プレスリリース リチウムイオン電池主要 4 部材世界

2016 年 10 月 20 日
プレスリリース
リチウムイオン電池主要 4 部材世界市場に関する調査を実施(2016 年)
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の要綱にてリチウムイオン電池主要4部材世界市場に関する調査を実施した。
1.
2.
3.
4.
調査期間:2016 年 4 月~10 月
調査対象:リチウムイオン電池部材メーカー(日本、韓国、中国、米国など)
調査対象部材:正極材、負極材、電解液・電解質、セパレーター
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<リチウムイオン電池主要 4 部材とは>
スマートフォンなどの情報通信機器の電源や EV、PHEV 等の動力源として搭載されるリチウムイオン電池は、十数点
以上の部材点数及び材料から構成されるが、本調査では、正極材、負極材、電解液(電解質)、セパレーターの主要 4
部材を対象とする。なお、本調査結果は全て米ドルベースで算出しており、2012 年は 1USD=79.7 円、1126.88 ウォン、
6.32 元、0.78EUR、2013 年は 1USD=97.8 円、1116.97 ウォン、6.16 元、0.75EUR、2014 年は 1USD=105.9 円、1152.93
ウォン、6.14 元、0.75EUR、2015 年以降は 1USD=121.0 円、1129.94 ウォン、6.23 元、0.90EUR で換算した。
【調査結果サマリー】
‹ 2015 年 リチウムイオン電池主要 4 部材世界市場規模は
前年比 118.1%の 70 億 5,043 万 6,000 ドルと推計
2015 年におけるリチウムイオン電池(以下、LiB)主要 4 部材世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)
を、前年比 118.1%、70 億 5,043 万 6,000 ドルと推計した。2015 年は民生小型機器向けの LiB セル市場
が前年に比べ伸び率が鈍化したのに対し、車載用 LiB セル市場は特に中国の xEV(HEV、PHEV、EV)
市場の急成長を牽引役に大きな伸びを見せている。その結果、LiB 主要 4 部材市場の成長は継続してい
るが、各部材での金額ベースの伸び率は数量ベースの伸び率を下回る形となっており、年平均での価格
のトレンドは下落傾向にあったと推計する。
‹ LiB 主要 4 部材世界市場においては、中国メーカーが引き続き存在感を高める
2015 年の LiB 主要 4 部材世界市場(メーカー出荷数量ベース)においては、引き続き中国 LiB 部材メ
ーカーが存在感を高めており、正極材(62.6%)、負極材(75.2%)、電解液(75.3%)、セパレーター
(44.8%)といずれも国別シェアがトップであった。2014 年までは日本と韓国の LiB セルメーカー側が安価
な中国製 LiB 部材の採用を拡大している点がシェア拡大の要因の 1 つとなっていたが、2015 年以降は
中国 xEV 市場の拡大を背景に、LiB 部材の中国国内での内需が大きく伸びた点が更なる数量シェア上
昇に繋がったと考える。
‹ 各部材での生産能力と実需の乖離は徐々に埋まり、今後はハイグレード品を中心にひっ迫感も
2014 年から 2015 年にかけての中国 xEV 市場の急拡大を背景に、LiB 主要 4 部材の生産能力と実需
の乖離は徐々に縮まる方向にある。2016 年以降には、中国 LiB 部材メーカーを中心に生産能力の増強
が計画されているが、生産対応が可能な LiB 部材メーカーが限られるハイグレード品に関しては、需給バ
ランスがタイトな状況が続いていくと予測する。
‹ 資料体裁
資料名:「2016 年版 リチウムイオン電池部材市場の現状と将来展望~主要四部材編~」
発刊日:2016 年 10 月 11 日
体 裁:A4 判 456 頁
定 価:260,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2016 年 10 月 20 日
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【 調査結果の概要 】
1.LiB 主要 4 部材世界市場概要と予測
