平 成 年度の税制改正にお いては、税制改正大綱で 円滑・適正な納税のための環境 整備︵納税環境整備︶として挙 げられていたものをはじめ、各 種納税手続きに関する細かい改 正が行われている。今回は、こ れらの改正の一部を解説する。 費税等︶の納付において振替納 なお、今回の改正では、マイ ナンバーに関して、告知等を一 ード会社に納付手続きを委託で 税を選択した場合には、納付の 部不要とする改正および記載対 国税の納付方法のひとつに電 子納税︵e Tax ︶によりイ きる。これにより、金融機関や 証明として、金融機関から納税 象書類の見直しも行われている ンターネットバンキング・AT 税務署の窓口に出向くことなく、 者に対して﹁領収証書﹂が葉書 ︵今回は、解説を省略する︶ 。 Mから納付する方法があるが、 自宅などから 時間いつでも納 24 クレジットカード 納付制度の創設 今回の税制改正で新たにクレジ で送付されていた。これは口座 25 振替の都度送付されることとさ 24 れていたため、費用が多額に上 っており︵平成 ・ 年度で計 電磁的方法により交付を受けた について、 ﹁ 真正性の担保のた 所要の整備が行われた。 控除証明書等に記載すべき事項 が記録された電磁的記録を印刷 した書面を利用できることとな った。具体的には、電子メール 等により交付を受けた電子証明 書を利用して印刷された﹁QR コード付控除証明書﹂等の書面 を添付等できる︵図表5︶ 。 なお、申告納税のスケジュ ールとの関係は図表4のとお りである。 生命保険料控除等に係る 添付書類の電子交付の導入 確定申告の際、生命保険料 控除または地震保険料控除の 申告加算税の見直し ⑴税務調査の事前通知後、更正 適用を受けるためには、保険 添付等が必要とされている。 予知前に修正申告が行われた場 会社が発行した控除証明書の また、寄附金控除の適用を受 当初の確定申告後、税務当局 による︵実地︶調査が行われ、 プロセスブラック 合 が必要とされている。この控 過少に申告していたことが判明 2016.9 けるためには、寄付金の受領 除証明書または領収書につい した場合や、申告すべき税金を FA09P68-70 #5_CS4.indd 68-69 者が発行した領収書の添付等 ては、従来、発行者から書面 69 した場合には、それぞれ﹁過少 申告加算税﹂ ﹁無申告加算税﹂ この調査は、まず調査の前に 申告していなかったことが判明 30 が課されることとされている。 により交付を受けることとさ れていた。 成 年度分以後の個人住民税 31 今回の改正により、平成 年度分以後の所得税および平 (注1)消費税・地方消費税の「中間申告」とは、前課税期間の確定消費税額が一定額を超える事業者について、中間申告書の提出を 義務付けるものである。中間申告の回数は、確定消費税額により、年1回から年11回まで区分されている。また、「3月特例」 とは、届出により課税期間を3ヵ月ごとに短縮するものである(課税期間を1ヵ月ごとに短縮できる場合(1月特例)もある)。 (注2)領収証書送付の代替として、希望者に振替結果の証明書を発行する等の対応が予定されている。 (注3)消費税・地方消費税のうち、中間申告年11回の場合は中間9回目(12月振替) 、1月特例の場合は9月分(12月振替)までの領 収証書が送付される。 (出所)国税庁「平成29年1月から振替納税の領収証書が送付されなくなります」を基に大和総研作成 付ができることとなった。 ○中間申告1/1 ●中間申告1/3 ●中間申告2/3 ◇3月特例1∼3月分 ◇3月特例4∼6月分 領収証書 送付(注3) 28年分 領収証書 送付 廃止 ●中間申告3/3 (注2) ◇3月特例7∼9月分 ットカードを利用した納付が可 消費税 地方消費税 (注1) 能になった︵図表1、2︶ 。平 ◆予定納税① ◆予定納税② ◆確定申告 27年分 ◇3月特例10∼12月分 成 年1月4日以後の納税委託 28年分 29 振替納税の領収証書の 送付制度見直しに係る改正 27年分 ◆確定申告◆延納 申告所得税 復興特別 所得税 から、インターネットの専用サ 平成29年 1∼ 12 約7億7404万円︶ 、経費削 11 9 従来、国税︵申告所得税・消 7 イトを利用して、クレジットカ 6 e Tax利用者については、 される︵図表3︶ 。 口座振替月 平成28年 4 5 減の観点から廃止すべきである 29 図表4 領収証書の送付と申告納税のスケジュール 税目 めの所要の措置が講じられてい (出所)大和総研作成 今回の税制改正では、税務署 長が金融機関に送付する納付書 ③’確認(e-Tax利用者) e Tax上で領収証書の情報 e -Tax との会計検査院の指摘を受けて 領収証書 情報 納税者 ること﹂を要件として、新たに 証明書 等について、この見直しに係る 納税者 指定金融機関 ③ ① 〒 領収証書 振替依頼書 送付 領収証書 提出 の確認が可能となることが想定 指定金融機関 ① 振替依頼書 提出 いた。 ③窓口交付または 郵送(希望者) ②振替納付 そのため、平成 年1月1日 から、領収証書の送付を廃止し、 ②振替納付 納税者のうち希望者に対して領 税務署 収証書の代わりに﹁証明書﹂を 税務署 発行することとされた。 この ﹁証 平成年1月1日∼ 明書﹂は、税務署の窓口で直接 ∼平成年月 交付を受けるか、郵送で交付を 受けることが想定される。また、 図表3 領収証書の送付制度の変更(イメージ図) 28 図表1 クレジットカード納付の流れ クレジット カード会社 納税者 (納付委託者) 取引金融機関 (預貯金口座) <入力事項> ・納付情報 ・クレジットカード決済情報 ①納付委託 ③請求 クレジット カード会社 (納付受託者) ②納付 日本銀行 (代理店) ④口座引落 (注)納付受託者が納付を受けた日に国税の納付があったものとみなされる。 (出所)財務省資料「国税クレジットカード納付の創設(案) 」より大和総研作成 図表2 クレジットカード納付制度の概要 ・国税のうち、納付書で納付できるものが対象となる。税目、納税額については 基本的に制限なし(注1) 。 ・クレジットカード利用手数料は、利用者(納税者)が負担する(注2) ・納税者がクレジットカード会社(納付受託者)に納付手続きを委託し、クレジ ットカード会社(納付受託者)がその納付手続きを受託した日に国税の納付が あったものとみなして、利子税・延滞税等が適用される。 ・適正なクレジットカード納付を実現するための所要の措置 (納付受託者の指定・ 取消し、納付受託者の納付義務・帳簿保存義務・報告義務等)を講ずる。 (注1)ただし、クレジットカード会社の取扱い上、1,000万円未満に限定される。 (注2)現行の地方税における取扱いと同様。また、国は、国税事務取扱手数料として、契 約形態により1円∼10円(税抜き)の範囲で手数料を負担する。 (出所)財務省資料「国税クレジットカード納付の創設(案) 」より大和総研作成 シンクタンク研究員による Vol.18 平成28年度税制改正における 納税手続きの改正 2016.9 68 16/08/09 10:16 納税義務者に対して調査を行う 旨等を通知し︵事前通知︶ 、調 査を開始することとされている。 従来、 事前通知後、 更正予知︵調 査に基づいて更正等があるべき ことの予知︶の前に修正申告が 行われた場合には、過少申告加 算税は課されず、無申告加算税 は軽減︵5%︶されていた。 今回の改正により、事前通知 の後、更正予知前に修正申告が 行われた場合および更正予知後 の加算税については、図表6の に課される附帯税︶が課された 税または重加算税を課されてい いて更正予知による無申告加算 これは平成 年1月1日以後に 場合等についても、加算税が見 具体的には、期限後申告、更 正予知後の修正申告、税務署に 繰り返して行われた無申告加算 た場合には、税率が %加重さ よる更正等が行われた場合につ 税または重加算税の賦課決定か 直されている。 いて、その申告等の前日から5 ら適用される。 れることとなった︵図表7︶ 。 年前までの間に、同じ税目につ 小林章子●こばやし・あきこ 大和総研研究員 弁護士 金融商品取引法・会社法のほか、金融・証券税制についても調査を行う。著書として、 ﹁税金読本﹂﹁法人投資家のための証券投資の会計・税務﹂︵いずれも共著、大和証券刊︶。 10 納税者 ①電子メール等で 電子証明書交付 電子 証明書 QRコード 付控除 証明書 ④確定申告書・ 保険料控除申告書 の提出 添付 税務署 保険会社 ② アクセス ③証明書 印刷 QRコード付証明書 作成システム 国税庁HP とおりとなった。これは、平成 年1月1日以後に法定申告期 限等が到来する国税から適用さ れる。 ⑵短期間に繰り返し無申告加算 税または重加算税が課された場 合 今回の改正により、短期間に 繰り返し無申告加算税または重 加算税︵違反の基礎となる事実 について仮装・隠蔽をした場合 29 29 図表5 添付書類の電子交付の流れ (保険料控除証明書の場合) (注1)図表は、添付書類として生命保険料または地震保険料の控除証明 書を税務署に提出する場合を示す。 (注2)真正性の担保のための措置として、電子証明書およびQRコードに より改ざん等の検知ができることとなっている。 (出所)国税速報(平成28年2月1日6397号) 「 『大綱からみた平成28年度 税制改正の動向』∼個人所得課税関係・下(その他の改正事項、 検討事項等)∼」の図表を基に大和総研作成 図表6 過少申告加算税または無申告加算税の税率 ①当初申告∼ 調査事前通知前 ・過少申告加算税:0% ・無申告加算税:5% ①事前通知後∼ 更正予知前 ・過少申告加算税:5%(%※) ・無申告加算税:%(%※) ③更正予知後∼ ・過少申告加算税:%(%※) ・無申告加算税:%(%※) ※加重される部分(過少申告加算税の場合は期限内申告税額と50万円のい ずれか多い額を超える部分、無申告加算税の場合は50万円超の部分)に ついては、カッコ内の税率が適用される。 (注1)今回改正された部分については下線で示している。 (注2)事前通知の内容として、調査を行う旨、調査対象税目および調査 対象期間についての通知が必要である。 (注3)次のような場合は、新たな加算税の対象とはならない。 ①調査対象とならない部分に係る修正申告 ②他税目の更正請求に基づく減額更正に伴う修正申告 ③相続税・贈与税について、 遺産分割確定を受けて任意に修正申告・ 期限後申告を行う場合等 (出所)改正後の法令を基に大和総研作成 図表7 過去5年以内に無申告加算税 または重加算税の対象となった場合の税率 原則的税率 加算後の税率 15% (20%※) 25% (30%※) 過少申告加算税・ 不納付加算税に代えて 賦課されるもの 35% 45% 無申告加算税に代えて 賦課されるもの 40% 50% 税務署による更正に基づく 無申告加算税 重加算税 ※50万円を超える部分については、カッコ内の税率となる。 (出所)改正後の法令を基に大和総研作成 2016.9 FA09P68-70 #5_CS4.indd 70 プロセスブラック 70 16/08/08 18:00
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