海外経済フラッシュ - 三菱東京UFJ銀行

平成 28 年(2016 年)10 月 19 日 No.2016-7
海外経済フラッシュ
中国:
%と前期から
中国:2016 年 7-9 月期 GDP 成長率は
成長率は前年比+6.7%
前年比
前期から横這
から横這い
横這い
2016 年 7-9 月期の実質 GDP 成長率は前年比+6.7%と 3 四半期連続で同じ伸び
となり、今年の成長目標(前年比+6.5%~7.0%)の範囲内に止まった。重工業
を中心とした投資の減速が続くなか、鉄道や道路などのインフラ投資拡大が下
支えした。
先行きを展望すると、インフラ投資や個人消費の拡大による景気下支えが引き
続き見込まれるものの、過剰な資本ストックや債務の調整余地は依然大きく、
重工業を中心とした投資の減速による景気下押しが続くとみられる。なお、年
前半に景気を下支えした不動産投資についても、価格高騰を受け、過熱抑制策
を導入する動きが大都市から地方都市の一部に広がりつつあり、来年にかけて
拡大ペースの鈍化が予想される。
政府は今年後半の経済政策運営方針として、各地方レベルでの進捗管理や罰則
強化などで過剰生産能力削減に本腰を入れる構えをみせており、10 月に公表
した「企業のレバレッジ解消加速に向けた意見」のなかで、「僵尸(ゾンビ)
企業」や信用失墜企業は債務株式化の対象外とする方針を表明した。今後も、
企業の過剰債務・設備の調整に伴う経済・金融市場への影響には注意が必要で
ある。
中国の産業別実質GDP
寄与度別にみた実質GDPの推移
12
10
(前年比、%、%ポイント)
2015年
最終消費支出
総資本形成
純輸出
実質GDP
6.9
1-3 月期
6.7
第1 次産業
3.9
2.9
3.1
第2 次産業
6.1
5.9
6.3
6.1
6.0
5.7
6.0
n.a.
n.a.
実質GDP
8
工業
6
建築
4
2
-2
6.8
7.8
7.3
8.3
7.6
7.5
7.6
卸・小売
6.1
5.8
6.5
n.a.
交通運輸、倉庫・郵便
4.6
3.3
5.7
n.a.
宿泊・飲食
6.2
7.0
6.8
n.a.
15.9
8.1
5.3
n.a.
不動産
3.8
9.1
8.8
n.a.
その他サービス
9.3
8.7
9.0
n.a.
10
11
12
13
14
15
16/1-9(年/月期)
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ 銀行経済調査室作成
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
1
4.0
第3 次産業
金融
0
(前年比、%)
2016 年
4-6 月期 7-9 月期
6.7
6.7
1.
.結果概要
結果概要
2016 年 7-9 月期の実質 GDP 成長率は前年比+6.7%と 3 四半期連続で同じ伸びとなり、
事前の市場予想(Bloomberg:同+6.7%)と一致、今年の成長目標(前年比+6.5%~7.0%)
の範囲内で推移している。産業別の内訳をみると、第 2 次産業の伸びが鈍化した一方、第
1 次産業、第 3 次産業がやや加速した。
国家統計局は記者会見で、1-9 月期の成長率(6.7%)に対する各需要項目の寄与度につ
いて、消費が 4.8%pt(2015 年:4.1%pt)、投資が 2.5%pt(2015 年:2.9%pt)、外需が
▲0.5%pt(2015 年:▲0.1%pt)との見方を示した。
2.
.足元の
足元の景気動向
各需要項目の動向を別統計の主な経済指標から見ていくと以下の通りである。
(1)投資
1-9 月期の固定資産投資(名目、都市部)は前年比+8.2%と 1-6 月期(同+9.0%)から減
速したものの、1-8 月期の同+8.1%から小幅加速。鉱業や重工業などの減速が全体を下押
しした一方、鉄道や道路などのインフラ投資拡大が下支えした。なお別統計の不動産投資
は、1-9 月期が同+5.8%(1-6 月期:同+6.1%)、不動産着工面積も同+6.8%(1-6 月期:同
+14.9%)へ鈍化した。
不動産投資の 7 割弱を占める住宅市場の動向をみると、住宅販売や投資の再拡大、価格
高騰を受けて、上海や深圳などの一線都市に加え、二線都市の一部でも頭金比率規制の強
化や住宅購入要件の厳格化など過熱抑制策を導入する動きが広がりつつあり、今年に入り
こうした政策を導入した都市は合計約 20 都市に達している。中国人民銀行も、商業銀行
に対し住宅ローンの管理強化を求めるなど、過熱抑制に重点が移りつつある。長い目でみ
れば人口流入に伴う需要増期待などが支えになるとみられるが、政府が一部の資産バブル
への警戒を強めていることも踏まえると、来年にかけて投資拡大ペースの鈍化をみておく
必要があろう。
(2)消費
1-9 月期の小売売上高(名目)は、前年比+10.4%(1-6 月期:同+10.3%)と底堅い伸び
を維持した。都市部を中心とした住宅販売の持ち直しなどを背景に家具や建築関連が増加、
小型車減税策を受け自動車販売も増加基調を維持した。別統計のオンライン消費も高めの
伸びを示している。総じて安定した雇用・所得環境が家計消費の支えになっているとみら
れる。
2
(3)貿易
7-9 月期の輸出(名目)は前年比▲6.2%(4-6 月期:同▲5.0%)と落ち込みが続いた一
方、輸入(名目)は同▲4.6%(4-6 月期:同▲6.9%)とマイナス幅が縮小、貿易黒字は
1,443 億ドル(4-6 月期:1,434 億ドル)へ小幅拡大した。なお、人民元建てでみると、輸
出(名目)は同+0.4%(4-6 月期:同+0.6%)、輸入(名目)は同+2.1%(4-6 月期:同▲
1.3%)と小幅ながらプラスの伸びを示した。輸入持ち直しの背景には、資源価格の下落
幅縮小のほか、小型車向けの減税措置(2015 年 10 月~2016 年末まで)を受けた自動車販
売の増加などがあるとみられる。
製造業 PMI を構成する輸出受注指数および輸入指数は、足元ともに 50 を上回るなど、
先行き持ち直しの継続が示唆されるものの、世界需要の大幅な伸びが見込み難いなか、回
復ペースについては慎重にみる必要があろう。
3.
.当面の
当面の見通し
見通し
先行きを展望すると、インフラ投資や個人消費の拡大による景気下支えが引き続き見込
まれるものの、過剰な資本ストックや債務の調整余地は依然大きく、重工業を中心とした
投資の減速による景気下押しが続くとみられる。国家統計局は記者会見で、中国経済は
「依然として多くの不透明要因があり、持続的な成長に向けた基礎は強固ではない」点を
指摘、適度に総需要を拡大しつつ、「供給側改革」を進めるという政府の方針をあらため
て確認した。
政府は今年後半の経済政策運営方針として、各地方レベルでの進捗管理や罰則強化など
で過剰生産能力削減に本腰を入れる構えをみせており、更に 10 月には「企業のレバレッ
ジ解消加速に向けた意見」を公表、このなかで「僵尸(ゾンビ)企業」や信用失墜企業は
債務株式化の対象外とする方針を表明した。実際、国有特殊鋼大手(負債総額 500 億元)
が正式に破産・会社更生の手続き入りしており、今後も、企業の過剰債務・設備の調整に
伴う経済・金融市場への影響には注意が必要である。
(平成 28 年 10 月 19 日 福地 亜希 [email protected])
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