ブラジルの探鉱・開発動向 ~Petrobras新5カ年計画とプレソルト開発法改正~ 2016年10月20日 調査部 舩木 弥和子 1 本日の内容 ●Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 ●プレソルト開発法改正 ●ローカルコンテンツ 2 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 BMP2016-20は発表せず、BMP2017-21を早期発表 Petrobras5カ年計画の発表時期 5ヵ年計画 2006-10 2007-11 2008-12 2009-13 2010-14 2011-15 2012-16 2013-17 2014-18 2015-19 2017-21 発表時期 2005年8月 2006年7月 2007年8月 2009年1月 2010年6月 2011年7月 2012年6月 2013年3月 2014年2月 2015年6月 2016年9月 特記事項 2005年7月、Gabrielli氏CEO就任 2006年、Santos盆地プレソルトでTupi(Lula)油田発見 2007年11月、Lula油田の規模を発表 2012年2月、Foster氏CEO就任 2014年3月、Petrobrasをめぐる汚職問題浮上 2015年2月、Bendine氏CEO就任。10月、2016年1月、修正 2016年5月、Parente氏CEO就任。BMP2016-20は発表せず BMP=Business & Management Plan 2011年まではBusiness Plan(BP) (各種資料より作成) 3 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 投資額:BMP2015-19(2016/1修正)より25%引き下げ Petrobras5カ年計画投資額推移(単位:億ドル) 43%減 25%減 (Petrobrasホームページ等より作成) 4 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 大水深(特にプレソルト)の生産、開発に重点 ◎探鉱・生産部門への投資額 606億ドル ◎総投資額に占める探鉱・生産部門投資額の割合は微増 ◎探鉱・開発・生産投資の66%、348億ドルがプレソルト向け BMP2017-21投資額内訳 探鉱・生産部門への投資額内訳 (出所:Petrobrasホームページ) 5 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 2020年のブラジル国内石油生産目標変更無し Petrobrasの生産目標 (出所:Petrobrasホームページ) ブラジル国内石油生産目標 2017年:207万b/d(BMP2015-19の230万b/dより10%削減 2016年の生産目標214.5万b/dより3.5%削減) 2020年:270万b/d(BMP2015-19(2016/1修正)と同量) 6 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 パートナーシップを組み、Campos生産減退に対処 ●生産減退ペース鈍化のため、石油会社 やサービス会社と戦略的パートナーシッ プを組む ◎StatoilとJVを組み探鉱・開発を実施する ことについてMOU締結(8月末) 共同でCampos Basinの老朽化油田の生産減退 を食い止めることを計画、協議 ◎Galpと協力関係を強化することでMOU 締結(10月) (出所:Petrobrasホームページ) ●老朽化生産設備を新規のものに交換 ⇒操業コスト削減、効率向上 7 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 プレソルト 効率改善、生産性向上で生産目標維持 Santos Basinプレソルトの効率向上 (出所:Petrobrasホームページ) 生産コスト:2014年$14.6/b、2015年$12/b 2016年$11/b、2017~21年$9.6/b 8 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 別添カラー資料2あり 2017~21年に新規設備19基が生産開始 Petrobrasが2017~2021年に生産開始を予定する生産設備 (出所:Petrobrasホームページ) 9 別添カラー資料3あり Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 生産設備のやりくりで生産開始の遅れは1年以内に 油田、生産設備の生産開始予定年① 油田、生産設備 Lula Alto Lula Central Lula Sul BuziosⅠ Lapa Lula Norte BuziosⅡ Lula Ext. Sul e ToR Sul de Lula Lula Oeste BuziosⅢ Iara Horst(Atapu) Tartaruga Verde and Mestica BuziosⅣ NE de Tupi(Sepia) Deep Water ES BMP2014-18 2016 2016 2016 2016 2016 2016 2016 2017 2017 2017 2017 2017 2017 2018 2018 1つ前の5ヵ年計画より生産開始1年遅れ BMP2015-19 2016 2016 2017 2017 2016 2018 2019 2017 2020 2017 2018 2017 2019 2019 ― BMP2017-21 〈2016〉 〈2016〉 2017 2018 〈2016〉 2017 2018 2018 ― 2018 2019 2017 2019 2020 ― (Petrobrasホームページ等より作成) 1年前倒し 3年遅れ 2年遅れ 〈2016〉 2016年生産開始 10 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 別添カラー資料4あり 生産開始が早まる油田も 油田、生産設備の生産開始予定年② 油田、生産設備 Iara NW(Belbigao/Sururu) MarlimⅠRevitalization Deep Water ⅠSE Sul Pq Baleias MarombaⅠ Carcara Entorno de Iara Jupiter BuziosⅤ Espadarte Ⅲ Deep Water ⅡSE MarlimⅡRevitalization Libra Florim (ITAPU) TLD de Libra Libra Z NW BMP2014-18 