・2015 年におけるリチウムイオン電池(以下、LiB)主要 4 部材世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)
は前年比 118.1%の 70 億 5,043 万 6,000 ドルと推計した(図表 1 参照)。そのうち、民生小型機器向け
の LiB セル市場は牽引役であったスマートフォン市場の成長鈍化により、前年に比べ伸び率が鈍化し
ている。他のアプリケーションでは電動工具向けが成長を維持しており、掃除機向け等の新たな注目ア
プリケーションも登場しているが、民生小型機器向けの LiB セル市場全体の成長率を大きく伸ばすほ
どのインパクトはない。一方で、車載用 LiB セル市場は、特に中国の xEV(HEV、PHEV、EV)市場の
成長※を牽引役に大きな伸びを見せている。中国政府が 2020 年までに累計 500 万台の xEV 普及台
数を目標に制定し、さまざまな政府支援策を始めており、乗用車 xEV、商用車 xEV が共に急拡大して
いる。また、中国市場以外では、米国テスラモーターズの EV「モデル S」や三菱自動車の PHEV「アウト
ランダー」等が好調に推移するなど、2015 年は車載用 LiB セルの生産需要が大きく伸びたことが LiB
主要 4 部材市場拡大の背景として挙げられる。
・2015 年の LiB 主要 4 部材世界市場においては、各部材の金額ベースの伸び率は数量ベースの伸び率
を下回る形での推移となっており、年平均での価格のトレンドは下落傾向にあったと推計する。しかし、
2015 年後半よりは、この状況に変化が見られ、2016 年以降は様相が異なってくると考える。具体的に
は、2014~2015 年にかけて中国 xEV 市場が急拡大したことで、2015 年後半からセパレーターや電解
液、電解質(電解液に溶解された、電気伝導性を示す物質)に関しては、車載用 LiB セル向けでの需
給バランスがタイトになり始めている。特に電解液に関しては、車載用のハイグレード電解質を供給可
能な LiB 部材メーカーが限られること等を背景に、電解質の価格が上昇傾向に有り、2016 年は金額ベ
ースの成長率が数量ベースの成長率を上回る形で推移している。正極材や電解質の原料である炭酸
リチウムでも価格の高騰が見られ、負極材に関しては主流の黒鉛系負極材において、天然黒鉛の価
格が底値まで来ていると見られ、また、天然黒鉛よりも比較的高価な人造黒鉛の価格が上昇傾向にあ
る。以上のような背景から、2017 年までの LiB 主要 4 部材においては、数量ベースの成長率と金額ベ
ースの成長率の乖離は小幅に留まると予測する。
・今後、2016~2017 年にかけては、民生小型機器向けの LiB セル市場も徐々に成長率の伸びを取り戻し、
車載用の LiB セル市場は引き続き中国 xEV 向けを中心に成長が続く見通しである。2017~2018 年に
かけての北米、欧州での排ガス規制実施を受けて、これらの地域でも xEV 市場は活発化すると見る。
こうした状況から、LiB 主要 4 部材の世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、2016 年は前年比
126.3%の 89 億 238 万 9,000 ドル、2017 年は前年比 130.0%の 115 億 7,198 万 3,000 ドルになると予
測する。
※参考資料 「車載用リチウムイオン電池世界市場に関する調査を実施(2016 年)」(2016 年 10 月 17 日発表)
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001598
2. LiB 主要4部材メーカーの国別動向(表 1.図 1.参照)
・2015 年の LiB 主要4部材世界市場(メーカー出荷数量ベース)において、中国メーカーは引き続き存在
感を高めており、正極材 62.6%、負極材 75.2%、電解液 75.3%、セパレーター44.8%と、いずれの部材
においても国別シェアがトップであった(表 1 参照)。2014 年までは日本と韓国の LiB セルメーカー側
がコストパフォーマンスの向上を図るべく、安価な中国製 LiB 部材の採用を拡大している点がシェア拡
大の要因の 1 つとなっていた。しかし、2015 年以降は、中国 xEV 市場の拡大を背景に、LiB 部材の中
国国内での内需が大きく伸びた点が中国 LiB 部材メーカーの更なる数量シェア上昇に繋がったと考え
る。
