件概要書 2016 年 10 月 25 日 1.基本情報 (1) 国名:イラン・イスラム共和国 (2) プロジェクトサイト/対象地域名: シャヒード・ラジャーイー発電所/ガズビーン州 (3) 案件名:シャヒード・ラジャーイー発電所建設計画(Shahid Rajaee Power Plant Construction Project) (4) 事業の要約: テヘラン近郊に位置し,同国第 3 位の発電量を誇るシャヒード・ラジャーイ ー発電所において新たに高効率のガスコンバインドサイクル発電設備を導入 することにより,今後の経済活動の活発化に伴う電力需要の増加に対応するた めの発電容量及び効率の向上とともに環境負荷の低減を図り,もって同国の持 続的な経済発展に寄与するもの。 2.事業の背景と必要性 (1) 当該国における電力セクターの開発の現状・課題及び本事業の位置付け イラン・イスラム共和国の設備容量は 70,280 MW,年間消費電力量は 203,008 GWh(共に 2013 年。Tavanir(以下「イラン電力公社」という。)統計)である。 同国の人口は過去 10 年間,前年比 1%の割合で増加しており,この傾向は向こう 10 年間にわたって続くとの予測がある(International Futures)。また,2016 年 1 月にイランの核合意が「履行の日」を迎え,長年続いた欧米諸国による核関連の経 済制裁は解除(ないし停止)されており,今後,経済活動の活発化が見込まれ,向 こう数年間の年間 GDP 成長率は 4%前後になるとの予測もある(IMF)。これらの 予測に従えば,同国の電力需要は年々増加すると考えられ,イラン電力公社は,2014 年~2017 年の間に,15,115 MW の新規電源開発を計画している。 同国において,設備容量ベースで既存の発電所の 8 割以上を占める火力発電設備 は,経済制裁等の影響により,外国からの関連設備の輸入が十分に行われなかった こともあって老朽化が進み,運転開始から 20 年以上が経過した設備は 60%,うち 30 年以上が経過した設備は 32%(イラン電力公社統計)という状況にある。この ため,同国政府は早期の効率性向上を課題としている。第 5 次五か年計画(2011~ 2015 年)では,発電効率の向上がエネルギー分野の目標の一つとされており,第 6 次五か年計画(2016~2020 年)でも,取り組むべき主要課題の一つとして取り上 げられることが検討されている。さらに,同国政府は COP21(気候変動枠組条約 第 21 回締約 国 会 議 )に 向 けて 発表 し た 政策目 標で ある Intended Nationally Determined Contributions において,2030 年までに,何ら対策を取らなかった場合 に比して 4%の温室効果ガスの削減を標榜しており,その手段の一つとして,ガス コンバインドサイクルを挙げている。これらを踏まえ,イランエネルギー省等から は,今後の新規電源開発については,従来型の汽力発電設備に代わり,高効率かつ 低環境負荷のガスコンバインドサイクル発電設備の導入促進を図る意向が示されて いる。加えて,イランエネルギー省からは,テヘラン近郊に位置し,同国第 3 位の 発電量を誇るシャヒード・ラジャーイー発電所における円借款を活用した高効率の 発電施設の追加整備に関するニーズが確認されている。 上記を踏まえ,本事業により,今後の電力需要増に対応するとともに,発電時の 環境負荷を最大限低減すべく,高効率の発電施設を整備することは急務である。 (2) 電力セクターに対する我が国の協力方針等と本事業の位置付け 対イラン・イスラム共和国事業展開計画では, 「地球温暖化プログラム」を定めて いる。高効率かつ低環境負荷の発電施設を整備する本事業は,この方針に合致する。 (3) 他の援助機関の対応 イスラム開発銀行は,同国のエネルギー分野に対して 1975 年から 2016 年までの 累計で 650 億円の借款を供与している。 (4) 本事業を実施する意義 本事業は,同国の課題となっている低い発電効率を向上させるとともに,発電の 際の環境負荷を低減することを目的としており,同国の開発政策及び我が国の協力 方針に合致する。また,2016 年 1 月にイランの核合意が「履行の日」を迎えたこ とに鑑み,我が国は,2016 年 2 月の日・イラン投資協定の署名に際し,核合意の 着実な履行を働きかけつつ,政府として無償資金協力や円借款などを通じて日本企 業の進出を支援していく旨表明している。同国の電力セクターにおいては,欧米諸 国による経済制裁が強化される以前,本邦企業が多く活動していたことも踏まえ, 本邦企業の同国に対する再進出を後押ししつつ,二国間関係の強化を図る観点から, 本事業を実施する必要性は高い。 3.事業概要 (1) 事業概要 ① 事業の目的 テヘラン近郊に位置し,同国第 3 位の発電量を誇るシャヒード・ラジャーイー 発電所において新たに高効率のガスコンバインドサイクル発電設備を導入するこ とにより,今後の経済活動の活発化に伴う電力需要の増加に対応するための発電 容量及び効率の向上とともに環境負荷の低減を図り,もって同国の持続的な経済 発展に寄与するもの。 ② 事業内容 ア) ガスコンバインドサイクル発電設備及び関連設備の建設(国際競争入札) イ) コンサルティング・サービス(概略設計,入札補助,施工監理等)(ショー トリスト方式) ③ 他の JICA 事業との関係 準備中の開発計画調査型技術協力「クリーンエネルギー全体計画策定プロジェ クト」では,同国のエネルギー分野において,エネルギーの効率的な利用及び環 境汚染対策の促進を図る計画の策定が予定されており,本事業もこの協力の方向 性に合致する。 (2) 事業実施体制 ① 借入人 火力発電公社(Thermal Power Plant Holding Company,以下「TPPH」という。) ② 事業実施機関/実施体制 TPPH ③ 他機関との連携・役割分担 特になし。 ④ 運営/維持管理体制 協力準備調査にて詳細確認する。 (3) 環境社会配慮 ① カテゴリ分類 ■A □B □C □FI ② カテゴリ分類の根拠: 本事業は, 「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」 (2010 年 4 月公布)に掲 げる火力発電セクターに該当するため。 (4) 横断的事項 特になし。 (5) ジェンダー分類 ジェンダー主流化ニーズ調査・分析案件 (6) その他特記事項 特になし。 4. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用 パキスタン・イスラム共和国「ジャムショロ火力発電所建設事業」の事後評価結 果等では,複数契約に分かれたロットの同時管理が難しく工事の遅延を招いたこと から,大型発電所建設のような大規模かつ複雑な案件においては,適切な契約数に て実施する必要があるとの教訓が得られている。近年,イランは経済制裁の影響に より国際競争入札の経験に乏しいことも勘案し,大型発電所建設案件である本事業 については,事業規模及び実施機関の能力を踏まえ,実施機関と調整の上,ロット 数を適切に設定する予定。 以 上 [別添資料]地図 [別添資料] 地図 ガズビーン州 テヘラン市 建設予定地 ・ガズビーン市(州都)から 約 30 ㎞ ・テヘラン市(首都)から 約 140 ㎞
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