2018 2018 2018 2018 2018 2018 2018 2019 2019 2020 2020 2020 2020 2020 ― ― 1つ前の5ヵ年計画より生産開始1年遅れ BMP2015-19 2019 2019 ― ― ― ― 2018 ― 2019 ― ― ― 2020 ― 2016 ― BMP2017-21 2018 2020 ― 2021 ― ― ― ― 2020 ― ― 2021 2020 2021 2017 2021 (Petrobrasホームページ等より作成) 1年前倒し 3年遅れ 2年遅れ 11 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 生産目標:2017年は達成可能 それ以降は難しい? ●資産売却及び資機材到着の遅れは2017年だけではない ローカルコンテンツや汚職問題で資機材納入は遅れがち BMP2017-21の新規生産設備19基のうち入札済み11基 上流の資産売却も進む見通し ●投資額削減に対し生産設備の削減が少ない Petrobras5カ年計画投資額と新規生産設備 5カ年計画 総投資額 探鉱・生産部門へ 2016~20年生産開 (億ドル) の投資額(億ドル) 始予定の生産設備 BMP2014-18 2206 1539 29 BMP2015-19 1303 BMP2017-21 741 41%減 43%減 1086 606 29%減 44%減 20 19* 31%減 5%減 (Petrobrasホームページ等より作成 *2017~21年生産開始予定の生産設備) 12 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 2017~18年の資産売却目標195億ドル ●バイオ燃料生産、LPG供給、肥料生産、石油化学部門 等の事業から撤退 ⇒これらの資産が売却対象に ●ブラジル国内の有望な油・ガス田の権益を売却せざる をえなくなるだろうとの見方が強い ⇒プレソルトエリア内の鉱区権益も売却対象に ◎Santos Basin、BM-S-8鉱区(Carcara油田)の権益66% をStatoilに25億ドルで売却(2016年7月) ◎Tartaruga Verde油田の権益50%売却についてKaroon Gasと協議中 13 Petrobrasの新5カ年計画 BMP2017-21 2015~16年は資産売却目標151億ドルの6割強達成 時期 資産売却内容 2015/4 アルゼンチン資産をアルゼンチン企業CGCに1億100万ドルで売却すると発表 2015/10 子会社Gaspetroの株式49%を5.5億ドルで売却する契約を三井物産と締結 2016/1 石化部門子会社 Braskemの株式36%を14億ドルで売却することを計画 2016/4 陸上成熟油田の約20%を売却する計画。生産量は合計で3.5~4万b/d 2016/6 Guanabara Bay及び CearaのLNG受入ターミナルを売却するため入札手続き開始 2016/6 LPG部門子会社Liquigás Distribuidora SA売却のため入札を実施 2016/7 北東部浅海の生産中鉱区を売却する計画。生産量は合計で1.3万b/d 2016/7 Petrobras Chile Distribuciónを Southern Crossに4億6400万ドルで売却することで売買契約締結 2016/7 Petrobras Argentina 株式67.19% をPampa Energiaに8.97億ドルで売却 2016/7 Alpekと石油化学部門Petroquímica Suape及びCitepeの持ち分売却交渉開始 2016/7 Santos Basin、BM-S-8鉱区の権益66%をStatoilに25億ドルで売却 2016/8 子会社Petrobras Distribuidoraの議決権付株式の51%売却を計画 2016/9 Brookfield Asset Managementとガスパイプライン部門子会社Nova Transportadora do Sudeste 株式の90%を52億ドルで売却することで合意成立 2016/10 Bauna油田の権益100%とTartaruga Verde油田の権益50% 売却についてKaroon Gasと 交渉中 2016/10 子会社南西石油を太陽石油に1億2,930万ドルで売却することで合意 (各種資料より作成) 14 は売却決定案件 プレソルト開発法改正 Petrobrasの負担軽減 2010年制定のプレソルト開発法:Petrobrasはプレソルトエ リア内の全ての新規鉱区でオペレーターを務め、権益の 最低30%を保有 今回の改正:Petrobrasは国家エネルギー政策審議会から の通達後30日以内に、プレソルトエリア内新規鉱区の探 鉱・開発に参加するか否かを選択できる すなわち ●Petrobrasはプレソルトの全ての新規鉱区に参入可能だ が、参入義務はなくなる ●Petrobrasの経営難によるプレソルトの油田開発停滞を 避けられる 15 プレソルト開発法改正 別添カラー資料5あり 2017年にはプレソルトの入札を実施 の周辺鉱区が入札予定鉱区 (各種資料より作成) 16 プレソルト開発法改正 ユニタイゼーションの規則策定を急ぐ ●政府はコンセッション契約とPS契約の鉱区の ユニタイゼーションに関する規則を策定中 ◎Carcará油田の55%は BM-S-8 鉱区外 開発を行なうにはユニタイゼーションを行なう必要 がある ◎2017年中ごろ実施予定のプレソルトエリア内の 鉱区を対象とする入札に間に合うように2016年末 までに完成させる予定 17 ローカルコンテンツは緩和の方向 ●石油産業発展とともに国内産業の振興を図ろう と1999年よりローカルコンテンツ導入 ●Lula政権下で国内調達比率高まる ●Libra油田パイロット生産用のFPSOの入札 ◎Petrobras はこの入札を実施したが、提示価格 が高すぎたためキャンセル ◎同プロジェクトのローカルコンテンツを引き下げ 部分的に国外で建造することにANPが合意 ◎再度入札手続き開始(2016年10月) ⇒ローカルコンテンツ緩和につながる可能性 18 おわりに ブラジル探鉱・開発の見通し Petrobras 投資額削減 ブラジル 人員削減 資産売却 メジャー等資産取得 プレソルト開発法改正 生産伸び悩み 減少 債務削減 健全な成長 生産増加 探鉱停滞 原油価格低迷 ローカルコン テンツ緩和 中長期的に生産増加 Temer政権成立 外資導入のため規制変更 生産伸び悩み 減少 ライセンスラウンドを頻繁に実施 19
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