・日本はかつて LiB 主要4部材世界市場で高い数量シェアを有していたが、内需拡大を受けた中国メー
カーに押され、年々シェアを低下させている(図 1 参照)。中国 xEV 市場拡大の恩恵を受けられていな
い背景には中国政府の補助金政策の動向もあるが、日系 LiB 部材メーカーには従来からの日本と韓
国の LiB セルメーカーへの供給に引き続き注力する姿勢や、中国 LiB セルメーカー向けでも組むべき
パートナーを慎重に見定める姿勢が見られる。一方、中国市場以外では、2017~2018 年にかけて北
米や欧州での排ガス規制実施により、日欧米の自動車メーカー各社から新規 xEV 車種の上市が予定
されており、日本と韓国の LiB セルメーカーに紐づく形で日系 LiB 部材メーカーの需要増に繋がる可
能性があると考える。
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・韓国はセパレーターで小幅のシェアアップの動きが見られるものの、正極材、負極材、電解液の各市場
では数量シェアの低下が続いている。セパレーターでは、一部の韓国 LiB 部材メーカーが中国 LiB セ
ルメーカー向けの供給増を実現しているが、他の部材においては引き続き韓国 LiB セルメーカー向け
がメインになっている。日系 LiB 部材メーカーと同様に、中国 xEV 市場向けに関しては先行きの不透
明感が拭えず、一方で中国市場以外に関しては 2017~2018 年頃の需要増の可能性があると考える。
図表 1.LiB 主要 4 部材 世界市場規模推移と予測
2012年
2013年
構成比
正極材
2,527,026
49.4%
構成比
2,793,967
-
前年比
負極材
679,719
電解液
681,976
13.3%
726,246
13.3%
セパレーター
1,222,494
23.9%
合計
5,111,215
100.0%
21.3%
5,321,346
3,596,811
843,816
717,057
1,234,209
14.1%
1,003,189
100.0%
5,968,510
構成比
4,169,816
12.0%
1,017,032
14.2%
1,204,229
14.4%
1,433,404
20.3%
100.0%
7,050,436
21.3%
1,628,514
100.0%
18.3%
8,902,389
1,553,253
13.4%
2,942,240
25.4%
154.9%
113.6%
118.1%
44.2%
129.0%
186.8%
116.1%
112.2%
13.5%
1,899,830
構成比
5,109,950
122.5%
120.0%
141.8%
20.7%
46.8%
115.9%
118.9%
108.9%
104.1%
51.0%
113.3%
107.4%
92.7%
-
前年比
12.5%
1,133,321
構成比
53.2%
116.2%
97.9%
-
前年比
13.6%
667,812
構成比
3,173,428
(単位:千USD)
2017年
(予測)
2016年
(予測)
2015年
113.6%
106.8%
-
前年比
52.5%
110.6%
-
前年比
2014年
1,966,540
17.0%
120.8%
100.0% 11,571,983
126.3%
100.0%
130.0%
(単位:千 USD)
12,000,000
正極材
負極材
電解液
セパレーター
10,000,000
8,000,000
6,000,000
4,000,000
2,000,000
0
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
(予測)
2017年
(予測)
矢野経済研究所推計
注 1:メーカー出荷金額ベース
注 2:2016 年以降は予測値
注 3:2012 年は 1USD=79.7 円、1126.88 ウォン、6.32 元、0.78EUR、2013 年は 1USD=97.8 円、1116.97 ウォン、6.16 元、
0.75EUR、2014 年は 1USD=105.9 円、1152.93 ウォン、6.14 元、0.75EUR、2015 年以降は 1USD=121.0 円、1129.94 ウォ
ン、6.23 元、0.90EUR で換算した。
注 4:四捨五入のため、表内の比率が一部異なる。
Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
53.3%
11.0%
10.5%
100.0%
中国
韓国
その他
合計
100.0%
10.7%
9.3%
55.0%
25.0%
2014年
正極材
100.0%
10.5%
8.0%
62.6%
18.8%
2015年
(単位:%)
正極材
2013年
注 7:メーカー出荷数量ベース
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
100.0%
1.1%
2.3%
70.2%
26.5%
2014年
100.0%
0.9%
1.9%
75.2%
22.0%
2015年
100.0%
‐
13.1%
64.0%
22.9%
2013年
100.0%
‐
10.7%
66.5%
22.7%
2014年
電解液
100.0%
負極材
電解液
2014年
100.0%
13.9%
15.7%
31.4%
39.0%
2013年
100.0%
7.6%
16.2%
44.8%
31.4%
2015年
矢野経済研究所推計
100.0%
11.0%
16.1%
37.2%
35.7%
2014年
セパレーター
(単位:%)
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矢野経済研究所推計
セパレーター
2015年
‐
5.7%
75.3%
19.0%
2015年
図 1.LiB 主要 4 部材 世界市場における日本の数量シェア推移
100.0%
1.3%
1.0%
68.6%
29.1%
2013年
負極材
表 1.LiB 主要 4 部材 世界市場規模国別数量シェア推移
注 5:メーカー出荷数量ベース
注 6:四捨五入のため、表内の比率が一部異なる。
25.1%
2013年
日本
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2016 年 10 月 20 日
2016 年 10 月 20 日
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3. LiB 主要4部材メーカーの生産能力と実需の比較
・2015 年の LiB 主要 4 部材のそれぞれの稼働率を平均すると 58.2%となる。正極材とセパレーターの稼
働率は 70%台となっているが、負極材は 50%弱の稼働率、電解液は 40%弱の稼働率となっており、正
極材、セパレーターに比べると生産能力と実需のギャップ(乖離幅)が大きい。ただ、2014~2015 年にか
けての中国における xEV 市場の急拡大を受け、各部材での生産能力と実需のギャップは、徐々に埋ま
る方向にある。
・2016 年以降は中国 LiB 部材メーカーを中心に、各部材で生産能力の増強が計画されている。負極材、
電解液においても今後需給ギャップが埋まっていく流れにあり、正極材、負極材、電解液は 2017 年には
稼働率が 60~70%になると予測する。ただし、ハイグレードな電解質に関しては生産対応が可能な LiB
部材メーカーが限られるため、中国を始めとする xEV 市場が拡大傾向にある中で、需給バランスがタイト
な状況が続いていくと予測する。
・今後は急拡大する中国 xEV 市場に向けて、LiB 主要4部材の生産体制を追い付かせるといった構図に
なる見通しであるが、政府の普及政策が成長エンジンと見られる今の中国 xEV 市場が 2021 年以降も堅
調に成長するか否かで、LiB 部材の生産能力と実需が乖離し、需給バランスが崩れることで極端な価格
競争に繋がる可能性も懸念される。
表 2.LiB 主要 4 部材 生産能力と実需の比較
(単位:t、千㎡、%)
部材
2014年
生産能力
2015年
実需
稼働率
生産能力
実需
稼働率
正極材(t)
252,380
141,517
56.1%
264,400
188,248
71.2%
負極材(t)
181,520
79,398
43.7%
209,520
103,479
49.4%
電解液(t)
224,600
65,150
29.0%
246,100
97,850
39.8%
1,006,050
55.8%
2,002,200
1,445,470
72.2%
稼働率の平均
46.2%
セパレーター(千㎡)
1,801,400
稼働率の平均
58.2%
矢野経済研究所推計
注 8:メーカー出荷数量ベース
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